約束なんてしない  -7-


「サーンジー!どこだ〜」
灯りを落とした店も閉まったシャッターも構わず、ルフィは手当たり次第に飛び込んで呼び続けた。
何事かと顔を見せる警備員にも詰め寄って捲くし立てる。
「サンジどこだ!ナミとロビンは?!」
「あんた達、一体なんだ?」
目を白黒させる警備員の元に、誰か呼んだのか島の自警団がやってきた。
「お客さん、何事ですか」
「仲間が行方不明なんだ」
なんとか穏便に話を通そうと、ウソップが前に立ってしどろもどろに説明する。
「女二人と男が一人がいなくなった。どれも結構目立つ容姿だし、目撃者がいないかどうか聞きてえんだけど」
「生憎、この島では夜8時以降は外出禁止なんで」
また明日の朝、お願いします。
そう言われ、ルフィはびよんと首を伸ばした。
「そんなに待っていらんねえ!サンジはついさっきいなくなったんだ。まだどこか近くにいる」
「じゃあ、どこかにいるんじゃないですか」
自警団の一人は、人を食ったような答えを返す。
「この街は結構入り組んでますからね、迷っている間に外出禁止時刻になって余所の家に泊めてもらったり。そういうことはよくあるんですよ、街の人達はみんな基本親切でね」
「それに、海浜公園の方には島越えの畔なんて不思議スポットもあるし・・・」
「そこにはもう行った」
ルフィが噛み付かん勢いで叫んだ。
「島越えなんて嘘っぱちだ。近くの浜に出ただけだ」
自警団の面々が一瞬怯む。
目敏く気付きゾロが口を開けようとした時、別の警備員が走ってきた。

「あの、もしかして男の方は金髪の人じゃないですか?」
「あ、それそれ」
振り返ったウソップに、警備員がメモを取り出し読み上げる。
「ええと、黒いスーツで細身の方」
「それだ!」
「眉毛巻いてたか?」
「や、そこまでは・・・」
ルフィの迫力に押されつつ、警備員は後退りせずに踏み堪える。
「山の中腹にある茶屋で、つい今しがた目撃されたようです。戸締りをしていた女将さんがこんな時間に歩く人なんて・・・と気に掛けていたようで」
「サンジが?」
「山の中腹に?」
警備員が指差す先は、エンターテイメント施設からすこし離れた小高い丘だ。
「ここから散歩用の庭園に繋がってるんですが、夜間は柵が閉められてるんですよ。それが開けてありました」
さらに、メモを読み上げた。
「金髪の男性は誰かを呼びながら、身軽に走っていったそうです」
「なんだってそんなとこ行ったんだろう」
「なにか手がかりを見つけたのかもしれねえな」
よし、ともかく行こう!と駆け出す。
「おっさん、ありがとうな」
「お気を付けて」
ゾロが振り返ると、警備員も自警団もどこかほっと安堵しているように見えた。



「でも、サンジはなんでこんな道を一人で歩いたんだろう」
トナカイ型になりながら、チョッパーは匂いを嗅ぎつつ駆ける。
「変だな、サンジの匂い残ってないぞ」
「それに待ち合わせはあの商業施設の中って言ったのにな」
「まあ、ナミやロビンのこととなると豹変するから」
併走しながら、ゾロは先ほどまでのサンジを思い出していた。
大切な大切な、大事な人達だと顔を歪めて案じていた。
天性の女好きではあるけれど、それ以上に仲間意識も強いのだろう。
いなくなったのがナミやロビンじゃなくても、ウソップやチョッパーならある程度あんな風に心配して、血相変えて探したりするのだろうか。
ルフィや自分の時も?
いや、それはないなと勝手に一人で結論付けた。

「あれ」
チョッパーの声に顔を上げた。
整備された森の入り口横に、立ち入り禁止のゲートがある。
それが横に退かされていた。
「これ、サンジがやったのかな」
「だろうな」
落石注意の看板もある。
散策路から一歩道を離れると、途端に荒れた印象に変わった。
そこかしこに草が生い茂り、伐採されていない樹木が折れた枝を垂らしている。
「こんなとこ、サンジ来たかなあ」
繁みに足を踏み入れ蜘蛛の巣を潜りながら、ウソップが顔を顰めた。
「まあ、ナミやロビンのこととなると人が変わるから」
「それにしたって、踏み荒らされた後もねえぞ」
「サーンジー!」
枝を掻き分けると、目の前に洞窟の入り口が現れた。
こちらも「落盤注意」の看板がある。
とにかく危険な場所らしい。
「こんなとこ、サンジは元よりナミやロビンだって来ねえぞ」
「・・・だよな」
一応確認しようと、洞窟の中に足を踏み入れる。
ウソップが携帯している灯りを灯して、ゾロに渡した。
自分はその後ろに続く。
少し進むと、奥の方から明かりが差してきた。
中に誰か、いるらしい。

「おい、誰かいる」
「ああ」
囁き声でさえ、洞窟内に反響してよく響いた。
こちらの灯りを消して、足音を立てないよう気を付けながら進む。
が、慎重な動きの二人をルフィがさっさと追い越した。
「サンジー!」
「この馬鹿!」
慌てて追いかけると、急に視界が広がり明るくなる。

「サンジ?!」
4人の目の前に、思いもかけない光景が広がった。




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