妖精ちゃんの憂鬱 2

男の手が剥き出しにされた薄い胸に触れ、小さな尖りをきゅっと摘む。
白い身体が面白いように跳ねて、腕が抵抗の素振りを見せた。

「やっぱ待て、何するってえか、なんで触るんだよ。」
「面白れーじゃねえか。」
「面白がるな、遊ぶな。さっさと済ませろ。」
不貞腐れたようにまた腕を投げ出して大の字に寝転んだ。
男はサンジの脇腹を撫でさすってそのまま掌を下にずらす。
普段誰にも触れられたことのない場所を辿られて、くすぐったさにその度びくんびくんと身体を震わせた。
ズボンを下着ごと一気にずり下ろされて、またびっくりする。
「って、ちょっと待て!なにすんだ!」
「あーもうお前はいちいちうるせえ。」
先に脱がせていたシャツをその口に突っ込んだ。
サンジは目を白黒とさせたが、「静かにしろよ」と念を押したら、そのままこくこくと頷いている。
男はふいと顔を上げてなにやら辺りを見回していたが、テーブルに置きっぱなしになっていた
ハンドクリームを掴んで一人満足気に頷いていた。
またサンジに向き直り、萎えて縮こまったそれを柔らかく掴む。

「――――っ!」
サンジは声にならないまま呻いた。
いきなり、なんてもの触るんだこの男!
しばらくやわやわと扱いていたが、あまり反応がないのでちっと舌打ちしてクリームを指に搾り出す。
サンジの足をまとめて高く上げさせ、後穴に指を捻じ込んだ。
「!!!」
思わぬ刺激に、白い身体が大きく跳ねた。
サンジには、未知のことばかりだ。
男同士でできるなんて知らなかったし、こんなところを触るなんてことも考えたこともない。
「ん!んん…」
驚いたのと痛いのと怖いのとでパニックになって、闇雲に手を振り回した。
何度かひっぱたいて引っ掻いたが、男はうるさそうに払い除けるだけだ。
「大人しくしろってんだ。妹を起こそうか。」
またぴたりと大人しくなる。実に扱いやすい。
「早く終わって欲しけりゃ、力抜け。」
そう言うとこちらを睨んだまま、大きく息を吐いている。
本人は力を抜こうと努力しているようだが、身体がガチガチに固まっていて膝頭の震えが止まらない。
「ち、てめえもしかして処女の上に童貞かよ。」
一向に反応しないサンジ自身をからかうように指で弾いて、男は笑った。
羞恥と憤怒で全身が朱に染まる。
だが抵抗することはできない。
せめて早く終わってくれと、サンジは今度こそ観念して目を閉じた。

男の指がありえない場所を何度も探っては擦る。
生理的な嫌悪と異物感に、サンジは声を殺して必死で耐えた。
だが目を閉じれば余計に男の指の動きがリアルに感じられるし、目を開けると忌々しい顔がすぐ
近くから自分を覗き込んでいるのがわかる。
目が合って笑われて、泣きたくなるほど腹が立った。

「んな目で見るな。めちゃくちゃソソるなてめえ。」
勝手なことを言って、弄る指の動きをさらに早めた。
顔を顰めた拍子に、ほろりと目尻から涙が零れた。
「いい面しやがって、ますます泣かせたくなる。」
至近距離で見つめる男の目は欲望に濡れてぎらぎらと光って見える。
まさか自分が、男からこんな目で見られるとは思わなかった。
何より、他人にここまで触れられることになるなんて。

圧迫感が増して、噛み締めた口元から呻きが漏れる。
そうすると男は余計嬉しそうに目を細めるから、それが忌々しくて仕方がない。
「まだまだきついが、こっちが限界だな。」
急に指を引き抜かれた。
シャツの間からまた妙な息が漏れそうになる。
サンジは床に爪を立てて、なんとか声を噛み殺した。
男にひょいと抱えられてそのままひっくり返された。
両手足を床につけて、四つん這いにさせられる。
腰を高く上げさせられて、震える膝を騙し騙し踏ん張った。

「いい子だ。」
男の手が尻を撫でて、押し広げるように肉を掴まれる。
逃げそうになる腰をがっちりと固定されて、何か熱いものが押し当てられた。

――――!!
想像するより早く、強烈な痛みと刺激が脳天を突き抜ける。
なにをされているのかわからないが、とにかく痛い。
信じられない部分から身を裂かれる痛みと恐怖で、サンジは嗚咽を漏らした。
こんなことをされたら多分もう、死んでしまう。
カヤ一人を残して、死ぬ訳にはいかないのに。

節が白く浮くほど床に爪を立てた指を、男が上から包み込むように手で押さえた。
男の体温はどこもかしこも高い。
穿たれた部分は、灼熱の塊を押し込まれたみたいで、焼き殺されそうだ。
「力抜けって、辛いだろう。」
男が耳元でえらく優しい声音で囁く。
辛いってもう、めちゃくちゃ辛い。
力の抜き方もわからないほど、辛くて苦しい。
涙も鼻水もぼろぼろ零してしゃくりあげるのに、男は容赦なく腰を突き上げた。
うっかり意識が飛びそうになる。

「あーたまんね。気持ちよすぎ…」
ともすれば崩れそうになる身体を後ろから羽交い絞めて、男はがつがつと腰を揺さぶった。
「ぐ、ぐ…ひぐっ」
死ぬ、マジで死んでしまう。
目の前が真っ赤に染まって、すうと暗くなる手前で、いきなり急所を掴まれた。
痛みと恐怖でそこは縮こまったままだ。
「初めてでやり過ぎっと、懲りるしな。いいとこも突いてやるよ。」
耳朶を噛みながら、ぐいぐいと腰を押し付ける。
繋がった場所はもう痺れて感覚すら危うくなっているのに、腹の奥がじんじんとして
叫びだしそうになった。
そこはやばい。
なにかがやばい!

どうにか逃れようとずり上がる身体を押さえつけてそこばかり突いてくる。
サンジはもう見も世もなく泣き喚いた。
声がすべてシャツに吸い込まれてくぐもったうめきにしか聞こえないのが、唯一の救いだった。
「く、たまんねえ…な。」
ひどく掠れた声でそう囁いて、男が一際律動を早める。
薄れそうな意識の隅で、ぐうと呻く声を聞いた気がした。


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