「妖怪エロコック」−1



 ちゅ…っ…ぴちゅ…。
 れる…じゅぷぷ…っ。

 テーブル下に淫らな水音が響く。
 粘液を啜るような、結構派手な音。でも、ゾロにしか聞こえない音。

 それに…下腹から股間にかけて痺れるような甘い感覚があって、今にも情欲を吐き出してしまいそうな衝動がある。
 《ちゅぷ…》と咽奥近くまで呑み込み、《にゅぷぷぷ…っ》と吸引しながら引き抜いていくタイミングが絶妙で、達してしまいそうになったが何とか下腹に力を込めて耐える。

「なァ、ゾロ。そう思わねェ?」
「ああ…」

 チョッパーと何やら馬鹿な話をしているウソップに生返事を返しながら、ゾロは動けずにいる。今、ラウンジのテーブルの下には《エロコック》がいて、旨そうにゾロの逸物を銜えているのだ。ちるちると薄い舌に鈴口をなぞられて、大変気持ち良い。

『何でだろうな…』

 ゾロの視線の先にはいつもの《コック》がいて、何が楽しいのか鼻歌交じりに食器を拭いている。ゆらゆらと揺れるその小さな尻を眺めていると、ゾロは今すぐあの細い身体を押し倒して、狭いであろうケツ孔にブチ込んでやりたくなる。

 だが、出来ない。
 今まさに《エロコック》に銜えられていて、それがまた極上のフェラチオなものだから、声を出さないようにするので精一杯なのだ。
 他の仲間達は異常に気付いていない。今までに起きた数回の出現でも同様だった。先日など、カードを取り落としたウソップがテーブルの下に潜り込んできたので血の気が引いたというのに、全く何の頓着もなくウソップはカード遊びを再開させた。

 同じ空間に二人のコックがいる。
 一人はいつも通り家事をしている。
 ゾロは一人のコックにいやらしくフェラチオをされている。
 なのに、ウソップは無反応。フェラチオ風景も淫音も聞こえていない。

『…ってことは、おかしいのは俺だけってことだな』

 だからエロコックは誰の目にも止まらず、ありえないくらいに淫らなのだ。
 所謂、白昼夢というヤツか。それにしてはえらく意識鮮明だが、そう見せかけて自分はうたた寝しているのだろうか?
 しかし何故、相手が娼婦とかではなくコックなのだろうか?一味の中でも同年の男として張り合うことの多い相手だというのに。

『まあ、最近は別にアレも見てて面白いとは思うようになったんだけどな』

 元々、特段に嫌いというわけではない。最初はやたらと突っかかってくるのがゾロを嫌っているせいなのかと思って鬱陶しかったが、アラバスタで気が感じられるようになってからは、単に構って欲しいだけなのだと気付いて急に愛着が湧いてきた。《なんだこいつ、可愛いトコあるじゃねェか》と思ったわけだ。

 坊主憎けりゃ袈裟まで憎いと言うが、その逆も然り。コック可愛けりゃエプロンまで可愛く見えて、物干しロープに掛けられたピンクのどすこいパンダエプロンがはためく様子を見てさえ口元が綻ぶようになった。

 《もっと素直に甘えてくりゃあ良いのによ》そりすればゾロだってもっと優しくしてやるのに。
 そんな風に憎からず思っていたのが、ちょっと方向性を間違えてこんな事になっているのだろうか?チンコをしゃぶれとまでは願っていなかった筈だが。

『…寧ろ、ケツを揉んだり舐めたりしてェんだけどな。つか…夜来いよな』

 気にくわなかった時代から、コックのケツはかなりゾロの好みだった。筋肉質な小尻は小気味よくキュッと引き締まっていて、溜まっているときには《突っ込んだらかなり締め付けてきそうだ》なんて誘惑を感じていた。
 どうせ妄想なら自分からずっぷり銜え込んで、ゾロの上でアンアン言って欲しい。特に気兼ねがない夜なら、妙な事態だと弁えつつ突き上げて愉しむのに。

 試しに夜が来る度に格納庫に籠もったりしてみたが、そんな時に限ってエロコックはやってこなかった。こうして他に人目がある時に限ってやって来ては、いそいそとゾロの性器を取りだして口淫を施し、たっぷりと溢れた白濁を旨そうに飲み干していく。正直言うと続けて2、3回は抜いて欲しいくらいなのだが、1回呑むと下着とニッカポッカを元通りにして、《ご馳走様》と手を合わせて消えてしまう。妖怪の類なのだとしたら小食すぎだろう。もっと貪欲に食いついて欲しい。

 だから今現在、ゾロは頑張っている。

 平静な振りをして極力達してしまわないようにしているので、エロコックは楽しそうではあるが少し顎が疲れてきたようだ。息が苦しくなってきたのか咽奥には銜え込まず、竿の下面を猫のように舐めあげている。時折小袋を咥内に含んでコリコリされるのも気持ちよかった。なに喰わぬ顔をして手を伸ばし、サラサラとした質感の髪を撫でつけてやると《ん〜》と嬉しそうに喉を鳴らしている。

『テーブルクロスに隠れて顔が見えねェのも勿体ない話だぜ。でも、持ち上げてじっと覗き込んでたら流石に不審に思われるだろうしな』

 エロコックの方は時々テーブルクロスを持ち上げてちらりとゾロの様子を伺い、無表情なままだと気付くと意地になって舌戯を尽くすが、その時にはまた顔が隠れているので不満だ。
 妄想を見始めたこと自体に忸怩たるものを感じるべきなのかも知れないが、今のところ戦闘時など大変な時に来たことはないので、航海中のちょっとしたお楽しみとして有り難く享受している。
 我ながら大らかな性格だ。 

 エロコックが現れ始めたのは2週間前、空島から戻ってきた日以降だ。
 最初は服越しに急所を握られた段階でクロスを捲り、しゃがみ込んで吃驚目をしているコックに怒鳴りつけそうになったが、《腹減った〜》《煩ェ。ちっと待ってろ》という会話を耳にして視線を上げると、少し離れた場所でルフィとコックが会話していた。そちらのコックは普段通りの様子だったから、どう考えてもテーブル下のコックが何か奇妙な生き物なのだと気付いた。ひょっとすると空島から妙なモノが憑いてきたのかも知れない。ゾロの精気を奪い、憑り殺そうとしているのか?

 しかし斬り捨てる気にならなかったのは、エロコックから一切の害意が感じられず、三代鬼徹も反応しなかったからだ。エロコックからひしひしと伝わってくるのは、ゾロに対する強い欲情だけだ。こいつはゾロのチンコが好きで好きで堪らないようで、顔の下半分をどろどろにしてフェラチオに興じる。唯それだけの存在なら可愛いものだ。

 だからゾロはテーブル下の妖怪エロコックを、《飼う》ような気持ちでいる。餌はゾロの精液だけだが、エロコックは満足しているようなので良いのだろう。

『しかしなァ…段々人間ってのは贅沢になってくるもんだ。こうも従順にしゃぶり続けられると、段々あっちのコックも俺の思い通りになるんじゃないかなんて思い違いをしそうになるな』

 今のままなら誰にも迷惑を掛けないが、怪しく妖しいエロコックとコックを混同してレイプなんぞした日には、仲間一同から極悪変態剣士の烙印を押されてしまう。他のことには大らかなルフィも仲間を傷つけるような不条理さは認めないから、おそらく真顔になって持ちうる限り全ての技を尽くしてゾロを倒しに掛かるだろう。
 何より、コックの自分を見る目が変わるのが怖かった。

『しかしなァ…やっぱり顔は見てェし、脱がして身体中眺めたりしてェな』

 至近距離にウソップとチョッパーがいるので逡巡していたのだが、丁度甲板からルフィに呼ばれて駆け出していった。よし。試すなら今だ。
 ゾロはグイッとエロコックの首を掴むと、ほっそりとした感触に驚きながらも強引にテーブル下から引きずり出した。銜えていたチンコがヌポンと抜けて少々痛かったが、口元をドロドロにしたエロコックが出てきたので良いことにする。

 少し戸惑う風ではあったが、エロコックは逃げはしなかった。両脚を広げてゾロの膝を跨ぐように座ると、うろうろと左右に視線を漂わせていたが、二人の間にチンコを見つけると、安堵したように両手で掴んで愛撫を始める。見てくれはコックにそっくりだが、少し頭の弱い子のようだ。
 それはそれで放っておいて、ゾロはエロコックのネクタイを解いてシャツのボタンを外していく。しゃらりとした良い生地は指に心地よく、仕立ての良いものなのだと分かる。変なところまでリアルに再現していることだ。

『ぅお…白いな』

 今まで見たことがないとは言わないが、こんな至近距離から体臭を感じるほどの距離で見たのは初めてだ。そういえば、近寄るとふわんと良い匂いがするのもコックによく似ている。
 そっと両の掌をシャツの間に入れていって胸筋を掴み、親指で乳首を擦ると、《ゃんっ》と甘い声を上げて仰け反った。うむ。良い反応だ。娼婦がするような演技ではなくて、本当に感じやすいだと思う。

『そういう感じやすさをコックに求めてるわけか?俺は』 

娼婦のように淫らに銜えさせておいて、男の愛撫には初々しい処女のように反応して欲しいなんて、呆れたオッサン嗜好だ。軽く頭を抱えたくなったが、両の頬にエロコックの掌が添えられると、チュっと軽いキスを鼻先にされて妙に嬉しくなる。躊躇いなくチンコは銜えたくせにキスの反応は気になるのか、膝の上でそわそわして頬を赤らめている。口の形だけで《もっとしろよ》と示して丸い後頭部を引き寄せると、嬉しそうに笑って頬や額にチュッチュッとあどけないようなキスを繰り返した。

 少々もどかしくなって頭を引き寄せ、唇にキスをして舌を絡めていくと、《ゴ…ッ》と少し離れた場所で音がした。

 シンクにもたれ掛かるようにしてへたり込んでいるコックの姿を目にした途端、ゾロはエロコックを抱えていたことを忘れて立ち上がった。一瞬にして《フッ》とエロコックの姿はかき消えてしまったが、気にしている暇はなかった。あの丈夫な男が急に倒れるなんて余程のことだ。もしかして、先日襲ってきた海賊とやり合ったときに、どこか怪我でもしていたのかも知れない。痩せ我慢をする男だから、誰かを庇ってついた傷だったりするとチョッパーに言わず、自然治癒で治そうとすることがあるのだ。

「コック、おい…どうした…っ!?」
「な…んでも、ねェ…」
「無いってことがあるか。てめェ、顔真っ赤だぞ!?」

 冷え性のケがあるのに、今は頬が紅潮して耳まで薔薇色に染まっているし、触れた手もえらく熱い。発熱と言うほどではないが、微熱くらいはあるだろう。身体の傷が熱を持っているのかも知れない。

「また怪我してんのに黙ってんじゃねェだろうな!?」
「違う…そういうわけじゃ……」

 嫌がるコックの身体を押さえつけて、幾らか乱暴に服をはだけていったらシャツのボタンが飛んで右の肩が諸肌脱ぎになり、顰めた眉根と白い肌、捻った腰の風合いに股間の高ぶりが増していく。

 …………高ぶり?

 どうしてこうも股間に風を感じるのだろうかと思って視線を降ろすと、そこにはギンギンに高ぶった凶悪チンポが鎮座ましましている。コックも気が付いたのか、凝視すると更に頬を真っ赤にして絶句していた。

「いや…待て、これはだな…」
「何だというのかしら?」

 ゴォ…っ!

 何だか急に背後から烈風を感じてゾクリと背筋が震えた。
 怖々振り返ってみるとそこには…漆黒の髪を揺らしてこちらを睥睨しているロビンがいた。コックを我が子のように愛している彼女は、どうやらこの光景がお気に召さなかったらしい。

「コックさんが可愛いのはよく分かるけれど、物事には手順というものがあるのではなくて?まずは同意を得てからだし、ヤるならヤるで場所を考えてはどうかしら?コックさんは恥ずかしがり屋さんですもの。せめて格納庫とか、守秘性の高いところに毛布なりなんなり敷いてから押し倒すべきではなくて?」
「誰が押し倒すかァっ!!」

 言った瞬間に、ロビンの気配が更に凶悪化した。
 こうなるとテーブル下で従順にチンコをしゃぶっていたエロコックなんてとても妖怪だなんて呼べない。あれは天使だ。で、目の前にいるのが第六天の魔王だ。目元には何故か黒い影が落ち、背後の景色は風一つ無い凪の海だというのに、ロビンの回りにだけ荒々しい風が吹いているかのように黒髪がうねっている。髪の束がいくつもの蛇に変じているかのようだ。

「まぁあああ……抱きたいわけでもないのに、興味本位で取りだしたおちんちんをどうするつもりだったの?からかってイマラチオでもさせようとしたわけ?」
「させるかーーーっっっ!!!」

あれはあくまでエロコックの側から旨そうに銜えてきたから、好きなようにさせていただけだ。《そうだろう?》とエロコックとコックを混合して目線を送ると、硬く目を瞑ってぽろぽろと涙を零していた。薄い唇をきつく歯で噛んでいるが、それでも嗚咽が喉から零れてくる。

「ふ…くゥ……」
「お…おおい、おいおいおい…っ!嫌がらせかてめェっ!このタイミングでてめェに泣かれた俺の立場はどうなる!?」

 カッ…
 カッ……

 恐怖映画よろしく靴音を響かせて近寄ってくるロビンが物凄く怖い。今までどんな敵と対峙しても感じなかったような恐怖感が背筋を這い上がってくる。《ダ〜ダン♪ダ〜ダン…♪》なんていつか聞いた恐怖映画のBGMまで幻聴めいて聞こえてきた。

「ロロノア・ゾロ…覚悟は出来ていて?」

 何の覚悟か聞きたくない。スッと腕を組むと途端に無数の手が床やゾロの身体から生えてきて、露出したままだった性器に絡み付いてくる。《グラップ》を掛ける気かと思って全身の血の気が引いた。幾ら怪しい女とはいえ手を斬り落とすことは出来ないし、自分のチンコを斬り落としたら洒落にならない。

 その時、コックが慌ててゾロとロビンの間に割って入った。

「止めて…っ!ロビンちゃんっ!俺が…俺が全部悪いんだ…っ!こいつのチンコもがないで…っ!!」
「コックさん…」
「どういうことなんだ?」

 不審げに問いかけるとコックは観念したように眉根を寄せて、がっくりと肩を落とした。

「説明するから…取りあえずチンコしまえ」

 慌てて開放されたチンコをニッカポッカの中にしまうと、ロビンと共にテーブルに座り直したゾロはコックから驚くべき秘密を聞かされることになる。

「…アレ、は…シャンディアに貰った《式神》ってヤツだ」
「はァ?」

 さっぱり意味が分からなくて小首を傾げているゾロとは対照的に、ロビンの方はピンときたらしい。

「まあ…でも、あれは元々そういう《見えざるものを見る目》を持つ術者が、修行を積んだ結果作り出し、操れるようになるものではなくて?」

 どうやら魔法めいた道具の一種らしい。

「その辺は良く分からないけど、あいつらが持ってた《式神》ってのは、一定の術式に従って円陣を血で書くと、一人だけ指定した対象者に自分の幻影を見せて、自分も普通の意識と平行して《式神》が見てる景色や感覚を共有するんだってさ。ただ、俺が新しいのを作ることは出来ねェから、もうあんまり残ってないんだけど…。あと、ホントは夜使うつもりだったんだけど、初期設定を12時間ほど間違えてたみたいで真っ昼間に動くようになったんだ。おまけにランダム設定になっちまったらしくてさ、俺にも分からないタイミングで急に動くようになったんだ」

 素人が手を出すとろくなことが無いという見本市のような事態だ。

「なんだてめェ。そんな道具なんか使わなくても、直にしゃぶりに来りゃあ良いじゃねェか」

 ゾロに指摘されると、コックは見ていて哀れになるくらい真っ赤になってしょげてしまう。逆に手指は血の気を失ってカタカタと小刻みに震えているから、横からまたロビンに睨まれてしまった。

「ゴメン…。二度と、しねェから……頼む。赦してくれ…軽蔑、しないでくれ…」
「何で二度としねェって話になるんだっ!直に来いっつったろーが!」

 どうにも噛み合わない会話だ。苛々してコックの襟元を掴むと、子どもみたいに大きく見開かれた蒼い目からボロボロと新しい涙が零れだしていく。

「チンコ好きの変態って…け、軽蔑されて…便所扱いされるのはヤダ…だから、言えなかった…」
「だったら何で銜えた。俺ァ頼んでねェぞ?」
「…………好き、だから」
「やっぱりチンコ好きなんじゃねェか」
「違う…っ!ゾロが…好きだから……っ…ホントはキスしたり擦り寄ったりしたかったけど、それは気持ち悪がられると思ったから…溜まった時にしゃぶってイカせてやったら、ちょっとは喜ぶんじゃないかって…。そん時も、なるべく顔を見せなきゃ割り切って愉しむんじゃないかって…」

 ひっくひっくと泣きじゃくりながら頭を抱えるコックに、ゾロは膝を突きそうになった。

「てめェ…ほとほと馬鹿なんだな」
「…今回に限っちゃ…自分でもそう思う」

 ダーっと目の幅の涙を流しながらコックは言うが、こいつがバカなのは今回に限ったことではない。言うとややこしいことになるから言わないが。

「バーカバカバカ。ホントにバカだ、てめェは!普通、キスや擦り寄るのが嫌な相手に銜えられたりしたら、全力で暴れて嫌がるだろうがっ!!少しでも射精を長引かせるために平静を装ったり、引きずり出して顔見たいなんて思わねェだろ!?気付けよヴァーカっ!!」
「うううう…てめェは塩を掛けられたナメクジに、辛子で追い打ちを掛けるタイプかよォ〜」
「だーかーらァーっ!」

 いい加減語尾に怒りマークが浮いてしまう。普段は無駄に自信満々なくせに、どうしてゾロへの恋愛に関してはそんなに自分を卑下するのか。

「俺だって悪くねェと思ってたんだよ!テーブル下なんかで顔も見られねェ状態でシコシコ銜えられるより、ツラ見てそわそわしながらキスしてくるてめェの方が可愛く思えたんだ!またしろっ!そんで、てめェのも俺に銜えさせろ!ケツにも突っ込ませろっ!!」
「なんですと?」

 《へきょっ!?》と素っ頓狂な声を出して垂直に飛び上がるコックに、これ以上語って聞かせたりしたらとんだ羞恥プレイになってしまう。何しろ、すぐ横でにんまりとロビンが嗤っているのだ。睨まれたら睨まれたで怖いが、微笑まれても怖いぞ…この女。

「と…取りあえず、こっち来い!」
「何処行くんだ?」
「どこでも良いだろ?おい、ロビン。纏まるところに纏まったんだから覗くなよ?」
「良いけど…でも、ちょっと待ってね」

 ロビンは腕をクロスさせてどこかに身体の部位を咲かせているようだが、この辺には咲いているのが見えない。すると、ヒョイヒョイヒョイと腕がリレーして何かを運んできた。綺麗な硝子瓶に入ったローションとコンドームだ。

「どうぞ使って頂戴?」
「…借りとく」
「良いわよ。あなた達、これから沢山使いそうですもの。差し上げるわ」
「じゃあ貰っとく」

 にっこりと微笑むロビンに見送られ、キョドったままのコックを肩に乗せて格納庫に急いだ。



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