Under the rose -6-




あのDVDが世間に発売されてしまったという事実は、それからしばしばサンジを悩ませた。
なんと言っても思い出すのも恥ずかしい、人生の汚点だ。
しかもそれの8割は女性の目に触れているという。
よもやまさかと思うが、うら若き女性の間で話題になどなっていないだろうか。
例えばバイト先の同僚の彼女とかが、友達と一緒に密かな鑑賞会とか開いて、あの姿の目にしたりなんかしていないだろうか。
そう考えればいてもたってもいられなくなって、うがあと叫んで髪を掻き毟りたくなった。
その度両手に力を込めて拳を作り、一人黙ってぶるぶる身体を震わせるから、何も知らないバイト仲間に薄気味悪く思われたりして。




そうこうしている内に、あっという間に日にちは経ってしまう。
約束の日曜日になって、サンジは初日以上に緊張しながらスタジオに向かった。
なんせ、あの場所にPさんがいるのだ。
あんな綺麗なPさんが、自分のみっともない姿を見るだなんて。
一体どうしたらいんだろう。
できることなら、このまま逃げ出してしまいた。
あの金額だけでも充分じゃないだろうか。
ちらっとずるい考えが頭を過ぎったが、いやダメだと思い直す。
まだ足らない。
まだまだ、全然足らないのだ。


逡巡している間に、スタジオに着いてしまった。
約束の時間にはまだ早いが、勤勉なスタッフばかりだから一番乗りというわけじゃあないだろう。
教えられた階に行ってみると、やはり全員が揃っていた。

「おはよう、昨夜はよく眠れた?」
Aがニコニコとコーヒーを煎れてくれる。
「ちょっと待っててね、Zがまだなんだよ」
セットの方を見ると、大きなダブルベッドがどんと置かれていた。
あそこでするのかと思うと、回れ右して帰りたくなる。
「Zにも困ったものじゃ、いつまでたっても場所を覚えん」
Kが古風な物言いで、カップを口に運んでいた。
今日も美しいPは、サンジの顎に手をかけて肌チェックなんかをしている。
「撮影前に、ちょっと産毛を剃らせてちょうだい。大丈夫、産毛だけだから」
他にどんな毛があると?
「メイクもちょっとだけにするわね。すぐ赤くなるけど、それがまた色っぽいのよねえ」
ああお姉様・・・やはり貴女は見てしまったのですね。
世を儚んでため息をついたら、ガチャリと扉の開く音がした。
「遅いぞ、強姦屋」
「や、それはないだろう」
Aの突っ込みにも知らぬ顔で、Zがずかずか部屋の中に入ってくる。

「信号が一つ増えていた」
「「「増えるわけないだろ!」」」
スタッフ総突っ込みにあっても、Zは知らん顔で勝手にコーヒーを注いでいる。
―――ああ、やっぱりこんな声なんだ
前回、Zの声を聞いたのは一言だけだったからうろ覚えだった。
思い出すと赤面するから考えないようにしていたけれど、まあいい声だと思う。
―――いい声って、なんだよ
Zが真横に座ったから、サンジはますます顔を上げられなくなって俯いたままコーヒーを啜った。
猫舌にはちと熱いが、我慢する。


「んでどうするんだ。今日は強姦モノだろ」
「だから強姦屋じゃないか」
「えええっ」
本日のお天気は?程度の口調でとんでもない打ち合わせに入って、危うくコーヒーを噴き出すところだった。
「ご・・・え?」
それは、演技をしろということだろうか。
「いや、別に素人臭い演技をしろとか、そう言う事じゃないから」
Aがサンジの心を見透かしたかのようにフォローする。
「まあ2回目だしね、前回は初めてだったからZも相当手加減してたんだけど、今回は本気でズバッとやっちゃおうかと言う事だよ。ある程度容赦ないと思うけど、身体に傷つけたり痛いことなんかしないから安心して」
それで容赦ないって、どんなだよ。
喉元まで出掛かった突っ込みを、なんとか飲み込む。
「んでねえ、勿論サンちゃんは合意の上でするんだから、抵抗できないってのもあるんだろうけど、それでもまあ大義名分付けてあげたいから、か〜るく縛るよv」
縛るよvと可愛く小首を傾げられて、サンジは強張った表情のままこくりと頷いた。







「ふ・・・んあ・・・あ」
言葉通り後ろ手に軽く縛られて、サンジはシャツの前を肌蹴られ乳首を重点的に責められていた。
なんせZは取り掛かったらシツコイ。
何度も舐めて吸って、甘く齧られた乳首はジンジンと痺れて、片方を弄られれば空いた片方が疼くと言う我ながら実に我侭な反応を見せて小さく勃ち上がっている
「ん、や―――」
乳首を弄られるだけでこんな甘い声が出るなんて、認めたくないが仕方ない。
なんせZの指も舌も唇も、気持ちよくてしょうがないのだ。
触れられるだけで全部の快感神経がそこに集中したかのように敏感さを増して、感じずにはいられない。
「うあっ」
後ろで縛られたままベッドに仰向けにされて、ズボンを下着ごとずり下げられた。
腰を曲げ、丸めた尻を突き出すように太股辺りで脱がすのを止められる。
「や、だっ」
みっともない姿に、サンジは転がされたまま顔だけ擡げた。
Zは知らん顔で膝裏をサンジの胸に押し付けるように固定して、剥かれた尻の間を嬲る。
「い、や・・・だ、そこはや―――」
ひっくり返されて恥部だけ晒され、オイルが塗りたくられる感触に膝下をバタバタさせる。
頭を踵で蹴ってしまったようだが、Zは顔も顰めない。
「こーら、足も縛っちゃうよ」
Aが口を挟んできて、サンジは暴れるのをぴたりと止めた。
けれど恥ずかしい。
死ぬほど恥ずかしい。
だって、Bの後ろでPさんが見ているのに。

「うー・・・」
火を噴きそうなほど頬を紅潮させ、目尻には涙が浮いた。
その表情もLの小型カメラが至近距離で余すことなく撮影している。
Zはサンジの尻を解すのに集中していて、そこにBのカメラとPの視線が注がれていた。
「あ、や・・・ふあ」
Zの指は、初めてのときとは違い荒っぽく大胆にサンジの中に入ってきた。
オイルの力を借りているとは言え、あまりに強引な進入に内壁が抵抗し締め付ける。
「う、い・・・いた―――」
自分の足の間から顔を覗かせて、サンジは弱音を吐いた。
傷つける痛みはないが、Zの指がぐいぐい入ってくる感触が苦しい。
何より、服を着ているのにそこだけ曝されている状態が余りにみっともなくて恥ずかしい。
「すげえ格好だね、白いお尻のそこだけ真っ赤になっちゃってるよ」
Aが横から覗き込んだ。
「あーあ、あんまり乱暴に弄くるとサンちゃん泣いちゃうよ。まだ2回目なのに」
その台詞に対抗するかのように、指の動きが激しさを増す。
何本入っているか分からないが、とても1本やそこらじゃないくらい質量を増して、サンジは小さく悲鳴を上げた。
「うひ・・・ん」
Zは両手を使って、指でそこを抉じ開け始めた。
ぬちゃぬちゃと粘着質な音が立ち、より深くまで穿たれる。
「ひ、ひいっ・・・」
身体を曲げた姿勢が苦しくて、不自然な状態で指を埋め込まれることが辛い。
もう嫌だと叫びそうになったら、Zの指がそこから離れた。
ほっとして、膝頭をぎゅっと閉じる。
それでも、曝されている部分が隠れるわけではない。

膝裏に引っ掛かっていたズボンをすっぽりと脱がせ、今度は大きく足を開かせた。
そうしておいて、足の付け根の部分に舌を這わせ舐め出した。
「うひゃ・・・ああああ」
色気のない声を上げ、サンジはその場でのた打ち回る。
なんでだか、右側の足の付け根が異常に感じてしまうのだ。
Zもそれがわかるのか、右ばかり執拗に攻め立てる。
「いや、そこはやだっ!やめろぉ」
両手を戒められ身体を押さえつけられて、敏感な部分ばかりを弄られた。
その度サンジは身体を跳ねさせ、悲鳴を上げて足を振り上げる。

「強姦っぽくなってきたねえ」
「まったくだ」
AとKは茶飲み友達のように寛いで、その様子を眺めていた。
「はうっ・・・あ―――」
散々弄られZの指が付け根までずっぽり入るほど解されて、サンジは荒い息を吐きながらひっくり返された。
腰を高く持ち上げられ、また後ろから弄くられる。
「も、や・・・やあ」
泣き言を漏らすのに、Zの指は更に勢いづいたように激しさを増す。
ぐいと後ろ髪を掴まれ、顔を引き上げられた。
背後から前に移動したZが、ズボンのチャックを下ろしサンジの眼前に己のものを取り出した。

―――うわあ・・・
はっきり見たことはなかった他人のものを、まさかよもやこんな形で目にすることになろうとは。
常人より恐らくはでかいであろうそれは、先走りの汁でぬらぬらとテカって湯気が出そうなほどの勢いで聳え立っていた。
なんというか、もうこれはこれで別の生き物のように雄々しく生命力に満ちている。
こんなんを、俺の中に入れるというのか。
というか、前回入ったのか。
そして今回は、まさか―――
あわあわと、歯の根も合わないほど震える顎を、強い力がでがっと掴まれた。
口を開けさせ、その中にグロテスクなそれを捻じ込まれる。

―――ひーっ
そのまま気絶するんじゃないかと思うほど苦しかったが、サンジはなんとか耐えて口の中に納めた。
思ったより臭くもヌルつきもしなかったが、とにかくでかい。
これを一体、どうすればいいというんだ。

サンジだってエロビデオでフェラチオくらいは見たことがあるから、きっとあのお姉ちゃんみたいにすればいいんだろう。
けれど一体どうやって。
この、口の中で動かす余地もないほど膨張したものを、一体どう扱えばいいというのでしょうか。
戸惑うサンジの身体をまたひっくり返して、片足を掴み開かせる。
―――そうポンポン簡単に扱うんじゃねえ!
頬張ったまま抗議の声を上げるも、空気が漏れる隙間もありはしない。
その間にZはサンジの股間に顔を埋め、濡れそぼったそこをぺろりと舐め上げた。
「・・・ふ、ぐっ」
がぶりと噛み付く勢いで口の中に含み、舌できつく扱き始める。
呆気なく暴発しそうで、サンジはZの顔を太股で挟んで口の中に肉棒を咥えたまま足をバタつかせた。
「ぐ、ぐううう」
Zは強引に膝裏を掴んで骨が折れるほどの勢いで開かせる。
そのまま自分の腰をぐいぐい押し付けてサンジの口の中を荒々しく蹂躙した。
「ふ、げ・・・えっえ―――」
喉の奥にまで突きこまれて、涙目でえずく。
いっそ歯を立てて動きを止めたいが、そんな隙さえありはしない。
そうしている間にも、下半身は蕩けるような快感が広がっているし、口と顎及び喉は地獄の苦しみだし、上下で異なる刺激を一遍に与えられ、サンジは混乱した。
「ふん、ぐ・・・」
口に含まれながら、Zの指が後孔を掻き混ぜ始めた。
中指で奥まで突かれて、びんと片足が突っ張る。
背を撓らせZのモノを口に含んだまま、喉から悲鳴が搾り出された。
ビクビクと腰が揺れ、Zの掌の中で白い飛沫が弾ける。
「ぷは・・・」
サンジの口の中にも、どろりと苦いものが広がった。
驚いて開け放した口に、Zの濡れた指がかかって強引に閉じられる。
「飲み込め」
いつもは冷たい視線が、サンジを射抜くように捉えていた。
その視線にゾクゾクと背筋が痺れ、あまりにまずくて吐き出しそうなものなのに、サンジは音を立ててごくりとそれらを飲み干した。
「う、げほっ・・・ごほっ」
Zの手に顎を任せたまま、咳き込んで俯く。
後ろで縛られたままの両手は体重を掛けられていたせいで、痺れている。
早く解放されたいのに、まだ許されない。


肩をベッドに押し付けられ、腰だけ高く上げられた。
先ほど放ったばかりとは思えない、Zの怒張したものが、充分に解された蕾へと当てられた。
「うう・・・」
覚悟した痛みよりすんなりと、それが入ってきた。
それでも何度かぐっぐと勢いをつけ、押し退けようとする内壁の抵抗を嘲笑うかのように、内部から熱を捻じ込んだ。
「くっ・・・はあ―――」
ずぶりと減り込む感触に、肌が泡立つ。
せめて息を整えて迎え入れる体勢を取りたいのに、Zの動きは性急でサンジの後頭部に手をかけシーツに押さえ込んだままガツガツと腰を打ちつけ始めた。
「うあ、あああっ・・・」
腰だけがビンビンと跳ね、視界が揺れる。
がっちりと拘束された上半身は身動きがとれず、後ろで縛られた腕には感覚がない。
ただ高く上げられた尻にだけ硬い熱棒を打ち込まれて、パンパンと肉がぶつかる音が響いた。
「ひやっ・・・あ・・・やああ―――」
内臓が抉られるような衝撃に、耐え切れず悲鳴が漏れた。
Zは何度も深く突き入れ、浅く引き抜いてはより奥にまで突き入れるを繰り返す。

その度腹の底の、知らない部分を直に握り潰されるような恐ろしさとえも言われぬ快楽を叩きつけられて、知らぬ間に嗚咽を漏らしていた。
痛い、苦しい。
こんなにも辛いのに、頭の芯が蕩けそうだ。
「ふぎっ・・・ひ」
髪を掴まれて、顔を上げさせられた。
涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃになった顔が、正面で捉えるカメラのレンズに映っている。
Zの指が後ろから口元を掴み、半開きの唇を抉じ開けるようにして中に入った。
ぬめる舌を二本の指で捕らえ、外へと引き出す。
「ひ、え・・・えぐ―――」
不恰好に舌を突き出し、Zの指を噛みながらサンジは胴震いをした。
ぽたたっとシーツに白い液体が飛び散る。
Zの動きが緩慢になり、奥へ奥へと腰を擦り付けるようにして中で弾けた。
―――ああ・・・また中で出された
それを確かめるかのようにサンジの内壁がきゅうと締まって、萎えたはずのペニスがぷるぷると震えた。

「ふ・・・う」
Zの指が口から外され、サンジはぐったりとベッドの上に崩れ落ちた。
尻からも引き抜かれ、ガクガクと震えながら両足を閉じようとした。
それなのに、Zは今度はサンジの腰を掴んで、先ほど放ったばかりの場所に濡れた指を突き入れた。
「もう、嫌だぁ」
サンジの消え入りそうな抗議の声など、Zには聞こえない。
イったばかりの敏感な身体に、また新たな刺激を加えられてサンジはシーツに顔を擦り付けるようにしてのた打ち回った
ぐちゃぐちゃと、はしたない水音が室内にこだまする。
Zの指が突き入れられる度に、中から白いものが溢れてサンジの内股を濡らした。
「うああ、イヤ――――いやああ」
三本の指を一遍に入れられ、掻き混ぜられた。
もう片方の手で、さらに広げようとしている。
「いや、無理・・・無理っ」
ぐりぐりと腹の下辺りを押され、擦られた。
2回もイったばかりなのに、サンジのそれはまた健気に勃ち上がろうとしている。
「や、もう・・・おかしく、なるっ」
濡れた指で乳首を抓られ、足の付け根を噛まれた。
敏感に為りすぎた身体は、痛みさえも快楽と捉えてしまう。
「はあっ、あ―――や・・・」
乱暴に引き起こされ、Zの上に跨がされた。
ずぶずぶと己の体重で埋め込まれていくそれを、無意識に締め付けた。
「うああ、入った・・・また、入ったよお」
熱に魘されたかのように、サンジは焦点の定まらない目で宙を見つめ一人呟く。
腹の上でサンジを揺すりながら、Zは背中越しに器用に両腕の戒めを解いてやった。
感覚のない腕は、自由になった自覚がないままぶらりと両脇に垂れ下がる。
Zはサンジの腰を抱いたまま、まるで人形でも揺さぶるように軽々と持ち上げては下から突き上げた。
「はうっ、あ・・・あう―――」
突かれる度に声を上げながら、サンジは首を打ち振り髪を乱して仰け反った。
両手をゆるゆると上げ、Zの首の後ろへと回す。
「あ、あああ・・・」
打ち付ける律動に合わせ、サンジもまた膝を着けて己の身体を揺らしていた。
Zの動きとぶつかるように、もっと奥まで、中まで満たして―――

「ああっ・・・いいっ」
Zを掻き抱き、その唇に噛み付いた。
舌を絡め、唇を吸い合いながらお互いに腰を打ちつける。
Zの腹にまた小さく射精した後、内部に熱い迸りを感じた。
「ふ・・・あ―――」
今度こそ、息絶えたようにぐったりと崩れ落ちた。
Zが下からそれを支え、優しい仕種でベッドへと横たえてくれる。






「いや〜よかった・・・」
Aが感に堪えたように、目を潤ませて手を叩いている。
「すごくよかった、イヤらしかった」
「エロいのう」

終わった後の、スタッフの感想ほど気恥ずかしいものはない。
サンジは横たわったまま真っ赤になって、ひいいと頭を抱える。
「よかったわよ」
Pにまで爽やかな笑顔で褒められて、立つ瀬がない。
「あたし殆ど、出番なかったわね」
「いやいや、サンちゃんがいつも以上に照れてたから大活躍だって」
「周りがドSばかりで、気の毒じゃの」
撮影が終わった途端、和気藹々とするのもどうかと思う。


サンジはだるい身体をなんとか起こして、素肌にシーツを撒きつけた。
Zは前だけティッシュで拭って、もう服を整えている。
「あ、ここシャワーがないんだけど、後始末は・・・」
「トイレでしてきます、一人で大丈夫です」
サンジは慌てて立ち上がろうとして、躓き転びながらも這いながらトイレへ向かった。
「急がなくてもいいよ、もう写さないから」
「気の毒にのう」
Kのストレートな同情が、一番痛い。




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