Under the rose -19-




Ｚの手が伸びて顎を捕まれ、強引に上を向かされた。
目の前で緩められたベルトが金属音を立てている。
その下の膨らみにＺの滾りを感じて、サンジは素直に喜びを感じた。
仕事とは言え、自分との行為でＺがその気になっている。
それだけで充分に嬉しくて、サンジは布の上から顔を埋めて口でジッパーを探り当てた。
歯を立てて噛み締め、それを下ろす。
下着の布地だけを噛んで顔ごと下げ、苦労してＺのそれを引き出した。
勢いよく頭を擡げたそれの硬さが頼もしい。

「ひゃっ」
不意に後ろが滑って、サンジはＺの股座に顔を擦り付けるようにして仰け反った。
先ほどからなにやら弄っていたＲがオイルを垂らしたらしい。
気持ち悪さに振り向こうとしたが、どういう仕掛けになっているのかもがけばもがくほど絡まった紐が締まり一層身動きが取れなくなる。
「い、て･･･」
足指にまで痛みが走った。
どんな形で戒められているのかわからないのが、余計サンジを不安にさせる。
「白い肌に赤い細紐が映えるなあ。けど、食いこんで痛そうだ」
実際痛いし！
暢気なＡの解説に何か言い返したかったが、声にならなかった。
手首や腕ならいいけれど、指先は血が止まりそうで本気で怖い。
少しでも圧迫を緩めようと身体を捻ると、そのまま締まるからどんどん体勢が変わってしまう。
「うあ、やだっ」
Ｒの指が容赦なく中へと滑り込んでくる。
足を閉じたくてもピクリともしないし、身体をずらすことも出来ない。
玉裏から後孔へとグリグリ力を入れて撫でられ、親指で押し広げられた。
「･･･いや、だ」
今更、Ｚじゃないと嫌だとダダをこねる訳じゃないが、どうしても拒絶の言葉が口をついて出てしまう。
それを聞き入れてくれるような面々じゃないと、わかりきっているはずなのに。

「あう」
髪を捕まれて、俯いていた顔を引き上げられた。
頬に、怒張したＺのモノを擦り付けられる。
なんとか口を開けて頬張ってみるものの、不自然に仰け反った身体はあちこちが痛んで引き攣れた。
「･･･ふ、ぐ」
サンジの頭を抑え、Ｚが腰を振り始めた。
喉の奥が突き上げられ、込み上げる嘔吐感を堪える代わりに目尻に涙が浮かぶ。
後ろから玉ごとぎゅっと捕まれて、驚きと痛みに背を撓らせた。
また違う形に拘束が強まって、Ｚを高めるために顔を動かすことすらできない。
「ひ、ぐ･･･う」
小刻みに出し入れされるＲの指の横に、Ｚの指が差し込まれる。
別方向から２本の指が撫で広げて来て、予測できない動きにサンジはまたしても仰け反った。

「いや、やだあっ」
Ｚのモノを口から外し、サンジはいやいやと首を振った。
ほとんどエビ反りになった身体は元に戻らず、Ｚの腕が支えていてくれなければベッドから落ちてしまうだろう。
どちらの指かわからないものが激しい動きで中を掻き混ぜる。
ペニスを擦られ玉を揉まれ、逸らした胸の乳首を痛いほどに捏ねられた。
どれが誰で何をされているのかも理解できないまま、サンジは狂ったように声を上げビクビクと身体を痙攣させる。
「や、やあ―い――」
イくと叫びかけたとき、ぎゅっと根元を押さえつけられた。
そのまま視界が反転して、目の前にＲの顔が現れる。

涙と涎に濡れたサンジの顔を冷たい双眸が見下ろしていた。
あからさまな侮蔑を込めた眼差しになぜかぞくりと来て、悔しさに唇を噛む。
「仕事じゃ挿れない主義なんだが」
そう言いながらＲは長い指を伸ばして、噛み締めたサンジの歯を撫でた。
「あんたは挿れてみたくなるな。随分具合が良さそうだ」
ギリ、と歯を噛み締めたままサンジは正面から睨み返した。
こっちは挿れて欲しくないと、無言で訴える。
背後からＺの指が腹を撫で、イきかけたサンジのペニスを宥めるように緩く擦った。
「ふあ、あ―――」
それだけで達しそうで、思わず甘い声を出し唇を開く。
その隙間に指を差し込み無理に抉じ開けながら、Ｒは取り出した己のモノを宛がった。
「上の口で勘弁してやるよ」

サンジは抗わず、口を開いてＺの時と同じように頬張った。
舌を使い、懸命に奉仕する。
「どうだサンちゃん、Ｚ以外の男の味は」
Ａの言葉を聞き流し、目を閉じて背後で蠢くＺの気配だけに神経を集中させる。
後ろに押し当てられたＺの硬さに、勝手に胸が打ち震えた。
何度経験しても慣れない感触に慄きながらも、その熱を受け入れる。
Ｚの動きはいつだって穏やかで、無駄な恐れを抱かさない。
素人相手には最適な落ち着きなのだろうが、今のサンジにはすべてが事務的に思えて寂しささえ感じてしまう。
「ふ、ぐ―――」
中に押し入ってくる圧倒的な質量をなるだけ受け止めようと、力を抜くために自然と背が撓った。
身体の位置がずれる度にギリギリと肌に紐が食い込んで、穿たれるだけでない痛みが至るところに走る。
「ぎ･･･ひ――」
Ｒに髪を捕まれて前後に揺さぶられた。
その動きと背後のＺの律動がちぐはぐで、サンジの上半身と下半身はバラバラになりそうだ。
「ひん、ひ･･･」
顎が上がり息が詰まった。
Ｚの熱さだけを感じていたいのに、Ｒのものは容赦なくサンジの喉を突き口内を苦味で満たす。
片足を上げた不自然な格好で根元を押さえられ、前と後ろから突き上げられて身を捩ることすらできない。
自分の身体がただ挿れられるだけの玩具になったような気がして、思わず喉の奥から嗚咽が込み上げた。

「く、ああ―――」
開いた口端から涎と白濁の液が零れ、赤く色づいた胸元を流れ落ちた。
尻たぶを強く掴まれ押し広げられその最奥へと注ぎ込まれるのを感じて、ぶるりと大きく胴震いする。
根元を押さえられ圧迫されたままの中心が内部からじわりと溶けた。
訳のわからない感覚に眩暈さえ覚えその場に崩れ落ちそうになるのも、幾つもの腕が支えて倒れることすら
許されない。
「い―――ひ――･･･」
ビクビクと、瀕死の魚のように幾度も痙攣を繰り返す。
その度腹の底から穏やかな快楽が込み上げて、動けない身体の隅々まで何かで満たされた気がした。
ＲとＺの精液がサンジの内側から細胞の一つ一つを塗り替えてしまうような、そんな錯覚さえ覚えて。

「くあ―･･･」
ケモノじみた鳴き声を上げ、サンジの身体はようやくベッドに横たわることを許された。
シーツに顔を埋め、快楽の波が引いていくのを待ち続ける。
こんなにも長く尾を引くエクスタシーは初めてで、酷い状況でありながら何よりも感じてしまった自分に猛烈に腹が立った。
最後くらい、Ｚを肌で感じたかったのに。
この両手でその身体を抱き締めて、すべてを密着させて熱を分け合いたかったのに。
身動き一つできないほどに縛められ道具のように使われて、それでも悦楽を覚えてしまう自分の身体が恨めしかった。


「はあ･･･」
紐が緩められたのか、指先がぼわんと温かくなる。
すぐに痺れが来て感覚がなくなったが、それでも安堵の息が漏れた。
そのまま解放されるかと思ったのに、さっさと身支度を整えたＲはまだ縛られたサンジを身体ごと持ち上げる。
「うわっ」
またしても視界が反転し、上向いた顔が床すれすれにまで下げられた。
「なにすんだっ」
「暴れなさんな、余計食い込むぞ」
いきなり荷物みたいに扱われて暴れるなと言う方が無理だろう。
「Ｚ、手伝え」
背の高いＲが腰辺りまで抱えたところで、Ｚが両腕を差し伸べ横抱きにする。
Ｚの上だと途端に大人しくなるのがおかしいのか、Ａ達が声を殺して身体を震わせているのがわかった。
「なにすんだってば」
「吊るすんだよここに。さっさとやらねえとマジ血が止まるだろうが」
こともなげにそう言って、また身体をひっくり返す。
後ろ手は緩められず、片足だけ括られていたものをもう片方も同じように縛られた。
頭に血が昇って目の前が真っ赤に見えたのは、体勢のせいだけじゃないだろう。

「真っ白な肌が所々真っ赤になってるよ、擦れてて痛々しいなあ」
Ｍ字ならぬＷ字で吊り下げられ、逆さになったＡ達は真正面だ。
サンジはひゅっと息を飲んで、羞恥に顔を背けた。
けれど首が上手く回らず、ぶらぶらと頭の上で床が揺れるようなおかしな感覚に眩暈がした。
「こ、んな」
「あんま揺れると酔うぜ」
露わになった双丘をゆっくりと撫でて、先ほどまで散々穿たれ赤く蕩けているだろう後孔を撫でられる。
「･･･やだっ」
「Ｚ、お前相変わらず量が多いな。１回でこんだけ溢れてくっぜ」
ぬるりと指で掬われて、冷えた肌に塗り付けられる。
足を閉じたくても逆の方向へと締め付けられるばかりで、サンジの身体は意に反して広がるばかりだ。

カツカツと軽快なヒールの音を立てて、Ｐがバラを抱え近付いてきた。
何より堪えるのはＰに見られることだ。
サンジは殆ど気を失いそうになりながら逆さのまま仰け反った。
「この花はイントゥリーク。とても高貴な紫でしょう？香りもいいのよ」
そう言いながら優雅な手つきで花束をＲに手渡した。
「なるほど、このくらい濃い色なら今の肌色に映える」
二人の会話を耳にしながら、サンジは目を見開いて床を凝視するしかできなかった。
「傷つけないように処理してあるから安心してね」
Ｐが踵を返すのと、Ｒの指が再び曝された箇所に押し込まれるのは同時だった。
思わず目を閉じて息を詰める。
指より太い何かが、ずぶずぶと減り込んできた。
あまりの感触に、逆さまのまま吐きそうだ。
「いや、だ――」
「力を抜けよ、辛いのはあんただ」
とろりとしたぬめりが上から降ってきた。
オイルを足されたのだろうか、滑りを良くしたそれはサンジの上から下へと（下から上なのか）貫くように沈んでいく。

「まだ入るか」
「や、ひ･･･」
もう止めてくれと懇願したいのに、身体が揺れるたびに紐が食い込んでますます身動きができなくなる。
なんとか頭を下げてＲの動きを見上げたら、自分の足の間から花が生えているのが見えた。
やっぱりかよと叫びたいのを堪え、絶望に呻くしかできない。
「もうちょい、入るか？」
まとめた茎を揺らして余裕を確かめる度、サンジは大きく身体を揺らして鳴き声を上げた。
「無理、もう――」
Ｒは差し込んだ花の間に隙間を作っては、容赦なく追加していく。
「いや、いやだああっ」
ずぶりとトドメみたいに束を押し込まれ、Ｒは一歩下がって全体を眺め回す。
「うん、いいんじゃね？」
背後でパシャパシャと嵐のようなシャッター音が鳴って、サンジはそのまま意識を失いそうになった。



まとめた束ごと勢いよく引き抜かれでもしたら、本当に失神していただろう。
けれどＲはぞんざいな口の利き方とは裏腹に仕事は丁寧らしく、撮影が終わった後は少しずつ抜いてサンジに不必要な痛みは与えなかった。
逆さまになったまま、サンジはずっと鼻を啜っている。
涎やら涙やら鼻水やらが逆流して、顔面は凄いことになっているだろう。
誤魔化したくても手は使えないし、色んなものが溢れてくるしでもうどうしようもない。
脚の戒めを解かれ、ゆっくりと身体を引き起こされた。
Ｐがおしぼりで顔を拭ってくれる。
「目、回るでしょ。じっとしてて」
冷たいお絞りで目元を冷やされ、ドリンクのストローを加えた。
カラカラの喉に沁みる。
「あとちょっとの辛抱よ」
間近でにっこり微笑むＰは、女神のように神々しく美しい。
なのに今、なんと仰いましたか？
「あ、と･･･ちょっと？」
「もう１ショットな」
なんですとー！

すでに身体は限界だ。
ずっと括られたままの腕はまったく感覚がなくなっている。
本気で血流止まって壊死でも起こしたらどうしてくれるんだ。
そう叫びたかったが、立場を思い出してぐっと堪えた。
腕の１本や２本、くれてやるつもりでこの世界に入ったんじゃないのか。
そう言われればお仕舞いだから。

「ちゃちゃっと済ませよう」
サンジの体重など関係ないかのように、Ｒは軽く抱えて器用に腕を動かし縄を掛けていく。
さっきは荷物みたいに扱われていると思ったが、今は梱包される気分だ。
膝裏に紐を通され、ＷからＭ字の形に吊るされる。
相変わらず大開脚で、中途半端に勃ち上がったモノが隠しようもなく晒され、散々花を突っ込まれ赤くなった後孔まで丸見えだ。
「―――あああもう」
黙って吊るされているのも間が持たず、サンジは無駄に吼えて歯噛みした。
手足が自由なら頭を掻き毟って地団太足踏みしたことだろう。
そんなサンジの様子にくすくす笑いながら、正面をＡとカメラが陣取る。

「最後の花は、大輪の白薔薇だね」
「そうよ、あちこち赤く染まった肌によく映えるでしょう」
差し出された花を受け取ったのはＺだった。
そのままサンジの前に膝を着く。
「･･･え」
Ｚに見つめられるだけで、ややうな垂れていた息子がぴょこんと頭を擡げたのはご愛嬌とか思って欲しい。
手を伸ばしてそれをそっと擦りながら、頭を下げて口に咥えた。
―――うわ･･･
Ｚに愛撫を施されるのが、もう倒れそうなほどに嬉しくてたまらないのだ。
撮影のために弄くられたりモノを入れられたり、玩具のように扱われるのは仕方のないことだけれど、こんな風にサンジの快感を高めるために奉仕される行為は、それだけでたやすくイってしまいそうなほどに興奮する。
仕事だからと分かっているはずなのに、Ｚの優しい愛撫で勘違いしてしまいそうになる。
今までの数多のレディも、この罠に堕ちて来たはずなのに。
「あ・あ･･･」
すぐさま上り詰めて弾けそうになるのを、絶妙のタイミングでＺは口から外した。
手にした小瓶からジェルを垂らし、先走りの汁でぬるぬるになった先端に塗りつける。
「･･･や、なに」
尿道口をぐりぐりと指で押し広げられた。
イきそうになる度に足指の先がピクピクと引き攣れるのに、Zの指の動きがそれを許さない。
手にした薔薇の茎にもジェルを塗りつけて、赤く染まった先端に当てる。
「いやだっ」
何をしようとしているのか悟って、サンジは身を引いた。
実際には前後に揺れただけだったが、背後からＲがサンジの身体を支え固定する。
「動くと傷がつくぞ」
「や、や･･･やあ」
ぬぷりと、塗りつけたジェルを溢れさせながら、小さな穴に茎が減り込んでいく。
狭い場所に細くとも硬い茎が差し込まれる感覚に、サンジは総毛だって身震いした。
「いやだあっ」
徐々に花の位置が下がっていく。
少しの痛みと知らない場所への異物感にサンジは泣き喚きながら抗った。
けれどＺは手の動きを止めない。
サンジの硬さを維持したまま、根元まで花を埋め込んで強張った竿を舌で舐める。
「ひ･･･ひ･･･」
さっきは尻から花が生えてたのに、今度は前かよ。
こんな状況でありながら、急にそんな思い付きが湧いて出て、サンジは目を見開きながら口元を笑いの形に変えた。
滑稽だ。
なんて可笑しい。
こんなことされてても、ずっと勃ったままでいられる自分のが、きっと可笑しい。

すっとＺが立ち上がり、サンジの前から退いた。
またしてもシャッター音が鳴り響く。
強張ったサンジの顔と赤紐に戒められ斑に染まった姿態。
中央に咲く大輪の花の白だけが穢れなく美しい。

背後に回ったＺは、腕を伸ばして強張った身体を抱き締めてくれた。
その熱さえ、冷えた肌に沁み込むほど暖かく感じられない。
それでもピンと勃ち上がった両の乳首を摘まれれば、自然と甘い吐息が漏れてしまう。
もう条件反射だ。
パブロフの犬だ。
どんな状況でも、Ｚに触れられれば発情して尻を振ってしまう淫らな獣でしかない。

「あ―――」
背後から頬を撫でられ、口元に指を当てられた。
唇を開き、舌を伸ばして物欲しげに舐める。
Ｚは吊られたままのサンジの下に腰を落として、下からゆっくりと挿れてくれた。








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