囚われ人 6

「だからって、一体これはどういうことだ?」

サンジはぎりっとゾロの顔を睨みつけて、威嚇した。
「俺は抵抗しねえって約束したろうが!なんで縛んだよっ」
「そんなきつくねえだろ。単なる戒めだ。」

宿に連れ込まれたまでは予想通りだったが、両手を一括りにまとめてバンダナで拘束されたのは想定外だ。
ゾロの言うようにきつくはないから、その気になればたやすく外れる。
けれど戒めの名の通り括られてベッドサイドの柵に縛り付けられると、否応なしに『抵抗しない』という
約束を思い知らされる。


「・・・剣豪殿にこんな趣味があったとはな。」
厭味と侮蔑を込めて言ってやる。
唯一残された反撃の手段は口だけだ。
だがその口ですら、すぐにゾロに塞がれてしまった。




噛み付くような荒々しい口付けに翻弄されて、身体中の力が抜けてしまう。
器用な舌がサンジを捉えて吸い上げ、口内を蹂躙する。
湿った音と共に唇を離して口端から歯茎や鼻、頬から耳にかけて舐めまわされた。
くちゅくちゅと耳穴を探られて鳥肌が立つ。
首を竦めて頭を振ると耳の下から首筋へと熱い舌が這いまわる。
首の裏や顎を舐められサンジは仰け反って喘いでいるしかなかった。

――――やべー・・・
ゾロに別れを宣言してから禁欲生活をしていたせいか、既に暴発寸前だ。
自慰をしようにもすぐに脳裏にゾロが浮かんで意地でもできなかった。
キスだけでイきそうになっているのはそのせいだ、とサンジは思い込もうとした。
立てた膝が震えて、どうしようもなく下半身が疼く。

「ふあ・・・」
唇を半開きにして無意識にキスをねだった。
その度、丁寧にゾロが応える。
まるで恋人同士のように甘やかにキスを交わす音だけが部屋に響いた。

「ぞ・・・ろ…」
耐え切れず、サンジが声を上げた。
苦しげに顰められた眉を辿って、ゾロの指が柔らかく頬に触れ首筋を撫でる。
シャツの上から突起を探り、焦らすように弄った。
「あ・・・あ」
大きく息を吐きながら胸を反らす。
既に固く立ち上がった乳首はもっときつい刺激を求めているのに、ゾロは優しく撫でるばかりだ。
もどかしくてサンジは身を捩った。
触れられてもいない下半身はもう限界に達している。

いきなりぎゅっと布越しに両乳首を抓まれて、羞恥と快感に身を仰け反らせた。
「どうして欲しいのか、ちゃんと言えよ。」
覗き込まれて、サンジは顔を背けた。
屈辱で身体が震える。
「言わねえと、進まねえぞ。」
意地の悪い言葉にぶちんとキレた。

「俺はっ、てめえのそういうとこが・・・嫌いだっ」
「へえ・・・」
さわさわ指の腹で擦られて、その度身体がひくつく。
「…!いつもいつも、そうやって俺の身体で遊びやがって・・・」
ぼやけた視界の向こうで、なぜかまじめくさった顔のゾロがいる。

「てめえは、身体の方がよっぽど正直じゃねえか。」
言いながら、きつく膨らんだ下半身をつい、と撫でた。
サンジが大げさに声を上げる。
「バカ、野郎!出ちまうじゃねえかっ・・・」
跳ねる腰を掴んでようやくゾロはベルトを外し始めた。
服を汚す恐れから解放されて、ほんの少しホッとする。
下着まで取り去られて外気に曝されたそれは、既に恥ずかしいほど濡れていた。
「こんなになっちまって、よっぽど溜まってたんだな。」
どこか呑気なゾロの口調に余計恥ずかしさが煽られた。
「クソ野郎、とっとと突っ込め、ジロジロ見てんじゃ、ねえっ」
サンジの罵倒など意に介さないで、またゾロはキスしをしてきた。
味わうように深く優しく、丹念に舐めて吸う。
添えるように握ったゾロの手の中でサンジ自身が小さく痙攣した。

「・・・う、う・・・」
舌を絡めたままサンジが嗚咽を漏らす。
その唇にもう一度口付けてからゾロは身体を起こした。

「もう、イっちまったのか。」
サンジの目尻からほろりと涙が零れた。
堰を切ったように後から後から溢れてくる。
「っきしょう・・・死ねっ、クソ野郎め・・・」
泣きながら呪詛を繰り返すサンジの髪を愛しげに撫でて、濡れた掌を後孔に擦り付ける。
柔らかく収縮を繰り返すそこは待ちわびていたかのようにゾロの指を締め付けた。

「ひでえ、てめえ・・・そうやって俺を弄ぶばっかで・・・いい気になりやがって・・・」
「さっきから…よくわからねえこと、言ってやがるな。」
ゾロはサンジの中を探る手を止めて、溜息交じりに言った。
「いつもしかめっ面してそっぽ向いていやがる。そんなに嫌なのかと思うと、身体の反応はそうでもねえ。
 今だってこんなになってやがるのに・・・」
ぐちゅりと恥ずかしい音を立てて指が引き抜かれた。

「・・・なんで、泣くんだよ。」
心底困ったと言う顔でゾロはサンジを見つめた。
真顔で尋ねられて視線を逸らすことさえできないで、サンジは耳まで真っ赤になる。
「なんでって、てめえがっ・・・ひ、人の気持ち無視してやるばっかだから・・・」
「いやなら嫌だと言えばいいじゃねえか。俺がいつ無理強いした。」
うう・・・と詰まってしまった。
確かに、ここまで強引に持ち込まれたのは今回が初めてだ。
「拒まねえくせに目を合わせようともしねえ。耐えてるような顔をして身体だけ開きやがって。
 てめえの欲しいのは俺の手だけじゃねえのか。」
言葉と共にぐいと深くまで埋め込まれて嬌声を漏らした。
「あ、ああ・・・」
律動に合わせて勝手に腰が動く。
「てめえが欲しいのは、これだけかよ。」
「ちが・・・ゾロっ、違う・・・」
揺さぶられながら必死で頭を振った。
括られたままの両手を擦り合わせて身悶えする。
「違う・・・、だっててめえ、見境いなしにやる、ばっかで・・・」
「てめえを見てっと勃っちまうんだ。仕方ねえだろ。」
ぐい、といいところを突かれて背が撓った。
「…は…どうせっ、手軽な穴だとしか、思ってねえんだろ・・・俺のこと・・・」
「はあ?」
指の腹で尿道を抉られて悲鳴が上がった。
痛くて気持ちよくて気が狂いそうだ。
「何言ってんだ。てめえを見てっから勃つんだろが。てめえで責任取るのが筋ってもんだろ。」
「・・・ええ?え?」
ゾロの言ってることがよくわからない。
わからないけど、もうイきそうだ。

「な…んで、だ…ああっ」
「俺は、てめえにしか勃たねえんだよ。」
苛立ちを隠さないで、ゾロが奥まで叩きつける。

深く抉られてサンジは声を上げながら達した。
何度も身体を震わせて、ゾロを締め付ける。
撓る腰を抱えて、ゾロもまた精を放った。

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