レクイエム 10

深い眠りについたまま、とうとうサンジは夜まで目を覚まさなかった。
船の修理も食事の準備にも役に立たないゾロは、必然的にサンジのお守をさせられている。
さっきのさっきまでもう係わり合いになるまいと決めた男の寝顔を眺めながら、
ゾロは諦めに似た境地にいた。

どうあがいても長い付き合いになるんだ。
自制心でどこまで耐えられるかわからないが、タガが外れたらやっちまえばいい。
こいつが誰に惚れてようが、知ったことか。
開き直ればこっちのものである。
あれとこれとは違う人間だ。
なら、こいつともう一度付き合い直すのも、悪かねえ。

突然、サンジの自分の頭をがしがしと撫でだした。
ううーと唸っている。
目を開いてあちこち見て、ゾロに目を合わせた。

「ゾロー、飲み過ぎた。」
違うだろ。
突っ込みを入れる前にまた頭を抱えている。
「あったまいてー、気持ちわりー・・・」
ゆるゆると身を起こし、だるそうに腕を伸ばす。
「そこの水、とってくれ。」
――なんか変だ。
「こら、聞こえね−のかクソ腹巻」
こいつ――
「素敵眉毛」
「ンだとこらぁ」
顔をしかめたまま、凶悪な面でねめ上げる。
「エロコック」
「バカにしてんのかてめえ、あー頭いて−・・・」
サンジだ。
サンジだサンジだサンジだ。
あれほど焦がれた大バカ野郎が今、目の前にいる。
「・・・おい、煙草どこだ。」
間抜けた面してちょろちょろしてやがる。
「こら聞いてるか筋肉だるま、水か煙草だ。」
正面向いたサンジの身体ごと力一杯抱きしめる。
「ってなんだあー。」
うろたえるサンジの背中と頭を撫で摩る。
後頭部をがっしり掴んで、顔が触れ合うほど近づいて見つめた。
ゾロの瞳があまりに真剣で、サンジは声を出せない。



「―――よく、帰ってきた。」
喉の奥から搾り出すような声で言い、ゾロが口付ける。
首を傾げて深く合わせて、歯の間から舌を滑り込ませる。
サンジの乾いた口内を、舌で湿らせていく。
「・・・ふ――」
時折唇の間から吐息が漏れるが、サンジは拒絶しない。
ゆっくりと身体が弛緩していく。

キスを交わしながら性急に身体をまさぐる。
シャツの下から滑るゾロの手をやんわりと押し留めて、サンジはようやく離れた唇から
言葉を発する。
「とうとう頭沸いたか?マリモヘッド」
かまわず、たくし上げたシャツの下の小さな突起に舌を這わす。
「何、がっついてんだ。夕べやったとこだろうが。」
サンジの言葉に頭を上げた。
「俺にとっちゃ、1月以上ぶりだ!」
有無を言わさず首筋にむしゃぶりついた。
シャツのボタンをちぎって胸をはだけ、ベルトを外す。
鎖骨をきつく吸い上げて、乳首を指で摘まむ。
「ちょ・・・ゾロ・・・」
ズボンをずり下げ、胸に舌を這わせながら立ち上がりかけたサンジ自身を揉みはじめた。
指に唾をつけて、後ろも刺激する。
サンジの身体がびくびくと跳ねて、力を抜こうと息を吐いている。
「・・・なんか、俺も――溜まってんのか?」
上気して反応する自分の身体にサンジ自身が驚いている。
乱暴に指の抜き差しを繰り返すゾロの手に縋りつく。
「―――いつもより、乱暴じゃねえか。」
抗議の声に眉をしかめる。
てめえ、誰と比べてる?
サンジの衣服をすべて剥ぎ取って身体を開かせる。
「俺は、いつもこうだ。」
まだ慣らされきっていないソコに己をあてがい、先走りの汁を塗りつける。
「――ゾ・・・ロ」
青褪めるサンジの顔を見つめながら、ゾロは身体を進めた。
脱がせたシャツをサンジの口に当て、悲鳴を吸い込ませる。
それでも漏れる吐息と声が聞きたくて、突き上げながらシャツを噛むサンジの唇に耳を寄せる。
「・・・ロ――って・・・」
苦しげに歪められた顔にキスを降らせ、何度も突き上げる。
噛ませていたシャツを取ってサンジの頭を抱える。
耳元にうなされたような声が届く
「――ゾロ。」
俺だ。
「ゾロ・・・」
俺だ。
もっと俺の名を呼べ。
俺の名だけを呼んでくれ。
眦に涙の浮かんだサンジの瞳は、ゾロを捉えている。
俺だけを見て。
俺だけを感じろ。
激しく陵辱しながら、ゾロは長い長いキスをした。


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