バラティエの天使 -2-
今宵はサンジの高校卒業祝いも兼ねているから、バラティエのコック一同以外はゾロとエースしかいない。
大好きな連中に囲まれているせいか、毒づきながらもサンジの表情は緩みっぱなしだった。
バラティエに来た頃のことはもうぼんやりとしか覚えていないが、朦朧とした意識の中でゼフに抱き上げられて、《もう大丈夫だ》と言われたこととか、エースが自分に笑いかけて《笑うとかわいい》と言ってくれたシーンだけは覚えている。
バラティエは味は良いがオーナーのガラが悪いので、それに見合った画喇叭地どもばかりが集まる。それでもみんな気の良い連中ばかりだから、サンジは随分と可愛がって貰った。
こうしてアットホームなパーティーをひらくと、彼らにまつわる思い出話が必ずでる。ごついパティに手を引かれてデパートに行ったとき、風船を飛ばしてしまったサンジが泣き出したら、おろおろしながら飴で気を引こうとしたパティが職務質問されたとか、エースがプールに連れて行ってくれた時、遊び疲れて二人とも電車の中で眠ってしまって、隣県まで達するような終点まで行ってしまったことなど、もう何度も聞いたような話でもその度に笑ってしまう。
ゾロはその思い出の殆どを共有できないから、余計にバラティエでパーティーをするとなると気兼ねなのだろうか。でも、誕生日にはやっぱり大事な人が全員集合していて欲しい。
『そりゃあ、ゾロと二人きりで鍋すんのも楽しいけどよ、最近ちょっと緊張するときとかあるし』
ゾロは基本的に笑い話など自分からは振らないから、大体サンジが色んな事を喋る。別に会話が億劫というわけではないようで、サンジがいうことに《それでどうなった?》とか、《そりゃ良かったな》とか、なんともゾロらしい表情で相づちを打ったり、頷いたりする。
それがこないだ迎えたゾロの誕生日では、何か妙な感じだった。
ゾロが時々じっとサンジを見て、何か言いたそうなのに、《どうした?》と聞いても《なんでもねェ》と打ち消すのだ。
けれど《俺と二人なの、やっぱつまんねェんじゃねーの?クラスとか部活の連中呼ぶ?》と聞いても、《いらねェ》と却下する。
『変な奴』
初めて会ったときから変な奴だと思った。
真面目そうにきっちり襟元まで留めて髪は刈り詰めているのに、何故か左耳に金色のピアスを三つもしていた。サンジの横にいた中学時代の友人が《左耳のピアスはオカマの印》と言ったのをサンジが言ったのだと思ったらしく、いきなり裏拳かましてきやがったのが予想外に早く重く、左目の横に火花が散ったかと思った。友人は萎縮してしまって《あわわ》と言い訳もできない状態だったし、不意打ちとはいえ思いっきり顔に入れられたのが腹立たしくて横っ面に回し蹴りを喰らわせてやった。
ゾロはゾロで、《あんなにモロ顔面に喰らったのは初めてで驚いた》と言っていたから、お互い攻撃されるのに慣れていない者同士だった。頭に血が上ってひとしきり殴り合い蹴り合いをした頃、強面の生活指導部スモーカーに引き剥がされ、エースにも見つかって大変だった。
けれど翌日の昼休憩に、ゾロの方から《悪かった》と謝りに来た。
横で様子を見ていたゾロの友人ウソップが、《あれ、別の奴が言ったんだぜ》と言ってくれたらしい。憮然とした顔だったが、綺麗なお辞儀をするなと思ったから赦してやった。小脇に抱えた大量の購買パンがあまりにも炭水化物まみれに見えたのでおかずを分けてやったら、次の日から購買パンを無表情に二つ押しつけてくるようになった。《交換しろ》ということらしい。
こうして二人は昼飯を共にする仲となったのだ。
今から考えると、同じ学校に通っているとは言ったって科が異なっているのだから、あんな事でもなければ友達付き合いをすることもなかったろう。決して殴られ損だったというわけではないと思う。(引き分けくらいの勢いで蹴ったし)
ゾロは変だけど面白い。
あのピアスだって亡くなったお母さんの形見で、この辺の地方には無い風習だが、ゾロの両親の郷里では親が亡くなった時点で譲られた貴金属類を身につけるのは親孝行の一環らしい。
それが供養になるというのなら、サンジも母の形見のピアスを開けようかと思って、《針で開けてくれ》と頼んだけど、《てめェは止めとけ》と言われた。風習の異なる家でそんなことをしても供養になるとは限らないとの説明には一応納得したが、母との絆が欲しかったサンジはしょんぼりしてしまった。
ゾロは誰かに言いふらすようなタイプには見えなかったから、メシを食わせる横でぽつらぽつらと昔のことを話した。ゾロがどう思ったのかは表情から推し量ることは出来なかったけれど、《亡くなった崖ってのはどっちだ》と聞いてから、正座して手を合わせてくれた。その姿は真面目そのもので、お布施目当ての脂ぎった僧侶などよりよほど母の死を悼んでくれているように見えたから、サンジはぽろぽろと涙を流してしまった。
ゾロは泣きやむまで静かに傍にいてくれた。
エースみたいに気の利いたことを言ってくれるわけではなかったけれど、それで十分心は温かくなった。
ゾロは変だけど面白くて…そして、優しい。
分かりにくいその優しさは最初のうち誤解を生むこともあるけれど、必ず周りの人にも伝わる。
《ロロノアってちょっととっつき難いよな》と言っていた連中が次第に心酔するようになって、昼休憩に食堂に誘うようになったのは1年生の5月に開催された体育祭の辺りからだった。際だった身体能力以上に、自然とみなを纏める才幹が発揮されて、ゾロのクラスは素晴らしい成績をあげたからだ。
それに、普段は絵に描いたような《冷静沈着》面だが、たまに年相応の顔で笑ったりすると物凄く《グッ》とくる。これがまた、自分が徒競走で一位になったときなどはしれっとしているくせに、クラスメイトが一位になった時にニカッと嬉しそうに笑うのが何とも可愛い。
それを他の奴らも知ってしまったことが、ちょっと腹立たしく感じたのは何故だろう。
サンジはこの風変わりな友人を、誰よりも独占していたかったのかもしれない。
《俺とは共通の話題もねェし、そのうち他の奴らと一緒にいることの方が多くなるかも》そう考えたら急に心配になってきた。だって、夏休みになったらどう考えたって剣道部の連中との仲が深まるではないか。だから昼になると近場であるのを良いことにゾロをバラティエの厨房に連れ込んで、賄いメシを振る舞い、2学期に入ると弁当をやるようになった。ゾロは相変わらず無言で購買パンを三つ押しつけてくるが、それは全部帰り道にエースの弟ルフィにやっていた。
『これからも弁当で胃袋は繋ぐぜ!』
就職も地元ですると言っていたから、結婚するまではきっとサンジの弁当から離れられない舌と胃になっているはずだ。
『結婚したら嫁さんの分も作ってやろう』
そうしたらずっと繋がっていられる。
時たまでもゾロの傍にいて、《おう》とか《うん》とか《それで良い》と響きの良い声で言われたら、悩んでいるときでも腹が据わるだろう。
「ご馳走様でした」
随分と先のことまで考えて軽くトリップしていたサンジは、ゾロが《パンっ》と手を合わせて珈琲を飲み終わったのを確認して我に返った。
明日は一緒に映画をして買い物。楽しみで堪らない。
でも今日はもう帰るんだろうな。余韻とか感じながらダラダラする男ではないから。
けれどどういうわけか、ゾロは帰ろうとはせず改まった顔をしてサンジを見詰めた。
「サンジ」
「…へ?」
我ながら間抜けな声が出た。
だってゾロに名前を呼ばれるなんて初めてのことだったのだ。
サンジは中学の頃から料理の腕で知られていたので、女の子達から《コックくん》なんて呼ばれていた。そのせいなのかどうなのか、単に謝ったその日に早速餌付けしたせいなのか、ゾロは一貫してサンジのことを《コック》と呼び続けていた。
真面目な話をしているときまでそうだったから、一度半泣きになって詰ったこともあったのだが、《願掛けをしてんだ。いずれ時期がきたら呼ぶ》と言われて煙に巻かれた。
何か理由があって《言わない》と決めている以上、この男の口を割るのは不可能だと理解していた。
それがどういった吹き回しで…と考えて、《願掛け》と言っていたのを思い出す。
なにか真剣に叶えたいことがあるのだろうか?
それか、叶ったのか?
「サンジ、俺ァてめェと肉体関係アリで恋人になりてェ。覚悟があんなら今夜俺のアパートに泊まれ。嫌なら今すぐ断れ」
「は……?」
呆気にとられてポカンと口を開けているのは、なにもサンジばかりではない。普段は飄々としているエースも口元を強張らせ、ゼフは目元を眇めて今にもゾロにコンクリを抱かせて東京湾に沈めんばかりの形相をしている。
「ば…っ…おま……な、なに言って…冗談キツイ…」
「冗談なら、3年も名前呼ばずに我慢なんかしねェ。3年想って気持ちが変わらなかったら告白する気でいた。てめェの《家族》の前でな」
「ゾロ…」
ゾロの顔は怖いくらいに真剣で、母を弔うために正座してくれたあの時とちっとも変わっていない。
真一文字に引き結んだ強情そうな唇は微かに震えている。ゾロだって、緊張してこんな風になることがあるのだ。
本当にサンジを欲しがっているのだと思ったら、何故か《冗談じゃない》と笑う気持ちも《気持ち悪い》と拒絶する気も起こらなくて、ただただ嬉しさに胸が弾む。
ダンっ!
テーブルに荒々しく拳が叩きつけられ、マイセンの陶器が嫌な音を立てて飛び上がる。
音の主がエースであることが信じられなくて、サンジはまた目をぱちくりと開いた。
「宣戦布告ってわけか、ゾロ」
「そう受け取ってくれ。あんたにサンジは渡さん。最初はあんまりこいつがあんたに心酔してっから遠慮してたが、もう止まらねェ。大事にし過ぎて箱にしまっちまうようなヘタレじゃあ、その内もっと強くこいつを求めてくる奴がいたら防ぎきれねェと判断した。勝負しろ、ポートガス・D・エース」
「良い覚悟だ、坊や」
エースはこんな顔して嗤う男だったろうか?
ゾロだってそうだ。
背筋が凍るような迫力に、二人の間でビリビリと空気が振動するようだった。
…というか、これ、何の勝負だ?
《俺のために争わないで!》とか言うべきなのか?
いやいやいや、何でエースが喧嘩売られているのだ?
「ゾロ、何でエースに勝負挑んでんだ?筋通すならまずうちのジジィだろうよ」
サンジを見やったエースが《ふぅううううう〜〜……》と何だか異様に長い息を吐いた。一体今日はみんなどうしたのだろうか。
「本当にここまで来ても分からない?サンちゃん」
「ええと…ゾロが俺とエッチする仲になりたいのは分かった」
「あのね、サンちゃん。俺もサンちゃんとエッチなことしたいの。キスして身体中舐め回して、気持ちの良いことばっかりしてあげたいって、ずっと思ってた。サンちゃんがそういう気にならなければ一生言う気は無かったんだけど、このバカに喧嘩売られたんでね…今日は引けないよ」
サンジの口は菱形に開き、もはや脳が沸騰してしまって思考に適さない温度環境になっている。
「えええええぇえええっ!?エースとエッチ!?」
「……ははっ。これは、喧嘩するまでも無いか?」
急にエースがいつもの顔に戻った。
優しくて頼りがいがあって何でも言えるお兄ちゃん。
何もかも元通り。
…だろうか?
「…ゴメン、エース。俺…いま、ひどい……っ…」
「サンちゃん、気にしないで?そういう意味では見られないんだろ、俺のこと」
元通りなんかじゃない。
エースの笑顔の奥にどんな苦しみがあるのか、サンジは考えたこともなかった。いつだって甘えてもたれかかって全てを預けきって、エースの中にある繊細さとか、本当の気持ちとか要求があるなんて考えもしなかった。
さっきだけが、エースの本当の気持ちに辿り着く最後のチャンスだったのではないだろうか?
サンジはその機を逃したばかりか、初めて人前でエースが現した剥き身の心を無造作に傷つけたのではないだろうか。
「やだァ…やだ、俺…ゾロとエッチなんかしねェっ!エースのもんになるっ!!」
地団駄踏んで子どもみたいに泣いて、サンジはエースに抱きついて唇を押しつけようとするのに、エースはあやすように柔らかい微笑みを浮かべている。
「バカ言うもんじゃないよ、サンちゃん。それって、結局誰も幸せになれねェ。そうでしょ?オーナー」
ポコンと長いコック帽がサンジの頭を叩く。
布だから軽いものの筈なのに、胸の奥まで堪えた。
「てめェが悪い訳じゃねェ。愛情だの恋だのいうもんは残酷なもんだ。実際、俺ァてめェ以外の孤児を拾ったからって、きっと病院には搬送してもここまで育つまで面倒見てやろうなんて思いやしなかったろうさ。てめェだから乾いたサルみてェだったのが、こんながらっぱちで男色に走るような野郎に育っても、嬉しいと思うのさ。好いた奴と一緒になれ」
「う…」
ゾロは何も言わず、エースからサンジを引き剥がそうともしない。
優しく抱きとめてサンジの選択を待つエースと、黙って待つゾロはとても違って、とても近い。
そんな二人のなかでサンジが選んだのは、告白された意外さよりも悦びが遙かに勝ったゾロなのだろう。
「でも…俺は、エースが…大好きなんだ…」
「お兄ちゃんみたいに?」
「そう…なのかな?血とか繋がってなくても、心のどこかの部分では、エースが一番なんだ」
「その言葉だけで俺は十分だよ、サンちゃん。だから…もう、行きな?」
脇を掴んで立ち上がせ、エースは《バンっ!》と彼にしては荒々しい力でサンジの背中を叩いた。
「背筋を伸ばしな。俺のサンちゃんは強い子だ。そんなサンちゃんが幸せになるのが、俺は結局、一番幸せなんだよ」
「幸せ…ほんとに?」
「ああ、ホントだ」
そう言った後、ちょっと悪戯めかした顔をしてエースはサンジにキスをした。
仁王立ちになって堪えていたゾロが流石に動きかけたが、すんでのところで《グギギ》と歯を食いしばって堪えている。彼は彼でエースを認め、その愛情やサンジからの親愛の情に敬意を払いたいらしい。
エースのキスは唇に軽く触れ、両方の額と額に触れた。
たくさんの親愛の情と、成就しなかった恋心を込めたエースのキスは、どこか神聖な祝福のようだった。
「幸せにおなり」
「うん」
コクンと頷いたサンジは微笑んだ。
そうすることが、エースにとっての幸せだろうと思ったから。
《サンジは笑うととっても可愛いよ》と言ってくれたエースの為にも、サンジはいつも笑っていられるようにしよう。
* * *
ドンっ!
ドドンっ!
ドンっ!!
勢い良くテーブルに置かれていくのは、赤・白・ロゼ・スパークリングワインのほか、バーボンにウィスキーと多種多様であった。併設されているゼフの自宅から持ってきた大吟醸まである。
「飲め、エース」
「あはは…今夜は酔っちゃって良いですかねェ?」
「そうだ。良いから飲め。飲んで寝ちまうのが一番だ」
コック達はみんなエースに親身になって、次から次へとグラスに注いでいく。だが、それはエースの為だけというよりは、自分たちの天使が奪われてしまったことを嘆く酒でもあった。
「サンジの奴、口は悪ィがやさしいとこあってよゥ。あいつがちっせェ時に俺が膝をぶつけて血ィ出したら、毎日ポケットの中に絆創膏を入れやがるのさ。それも小学校で友達と交換して集めた可愛いキャラクターの絆創膏でよう。大事にしてるの知ってるっての!こっちも張るの恥ずかしいしで返そうとしたら泣きそうな顔して顎に梅干し作りやがるし、しょうことなしに張っといたら、チラっと見てニコニコしてんの!なんなのあいつ、マジ天使だっつの!」
「俺なんかなァ…っ!」
互いに《天使の思い出大会》になったせいか、チャンポンで腹がたぷたぷになるほど酒を呑んだせいか、笊というより枠の域の筈だったエースも、グラスを揺らしながら思い出を語った。
同じようにサンジを惜しみ、憤り、それでも幸せを祈る連中に囲まれていると、少しは気が休まるようだった。
「なァ、エース!ゾロの奴がサンジを泣かすようなことがあったら、ボコボコにしてやろうぜっ!万が一にも浮気したり、サンジを捨てるようなことがあったら俺ァ、生かして返さねェぜっ!」
「ああ…生かしておく筈ないよ」
「…っ!」
野獣のように光る双弁に、コック達は一瞬息を呑んだ。
この男が自分の欲望に忠実になってサンジを求めていたら、最初から《対決辞さず》たる決意を抱くゾロとの間に、血みどろの抗争が繰り広げられたことだろう。
エースはサンジの為に引いたのだ。
もしサンジの中にエースの肉体を求める気持ちが少しでもあったら、決して引いたりはしなかったろう。
あまりにも純粋に《兄》として求められたエースは、愛するサンジの為に牙を収めたのだ。
「エース…お前ェ、ほんと良い奴だなァ…っ!」
「飲め飲めっ!」
バラティエの酒宴は明け方まで続いた。
* * *
顔をくしゃくしゃにして泣いていたサンジは、ゾロに促されてコックコートを脱ぐと、どういう道のりを進んだのかも分からないままゾロのアパートに連れて行かれた。
「サンジ、風呂に湯張ったぞ。入るか?」
「うん」
服を脱ぐのもボタンに手が掛からなかったりしていたら、ゾロが真剣な顔をして甲斐甲斐しく脱がしてくれた。こんなキャラだっただろうか?
上体が露わになったところで、ゾロがゴクリと息を呑んだ。
「色白いな。透きとおるみてェだ」
「うっせェ。焼いても赤くなるばっかで秋には戻っちまうんだよ。生っちろくてヤダ」
「いや、キレーだ」
「…っ!」
《ちゅっ》と音を立てて鎖骨の下にキスされた段階で、やっと状況を呑み込んだ気がする。サンジは今からゾロとセックスするのだ。
『ええとええと…でも、アレ?俺が男でゾロも男…どうやってやるんだ?』
やり方とかゾロは分かっているのだろうか?
実はエースもそういう意味でサンジのことを好きだったそうだが、彼は人生経験も多そうだし、サンジにそういう興味を持ったら痛くないように色々用意してくれそうだけど、ゾロは何だかおかまいなしというイメージがある。
「ゾロ…男同士のやり方知ってるか?あんまり知らなかったら、今日はキスだけにして予習を…」
「任せとけ。どんだけてめェ相手に妄想してきたと思う」
ニヤリと嗤ったゾロは自信満々という顔で、引き出しから冊子ととろんとした液の入った瓶、クリームケース、コンドームの綴りを取りだす。
冊子には陰茎の愛撫方法やらアナルの緩め方、性感染症や出血、フェラチオによる窒息の危険を回避する予防策などが事細かに書かれていた。一体どんな顔をしてこの冊子を纏めたのかと思ったら、ちょっとゾロのイメージが変わってきた。
「てめェ…結構健気な?」
「このくらい準備しねェと、てめェの《家族》に申し訳が立たねェよ」
だとしたらサンジを護ってくれたのはやはり、ゼフを筆頭とする《家族》なのだ。
『ありがとな、みんな』
じィんと感動に包まれながら、サンジはゾロに身を委ねた。
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