DOUBLE 9


「もういい加減、機嫌直せよな〜」
あれから、ルイジはまじめに店を手伝いはしたものの、ずっとハンストを続けていた。
賄いは食べないし、夕食にも手をつけようとしない。
「ガキだガキだと思っちゃいたが、ほんとにガキだなお前は。」
サンジの挑発にも乗ってこない。
ゾロに似てるとは思ってたけど、こういうとこは似てねえな。
なんつーか、ストレートにガキっての。
こっちもついつい、甘やかしちまうしよ。

サンジにとってハンストされるのは実は一番堪える。
作った料理は食べて貰いたいし、腹が減っている人間を前に食わせてやれないのはとてつもなく辛い。
「食えよ。食うだけ食ったら又拗ねていいから。」
じろりと、瞬きも忘れたような三白眼がサンジを捕らえた。
「なんか言うこと聞いてやるよ。何でもじゃねえぞ。なんか、だぞ。」
すいと、ルイジの口が開いた。

「なら、名前教えろ。」
がくりとサンジの首が落ちる。
「まだ何拘ってんだよ。どうでもいいだろうがそんなこと。」
ぶつぶつと文句を言うサンジの前髪を、ルイジはぐいと持ち上げた。

「あんたが俺に名前を教えないのは・・・」
息を吸って、覚悟したように真顔になる。
「あんたの名前を俺が呼ぶと、誰かと間違えるからじゃないのか。」
髪を掴まれたまま、サンジは息を止めてしまった。
落ち着きなく視線を漂わせてから、ぱちぱちと瞬きをする。
「何、言ってんの。」
それは違う。
そんな訳じゃない。
「なら、名前教えろよ。」
ルイジはしつこい。
まるで誰かのように。
「関係ねっつってんだろ。第一――――」
少し、言い淀んだ。
「あいつは、俺の名なんか、呼んだことねえよ。」

途端、ルイジの二の腕の筋肉がぴきっと盛り上がった。
「あんた、名前も呼ばねえ男に抱かれてたのか!」
掴んだまま引き倒される。
ルイジの憤りがモロにぶつかって、サンジは抵抗する間もなかった。


思い切り裂かれたシャツを腕に絡めたまま、ベッドの柵に括りつけられた。
両手を戒められて中途半端にズボンもずらされる。
「・・・てめっやめろ!」
思わぬ形で拘束されて、サンジは真っ赤になって怒鳴るしかない。
「これ外せ、嫌だっての。・・・もう金輪際させてやんねーっ・・・」
「今更何言ってやがる。」
肩に噛みつかれて、不自然に身体が跳ねた。
ルイジは本気で歯を立てる。
血が滲むほど。
「いてえ・・・クソっ・・・まじ嫌だってん・・・」
萎えているモノを無理矢理扱かれて、足を開かされる。
「嫌だっつってもぜってえ、ここは悦ぶんだろ。」
まだ固く閉じた部分に指を捻じ込まれて、サンジの喉から悲鳴が漏れた。
「ル・・・ルイジ、目え覚ませ!」
必死で、必死で叫ぶ。
この声が届くように。

「冷静になって考えろ。てめえと・・・俺じゃ、13も・・・離れてんだ。お前・・・から見たらもう、おっさんだ・・・・ろ、が―――」
「うっせえ」
ぐいと2本の指を突っ込まれて押し広げられた。
半端じゃない痛みに身体が強張る。
「ガキくさい面して、女よりイイ身体しやがって・・・今更年上ぶんな。」
ルイジは手を伸ばしてテーブルの上にあったワインを取った。
指を抜いて、その口を宛がう。

冷たい感触と染み透る熱さにサンジは目を見開いた。
「こ、このクソアホ!!!・・・なんてことしやがるっ・・・アル中になったら、どーして・・・」
こぽんとビンを抜いて、濡れたそこを馴染ませるように何度も擦る。
急激に廻るアルコールに、サンジの視界がくらりと揺れる。
息が荒くなり、全身がピンクに染まってきた。

何度も指を出し入れされる部分が熱を帯び、蕩けていく。
いつの間にか固さを増したサンジ自身が、ルイジの手の中ではちきれそうになっている。
先端に滲み出た汁を塗り込めるように指ですると、ぶるぶると震えが走り、切なげな吐息が漏れる。
熱に浮かされたように焦点の合わない目で、もうイきそうだと口を開けた。

くいと、ルイジがその根元を押さえつける。
訪れる筈の射精感を塞き止められて、サンジは不自由なまま身体を九の字に折り曲げた。
「ばか・・・イかせ・・・」
「だめだ。」
容赦なく押さえつけて、奥を探る指を更に増やす。
「・・・ああぁ・・・い、やだ・・・」
サンジは目に涙を浮かべて、狂ったように何度も頭を振った。
イきたいのに、イけない。
苦しすぎる快感に耐え切れなくて、身を捩る。
「・・・ココ、いいんだろ。」
感じすぎる部分を擦られて思わず腰を浮かした。
ルイジは浮かした腰に膝を入れて、高く曝した部分を更に責める。

「な、言ってみろよ。俺の名前、呼んでみろ。」
「・・・ひう、ん・・・あ―――」
もう、なにもかもよくわからない。
ただイかせて欲しい。
この苦しみから解放して、気の狂うような快楽を与えて欲しい。

「な、呼べよ。俺の名前――――」
耳の穴に舌を這わせて、声が聞こえる。
サンジが好きな、大好きな声。

散々嬲った指が抜かれて、名残惜しげにきゅうと閉まるそこに、熱い塊が押し当てられた。
悦びに、身体が震える。
一気に推し進めながら、根元を抑える手は緩めない。

「・・・うん、・・・く・・・入る・・・」
ひきぃと、食いしばった歯の間から息が漏れた。
「・・・やだ・・・クる、・・・イく―――」
がたがたと細かい痙攣を繰り返して、サンジの背中が仰け反る。
塞き止められた快感が脳髄を遡るようだ。

熱く纏わりつく内壁を抉るように、ルイジは何度も深く抽挿する。
酒に濡れたそこはぐちぐちと音を立て、ルイジを追い立てるように締め付けた。
「もう・・・もう・・・ろ――――」
噛み合わない口元から涎が落ちる。
仰け反る胸元の飾りを、ルイジが力いっぱい抓った。
「んあっ・・・ゾロっ・・・」
一層深く抉って圧迫を解く。

「・・・あ、ああああ・・・ゾロ!ゾロ・・・」
びくびくっと痙攣して、サンジは覆い被さったルイジの腹に、白濁をぶちまけた。
ひゅうひゅうと喉を鳴らしながら、何度も吐精する。
繰り返される収縮に、ルイジもまたその最奥に精を放った。


next