DOUBLE 6


眠れねえ―――

まんじりともできず、何度目かの寝返りを打つ。
余程寝過ぎたのか。
どうにも目が冴えて、これ以上横になっている気もなくなってきた。
ゆっくりと身体を起す。
傷口はとうに塞がって、奥に鈍い痛みが残るだけだ。
ルイジは隣の部屋と繋ぐ扉から、かすかな灯りが漏れているのに気が付いた。
カールはまだ起きているらしい。
酒でも呑んでんのか。
ぺろりと舌を出して、おこぼれに預かろうとベッドを降りる。
気配を消すつもりはなかったが、なんとなく静かな足取りでそっとドアを押した。

スタンドライトだけを灯して、カールが深くソファに腰掛けている。
俯いた瞳は硬く閉じられ、手元を探る度に小刻みに身体が揺れている。
―――カいてんのか。
寛げた前で、左手を盛んに上下させている。
顰められた眉は苦しげで、半開きの口元からちろりと舌が覗いていた。

ずくんとルイジの下半身に疼きが走る。
男が一人でマスかいているだけだ。
わかっているのに、吸い寄せられたように目が離せない。
静まり返った部屋の中に、甘い鼻息だけがかすかに響いている。
目を閉じたまま上を向いて、力ない右手でボタンを外し、隙間から手を差し入れた。
弄る手つきがあまりに淫らで、ルイジは思わず部屋の中に飛び込んでいた。

――――!!!
カールがびっくりしたまま固まっている。
ずんずん近づくと、火がついたように喚きだした。
「てててててめえ、なに考えてやがるんだ!このクソガキ!こういう時は見て見ぬ振りだろうがっ
 普通はよ!ここここのガキがガキがガキが・・・、人がマスかいてる時に乱入すんじゃねー!!!」
構わず目の前まで迫ると、中途半端にずらしたズボンを片膝で抑えて乗り上げる。
近づいちまえば足蹴りなど怖くもねえ。
まだ握ったままの左手首を掴んで、ルイジはにやりと笑った。
「手伝ってやるぜ。」
驚愕で目を見開いたまのカールの手を取って、乱暴に上下させる。
「うあ・・・ば・・・」
自分で扱く形になって、カールは混乱したようだ。
慌てて手を離した左手をそのままソファに押し当てて、ルイジの手が代わりに握り込む。
「やめろ、クソ・・・」
逃げを打つ腰を抑えつけて、勃ったままのそれをゆっくりと扱く。
晒された乳首が目に入って、舌でぺろりと舐めた。
びくんと体が反応して揺れる。
もう硬くなっているそれを口に含み、ゆっくりと甘噛みした。
「あんた、女みたいに乳首感じんの?」
耳元で囁けば、手の中のそれがどくりと脈打つ。
こいつ、感じてやがる。
「なあ・・・あんた―――」
「・・・うあ・・・もう・・・」
ひくひくっと身体を震わせて、白い液がルイジの手の中で飛んだ。
目尻に涙を浮かべたまま、頬を紅潮させて軽く震えている。
「早っ・・・」
搾るように扱き出せば、ふうふうと荒い息がルイジの耳を打った。
「この・・・クソやろ・・・」
左手は戒められたままで、自由な右手でルイジの髪を掻き毟っているつもりだろうが、実際は髪を
梳かす柔らかな感触でしかなかった。
掌に受けた精液を指に塗り込めて、ルイジがその奥へと手を這わす。
カールの身体が大きく跳ねて、ズボンがもつれたままの両足がばたばたと暴れた。
「アホ!なにするってーか、男!てめー、男だぞ、知ってんのか!!」
声をひっくり返して喚くカールとは対象に、ルイジはひどく落ち着いて抑える手を緩めようとはしない。
「知らね−けど、大方女と一緒だろ。」
どこか切羽詰った掠れた声に、カールの背筋に甘い痺れが走った。

その声で、言うんじゃねえ。
中途半端に開いたシャツの前を引きちぎって、露になった鎖骨から舌を這わせる。
夜目にも白い肌はほのかに染まり、強く吸うと面白いほど跡が残った。
こりこりと立ち上がった乳首を指で押し潰しながら、もう片方に強く吸い付く。
目だけで見上げれば、硬く歯を食いしばって、カールは漏れる声を押し殺している。
「ただのマスかきじゃねえだろ。」
舌を絡めたままの、くぐもったルイジの声がカールに届く。
「あんたすげえ、物欲しそうな顔してた・・・」

うわああああああ―――
身動きできない状態でカールは悶絶した。
羞恥で死ぬなら、もう死んでる。
寄りによってこんなガキに・・・
その声で――――
その顔で――――


くちゅりと指が埋め込まれた。
声にならない悲鳴が噛み締めた歯の間から漏れる。
「あんた、こっちもいじってたのか。」
言うな・・・
その声で言うな―――
快感で目が眩みそうだ。
忘れていた筈の感触がまざまざと蘇り、甘い陶酔が脳味噌を支配する。
「すげー・・・熱い・・・」
ルイジの息が荒い。
耳元でささやかれて、その舌が頬を舐めた。
硬く閉じた唇を舐め上げ、覆い被さるように口付ける。
指を深く差し込まれて、思わず開いた口元から熱い舌が滑り込んだ。
―――こいつ、ガキの癖に、
べろちゅ−
・・・ガキがガキがガキがガキが・・・
呪いのように唱え続ける。
でないと、間違えてしまいそうだ。

息苦しくなって喘ぐと、舌が更に追いかけて深く探る。
飲み込みきれない唾液が顎を伝い落ち、目の焦点がぼやけてきた。
「・・・すげーエロい面。」
ルイジの声が届く度、身体の心がずくずくと疼く。
耐え切れなくて、カールはずるずるとソファをずり落ちた。
大きく開かれて、突き出された足の間をルイジの指が押し広げていく。
強く掴まれ過ぎて痺れたのか、酔いが回ったのか、自由な筈の左手もいうことを聞かない。
力の抜けたカールの腰を抱えて、ルイジは己のモノを取り出した。
あてがわれる感覚に、身震いがする。
「ル、ルイジ!」
カールは必死な声で叫んだ。
「ルイジ、俺の名を呼べ!カールって呼べ!」
ずぶりと、熱い塊が押し開いていく。
「それ・・・、あんたのほんとの名前じゃねえだろ。」
ルイジもきつそうだ。
「うっせえ、いいから呼べ!カールって言えよっ」
「カール・・・」
「うあ・・・」
カールはルイジの肩に縋りついた。
「カ−ル・・・カール・・・」
憑かれたようにルイジがその名を繰り返す。
「ああ・・・ん・・・ルイ・・・ジ」
みちみちと、はちきれそうに怒張したそれを受け入れながら、カールは息を吐いて受け入れていく。
「・・・カール」
ルイジの声が耳を打つ。
そうだ。
もっと呼べ。
その名を呼んでくれ。
そうすれば、俺は

間違えたりしないから―――――

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