Bird song 4

月見自慰と洒落ているかと思ったが、甲板に姿はない。
格納庫へ向かうと、扉の締まる気配がする。
待てと声を掛けたいが無理なので、扉をガン!と蹴ってみた。
案の定、ゾロが顔を覗かせて驚いている。
有無を言わせず中に入ると、扉を閉めて先にずんずん奥へ向かった。

ちらりと視線を落とせば、暗闇でもまだ猛々しい雄をそのままに、ためらいがちに近づくゾロがいる。
サンジは苛立ちを隠そうとしないで舌打ちして、不遜な態度で腕を組んだ。
「どういうつもりだ。」
闇にきらりと、ゾロの目が光った気がする。
こんな、相手の表情すらよく見えない状態で、口の利けない自分に問いかける不毛さがこの男にはまだ分からないらしい。
戸惑うゾロにぶつかるように、自分から口付けた。
ゾロとキスをするのは好きだ。
あの時のゾロはキスなんかしなかったし、奴らとも覚えがない。
一番直接的で、言葉がなくたって好きだと伝えられそうで、サンジは精一杯ゾロの中に舌を伸ばした。
直ぐに絡め取られてきつく吸われる。
唾液を啜られて、すぐに頭がぼうっとなった。
ぴちゃりと暗がりに湿った音が響いて、えらく扇情的だ。
頬にかかるゾロの鼻息が荒くなっていく。
サンジの腰を抱く手に力が入り、ぐりっと怒張したものが股間に押し付けられた。
反射的に腰が引ける。
音を立てて唇が離れ、ゾロは大きく息をついた。

「いいのか?」
この後に及んで聞くなと思う。
「止まんねえぞ。」
サンジは了解の代わりに、ゾロの首筋に顔を寄せてぺろりと舐めた。




ゾロはサンジの身体を軽く横抱きにすると、床に慎重に横たえる。
もどかしげにシャツを手繰り上げ、薄い胸を撫でた。
ゆるくゾロの腕を抑えて、何か言いたげに開いた口を再び塞ぐ。
舌で口中を余すところなく堪能しながら吸い付くような肌の感触を確かめた。
俺の身体はこいつに触れてる。
身体が覚えてる。
この肌も肉も全部―――
言いようのない焦燥がゾロを襲った。
サンジを蹂躙した筈の自分への怒りと、覚えていないことの悔しさ。
もっとめちゃくちゃにしてしまいたい衝動とサンジを愛するが故の悔恨。
ゾロは唇を離して改めてサンジの顔を見た。
腕の中のサンジは目をぎゅっと瞑って、床に投げ出した手は白く握り締めたままだ。
まるで何かに耐えているかのように。

「・・・クソコック。」
掠れた声が響く。
「クソコック、好きだ。」
声に促されるように、サンジはゆるゆると瞳を開いた。
目の前に、ガラにも泣く困ったような目をしたゾロがいる。
ああ、ゾロだなとサンジは思った。
自分の上に圧し掛かってるのは、あの男ではない。
奴らでもない。
俺の惚れてる、ゾロだ。
サンジは腕を上げてゾロの太い首にまわした。
口元を緩めて笑って見せる。

「好きだぞ。」
念を押すように、ゾロは何度も啄ばむように口付ける。
こんな風に甘く過ごす時が来るなんて、想像もしなかった。
ゾロは慣れない言葉でもって全身でサンジに求愛している。

サンジは身体を起してゾロの腹巻からシャツを抜いた。
促されてゾロはシャツを脱ぎ、サンジも自らシャツを肌蹴た。
素肌をくっつけてぴたりと抱き合うとゾロの胸を走る盛り上がった創が、直に触れる。
その感触をもっと味わいたくて擦り寄ったら、大きな手がサンジの顔を包んで上向かせた。
舌が、唇が、耳元を掠めて首筋へと降りる。
薄い皮膚に歯を立てられると、本能で身体が揺れた。
サンジの肌の感触を楽しむように、何度も舐めて歯を立てて、きつく吸って、全身嘗め尽くす勢いでゾロがむしゃぶりつく。
お前は大型の獣かコラ。
口が利けたらそう突っ込みたいところだがそれもかなわず、サンジは勢いに流されるように喘いでいるしかなかった。

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