Bird song 3

実のところ、サンジはゾロが嫌いではない。
ぶっちゃけ言ってしまえば好きだ。
多分、惚れている。
だがそれを自覚したのはここ最近で、正確に言うならばゾロに強姦された後だ。
悪霊に取り憑かれたゾロは、問答無用で彼を犯した。
抵抗するサンジを殴って斬りつけて、慣らしもしないで突っ込んだ。
サンジはあのときのことを思うと今でも吐きそうになる。
首を斬られる恐怖と開かれた羞恥心で気が狂いそうだった。
マジで死ぬかと思った。
死のうかとも思った。
突っ込まれた時のことはもうよく覚えていない。
ただ気がついてから一人で無人の船に帰って、なんとか薬を飲んだ後のずくずくと身体の芯まで疼く痛みがまだリアルに残っている。
痛くて惨めで哀しくて、あれはゾロじゃないと思ってもそれは紛れもなくゾロの肉体で――――
そのことが余計サンジを打ちのめした。
それでもゾロの意思でしたことではないとわかっていたから、ずっと隠しとおしていたのに。

―――この男が望んだことだ。
せせら笑う、悪霊の声。
この男は胸の奥底でお前を犯したいと望んでいた。
ゾロの顔でゾロの声で、そう告げた悪霊が最後に縋りついていた何かを壊してしまった。
陵辱されて尚、ゾロを慕う自分の想い。
ゾロが好きだということ。

ゾロに犯された記憶は苦痛以外の何も残さなかった。
けれどそれ以上に、サンジを戸惑わせる記憶がある。

悪霊に追い詰められて、通りすがりのチンピラに売りとばされた。
そのときも、意識が朦朧としていてよく覚えていないが、どこかに連れ込まれて輪姦された。
そしてそれが、とんでもなくよかったんである。
多分、薬でも使われたんだろう。
正気の沙汰ではなかった筈だがゾロの(正確には悪霊の)暴力とも呼べるSEXに比べれば、まさに天国と地獄。
顔も覚えていない野郎に突っ込まれて散々喘がされ与えられた快楽は、今も甘い疼きを伴って体が覚えている。
女性と交わすそれとは違う、直接的で度を越した快感。
素質があると嘲る声にすら悦んで嬌声を上げていた自分。
人生における最低のSEXの相手がゾロなら、最高のSEXはくだらないチンピラだったなんて――――




物思いに耽ってろくに吸わないうちに、煙草はフィルターを焦がし始めた。
苛々をぶつけるように灰皿で押し潰す。
正直今でもゾロが恐ろしい。
だがゾロをあの状態で放置するのは気が引けた。
同じ男として心から同情する。
自分で何とかできるものなら何とかしてやりたいし、何とかしたいなともちょこっと思ったりしているのだ。
だがゾロらしくもなく、一向に手を出してこない。
意外と慎重な性格なのか過日のことを猛省しているのか、ゾロの真意はわからないが、けなげに耐えているのだけはサンジにもわかった。

やっぱ俺から何とかしないとダメか。
サンジは決心して、キッチンを出たゾロの後を追った。

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