<1>

上方でケチな盗みを繰り返していたんだが、組んでいた奴らがヘマをやった。
とばっちりをくらって、与力を切り殺す羽目になった。
数年やっていた鍛冶屋から、浪人姿に逆もどりだ。
そんなこんなで江戸の町にたどりつき、裏町の長家に落ち着いてから一月。
そろそろ、次の稼ぎを考えなきゃならねえ。
土間の天井の梁の裏に多少の金は隠してあるが、いつ何時追っ手のかかる身の上だ。
懐が暖かいのにこした事はないからな。
まあ、でかい街だから、羽振りのよさそうな金持ちも多い。防犯上の理由からか、道もかなり入り組んでいる。
だもんで、この頃は道を覚えるために町をうろついている事が多い。
なにせ、自分でも認めずには居られない程の方向音痴だ。折角、辻切りに都合のよさそうな場所をみつけても、
三度に一度しか辿りつけない。それでもしつこく歩き回れば、ある程度は覚えられるのだ。

向かいの長家に料理屋をやっている若い夫婦がいる。
亭主が板前で、女房が客あしらいをしているのだが、この女房がキツい。オレンジの髪で器量がいいと思って
見ていたら、岡っ引きを怒鳴り付けて、張り倒しそうな勢いだった。
飯代のツケを取り立てていたらしいが、がめついのも品のないのも真っ平だ。
亭主の方は南蛮の血がはいっているのか、珍しい青い目をしている。頭は金髪で板前の癖に髷にせず、
束ねて括ったままだ。厨に入っていない時は、キセルを銜えてへらへらしてやがる。にやけた優男だと
思っていたら、食い逃げらしき野郎を3人程まとめて蹴り倒し、裸にして店の前に積んでいやがった。
「今度ふざけた真似しやがったら、石に括って掘に叩き込むから覚えとけ!」
ぎろりと睨み付けた流し目で、久しぶりに魔羅が熱くなった。

それから、こっそり隙を狙うようになった。
女房が、里の姉に会いにいくという日。本日休業のはり紙のある店の奥で、亭主を手篭めにした。
「なにしやがんでえ。」
「てめえに惚れた。頼む、一度でいいから思いを遂げさせてくれ。」
口からでまかせだが、知ったことか。ヤルのに理由なんか無いのに決まっているが、女はこんな風に
いうと静かになる。おっと、コイツは男だったか。
「適当な事、言ってンじゃねえぞ。」
組み敷いてしまえば、俺の方が目方が重い。押さえ付けながら、自分の帯で後ろ手に手首を縛った。
あとは足に気をつければいい。
「止せ、今ならなかった事にしてやってもいい。」
「暴れるな。静かにしていれば優しくしてやるから。」
「うるせえ、放せ。解け。」
「言う事を聞け」
じたばたともがいて捲り上がった裾から伸びる白い足。左手を伸ばしてその付け根の褌の中身を直接握り込んだ。
「うぐっ」
痛みで一瞬動きが止まる。その隙にサンジの帯も解いてしまった。すかさず背中に馬乗りになって、
厄介な足を引き抜いた帯で一まとめに括った。腕も後ろ手で縛り付ける。こんなじゃじゃ馬相手じゃあ
縄一本じゃ足りなかったな。
「くそっ、これが惚れてる相手にすることかよ。」
「しょうがねえだろう?てめえの蹴りが天下逸品なんだから。」
へえ、単純な奴だ。こんな格好のくせに誉められるとまんざらでもない顔しやがる。
さてどうするかと考えて、廚の奥の天秤棒が目にはいった。ばたついている膝の裏に当て、股を開いたまま
縛り付けることに決めた。俺の帯と合わせて二本、緩まないようにギリリと締める。これなら肝心な時に
解いても暫くは足が痺れて動きがとれねえはずだ。うまくいったと思うと口調が緩む。
「俺あこんな事はしたくねえ。てめえが悪いんだぜ、大人しくしねえから。」
「けっ」
「まあ、無理矢理に犯られたんなら、女房の手前も言い訳が立つだろう?」
「女房だと? おナミちゃんはそんなんじゃねえよ。」
「へえ。」
女房でもないのに一緒に暮らしてるってか?…まあ、どうだっていいや。
「くそっ。覚えてろよ。後で絶対殺してやる。」
いよいよ、動きがとれなくなって観念した様子なのに、目だけは死んでいない。乱れた髪の下から鬼火の
ような輝きで俺を睨み付けてくる。たまらねえ。
「ああ…。お前に殺されるならかまわねえよ。コトの後ならな。」
まあ、俺を殺すのはそう簡単じゃあねえぞ。
「して欲しい事があれば言えよ。極楽へつれってってやるからよ。」
うつ伏せになって噛み締めた歯の間から畜生と呟くのが聞こえたが、せいぜい身を捩る程度でもう身動きは
とれないだろう。俺は目の前の獲物に集中する事にした。

とりあえず、穴に突っ込んだら気が済むと思っていたが、半裸で縛られている男は考えていた以上に上モノだった。
「すげえ手触りだ。地が白いから吸い跡が赤い花みてえだぜ。綺麗だ。」
返事は上がった息だけなのだが、その息遣いにも色気がある。
根気よく言葉を掛けているのも単に強姦より和姦の方が気持よさそうだったからなのだが、不思議なもんだ。
自分でも惚れている気になってくる。
身体だけなら、以前にぼったくられた祇園の花魁よりも上等かもしれない。
さすがに指先は荒れているものの、どこもかしこも滑らかでしっとりと掌に吸い付いてくるようだ。
男だから産毛が多い。なのに柔らかく、手触りの邪魔をしない。産毛がある事を確認するように肌から
浮かせて撫でてやると、くすぐったいのか身をよじる。また、その仕草にそそられる。
背中から尻、内股に脇腹。吸い跡と噛み跡でいっぱいだ。吸い跡も加減ができなかったのか、赤紫の血豆の
ようなものまである。
特に乳首の周りは朱に染まり、初めはやわらかな小豆ほどだったピンク色の突起は赤みを増してひと回りも
大きく腫れている。
それをぺろりと舐ると、鼻から抜けるように一段高い声が上がる。
中心の屹立は小さくはない。並より大きい部類にはいるだろう。
固く立ち上がり、先端がぬるりと濡れている。
限界まで張り詰めたサンジの魔羅はまだ、精を放ってはいなかった。
「もう…イキてえ。もう痛いんだ。頼む、出して…解いてくれよ…」
既に手足の拘束は解かれていた。
代わりに陰茎の根元がぐるぐると紐で縛られ、陰嚢までくびり出されるように巻き付けられているのだ。
この紐はサンジの髪が括られていたものだ。
「だめだ、精を放つと後が絞まるんだ。そうするとキツいだろう?今解しているんだから、もう少しの辛抱だ。」
口では優しい言葉をかけながら、口元が笑っている。もう目も開けていられない状態のサンジには判らない
かもしれないが、端でみていればゾロがこの痴態を楽しんでいるのは明らかだ。
四つん這いにされたが、畳に崩れおちたままの上半身が持ち上がらず、尻だけを突き出すようにして、
ゾロに抉られている。
腹を臍の下に向かって内側から撫でると、サンジの尻がふるふると揺らめくしこりがある。
そこを狙ったり、わざと外したりしながらゆるゆるとさすってゆく。
指三本が楽に動くようになり、尻を掲げるのに支えがいる程に膝の力が抜けてきた。そろそろころ合いかと、
先程から口に含んでふやかしていたふのりを手の平に吐き出し、自分の剛直と後穴の周りに塗り付けた。
腰を進めると温い湯にねっとりと包みこまれる感覚。
「ふああっ」
熱い杭がずるりとめり込んで行くのに合わせて声が上がる。
「はいったぜ」
皺をすっかりなくしながらも、太い杭を根元までぎっちりくわえこんだ景色をみおろして満足そうな声が響く。
さっきまで脱力していた穴の中は杭の刺激でうねうねと蠕動し、先やらくびれやらをくすぐるように刺激してくる。
引き延ばされたゴムような入り口も、痙攣するように根元のいいところを刺激してくれる。
「ち…くしょう」
男に犯されている実感が湧いたのだろうか、ぼろぼろと涙をこぼしている。人の矜持を征服したなんとも
言えない満足感が沸き上がる。
男をヤルってのはコレが無えとな。
だけど…こいつ、すげえイイ。男にも名器ってのはあるんだな。
「動くぞ。」
布海苔のねばりを使っての抽挿は抵抗がない。
慣れない感覚に、普通なら萎えてしまう筈のサンジの陰茎は縛られているために、張り詰めたままだ。
自分の裏筋のイイところをサンジの中のしこりに押し付けながらゆるゆると抜き差しする。
「くうっ」
悲鳴だけだったサンジの声に、少しだけ甘い響きが混じる。
ゾロの一物はでかい。だから、太さはともかく女相手では根元までは入らない。この根元まで包み込んで
刺激してもらえるのが男の醍醐味だ。
「すげえ、いい。こんなにイイのは初めてだ。サンジ、お前すげえよ。やっぱり思ったとおりだ。
 もう直ぐにでもイキそうだ。」
入れたあと、道具を誉めてやるのは後腐れがないための礼儀だ。まあ、今回はそう嘘でもない。
男は初めての筈なのに、こんなに具合がいいなんて。
「…かよ」
何?腰を揺すりながら、行為に没頭しようとしているゾロの耳に幽かな呟きが届いた。
「…そんなに 俺が、好き…かよ…」
苦しい息の間から涙にくぐもった声は確かにそう聞こえた。
口元が吊り上がったのが自分で判った。くくっ…しめた、コイツ落ちやがった。

「ああ…最高だ。抱けるだけで良かったんだ。でも、こんなに気持いいなんて。なあ、俺のモンになれよ。
 惚れてるんだ。」
「…ばか、言え。」
こわばりが弛んだせいで、随分と動きやすくなってきた。両手で腰を抱えて出し入れするのにぴたぴたと
打ち合わせる音が響く。その拍子が速く、濡れた音が大きくなってゆく。
「もう、駄目だ。吸い取られちまう。イクぞ、受け取れ。」
落ちたんなら、俺のもんだ。あと、何度かはさせてくれるに違いない。我慢せずに、先ず、一発抜かせてもらうぜ。
手前勝手な段取りを巡らしながらひときわ大きく腰を叩き付けるように動かす。金糸の髪を振り乱しながら、
逃げるように背が跳ねた。
「なあ、もう俺のもんだよな。サンジ。」
遠のこうとする肩にしがみつき、腰の動きは止めないで耳もとで咬みつくように声をかける。
ひくりと内壁が収縮したのに合わせ、思いっきり奥めがめてぶっ放してやった。
一際大きい声が上がった。
頭の中が真っ白になってゆっくり波が引いて行く。
「ふう。」
…ふと気付いてサンジの紐を解いてやった。緩めに絞めてあったから射精ができない筈はなかったが、
少しキツかったかよ。
「ふああああああ……」
腹がビクンと波打って、引きつったように息を飲んだあと、弱々しい声が上がる。
まだ固さを残した俺のモノを、サンジがひくひくと締め上げてくる。
サンジの陰茎は先端が真っ赤になっていた。さっきより少し張りが治まって、先端からは少しだが白い精が
溢れていた。…いや、とぷっとぷっとまだ少しづつだが、流れ続けているようだ。
うわ言のような喘ぎと共にゾロへの締め付けは続いている。
おい、おい、イキっぱなしかよ…。こりゃあ、男が癖になるぜ。
長い射精が終わって、サンジがとろんとした瞳をゾロに向けた時、ゾロはサンジの中で完全復活していた。


「殺してやる」
サンジは頭元にあった大刀を抜き放ち、鞘を捨ててゾロの首元へ付きつけた。
「!」
「鞘が高いんだ。大事に扱え。」
「なんだよ、コレ…。」
「悪いな竹光だ。金が無えもんでな。」
まあ、コレでも使えや。そう言って厨から持ってきた出刃包丁をほいとサンジに差し出してやった。
「殺されてやる約束だからな。」
「商売モンの大事な包丁でテメエなんかの汚ねえ首が切れるか!」
言うが早いか後ろ蹴りにされた。
はり紙のしてある店の戸口まで吹っ飛んだが、往来まで蹴り出されなかったのは、コトの後で足腰が
立たなかったせいに違いない。
命拾いをしたらしい。あれだけ気持よく哭かせてやったのだからまず大丈夫とは思ったが、今一つ信用
できなかったのは、相手が女ではなく男だからだ。

白々とした夜明け前の薄い闇のなかで、思うように動けない男の悪態が続いている。
尻にこびり着いた砂でも拭こうかと裏手の井戸に行って水を浴びた。
蹴り飛ばされて、殴り返そうとしない自分に少し驚いたが、久しぶりに精を吐き出した腰が軽く、
機嫌が良いせいに違いない。













酔夢無頼