あなただけ
    さ〜や様
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オレとゾロいや、ご主人様との出逢いは1年前になる。

大学進学を機に実家を出たオレは夏休みのほとんどを割のいい短期登録バイトに費やしていた。
親の仕送りがあったけど、学費まで出してもらいその上遊ぶ金まで出させるなんてできなくて、あくせくと働いた。

あの日のバイトは事務所の引越し作業の手伝いで、めったに足を踏み入れる事のないオフィスビルにオレはいた。
重たいダンボールを10回も20回も往復して運び、梱包された包みを開いて、デスクや椅子を綺麗に掃除して、
連日のバイトと猛暑のせいか頭がフラフラしていたけれど健康だけが取り柄のオレはそれが過労だなんて気づかなかった。
束の間の昼休憩が終わり、さて続きをするかと立ち上がった瞬間に視界が天井を映し脚が床に崩れ落ちた。
いや、正しくは倒れる前に誰かに助けられたのだ。

それがロロノア・ゾロだった。

抱きとめられた体から大人の、上品なコロンの香りがしたのを覚えている。
オレは何が起きたのかすぐに状況を飲み込めず、ただゾロの端整な顔立ちを凝視していた。
彼はひどく心配そうにオレを見つめ、気遣ってくれた。
それがきっかけとなりオレはゾロと顔見知りになった。
ゾロの会社がそのビルの15階から17階にあり、オレが作業していたのは16階だった。
廊下やエレベーターですれ違うたびに挨拶し、だんだんと会話を交わしていった。

「いつまでここでバイトしてるの?」
「引越し作業ですか?えっと・・・明日で最終です。そうすると明日でロロノアさんとも会えなくなっちゃうん
 ですよね?なんか残念だな」
「本当に?」

社交辞令でなくオレは本当に残念だった。
見も知らぬ一介の学生バイトに親切に話しかけてくれる社会人に憧れを抱かずにはいられない。
するとゾロはバイトの最終日、一緒に夕飯を食べようと言ってくれた。
オレは素直に喜び即座にその申し出を受け入れたのだった。
オレは一人暮らしを始めてから初めてできた年上の友人に舞い上がっていた。
大学にも友達はいたが、それとは別次元の存在なのだ。
ゾロはオレの知らない世界を知っていて、考え方もスマートで、ひどく憧れた。
こんな大人に将来なりたいとさえ思った。

当時、彼がどんな仕事をしていて何歳でどんな食べ物が好きだとか、生まれも育ちも知らなかったけれど、
その夕食にオレがとてもはしゃいでいたのを今でもよく覚えている。
オレは生まれて初めて口にする1本数万円のワインにすっかり泥酔し、わけのわからないままゾロに何処かへ連れて行かれた。
そこはテレビでしか見たことのない豪華なスイートルームで、大人が2人乗ってもゆとりのある大きなベッドに寝かされた。

それから―――
思い出すだけでも恥ずかしいようなことをされた。
わかりやすく言うなら彼に襲われたのだ。
彼いはく、一目見たときからオレを狙っていたらしい。

ゾロはサドだった。

鞭で叩いたり蝋燭をたらしたりするのかと訊ねたら笑われたけど、たまに相手によってそういうこともあるそうだ。
だけど彼は身体を責めるよりは精神をいたぶるのが好きで、オレに一目惚れした理由も“縄で縛ってあそこを
バイブで責めながら哀願させたら可愛いなと思ったんだ”と涼しい顔で言っていた。

「俺の話を聞いているのかサンジ?」
「あ、ああ。聞いてる・・・聞いてます」

 あれから1年経った今、オレはゾロのマンションで暮らしている。

「帰りが遅くなるなら電話なりメールをしなさいと言ったよね?」
「言いました。だから忘れちゃってごめんなさいって言っただろ」

たまたま今日は友達に飲みに行かないかと誘われて、今夜はゾロの帰りが遅いから、何の気なしにその誘いを受けたのだ。
ここのところバイトやゾロにいろいろされたりで友達と遊ぶこともなく、それを満たすかのように俺達は騒ぎまくった。
だからオレは酒に酔い過ぎて、普段なら絶対に忘れない連絡を怠ってしまった。
玄関の前に立ったときその事実に気づいたオレは一気に酔いを醒ました。
案の定オレより先に帰宅していたゾロは静かにオレを咎めた。
延々と彼のお説教を聞いている間に頭は昔のことを思い出し、オレの意識は自然とそちらに飛んでいたようだ。
さらにゾロの顔が険しくなる。
慌てて謝るが効果はない。
むしろ火に油を注ぐ結果になった。

「どうもここのところ甘やかし過ぎていたみたいだ」
「・・・あれで甘いって言えるのかよ」
「口答えするのかサンジ?俺は君にとって何だと教えた?」
「・・・・・・ご主人様、です」
「そうだね。つまり主人との約束を守れないペットはお仕置きされなければならない」
「うっ・・・・・・」
「文句でも?」
「・・・・・・・・・ない」
「よろしい。では服を脱いでこれをつけなさい」

差し出されたのはご主人様の所有物であるという証の赤い革の首輪だった。
控えめにダイヤの小粒が点々と装飾されていて、実はかなり高価な代物だ。
オレは裸になりご主人様の前に跪いた。
室内が明るい部屋で何もまとわないというのはいつまでたっても慣れないもので、無意識に下半身を手で隠していた。
それをご主人様に怒られて更に脚を開くよう命令された。
ソファにゆったり腰掛けるご主人様の足元でオレは大股を開き、冷たいフローリングの床に寝そべったまま次の命令を待った。
「この前調教してあげたのはいつだっけ?」
「3日前、です」

ご主人様が仕事で忙しかったりオレが課題に追われたりで、ここ数日はあまり躰を触れ合わせていなかった。
口には出さなかったけれど、ちょっとだけそれが寂しかった。
ご主人様は3日前と聞いて黙ってしまった。
そのときはバイブを突っ込んだまま乳首にローターを張られ玩具に達かされる姿をずっと撮影されていた。
あの日もご主人様の命令を聞かなかったからお仕置きされたのだ。

「その3日間に何回独りで弄ったのか教えてくれるか」
「い、弄ってなんかない、です」
「嘘ついたらいけないよ。俺はわかってるんだから。サンジは淫乱で俺が可愛がってあげないと寂しくてしょうがないんだよね」

図星で顔がカァっと火照る。
だけども虚勢をはって、オレは否定し続けた。

「どこを弄ったの?乳首、それともペニス?でもサンジはお尻が大好きだからあそこを弄るだけで充分かな」
「してない!・・・です。どこも触ってません」

本当はした。
ご主人様に触ってもらえない躰はどうしようもなく疼いた。
ご主人様の声を思い出し乳首をコリコリしながらお尻をグチュグチュにした。
ご主人様のいない広い部屋で独り、ご主人様の名前を呼びながら何度も果てた。
3日間。
オレは自分の躯を慰めた。
だけどそんなこと恥ずかしくて告白できないのだ。

「い゛っ!?」

オレが嘘をつき通すからご主人様は言葉で責めるのをやめ広げた下肢の中心を標的に変えた。
素足でグニュグニュとペニスを押し潰す。
親指と人差し指の間で挟みながらグニッと揉んでいった。
柔らかい袋はつま先で持ち上げて、プルプルと揺らされる。

「んっ・・・あっ」
「自分で弄ったのを思い出してきたら反応してきたのか?」
「ちがっ違います」
「どんなふうにペニスを扱いたんだ?サンジは袋を揉んで尿道に爪をたてて弄るのが好きだよな」
「ちが、ああっ!」
「本当のことを言わないと使えなくするぜ」

ペニスごと腹部を苦しいほどに圧迫される。
食べたものが胃でぐるぐるとかき混ざりこみあげる吐き気に呻き声を洩らした。
オレは本当のことを話した。
目頭にじんわりと涙が溜まっていた。

「俺がいない時にしていたみたいに弄ってみてサンジ」
「・・・はい」

生殖機能を失うのは本能的な恐怖であり、今度は素直に従った。

「ご主人様・・・ローションをいだだけませんか」
「どうして?」
「・・・あそこを・・・・・・」
「ちゃんと説明できたら渡してやるよ」

“そんなことできるわけない。”と叫びたいけど叫べない。
取り去ることのできない羞恥心がオレを戸惑わせ、余計に躰を火照らせた。

「ここを?」
つま先でお尻の奥の孔をつつかれる。
「ぁ」
足でだけだけど、久しぶりにご主人様にそこに触れてもらい全身が歓喜の声をあげた。

「お尻にローションを使って・・・グチュグチュにしたいからです」

満点ではないが合格点には達したようでご主人様がローションを持ってきてくれた。
俺は半透明でミルク色をした液体をそっと股の間に垂らす。
精液で濡れたように下肢がトロトロになっていった。

「それで。これから何をするのかな」
「指で、お尻を弄ります。“グチュグチュ”します」
「“グチュグチュ”するのか」
その表現がおもしろかったのかご主人様が笑った。

「ん・・・んン・・・ぁ・・・ンッ」
ご主人様の眼下でいけない行為に耽る。
淫らな声を出してはいけないと唇を縫い合わせ、聴こえる交接音には聞こえないふりをして、視線は
平らな床にのみ注がれる。

ご主人様は頬杖をして俺を見ていた。
本当は自分の指ではなくご主人様に愛撫してもらいたい。
そう告げればいいのに俺は後1歩を踏み出せないでいる。

文字通りグチュグチュに濡れたそこからじわじわと甘美な熱が全身に広がっていった。
動かす指は乱暴になり奥へ奥へと内壁を引っ掻きまわしながら進む。
だけど熱は激しさを増すばかり。
孔の奥が焼けたように熱いのだ。
むず痒いような感覚も加わり、いよいよ俺は声をあげて啼いた。

「ぁ、ぁっ、あンっ」
「可愛い声だな」
「熱ぃ・・・ご主人様、躯が熱い、です」
「発情期?あぁ、サンジは一年中発情期だから関係ないか。躯が熱いの?」
「ん・・・お尻も、熱ぃです・・・ぁんっ」

お尻が熱くて痒くてしょうがない。
どんなにめちゃくちゃ引っ掻いても、逆にひどくなっていくみたいだ。

「あぁん、熱・・・お尻が熱い、なんでっ」
「ご主人様、ご主人・・・さまぁ、オレ、変です・・・熱い」
「どうしたんだろうね・・・俺に何に助けられることはある?」
「指でご主人様の指で・・・お尻グチュグチュにして・・・くださ・・・…」
「・・・・・・こう?」

オレの指に重なりご主人様の指が孔に入れられる。
長くて綺麗な指がオレのお尻を犯している。
恥ずかしいけど嬉しい。
「あっ・・・んんっ、ご主人様のゆ・・・び・・・あぁっ」
考えただけでアドレナリンが大量に分泌される。

「そんなに締めつけないでくれないか。指が折れてしまうよ」
「ごめん・・・なさ・・・けど、指が美味し、くて・・・ご主人様の・・・で、イッちゃいますっ」

自分の指とご主人様の指を飲み込んだ孔はヒクヒクと開いては閉じ、食らいついては放さなかった。
あさましいと罵られようとオレは嬉しすぎて何も考えられなかった。

「そろそろイキそうだな。サンジのペニスがピクピクしてる」
ご主人様が2本の指で入り口近くの膨らみを押した。
「サンジ・・・どんなことをされながらイキそうなのか説明してくれないか」
「あああっ」
「自分でお尻をグチュグチュして・・・ご主人様の指に、弄ってもらい・・・ながら、ゆびっ・・・ご主人様の指で、
 オレはお尻をグチュグチュに、ああっ・・・イッちゃいま・・・オレ・・・イッちゃいます・・・ご主人様」

オレは狂わんばかりに叫んだ。
ペニスから体液を飛ばして、ぐったりと突っ張った脚をだらんと弛緩させた。
そして、今の自分の状態に気づくまでに数分を要したのだった。

「たくさん漏らしたね」
「・・・?」
「床がサンジのおしっこで水浸しだ」
「・・・う、そ」

オレが放ったものは精液よりも尿を多く含んでいた。
そうオレは友達に誘われ何杯も酒を飲んだのだ。
忘れていた尿意を思い出す。

「来年20歳なのにみっともない」

わざわざ言われなくても本人が1番わかっているし死にたい気分だ。
大学生にもなって人前で失禁するなんて最低だ。
しかもお尻を弄り、弄られながら漏らしてしまうなんて言い訳の仕様がない。

「あっ・・・ごめんなさ・・・ごしゅじんさま、ごめなさい・・・ごめんなさ・・・い・・・ッ」
「反省してる?連絡を忘れたことを」
「・・・してます・・・絶対に、もう忘れません・・・ごめなさい」

ご主人様はオレを引き起こし、髪を撫でてくれた。
「ご主人・・・さま?」

涙で汚れる顔を拭われご主人様のキスがふる。
舌を吸われ歯をたてられたが気持ちよくて躯がふわふわと浮いた。
唾液を絡ませあい滴るそれに構いもせず、深くなんども唇を貪られた。

「は、ふぅ」
キスが止む。
ご主人様はオレの首輪に鎖を繋げリードを引っ張った。
四つん這いになりオレは引かれるがままご主人様の後についていく。
そしてある部屋の前で足を止めた。

「連絡を怠ったことへの罰は済んだけど、おしっこを漏らしたことへのお仕置きをしないと」
そこは秘密の部屋。
「イヌは躾が肝心だから。この椅子の上に座るんだ」


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