汗で張り付いた金髪をどけてやると、ほっそりとしたうなじに薄桃色の痣。
まわりを見ると真っ白に曇った窓ガラスが目に入る。
ゾロは暗闇の中、手探りで酒を見つけ出し、ボトルを手に取った。

疲れ果てて眠ってしまった愛人は、規則正しい寝息をたてている。
ボトルの蓋を開け、そのまま口に含む。
ちょうど二口酒を飲み込むと、ゾロは顔をしかめて小さく咳をした。

あんなに乱れていたのに、
あんなに啼いていたのに、

どうしてこの男はこんなにも綺麗なのだろう、とゾロはほとんど感嘆に近い気持ちを覚える。
首筋に浮かぶ薄桃色の痣さえなければ、
つい先ほどまでそのベッドの上であった行為すら――――

「んっ…」

小さく声を上げて、サンジが寝返りをうつ。
ゾロはもう一度手を伸ばし、顔にかかった髪をすくい上げる。
閉じられたままの蒼い瞳。
「全く…どうしちまったんだろうな。」
ゾロは低い声で笑う。
全く信じられない――――彼はもう一口酒を飲む。
「気が狂ってるよ、俺は」

窓ガラスは、白く曇ったままだった。








「気が狂っているのはお互い様だろ。」
不意にそう呟かれ、ゾロはまた顔をしかめる。
「起きてるなら、起きてるって言えよ。」
彼は酒のボトルを台に置き、コックの横へと滑り込む。
「以外と悪趣味だな、お前は。」
「咳」
「…咳?」
「咳してただろう。」
ゾロはしばらく考えた後に「ああ」と言って笑う。
「少しな。」
「…冷えるからな。」
半分夢うつつなのか、サンジの声はどこかふわふわとしている。
「そうだな。ここは冬島だからな。」
ゾロはサンジの体を抱え込み、首筋に鼻を埋める。
「冷たいぞ、マリモ。」
「あっためてくれんだろ?」
うなじにキスをする。
「…勝手にしろ。」
少し頬をそめながら、拒んだりはしない。
もう一度キスをする。
コックの反応を確かめて抱き込んだ手に少し力を込める。
コックを確かめる為に。

ゾロの温もりを感じながらまた、サンジはゆるゆると眠りの世界に引き込まれていった。







ゾロはコックの温もりを感じながら、目を閉じる。
――――こいつは、自分の首筋についた愛の証を、あの薄桃色の痣を知らない――――
ゾロは指先で、その痣があるあたりをするりと撫で、気づかれないようにキスを一つ、おとした。
明日の朝、気付いたらどんな反応するかな。
少し考え自然と笑みがこみ上げる。
もう一度寝顔を覗き込む。
――綺麗だ。――
コックの唇にもう一度キスをする。
「んっ……ゾロ。」
幸せそうに俺の名前を囁くコックを見て心が暖かくなる。
再びコックを抱きしめる。

いつまでこのぬくもりを感じていられるのか。
いつまでこの綺麗な寝顔を見ていられるのか。
「愛している、サンジ。」
そう呟いて眠りにつく。
腕の中の温もりを確かめる様に抱きしめながら。




                                 END









テーマは
「気持ち良さそうに眠るサンジを見ているゾロ。」
だそうです!!
まさに事後のけだるい感じが溢れてますv
ゾロの愛しさ満載の眼差しが目に浮かぶようです。
そして、気を許して安らかに眠るサンジもv
凄く穏やかで幸せな読後感のSSをありがとうございます。
情景がありありと浮かんでくるみたい。
十分甘いですようv
さ〜やさん、ご馳走様でした!





彼の知らない、愛の証を