最近、寒くて仕方ない。 冬島の海域に入ったからだろうか。 みんな揃っている時には点ける暖房も、早朝や深夜に仕事している時はなんだか勿体無くて。 夜は特に困る。 冷え切った体では寝付きが悪く、とは言っても自分一人の為に風呂を涌かし直すのも申し訳ない。 でも、そのままじゃとてもじゃないが、眠れない。 そこで偶々見つけた、ミラクルアイテム。 金も係らず、手間要らず、それはそれは快適なのだ。 そのアイテムの名は、 『ホカホカマリモ』 ホカホカの代償 |
「んんん〜〜〜〜っ!!!」 朝の甲板で、大きく伸びをする。 吐く息も白い真冬の気候も、目を覚ますのには効果的だ。 それに、最近の眠りの深さには本当に頭が下がる思いだ。 この海域に入った当初の寝不足が嘘のようだ。 それもこれも・・・・・・。 (オレって、天才だぜ。よく思い付いたよな・・・・・・って他の奴らは何でアレなしで寝れるかな?) そう思いながら、先程までくっ付いて寝ていたアレを思い出す。 平熱がサンジの微熱程もあるこの船の剣士、ゾロの事を。 何も端からゾロを当てにしようとした訳ではない。 最初は、チョッパーの毛布に潜り込んでみたのだが。 流石は、動物。 気配で目が覚めてしまうのか、それともサンジが冷たすぎるのか。 直ぐに起き上がってしまうのだ。 遅くから寝に行くサンジが、既に寝ているチョッパーを起こしてしまうのは忍びなく。 それは、ウソップも同じで。 ゾロ並に体温の高いルフィは余りの寝癖が悪くて、サンジは翌朝まで殆ど眠れなかった。 ・・・・・・で、結局とどのつまりがゾロという訳なのだが。 コレが、またちょうどいいのだ。 背も同じ位だから肩からつま先まで暖かいし。 冷たい身体のサンジが毛布に潜り込んでも気付かない位鈍いし。 朝自分より早く起きる心配なぞこれっぽっちもないし。 冬の寒い夜に、暖められている寝床で寝られるなんて最高の贅沢だ。 そう思いながら、朝食の支度をしようとラウンジへと向かう。 この後、とんでもないことが自分の身に降りかかるとも知らずに。 *** 朝食には起きてこなかったゾロに、焼きたてのパンとミートローフ、温野菜のサラダを付け合わせた目玉焼き(両目)を用意して男部屋に向 かう。 最近、ゾロの寝起きは特に悪く、放っておくと朝昼メシ抜きになりかねない。 現に昨日起きてきたのはおやつ前だった。 よくよく考えると、サンジがゾロを湯たんぽ代わりに使うようになってからかと思うと、サンジは気が気じゃない。 (絶対ぇ、バレるワケにゃいかねぇ!) 後少しで島に着くらしい。 そこで本物の湯たんぽ買うまで、ゾロはサンジの安眠に必要不可欠。 (何とかゴマ擦ってでも、ゾロには我慢して付き合ってもらうぜ!) 決意も新たに、サンジはバスケット片手に梯子を降りた。 案の定、ゾロはお休み中。 「おい。」 とちょっと声を張り上げた位じゃダメだ。 サンジは念のためバスケットを部屋の隅に置いて、ゾロの傍に戻ると脚を大きく振りかぶる。 今にも、腹に落とそうとしたその時。 パチッ!!! ゾロの目が勢いよく開いて、面食らったサンジが後ろにバランスを崩した。 「うわっ!」 「おいっ!」 サンジの悲鳴とゾロの掛け声が重なる。 サンジが後頭部の衝撃を予想して目を瞑る。 |
………暖けぇ?って何で? 恐る恐る目を開ければ、見えたのは眉間に皺寄せた寝起きマリモのアップ。 一瞬で身体を起こしたのか、倒れかけたサンジの背中に腕を回してくれていた。 「何してんだ、てめぇは?」 表情が示す通り不機嫌そうな口調で。 サンジはカチンときて、いつものように喧嘩になだれ込みそうになったが (いかんいかん。我慢しろ、オレ!) と自分自身を宥め賺してバスケットを指差す。 「メシ。」 サンジが一言そう告げると、ゾロが視線を部屋の隅に巡らす。 だが、サンジに回した腕は解こうとしない。 (これは礼を待ってんのか?) サンジは考える。 Mr.ブシドーと呼ばれたゾロだ。 意外と礼儀作法は身に付いている。 普段、ゾロに対しまともに礼など言ったことはないが、ここは言っとかないとヤバいか。 そう思ってサンジは口を開いた。 「ありがとよ、助けてくれて。もう離してもいいぜ。」 「…………。」 「??メシ、冷めるぞ。」 サンジのその言葉に反応したのか、ゾロはサンジの身体を離してバスケットを取りに向かう。 「食ったら、ラウンジに持って来いよ。」 サンジがそう言って梯子を登り始めたが。 |
………?足首、暖けぇ。って何で? |
下を見ると、ゾロがバスケット片手にサンジの脚を掴んでる。 「??何だよ?オレ、まだ片付けが……。」 「後にしろ。」 「あぁ?!」 「………聞きてぇことがある。食い終わるまで待て。」 ヤバいと頭の中で警報がワンワンと鳴る。 逃げたいけれど、足首はガッチリホールドされてるし……。 「……わぁったよ。降りっから、手ぇ離せ。」 「・・・・・・・・・。」 サンジが言うとゾロは無言で足首を離す。 そして、サンジが降りてくるのを待っているのか、ジィーッとサンジを見ている。 (・・・・・・なんかなぁ・・・。) ちょっと居た堪れない気持ちを味わいながらも、ストンと床に飛び降りるとソファに腰を下ろす。 そんなサンジの行動を確認して、ゾロはその場に座り込むとサンジが持ってきた朝ご飯を食べ始めた。 |
ゾロの食事時間はホントに短い。 ラウンジで1人遅く摂食することの多いゾロだが、大抵サンジが洗い物を始めてから終わるまでに食べ終えている。 だから・・・そう・・・短い筈・・・・・なのだが。 (あ〜、どうしたもんかな?煙草・・・・・・いやいや食事中だし、ここ男部屋だし。なんか・・・もう、早くしてくれねぇかな!) サンジはソファにキチンと姿勢を正して前方を見据えたまま、ひたすらゾロが食事を終えるのを待つ。 ただ、ひたすら。 はっきり言って、逃げ帰りたい気持ち満々なのだが。 ゾロが自分に視線を向けているのに気付いているから余計に。 いつもの何倍にも感じるこの時間。 (あ〜〜〜っ!!もう、我慢できねぇ!オレから言ってやる!!) サンジがそう思った時だった。 |
「ごっそさん。」 ゾロが食事を終えたようだ。 バスケットを持ってサンジの所へ歩いてきて、サンジの前にそれを置くと、隣にドカッと腰を下ろした。 「・・・・・・・・・・。」 「・・・・・・・・・・。」 無言で前を見る2人。 視線なんて全く絡まないどころか、あさっての方向を向いている状態。 その状況に耐えられなくなったのは、サンジじゃなかった。 「・・・・・・てめぇ・・・。」 ゾロが言いにくそうに、言い淀む。 「あ?・・・何だよ?」 思わず喧嘩口調になって、しまったとサンジが思ってゾロを見た。 その顔を見て、正直驚く。 いつも自分に向けられる仏頂面でも無表情でも呆れた顔でもない。 疑問があるんです、って素直に表されたその顔。 面食らってるサンジに、ゾロの直球がヒットした。 |
「なんで、オレの毛布で一緒に寝てんだ?」 |
それこそ、興味津々とはこういうのを言うのだろう。 目なんか、チョッパー並にキラキラしてる。 だから、サンジはつい本音をポロッと吐いてしまった。 |
「暖かそうだったから。」 「・・・・・・は?」 *** 結局、洗い浚いゾロに話してダメ元で頼んでみた。 「次の島で湯たんぽ買うまでよろしくお願いします!!」と。 ペコリと頭を下げていたのでゾロの顔は見えなかったが、そんなサンジの頭に振ってきた答えは、「いいぜ、別に。」だった。 |
「その代わり、ちゃんと報酬寄越せ」 |
これが、ゾロの会話終了時の言葉。 その後何すればいいのかしつこく聞いても、今日寝る時の一点張りで。 (何されるのかな?酒なら、ま、しょうがない。とっときの出してやるんだけど、それならそれって言いそうだし・・・。) サンジは、それから寝る時まで気になって気になって仕様が無かった。 |
そして、夜。 翌朝の仕込を終えて、冷える身体を抱えて男部屋へ降りる。 ソファ横のゾロの所へ行くと、ゾロが毛布をかけて横になってはいたものの、目はパッチリ開いていた。 サンジは思わず時計を取り出して眺める。 12時30分。 いつものゾロなら熟睡中のはず。 今日の日中、そんなに昼寝しているようにもみえなかったのに・・・。 訝しく思いながらも、ゾロが毛布の片端を上げてくれるのでいそいそと中へ入る。 下にはサンジ用の毛布も敷いてあって・・・。 (うわ〜っ、やっぱ、暖けぇ!!) うっとりしながら毛布に頭を擦り付けていると、ゾロが腕を回してきた。 「ん?」 サンジがその腕に視線をやりながら、小声で聞く。 これは、何のマネ?と。 「昼間言ったこと覚えてんな?」 「おう。」 「何でもいいな?」 「おう。こうなりゃ、オレも男だ。覚悟決めてきた。足ツボマッサージでもプロレス技でも受けて立つぜ。」 そう、サンジは思ったのだ。 普段、喧嘩ばかりの自分達だ。 きっと、仕返ししたいに違いない。 口ではサンジに勝てないゾロだ。 腕でも、結局最後はナミさんの鉄拳で終了ゴングがカンカンカン。 だから、きっと力技だと。 「んじゃ、目瞑れ。」 ゾロのその言葉に目をギュッと閉じる。 (どんな痛い事でも耐えてやろーじゃないの!) そう思っていたのに・・・。 |
ムニッ! |
(???何だろ?暖けぇ・・・。) 自分の唇に柔らかくて暖かいものが乗っている。 痛くはないので、ちょっと目を開けて確認してみたりしたら。 目の前にある、マリモ色の睫毛。 (ホヘッ???・・・・・・マリモ?って・・・・・・・) え〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!! と声を上げたかったのだけれども。 声を出そうと口を開けた途端に入り込んできた、唇よりも熱い軟体動物。 唇で口は完全に塞がれ、その軟体動物は縦横無尽にサンジの口内を行ったり来たり。 「ん!んんんんっ!!んんっ!!!」 それがゾロの舌で、今しているのがゾロとのそれはそれは深いキスと気付くのに約1分少々。 声を何とか出して、押し返そうにもゾロは完全にサンジに乗っかっていて。 だから、腕を背中に廻してゾロのシャツを引っ張ってみたりして。 (暖かいんだけど・・・・・・これは、その、どういうことなの?!!) 抱き締めあっているかのようなこの状況に、サンジは最大級にうろたえる。 あまりに続いたディープキスに息も絶え絶えになった頃、漸くゾロが身体を少し浮かして唇を離した。 「・・・・・・何・・・してくれんだ、てめぇは・・・?」 心底疲れたように吐息交じりでサンジが聞けば、ゾロはニヤッと笑って言った。 「まだまだ、これからだぜ?」 「???どういうことだよ?」 「こういうことだよ。」 ゾロがサンジの着ているシャツのボタンに手を掛ける。 プチプチと外されていくそれを、少しの間呆然と見ていたサンジ。 3つ目位で、それが意図しているものに気付き、バッとゾロの手を押さえた。 「え、ええええ、ええ、えと、その・・・・・・え?」 |
「だから、スんだよ。SEX。」 「……………?!!セッ―――」 |
「でけぇ声出すな。みんな起きちまうぜ。」 サンジの口を節くれだった掌で押さえながら、ゾロがからかうように言う。 膝をゾロの脚で押さえられ、顔の両脇にゾロの腕。 お腹の上にゾロが乗っかってるから身動き取れるのは、両手のみ。 そう思ってさっきからゾロの肩を力任せに押しているのだが、如何せん体格と体勢がモノをいい、ビクともしない。 「何でもいいっつっただろ?」 「………タマってんのかよ?」 切羽詰まったようなゾロの表情に、押さえられた口のままサンジが問う。 「……そう言やヤらせてくれんのか?」 「ヤらせるか、アホ!処理なら自分1人で何とかしさらせ!」 |
「じゃ、てめぇは処理相手にオレ選ぶのか?」 「は?」 |
思ってもみなかった質問に驚いて、ゾロの肩を押す手を下ろした。 すると、ゾロがサンジの口から掌を外す。 暫し無言で見詰め合う2人。 「・・・・・・えっと、どういう意味かな?植物の思考回路は人間のオレにはよく・・・」 「ちっ!てめぇは・・・・・・足りない頭でもちったあ働かさないと腐るぞ。」 「―――っ!!!・・・・・・教えろよ。全っ然、わかんねぇ。」 「タマったときに手近に女がいなかったら、オレとヤろうと思うか?って聞いてんだよ。」 「!!!・・・・・・・・・いや、思わねぇ。」 「じゃ、そういうことだ。」 ゾロはそう言うと、また、サンジのシャツのボタン外しを続行する。 最後まで外されてシャツを左右にパカッと開けられて、うしっと言われてハッと我に返るサンジ。 「ま、待て、待て待て待て〜〜〜っ!さっぱりわからん!それで、何でこうなんだよ?」 「いちいち言わなきゃわかんねぇのか!てめぇは!!」 「いや、わからんだろ、フツー。ちゃんと言葉で説明しやがれ、このアホマリモ!」 「―――っ!!!しゃーねーな。一回しか言わねぇぞ。耳かっぽじってよく聞きやがれ。」 ゾロがサンジの耳元に口を寄せてきた。 サンジはそれこそ何を言われるのか全く検討付かないまま、ゾロの言葉を待つ。 そして、言われた台詞。 「てめぇに惚れてんだよ、オレぁ。」 口をポカンと開けて、自分の前に来た顔をじっと見る。 暗闇ではっきりとは見えないが、頬が赤く染まっているようないないような。 言われた言葉を理解するのに1分。 それが、自分に対して言われた言葉と解すのに、更に1分。 言っている相手を自分の中で認めるのに、更に3分。 計5分・・・・・・サンジは固まったまま、ゾロを見ていた。 「おい、大丈夫か?てめぇ・・・・・・」 心配になったのか、ゾロがサンジの頬をペチペチと叩く。 漸く戻ってきたサンジの様子はといえば・・・・・・。 ゾロ以上に頬は真っ赤。 ついでに言えば、首筋も、耳も、肌蹴られた胸元も、腕も、見えるところ何もかもが真っ赤に染まっている。 も1つ付け加えるならば。 (胸がなんかホカホカ暖けぇ。・・・・・・なんだ、コレ?) 心臓がバクバク言ってるサンジに、ゾロが訝しげに問い掛ける。 「わかったのか?オレの言った事・・・。」 「・・・・・・おう。」 「んで、いいのか?続けても?」 「・・・・・・・・・寒くねぇか?」 「あ?」 「それして、寒いならヤダ。」 そんなサンジの台詞に、ゾロがブッと吹き出す。 サンジは真っ赤になってプーッと頬を膨らませながらも、ゾロの首に手を廻した。 「暖めてくれるんなら、いいっつってんだよ。早くしやがれ!」 「はいはい。」 照れ隠しのサンジの台詞にゾロはそう言って、サンジの開いた胸元にキスを1つ落とすと、プーッと膨らんだ頬を挟んでサンジに口付ける。 キスをしながら、サンジの背中に手を廻して抱き締めてくれる。 暖かいゾロの身体に、サンジの身体も急速に体温を上げていく。 背中を擦られ、胸の尖りを弄られて、もう毛布も邪魔になるほど熱くて。 サンジのシャツを脱がし、ゾロもシャツと腹巻を脱いで身体を寄せ合う。 それがまた、なんともいえない暖かさで。 サンジはまた、ホカホカの幸せを味わうのだ。 そして寒いといけないからと、ゾロはなるべく身体を浮かせないようにサンジを抱き締めたままボトムのホックを外す。 自分のも外して、両方のペニスを取り出して、一緒に扱き始める。 「ん、んん・・・・・・んはっ、あ・・・あぁん。」 「寒くねぇか、サンジ?」 「ああっ・・・・・・あ、ん・・・・・・うん・・・・・てか、あっ・・・アチイ・・・・・・。」 ゾロにしがみ付きながら、サンジが甘い声を上げる。 (ヤベッ。こんなん、クセになりそうだ!・・・・・・でも) サンジは高みに昇らされながら思う。 ゾロのしてくることは全然イヤじゃない。 寧ろ、暖かくて熱くて気持ちよくて・・・・・・嬉しくて。 (こんな気持ち、コイツじゃなきゃダメかもしんね。ゾロに鈍感なんて・・・・・・他人のこと言えねぇな、オレも。) 唇は塞がれて、ゾロが乗っかった身体は妙に熱くて。 余りの心地よさに身も心もホカホカになっている。 そして、終に迎えた絶頂に2人して身体を震わせる。 互いの腹の間に放出された白濁を2人して見て、その後視線を合わせて、サンジはゾロに言った。 |
「オレも、てめぇのこと好きみてぇ。」 「?!!ハハッ・・・・・・そりゃ、よかった。」 |
それはそれは嬉しそうな顔で笑うゾロに、サンジはまたしてもホカホカになって思わず抱き付いちゃったりした。 *** |
次の島には、3日後に着いた。 その島で、サンジは湯たんぽを買ったのかというと・・・・・・結局買わずに終わった。 なんてったって、天然湯たんぽ『ホカホカマリモ』が常に横にいたから。 島の宿でも、島を出航してからも、冬島海域を抜けても。 常に『ホカホカマリモ』はサンジにくっ付いている。 甲板で昼寝をしていて傍にいなければ、サンジがひっつきにいっている。 夜まともに寝られない日も増えたけど、そこはホカホカの愛があるから。 サンジは結構幸せだ。 災難を被ったのはその2人と船長を除く4人のクルー。 ウソップ特製耳栓ができるまで、寝不足だったのは言うまでもない。 END ホカホカマリモが欲しい〜〜〜!!(魂の叫び) あああ、ゾロスキー冬の超憧れアイテムを形にしてくれてありがとう! そうなんだよ、ゾロの体温は無敵なんだよおおおお ああああ、いいなああったかサンジ。 あれこれされて、寝不足でも幸せだ〜vv 都しゃん、一万打おめでとう! |