■ペットライフ  -2-





「さあどうぞ」と引導を渡され、サンジと呼ばれた男は途方に暮れたような表情でゾロを見た。
それを見返し、わざと自分から動かないでベッドに寝そべる。
「・・・う」
サンジは悔しげに下唇を歪め、傍らのカリファに振り返った。
当然、カリファは無言でワインを飲むばかりだ。

沈黙に耐え切れなくなったのか、それとも観念したのか。
サンジは已む無くそろそろと膝立ちで歩くと、ゾロの腹の上に跨った。
恐る恐る手を伸ばし、股間をむんずと掴む。
硬い感触はあるだろうが、勿論まだその気にはなっていない。
乱暴に掴まれれば痛いほどだ。
「いきなりだな」
「うっせえ」
にぎにぎと指を動かし、確かめるように布越しに擦る。
「とっとと勃て」
「どんだけ無茶振りだ」
ゾロはため息を一つ吐くと、両腕を伸ばしてサンジの脇の下に入れた。
そのままヒョイと持ち上げ顔を寄せる。
ぶつかる寸前にぎゅっと目を瞑る表情が、なんか可愛いなと思いながら優しく口付けた。

「・・・ん〜〜〜〜〜」
キスしながら唸るってのも珍しいが、声を出すごとに微妙に振動が伝わってきてこれはこれで面白い。
最初は唇だけ付けて軽く吸っていたが、舌で隙間を抉じ開けるようにして深く合わせ直した。
「ふ、ぐ・・・」
上に覆いかぶさりながら、仰け反るように背を撓らせている。
逃がすかと肩を押さえ腰を引き寄せて、そのままくるりと反転した。
首から下がる鎖がじゃらりと音を立て、サンジの腕に絡まる。
「・・・ん、ん・・・ん―――」
舌を食み貪るように口付けながら、パジャマの中に手を入れて手際よく脱がしていく。
サンジ本人はただ口付けに応えることに必死で、上衣はいつの間にか肩まで肌蹴られズボンは下着ごと膝下まで
ずり下げられていたことにも気付いていない。
ただ、ゾロの衣類がじかに肌に触れる感触に慄いているばかりだ。
「んまあ、案外と情熱的」
カリファの呟きに、はっと我に返ったように目を見開いた。
「ふぐっ、ん、ん―――っ」
膝下に衣類を縺れさせたまま、身体を跳ねさせる。
本人は抵抗しているつもりだろうが、まるで陸揚げされた魚みたいで活きがいい。
「暴れんな」
ゾロは唇をずらして囁きながら、片手で宥めるように剥き出しの股間を撫でた。
「んぐ―――っ」
飛び跳ねる動きが激しくなる。
「サンジ、暴れない」
カリファのその一言で、ぴたりと動きが止まった。
悔しげに唇を噛むのに、一緒にゾロの下唇まで噛まれてしまう。
好きにフガフガさせておきながら、ゾロは大人しくなったのをいいことにゆっくりと柔らかい部分を揉みしだき始めた。
ふんっふんと鼻息が頬に当たる。
同性の身体だからどの辺りが気持ちいいのか大体はわかって、ゾロは殊更丁寧に優しい手付きでサンジの身体を高めていった。
「・・・ふ、う―――」
明らかに先ほどとは違うトーンの呻き声に、じっと見つめていたカリファがうっすらと笑う。
どんだけドSだよと他人事に見て呆れながら、ゾロ自身浮き立つ想いで愛撫に精を出した。

今まで適当に遊ぶばかりだったから、相手も慣れた遊び女ばかりだった。
こんな風に、ゾロの指の動き一つにも翻弄される初心な反応は初めてで新鮮で。
手間が掛かるとか面倒だと言ったマイナス面は、微塵も感じない。
寧ろ楽しい。
もっともっと、恐れ戦くような無体を施してやりたい。

「ロロノア君って、バイだったの?」
カリファの声に現実に引き戻され、ゾロは冷静さを装いながらも口端から垂れかけた唾をごくりと飲み込んだ。
「いえ、男は未経験です」
「それにしては手馴れて見えるわ」
「男でも女でも、やるこた一緒でしょう」
キスして舐めて肌を撫でて、蕩けた部分に入れるだけ。
ただ、男の硬い身体は自然に蕩けないだけで。
「その子、なにもかも初めてなのよ。優しくしてあげてね」
乗馬用の鞭でぶつ真似をした女と同一人物とは思えないような猫なで声で、カリファは引き出しからジェルを
取り出しベッドの上に投げた。
「ペットなのに、未経験?」
「愛玩用ですもの」
金髪碧眼に白い肌。
なるほど、見てくれだけで愛でられる部類かもしれないがそれならカリファの方がよほどゴージャスだ。
そもそも、このくるりと巻いた眉毛なんかかなりファンキーではないか。
眺めているより弄くった方がよほど楽しいものを。
「まあ、役に立つペットのようですがね」
先ほどの料理を思い出し、家事全般も任せられるペットなら眺めているだけでも満足かと思い直す。
カリファの好みではなかったということだろう。

観念したように目を閉じてじっとしている、薄い瞼にそっとキスを落とした。
直接的な刺激を受け、ゆるりと勃ち上がったペニスを撫でながら、繁みを掻き分けその奥へと指を這わす。
快感にうっとりと目を閉じていたサンジが、弾かれたみたいに身体を起こした。
「う、わわわわわっ何をするっ」
ぴっちりと膝を閉じ肘を着いて逃げを試みるに、カリファの声が鞭のように飛んだ。
「サンジ」
「・・・カ、カリファさん・・・」
情けなく眉を下げ、ほとんど涙目で振り返る。
「むりです、おれもう、とてもむり・・・」
「主人の言うことが聞けないの?」
「だ、だってこんな・・・と、ても」
シーツを握り締めた拳が、ふるふると震えている。
恐ろしいんだろうなあと半ば同情し、もう半分は甚振る快感に不謹慎にもワクワクしてしまった。
虐げられる男を見てこんなに興奮するのは初めてだ。

「貴方が悪いのよ、あたしの男を誘惑するから」
「だから、そんなんじゃないんです。おれはなにも・・・」
「あら、口ごたえする気?」
カリファの双眸がすっと眇められた。
元々際立った美貌に加え、瞳に力が入ると更に冷酷さが増す。
「カ、カリファさ・・・」
「じっとして、足を開きなさい」
「―――っ!」
サンジは縋るような目でゾロを見た。
見られても困るとばかりに、軽く肩を竦めて返す。
気障な仕種に腹が立ったのか、踵でガンと肩の辺りを蹴ったあと突っ伏すようにベッドに伏せた。
そうして、うつ伏せた上体で足を開く。
「なにやってるの」
カリファの呆れた声にも、笑いが潜んでいる。
「あしを、ひらいてます」
カリファはカツンとヒールを鳴らして立ち上がると、つかつかとベッドに近寄り手にした鞭を揮った。
ぴしっと鋭い音が鳴り、白い尻に一線の筋が入る。
文字通り弾かれたように背をのけ逸らし、サンジは短く悲鳴を上げた。
「私の言っている意味がわからないの?お馬鹿ちゃん」
「か・・・す、すみません」
みるみるうちに蚯蚓腫れになる尻に、鞭の先端を押し付けた。
「仰向けで、しっかり足を開きなさい」
サンジはガクガクと肘を震わせながら身体の向きを変え、片足を曲げて膝を開いた。
萎えてしまった中心部分は僅かに色濃く、足の付け根や太股の内側はそれとは対照的に際立って白い。
「そうよ、そのまま腰を上げて」
「・・・かりふぁさんっ」
「上げなさい」
有無を言わさぬ口調に、サンジは顔を背けたまま足の裏に力を込めて腰だけ上げた。
まさにご開帳のポーズ。
「そうよ、やればできるじゃない。いい子ね」
「―――・・・」
長い前髪で目元は隠れてしまっているが、噛み締めた唇が細かく震えている。
ゾロは宥めるように、手を伸ばしてその顎に触れ頬を撫でた。
「いい子だ、そのままじっとしてろ」
「・・・ひっ」
金色の繁みの中で力なく揺れるモノを口に含み、舐め上げた。
それだけで大げさに身体を跳ねさせ、反射的に足を閉じようとする。
「サンジ」
「ふ・・・ふひっ」
無意識に逃げる腰を、なんとか掲げて保たせようとバラバラな動きを見せながら踏ん張った。
あまりの一生懸命さに愛しさが増して、もっと虐めたくなってしまう。
「よしよし、いい子だな」
見る間に硬く濡れそぼったそれを、じゅぶじゅぶ音を立てて舐めしゃぶってやる。
そうしながら、ジェルで濡れた指を奥まった場所に擦り付けた。
「ひ、い・・・い、い」
ゾロにとって男のものをしゃぶるなども初体験だったが、不思議と気持ち悪いとは思わなかった。
寧ろなんとも愛しくて可愛い。
もっともっと、口の中で転がしてやりたい。
「あああ、や、やだっ・・・やあっ」
調子に乗ってぐいぐいと吸い付いていたら、じわりと先端から苦い汁が滲み出た。
「むり、むいっ、や・・・でるっ」
「まあ」
カリファの大げさなため息が聞こえる。
「なんてはしたない、もうそんなになってしまったの?」
「か・・・りふぁさ・・・や、やめさせ、て」
「なあに?なにを止めさせるの?」
心底意地の悪い問い掛けに、ゾロの中でサンジがふるふると震え続ける。
「これ、これ・・・やあっ・・・」
「これってなあに?」
ふええと泣き声が漏れる。
「なめ・・・やめ、なめ、るの」
「なに?なにを舐めるの?」
「お・・・んちん・・・」
「聞こえないわ」
「・・・ひ―――」
「はっきりおっしゃい」
ぴしっと、今度は軽く膝頭を鞭で叩かれる。
ゾロは口を離し、舌で見せ付けるようにねっとりと舐めた。
「・・・ふあああああ」
「んまあ、いやらしい」
つぷっと指先を中に入れる。
ジェルの滑りを借りても硬くて狭い場所だ。
「こりゃあ」
「どう?」
カリファに感想を求められ、ゾロは素直に答えた。
「女より可愛い場所だが、正直無理だろ」
小さくて慎ましくて、狭すぎる。
「そうでもないのよ」
二人掛かりで繁々と観察され、サンジはもう羞恥死寸前になっていた。

「根気よく解してあげて」
「やるだけやってみっか」
「・・・やめろおぉぉ」
抗議の声はカリファのヒールの音に掻き消された。
つかつかと歩み寄ると、サンジの顎の下に鞭の先端を当て顔を上げさせる。
「サンジ、自分で膝裏に手を当てて押さえてなさい」
「・・・あ、え?」
「こうすんだよ」
ゾロに手を持たれて指導され、サンジはぎゃあああと喚いた。
「いやだ、こんなっ」
「サンジ」
「・・・あああああ」
もういやだと泣きを入れながら、サンジは言われた通りに自分の両手で両足の膝裏を抱えた。
さあどうぞと言わんばかりの大開脚だ。
「よしよし、力を抜いてな」
「・・・うっ、う・・・ふ」
グスグスと鼻を鳴らし、しゃくり上げている。
仰向いて声もなく泣く姿が、またそそられた。
「いたっ・・・い、ったい・・・」
「大丈夫よ、ほうら」
ゾロの指が慎重な動きで周囲を揉み解していく。
少しずつ進みながら、中を探る動きも大きくなっていった。
「ふ・・・は―――」
「そう、息を吐いて。そう、いい子ね」
「―――は・・・あ・・・」
ゾロ自身、まさか男のこんな部分をじっくり観察しながら解す日が来るとは、思いもしなかった。
だが悪くない。
と言うか、相当楽しい。





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