
「言っておくが、男を抱くのはお前が初めてだからな」
寝台の上でゾロは、顔を背けているサンジにそう言った。
じっとサンジを見つめていると、サンジは視線をゾロに戻した。
「…何でしょう」
「サンジがあまりに綺麗だから見とれていた」
ゾロが答えるとサンジは眉を寄せ、顔を横に向ける。
「どうして横を向くんだ、サンジ」
「…見ないでください」
顔を手で隠し泣いているように見える。
その態度に眉を寄せるが、ゾロは優しく問いかける。
「どうしてだ?」
「…」
「サンジ…」
「…恥ずかしいからっ」
優しいゾロの問いかけに少しずつ口を開く。
「私は…ゾロ様が…今まで抱いてきた…女性とは…違う…。あなたと…同じ…お…とこだ。きれ…いだな…わけがな…い。」
泣きながら答えるサンジは、今までゾロが目の前で女を抱くのを見て平然としていた態度からは想像の出来ない姿だ。
そのギャップとサンジの気持ちが愛しくて、顔をゾロの方へと向かせたくなる。
「サンジ、こっちを向け。」
「嫌ですっ」
「お前が男だなんて始めから分かっている。俺は女ではなくサンジを抱きたい」
だが横を向いたままサンジは顔を向けない。
ゾロは少し考え溜息を吐いてサンジから少し離れた
私の態度に呆れられたのだろうか、やはり男だからだろうか。
サンジは不安になり離れてしまったゾロに滲ませた視線を移した。
ゾロは寝台に座りサンジとに背中をむけていた。
「…ゾロ…様」
「その呼び方を止めろ」
「…え…?」
急に言われ思考がが一瞬止まった。
「様を付けて呼ぶな。そうでなければ、返事をしないからな」
「…ゾロ様」
様を付けるなと言われても、今までそうやって呼んできた相手を急に変えられない。
しかもゾロは王子で、自分から見てもずっと身分は上だ。
呼び捨てで呼んで欲しいという気持ちは分かるし、そう呼びたい気持ちもある。
だが、ついいつもの呼び方をしてしまう。
呼ばれたゾロは返事をしなかった。
ゾロは呼び捨てをしない限り絶対に返事をしないつもりなのだろう。
ゾロが一度決めたことを曲げない頑固な性格なのはサンジがよく知っている。
「…ゾロ」
恐る恐るサンジが呼ぶと、ゾロはようやく振り返った。
「サンジ…」
答えるようにゾロがサンジを呼ぶ。
「やっとこっちを見たな」
サンジを見てニヤリと笑う。
「ゾロ様っ」
顔を赤くし、口調が強くなる。
「ゾロだ」
ほんの少しだけ掠れた、ゾロの声と自分を見る真っ直ぐな瞳。
ドキドキする。
ゾロが側にいるだけでドキドキしているのに、このように見つめられゾロの声を聞くと、尚更。
「…ゾロ」
名前を呼ぶと、唇が重ねなる。
深く、深く。
命令されてしたキスよりも、もっと深くて優しい、口付け。
唇を触れ合わせながらゾロは上着の下へと指を潜り込ませ、触れられると体がビクッと震えた。
「…ン…ッ…」
指を動かす度にサンジの体が跳ねる。
上着のボタンを外すと、サンジの白い肌が露わになる。
手早く服を脱ぎ落としたゾロの身体を見てサンジはほっと溜息を吐いた。
「…何だ?」
「ここに、まだあの女性の残した跡が残っていたらどうしようかと思っていました」
ゾロが自分の胸を確認する。
「もし残っていたら嫉妬でどうにかなっていたかもしれません」
サンジのせつない顔を見て
「そんな顔をするな。」
「ゾロ…あなたのこの肌に跡は付けないでください。」
本当ならあんなことをしないでくれと言いたかった。
今までゾロが他の誰かを抱いているのを見るのがどれだけ辛かったことか。
だからせめて、見たくない。
「違う、あれは…!」
狼狽えるようにゾロは声を上げて、
「あれは…そうじゃないんだ…」
ほんの少し曇ったようなゾロの瞳が目の前に見える。
「誰かを抱いてたのは…、あれは…相手が好きだったわけじゃない…女を抱くのが好きだとかそうじゃなくて…」
サンジはじっと目の前のゾロを見つめた。
「どういうこと…でしょうか?」
じっとゾロを見ていると、ゾロは恥ずかしそうに目をそらした。
相手を好きなわけではなく、抱くことが好きな訳じゃない。
それなのに、サンジに見せつけるようにしていたのは…。
その理由が何となく分かって、サンジは目を逸らしたゾロをじっと見つめ続けた。
ゾロはその視線に気がついていて、ようやく振り返った。
じっと見ていたサンジと目が会う。
口を結んで言いにくそうにサンジを見つめる。
ゾロの言葉を待って、サンジが見つめたままでいるゾロは何かを決心したのか、口を開いた。
「お前が…嫉妬してくれないかと思ったから…」
ゾロが呟く。
「…それなのに、お前は全然平気な顔をしてるし!」
「…え…?」
サンジは驚いて声を上げた。
平気な顔などしていた覚えは無かった。
見ているのが辛くて、どれだけ目を逸らしたかったか。
だが、そうしてしまえばゾロへの気持ちがばれてしまう。
そうなってはいけないと、サンジは必死に耐えていた。
「平気では無かったですよ」
今度はゾロが驚く。
サンジの気持ちには全く気付いていなかったのだろう。
大きく目を見開いて、サンジを見つめた。
「…嫉妬して、気が狂いそうだった」
「サ…ンジ…」
サンジはゾロの頬に手を据えてゾロにキスをした。
ゾロはその唇を喉元へと降ろす。
ゆっくりと、胸へと降ろすとサンジの体が小さく震えた。
「もう…、誰も抱かないから…。こういうことをするのは…お前とだけ…」
サンジはゾロの首筋を抱く。
手に入らないと、ずっと諦めていた人。
そのゾロが、サンジだけだと呟く。
「そうして下さい。でないと… 貴方と寝た相手を、殺してしまいたくなる」
間近に見えるゾロの瞳が、大きく開き頷いた。
そして、首を抱いているサンジの手にギュっと力が込められた。
「ん……、あぁっ…」
手を滑らせて下腹部へと指を這わせると、サンジが声を上げた。
体に張り付くようにピッタリとしたパンツの上から触れただけでも、その昂ぶりを感じる。
ゾロはパンツを下着ごと引き下ろすと、立ち上がっていた前方に指で触れた。
「ッ…、あぁッ……」
サンジは喉を反らせて、ゾロの指に感じていることを伝える。
ゾロが指を動かすたびサンジの体が跳ね、手の中のサンジが反応する。
「感じやすいな、サンジ」
「言…わない…くだ…さい…ッ…」
顔を赤くして、サンジは顔を背ける。
顔が赤いのは恥ずかしいからなのか、それともゾロの与える快楽に上気しているのか。
「誰かに、そんな顔を見せたことはあるのか?」
「ある…わけ、ない…」
小さな声でサンジが答える。
その返答にゾロは満足そうに微笑んだ。
ゾロはさらに強く抱きしめた。
「……ン…ッ…」
体を密着して抱き合うと、お互いの昂ぶりに触れる。
サンジが手を下へ下ろして、ゾロの前方へ触れた。
「何もしていないのに、感じてくれているのですか?」
頬を赤くしながら嬉しそうに、サンジが微笑んだ。
「そりゃあ、お前のあんな顔を見ていれば…何も感じない訳がない」
ゾロの言葉に、さっきまで感じていたのを思い出したのかまたサンジは唇を結ぶ。
感じて、顔を赤くするサンジを見たくてゾロはまたサンジの前方へと手を伸ばした。
「…ン… …ンン… ン…」
唇を結んで、サンジは溢れ出る声を抑えている。
感じているのに必死に耐える姿はそそられるが、綺麗なサンジの声を聞きたい。
ゾロは指の動きを止めないまま、サンジの唇に口付けた。
そして離すと、開いてしまった唇から声が漏れる。
「あっ…… あ…っ… ゾ…ロォ…ッ」
指の動きを早めると、サンジの声も早くなる。
「ん…あぁぁ…ッ……」
一層大きい声を上げると、サンジは白い肌の上に快楽の証を迸らせた。
その姿は美しく、ゾロは思わず見惚れてしまう。
胸を上下させて苦しげな息をするサンジが落ち着くのを待って、ゾロは指を降ろした。
ゾロは男を抱いたことは無いが、どこでどうするのかは分かっている。
ゾロはサンジのもので濡れた指で、サンジの最奥への入り口に触れる。
「あっ…」
と、サンジは驚いたような声を上げた。
ゾロはゆっくりとそこを撫でてから指を中へと差し入れた。
「んっ…うぅ…っ…」
快楽と言うよりは痛みを感じる声でサンジは呻いた。
「大丈夫か?」
「だい……じょ……ぶ…、…ん、ん…ッ」
「誰かを、ここに受け入れたことは?」
「ある…わけ、ない…っ」
ゆっくりと指を押し進める。
根本まで指を入れると、サンジが慣れるまで待ってから中で指を動かした。
「あーッ…… アッ…… う、う…ッ」
痛みでサンジは声を上げる。
「悪い、止めることはできない」
「大丈夫です…続け…て」
サンジの顔は痛みで歪んでいる。
だがその顔はどこか艶めいていて、思わずドキッとしてしまう。
サンジを感じたい、指ではなくゾロ自身で。
「ん…、あッ…」
指を動かしていくと、一点に触れた時にサンジが色の変わった声を上げた。
それは痛みに喘いでいるのとは違う。
もう一度同じ場所に触れると、サンジはまた声を上げ、一度解放して萎えた前方がまた反応を見せた。
サンジが感じる部分を重点的に愛撫しながら、ゾロは指を増やして行く。
充分に開いた事を確認すると、ゾロは指を引き抜きゾロ自身を押し当てた。
「んっ…あっ…… あぁぁッ…」
指と、ゾロ自身とでは重量感が比べ物にならないほど違いサンジはまた苦痛に顔を歪めた。
ゾロを包み込むサンジの熱を感じて、目眩がしそうな程の充足感を感じる。
サンジに辛い思いをさせてはいけないと思う。
だが、感じたサンジの熱に抗えず、ゾロは根本まで押し込んだ。
「あぁ…っ、…はっ……はぁ…っ」
サンジがゾロの頭を抱え込んで声を上げた。
強く押さえつけられたゾロの頭は、サンジの感じる痛みを物語っている。
誰かを受け入れるのは初めてだというサンジの中はきつくゾロを締め付ける。
耐えきれずにゾロは腰を動かした。
「ん……ん…… う…っ… あッ……あ…ッ…」
サンジの感じる部分は分かっている。
そこに当たるようにゾロは動いた。
「あーッ……あっ…あっ…」
指で触れるよりも強い快楽を感じるのだろう。
サンジの前方がまた頭をもたげる。
サンジの痛みを和らげようとゾロは前方に指で触れる。
「あぁ…ッ… あッ…」
次第にサンジの喉から漏れてくるのは苦痛ではなく快楽の声だけになる。
「ゾ…ロォ…」
お互いに強い快楽を感じて、弾け飛びそうだった。
だがゾロは唇を開く。
「城には…、もう、戻らないから、…だから…」
快楽を感じていながら必死に耐えている表情でサンジがゾロを見る。
「だから、どこにも行くな…。 サンジ」
ゾロの言葉で目の前が滲む。
「行き…ません、ゾロ…、貴方…を…置いて…、どこに…も」
体を繋げたままで、ゾロはサンジの唇に、自分の唇を近付けた。
目が滲んでゾロが見えなかったサンジは気配を感じたのかゾロを見上げ、唇を開く。
その唇をゾロは塞いだ。
サンジの足を捕まえて開かせながら舌を絡めると、ゾロがサンジの中をより一層深く抉る。
「ん…ん…っ」
塞がれてくぐもった声でサンジは喘ぐと、二人は同時に快楽に身を任せて、耐えていた自分自身を解放した。
日差しが窓から差し込んでいる。
いつの間にか眠ったのか、気がつけばもう夜が明けていた。
かなり冷え込む砂漠の夜だというのに何も着なくても寒くて目が覚めることが無かった。
お互いの体温で暖められていたからだろうか。
サンジは体を起こして、隣へと視線を落とした。
ゾロが幸せそうな顔をして眠っている。
じっと眺めていると、昨日の夜の事を思わず思い出してしまう。
ゾロはこの国の、ただ一人の王になるべき人。
だというのに、私は我慢出来なかった。
もう、後戻りは出来ない。
誰にもゾロを渡したくなかった。
たとえ王でも、この国でも。
ゾロの顔を見ているとキスしたくなり、そっと頬に口づけ、ベッドから離れた。
「…わっ」
足を床につけ、立ち上がろうとするサンジを何かが引いた。
振り返ると、目を擦りながらゾロがサンジの腕を掴んでいる。
「…起きていたんですか」
「今、起きた」
ゾロは眠そうに見上げながら掴んでいるサンジの手首を離さない。
その視線に思わず微笑むと、ゾロにベッドに引き戻された。
ゾロに抱きしめられ、昨晩のことが思い出された。
恥ずかしくて
「手を、離してください。ゾロ様」
ビクッと抱きしめるゾロの手が震えた。
「どこへ行くつもりだ」
一人でここへ置いて行かれるのを恐れているように、ゾロは瞬きすら忘れて言った。
「あれは…嘘だったのか…?愛してると言ったのは…俺を置いて何処にも行かないと言ったのは…嘘…だったのか…?」
「え…?」
震えた声に顔を上げゾロを見ると瞳は潤んではいなかったが、涙を流しそうな気がした。
傷ついて、悲しんでいる。
そんな顔をしていた。
「そんな顔をしないで下さい。ゾロ様を置いて私が、どこへ行くと言うのですか」
「でも…その、呼び方…」
「あれは…貴方と愛し合う時だけです」
「何で」
「貴方を誰にも渡すつもりはありません。貴方から離れることも。でも、貴方は王子です。この国にとっても、私にとっても」
ずっと呼び捨てを続けていてはゾロが王子であるということを忘れてしまいそうで、そうなってしまわないように、戒めの意味もあった。
ゾロはムッとした顔を向けていたが、納得したのか反論はしなかった。
「お腹も減ったでしょう?朝食を作ってきます」
ゾロにそう告げると、サンジは部屋を後にした。
出来上がった朝食をテーブルに並べ、二人は席についた。
城に居たときのような豪華な食事ではない。
だが、サンジが作ればどんなに質素な料理もおいしい。
そして二人にはこの食事の方がゆったりと落ち着くことが出来た。
「…サンジ」
「何でしょう、ゾロ様」
スープを口に運びながら、向かいにいるサンジに目線を合わせてゾロが呼ぶ。
城ではこうして同じテーブルにつくことは無かった。
「…この場所を、城にいる連中は知ってるのか?」
「…いいえ、この場所を知っているのは…私とゾロ様の他にはミホーク王だけかと思いますが」
「誰かが、ここへ俺を連れ戻しに来る可能性はあるのか?」
「ここへ来る時には、ゾロ様を捜しに行くとは告げてありますが、この場所だというのは王しか分からないでしょう。ただ…、もしも
王がこの場所を誰かに教え、誰かが来る可能性がないとは言えません。貴方は…この国の只一人の王子ですから」
この国の、王子という言葉にゾロは体をピクリと動かした。
「俺は…行かないからな」
視線を逸らさず、サンジを真っ直ぐ見たままゾロは言った。
「何を言われても、行かない。ここでお前と一緒にいる」
「ゾロ様…」
「お前と離れて城に行くなんて絶対にしない」
「…ゾロ…」
手を伸ばすと届く距離にサンジはいる。
ゾロはサンジの頬に手を伸ばした。
サンジはその手に自らの指を重ねた。
「行かせません、ゾロ様…。貴方を…どこにも。私は貴方とともに」
「サンジ…」
この手を、離したくない。
何があっても、絶対に。
二人はお互いに同じ思いを浮かべていた。
気持ちを口にしなくても、目を合わせれば分かる。
その時、遠くから馬が嘶く声が聞こえた。
「サンジ…!」
ゾロはビクッと体を震わせた。
この辺りで馬に乗る者など見かけることはない。
馬を操れるのは町を行き来する為の馬車か、あるいは王の王下七武隊だけだ。
馬車は呼ばない限りやってこない。
サンジがここへ来たときの馬車はとっくに返していて、来るはずが無かった。
「まさか…」
サンジはそう呟きながら立ち上がった。
「サンジ!」
ゾロも立ち上がる。
振り返りゾロを見ると、サンジは首を振った。
「どこにも行きません…ゾロ様」
サンジがそう言うと、ゾロはサンジの唇に唇を寄せた。
サンジは入り口の扉を開けて、足を止めた。
屋敷の扉は階段上にある。
階段の下に、馬が見えた。
その馬は他では滅多に見ることのない美しい毛並みをした馬だった。
栗色の、艶やかな毛色の馬には、豪華な刺繍の布の掛けられた鞍が乗っている。
金糸の刺繍はこの国でもほんの僅かな人間だけが使えるもの。
ゾロも城に居たときに同じように金糸で刺繍された服を着ていた。
馬の手綱を男が手にしている。
その男もまた、白地に金糸を使った服を着ていた。
「…ミホーク…王…」
サンジが呟くと一緒にきたゾロがグッと拳を握るのが分かった。
辺りを見回してみるが、王と馬以外何も見えない。
普通、王がどこかへ行く際には護衛の兵が必ずつくはずだ。
それなのに、辺りには砂が広がるだけで人の気配は全くなかった。
ミホークはサンジが階段上に居るために顔を上向かせ、目を細めた。
太陽の日差しが当たって眩しいのだろう。
目上にあたるミホークよりも高い場所に立っているのはいけないと、サンジは階段を駆け下りた。
階段を下りると、サンジは膝を折り、深く頭を下げる。
だがゾロは扉の前で腕を組んだままミホークを見下ろしていた。
「ゾロ様!」
サンジはゾロを咎めるように鋭い目を向け、首を振った。
だがゾロは顔を背けた。
「ミホーク王、たった一人でこちらに?」
「…そうだ」
「何故、そんな…危険な事を…」
「ここは…誰にも教えたくないのだ…この場所だけは」
そう言ってミホークは遠い目をした。
その視線に映っているのは、ゾロの母親だろうか。
「…何をしにきた」
上からゾロの声が聞こえた。
その声にサンジも、ミホークも上を見上げる。
「俺を連れ戻しに来たのか」
攻撃的な、ゾロの声。
だがミホークは答えを返さなかった。
言わなくても分かっている。
王が何の用事もなくここに、来る筈がない。
「俺は城には戻らないからな!」
「…ゾロ」
王が名を呼ぶと、ゾロは更に険しい目でミホークを睨んだ。
「気安く俺の名前を呼ぶな」
「ゾロ様!」
ミホークが例え何を言おうと、サンジはゾロを城へ返す気はなかった。
だが、ゾロの物言いは流石に一国の王へ向ける言葉ではない。
それはいけないのだとサンジは言いたかったが、ゾロは直ぐに背を向けて屋敷へ入り大きな音を立てて扉を閉めてしまった。
「…サンジ」
低い声のミホークに呼ばれ、サンジはビクッと震えた。
「は…」
もう一度深く、サンジは頭を下げた。
ミホークが何を言うのか、予測はつく。
その命令を聞きたくなかった。
聞けば、逆らわなければならない。
逆らえばきっと、処罰を受ける。
罰を受けるのはかまわなかった。
ただ、ゾロと別れるのが辛い。
愛し合ったのが、たった一晩だけで引き裂かれてしまうのが辛い。
「顔を上げろ、サンジ」
ミホークに命令されては、従わざるを得ない。
できれば顔を上げたくなかった。
ミホークの顔を見たくなかった。
その顔はゾロによく似ていて、別れを思って辛くなる。
「聞きたいことがある」
「何でしょうか…」
声が僅かに震えた。
その動揺はミホークに伝わってしまっただろうか。
サンジはギュっと手を握りしめた。
この国で絶対的に力を持つ、ミホーク。
ミホークの命令には、逆らう事など許されてはいない。
だがサンジは、ミホークの下すどんな命令も聞かないのだと固く決めていた。
聞くのは、ゾロの命令だけ。
だからどんな言葉を言われても首を振ろうと、サンジは思っていた。
あの男の姿だけは見たくなかった。
この世で一番憎い男。
母をたった一人にして、俺を産ませ、死んでも葬式にすら来なかった男。
それだというのにこんな時には姿を現す。
ゾロの幸せな時間を引き裂く為に。
ゾロは部屋に戻ると、寝台の上に伏した。
どれだけ…。
あの男は、どれだけ自分を傷つければ気が済むのか。
自分とよく似た顔をした男。
その似た顔がまた、呪わしく感じられた。
「…ゾロ様」
扉が開かれ、声が聞こえた。
それはサンジの声だったが、振り返る気にもならない。
「あいつに、俺を連れてこいと言われたのか?」
サンジが近寄る足音が聞こえ、ゾロは呟いた。
ゾロの声にサンジの足が止まる。
「いいえ、違います」
そう言ってサンジはまた足を進めた。
足音がゾロのすぐ隣で止まる。
「私が聞くのは貴方の命令だけだと言ったでしょう」
もしも、サンジがあの男の命令を聞いたら…と考えていたゾロはほっと溜息を吐き、体をくるりと反転させた。
サンジが少し暗いような瞳でじっと見下ろしている。
「ミホーク王は、そのような命令は下しませんでした。ただ、もし言われたとしても従うつもりはありませんが」
「…あいつは?」
「ミホーク王なら、あちらです」
サンジはそう言って窓へと視線を向けた。
ゾロの窓から下を見ると、十字架になるように組まれた石が見える。
その石の下には、女が眠っていた。
ミホークを愛して子供を産み、そして亡くなった…ゾロの母。
「なんで…」
「今まで一度も来ることが出来なかったので、せめて花を供えたいと言っていました」
「あの男が?まさか」
ゾロは体を起こすと、窓へと駆け寄った。
キラキラと輝く金糸は遠くからでも目にすることが出来る。
長い裾の豪華な服が地面につき、風に舞う砂に塗れている。
高価な服なのだろうが、ミホークは汚れることも厭わないように、十字架の前で膝をついていた。
十字架の墓標の下には、ピンクや黄色の花が置かれている。
この砂漠では花が咲かない。
オアシス近くであれば僅かな植物であれば育つが、その殆どは野菜で観賞用の花など育てている所など無かった。
だから、このココヤシで花が咲いているのをゾロは見たことが無かった。
だが、家にはいつもあの、ピンクと黄色の可憐な花があった。
『綺麗な花でしょう、ゾロ。花はお腹いっぱいにはならないけど…、見ていると幸せな気分になれる』
あの花を抱えて母はそう言っていた。
ココヤシでは手に入らないあの花は、どこか別の国から取り寄せているのだろう。
金のある貴族であるなら、国外から花を取り寄せるのは造作もないことかも知れない。
ゾロの母はこの屋敷を与えられてはいたが貴族ではない。
ゾロ達が着る服と、生活に困らない金は工面されてはいた。
だが、それは普通に生活するよりは少し裕福であるくらいで、国外から取引をするほどの金は無かった筈だ。
それなのにずっと、あの花は家にあった。
母はその花を花瓶に挿しては幸せそうな顔をしていた。
そして、母が他界してからは母の変わりにサンジがこの家に飾っていた。
「…何で、あの花…」
「ゾロ様の御母様はあの花が好きだったのですよ。ゾロ様もご存じでしょう?」
「何でそれをあの男が知ってるんだ?それに、あの花はどうしていつもここにあった?」
「ゾロ様、ご存じ無かったのですか」
驚いた顔をサンジが向ける。
ゾロもまた同じ顔を向けていた。
「あの花、毎日この屋敷へ送って下さったのはミホーク王ですよ」
「あいつ…が?」
「えぇ、そうです」
「…何で」
「ゾロ様の御母様がお好きだったからでしょう?」
「…何で毎日…」
「ですから、ミホーク王が…」
あの花を持って、幸せそうにしていた母の姿を思い出す。
あれは、あの花が好きだからという理由だけではなかったのか?
あの花を見ながら、母は花ではなくあの男の事を思い出していたのか?
『大嫌いだ、あんな奴』
母の前でそう言うと、母はとても傷ついた顔をした。
『そんなことを言わないで、ゾロ。あの人は私も、ゾロも、とても愛してくれているのよ』
いつもそう言っていた母を、何て馬鹿な人だろうと思っていた。
あの男は愛してくれやしない。
ただの一度も、この屋敷に顔を出しもしないで…と。
「ゾロ様…?」
ゾロはサンジに背を向けると、何も告げずに部屋を後にした。
緩やかに風が吹いている。
日は高く、吹く風も暖かい。
水気の何もない砂の上を踏みしめると、音が鳴る。
墓前で手を合わせているミホークは動くことを忘れたように、じっとその場に座り込んでいた。
どれだけ長いことそこにいたのか、それを物語るように長い上着の裾は砂に埋もれている。
ゾロが近寄っても、背中を向けて祈るミホークは振り返らなかった。
「…おい」
そう声を掛けると、ようやくミホークの体がピクッと動いた。
後ろから覗き込むと、あの母の好きなピンクと黄色の花で出来たブーケも砂に塗れていた。
「そんな風に祈る癖に、何で葬式には来なかった?」
ミホークは背を向けたままで、振り返らなかった。
ゾロの言葉に対して、どんな表情でいるかは見えない。
「…来れるのなら、来たかった。だが…それは私には許されていなかった」
「今はここに来れるのにか」
「あの時もこうしていれば良かった。今更何を言っても仕方のない事だが…」
「母の葬式の時には来れなくて、俺を連れ戻しには来るのか」
ゾロが言うと、ミホークは振り返った。
「アンタは結局、この国のことしか考えてない」
「違う!」
ミホークは声を荒げて立ち上がった。
服を埋めていた砂が舞い上がり、風に散る。
辺りが一瞬黄色に見えた。
「いや…違わないか…、私はこの国の王であることを捨てるわけにはいかない」
「やっぱり…」
「まだ私が王子だった頃、ここに来たことがある」
突然話し出したミホークに、ゾロはムッとした目を向けた。
「その時王都では内戦が起きていて危険だからとこの町へ避難していた」
「そんな話、俺に何の関係が…」
「私はその時既に結婚していて妻も子供もいたが、二人は妻の実家へ預けられていて私一人がこの町に来ていた。お前の母には
その時に会った」
昔語りなどに付き合っては居られないと、ゾロは身を翻らせようとしたが、母の言葉を聞いて体を止めた。
「妻とは政略結婚だった。だが愛しく思っていなかったわけじゃない。だというのに私はお前の母に惹かれて、愛し合った。
…それはいけない事だったが後悔はしていない。
しばらくして私は城に戻らなければならなくなり、お前の母とは別れなければならなかった」
別れる…そう聞いて思わずサンジの姿を思い出す。
「しばらくしてお前が生まれたことを聞いた。嬉しかった…、お前に一目でいいから会いたいと思った。
だが、それも私には許されなかった。お前の母が死んだときも…最後の別れすら出来なかった」
「…何で…花を毎日…?」
「お前の母が好きな花だったからな。毎日送ることで私は、お前の母と繋がっているように思っていたのかも知れない」
愛しているから、花を贈る。
そうすることでしか告げることが出来ない、愛の言葉。
愛していたというのだろうか、ミホークは。
…母を。
「でも、もう母が死んだのは大分前だ。何で毎日花を寄越す?もう母はいないのは分かってるんだろう?」
「愛しているのはお前の母だけじゃない。ゾロ、お前の事も私は愛している」
「え…っ」
ゾロは短く声を上げ、ミホークを見上げた。
いつも、憎んでいた。
母の事も、ゾロの事も愛してくれない男なのだと、憎んでいた。
それが間違っていたと言うのだろうか。
この男は…、父は、ゾロの母親と、そしてゾロを愛してくれていたと…言うのだろうか。
「ゾロ」
ミホークが呟いてゾロに手を伸ばした。
ゾロの肩を捕まえると抱きしめる。
ずっとずっと、嫌いだった男。
姿だって見たくないと思っていたし、声だって聞きたくなかった。
生まれてからこれまで、ずっと見たこともない父親だった。
それだというのに、強く抱きしめられた腕や、ミホークの体温を何故か懐かしいと感じてしまう。
不思議と抱きしめられたことに嫌悪感は無かった。
「…花」
ゾロが呟くと、ミホークは腕を放した。
「…花?」
「そんなとこに置いてたら、すぐに萎れる。萎れた花は喜ばないだろ。貸せ」
ミホークは墓前に置いた花を取ると、ゾロに手渡した。
花を受け取ったゾロは屋敷へ戻ろうと足を踏み出す。
ゾロの向けた視線の先に見慣れた人影が見えた。
「…サンジ」
その人影の名を、ゾロは呟いた。
部屋を飛び出していったゾロをサンジは追いかけた。
ミホークの事を酷く憎んでいたゾロが向かったのはミホークがいるゾロの母の墓前だった。
実の父と息子が相容れることなく顔を背けている姿は見ていても哀しい。
できればゾロがミホークの事を認めて、二人の距離が縮まって欲しいとサンジは思っていた。
だから追ってきて目にした、二人の抱き合っている姿はサンジの希望ではあった。
それなのに、目にしたその姿はサンジの心臓をギュっと強く掴む。
どこにも行くなとサンジに言ったゾロが、とても遠い所へ行ったような気がした。
あの言葉をゾロは忘れてしまうのではないか。
王と一緒に城へ行ってしまうのではないか。
サンジの事など、忘れてしまうのではないか。
そう思うと身動きが出来ず、心臓が痛い。
ミホークがゾロを抱きしめているのは親子だから。
そう分かっているのに、その姿を見るのが辛かった。
その体を抱きしめるのは自分だけだと、嫉妬してしまう。
「サンジ」
目の前で声がして、サンジはビクッと体を揺らした。
「…ゾロ様…」
「これ、水をやってくれ。このままじゃ枯れる」
そう言ってゾロはミホークが持ってきたブーケを差し出した。
「…サンジ?」
ブーケを受け取ることも忘れて、じっとゾロを見下ろしていると不審に思ったのか首を傾げて名前を呼んだ。
サンジは慌ててブーケを受け取った。
「わかりました、すぐに」
サンジは二人に頭を下げるとその場を後にしようと背を向けた。
ゾロが王と和解し王を選ぶのなら、それに従うしかないだろうか。
もしもそうなったら、諦めることは出来るだろうか。
そんなことを考えながらサンジが足を踏み出すと、その手をグイッと引かれて目を見開いた。
「ゾロ様…?」
手を引いたのはゾロだった。
サンジの左手手首をゾロが掴んでいる。
「ミホーク」
父とは呼べないのか、ゾロは名前で呼んだ。
ようやくミホークを認めたが、今まで憎んでいた事を思うとそう簡単に呼び名は変えられないのかも知れない。
「俺は城には戻らないからな」
「ゾロ様…?」
城には、戻らない。
確かに今、ゾロはそう言った。
「俺は、あんたみたいに後悔はしたくない。好きな奴と一緒にいられないのは御免だ」
「ゾロ様、手を…」
ゾロは離すつもりがないのか、強い力でサンジを掴んでいる。
その腕力は父親譲りなのか、サンジが振り払おうとしても微動だにしない。
「まさか…」
ミホークがこちらを見て、呟く。
「お前は好きな人がいるのか」
「いる、ここに」
「ゾロ様!」
慌ててサンジは声を上げたが、ゾロの声をかき消すことは出来なかった。
咎めるようにして上げたサンジの言葉が気に入らなかったのか振り返って目を吊り上げた。
「俺と一緒にいるって言っただろう? あれは嘘だったのかッ?」
「嘘じゃありません、ですが…」
「だったら問題ないだろう、俺はお前がいない所にはいく気はない!」
「ゾロ様ッ!」
強い、ゾロの告白。
もしもミホークがサンジを罰することになり、引き裂かれることになったらと思うと気が気ではなかった。
だが、サンジを好きなのだと断言するゾロの言葉は嬉しいと思ってしまう。
「ゾロがサンジを?…そうだったのか…」
呆然とするような顔でミホークが呟いた。
「俺はあんたが何を言っても、この国がどうなろうと行かないからな!」
「ゾロ様!」
じっとミホークが二人を見つめる。
その視線はとても居心地が悪い。
裁かれるかも知れない。
それでも、ゾロと一緒にいたい。
サンジは神に祈るように目を閉じた。
「…ふふふ……はは…っ…」
声が聞こえて、サンジは恐る恐る目を開いた。
「全く、お前は、母に良く似て強情だな」
そう言いながらミホークは笑っている。
「え…?」
「お前の母も強情な女だった、私と別れることになって、誰か他の相手と結婚しろと周りから勧められても、絶対に嫌だと拒否して
いた。今の、お前のように」
「あ…、の、ミホーク王…」
「私は、好きな相手と引き裂かれるのがどれだけ辛いか知っている」
そう言ってミホークはゆっくりと歩き、二人の目の前で止まった。
「その辛い思いを、息子にさせたいほど冷たい男じゃない」
二人は同時にミホークを見た。
ミホークは穏やかな微笑みを浮かべている。
「あの…宜しいのですか、ゾロ様がいなくてはこの国は…」
「ゾロを連れて行って欲しいのか、サンジ」
そう言われてサンジは慌てて首を振った。
「私には弟もいる。跡継ぎなどどうとでもするさ」
「ミホーク王…」
「その代わり、一つだけ条件がある」
「え…?」
ミホークはじっとサンジの瞳を見つめた。
鋭い瞳はサンジの動きを止める力を持っている。
「ゾロは私の大事な息子だ。もしも悲しませるようなことをしたら、許さないからな」
サンジは口を開いたが、声が出てこなかった。
「悲しむ訳がない。サンジが傍にいるだけで、それだけでいいのだから」
ゾロは横からミホークにそう告げた。
「…ゾロ様」
「…そうか」
優しくミホークは微笑む。
認めてくれた。
ミホークが、ゾロを城へ連れて行かず、そして私といることを。
「あ…有り難う御座います」
サンジは涙ぐみながら慌てて声を出して頭を下げた。
「では、私は城に戻る。今頃私が居ないことがバレて、混乱しているだろうしな」
「あの、お一人で大丈夫ですか、もしも何事かあれば…」
サンジは心配して言ったが、ミホークは手を振った。
「私を何だと思っている?この国の王だ。誰かに襲われて殺されるような弱い男なら、この国を守れるはずがない」
そう言ってミホークは笑い、背を向けた。
馬に乗って走り去るミホークの姿を、ゾロとサンジはぼんやりと眺めていた。
サンジがゾロを見ると、ゾロは何だか複雑な顔をしていた。
色々な事があって、まだよく状況が飲み込めていないのかも知れない。
ゾロの髪を撫でると、じっとミホークを見ていたゾロがサンジを見る。
「ミホーク王は貴方と似ていますね」
「…え?」
「後先考えずに城を出てきてしまうところなんて、よく似ていると思いますよ」
サンジが言うと、ゾロは唇を噛みしめた。
「…似てない」
ムッとした顔でゾロが答える。
ミホークの気持ちは分かった筈だが、そう簡単に気持ちは変わらないのかも知れない。
「ミホーク王を父上だと認めたのではないのですか」
「…認めてなんか…」
本当は認めているが、ゾロは気持ちとは逆の言葉を口にした。
「…恥ずかしいのですか?」
「なっ…」
今までずっと憎んで生きてきて、今日初めて分かり合えた親子。
ミホークに対する気持ちを素直に口にすることは恥ずかしいのではないかとサンジは言った。
それは図星だったのか、ゾロは驚いた目を向ける。
「何で恥ずかしいなんて、俺がっ」
「違いましたか、それは失礼致しました」
「サンジ!」
「花に水をあげましょう、このままでは枯れてしまいます」
サンジはそう言ってにっこり笑うと屋敷へと向かう。
「サンジ!」
背中に向かってゾロの声が聞こえる。
その声を心地よく聞きながら、サンジは足を進めた。
「ここがいいですね」
サンジはゾロの部屋の窓際にテーブルを置くと、その上に花を差した花瓶を置いた。
「ここならきっと、貴方の御母様からも綺麗な花が見えるでしょう」
「サンジ」
呼ばれてサンジは振り返った。
ゾロはベッドに腰掛けている。
「何でしょう?」
「…キスをしろ」
悪戯っぽい表情を向けて、ゾロが言う。
「そこで?」
「…ここで」
二人の言う場所とは寝台の上だ。
この上でだけ、ゾロを王子だと思わなくても住む場所。
「それは命令ですか?」
「命令だ。俺の言うことは聞くんだろう?」
「聞きますよ、貴方の命令だけは、ね」
そう言ってサンジは微笑んで、ゾロの居るベッドへと向かった。
サンジが腰を屈めて、ゾロと唇を触れ合わせる。
深く舌を絡ませながら、ゾロはサンジの背中に手を回す。
サンジの手もまた、ゾロの背中に回され、体を密着させるように二人は抱き合った。
「サンジ」
「ゾロ」
もう、誰も邪魔をしない。
王子という地位も、二人の身分の差も、何も。
ミホーク王からは毎日のように花が届く。
それは綺麗なピンクと、黄色の花。
その花はゾロとサンジを祝福しているかのように、二人を見守っていた。
END
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