Birthday card <ゆずか様>



『ゾロ先生!
お誕生日おめでとう!




ちゃんと先生って呼んでやるから
もうチビナスって言うなよ!


サンジより』






ゾロは何度も読み返し古くなった便箋を眺めていた。
8年程前、自分が小学校教諭となり初めて受け持った生徒から貰った誕生日を祝う手紙だ。
綺麗な金髪でクリンとしたふざけた眉毛をしていたが、勝気な目をした元気な少年だった。
いつも、新卒で教諭になったばかりの自分を「先生」付けではなく「ゾロ」と呼び捨てにしていた。
ゾロもやんちゃで11歳でありながらどこか人の目を惹きつける魅力があったこの少年を、少年の祖父が呼ぶのを真似て「チビナス」と呼んでやった。
すると、「チビナスって言うなー!」と言いながら先生である自分に蹴りかかってくるような子供で、あれから数年小学校教諭を続けていたが、あのように記憶に残る生徒はなかなか居なかった。
元気で喧嘩っ早いのかと思えば女子には非常に甘く、彼の周りには女子の姿も多かった。
しかし、あれは慕われていたというよりあの年頃から男より精神年齢の高い女達にいいように使われていたのだろうが。
このピンク色のハートがたくさん散りばめられた便箋もその女達の中の誰かから貰ったものなのだろう。
彼からこの愛らしい手紙を受け取った時は正直ドキリとした。
そのドキリは自分の奥底に秘められた何かに触れて、そして彼が卒業していくまでの残り数ヶ月の間、ゾロは今まで以上に彼から目が離せなくなっていた。



サンジが卒業した数年後、ゾロは小学校教諭を辞め塾の講師となっていた。
塾というのは小学校勤務より出勤時間も遅く、どちらかというと夜型のゾロは朝寝坊も出来助かっている。
PTAなどの目もなく生徒ともフランクに付き合え、自分には合っているのではないかと思っている。
それに、生徒と付き合ったりしたとしても小学校教諭のように教育委員会に叩かれたり問題にならないで済むのが一番の利点だ。










ゾロが懐かしの手紙を手にベッドにもう一度横たわると、部屋の扉があきバスローブ姿の青年が髪を拭きながら入ってきた。


「お前まだ裸でいんの?ってか何見てんだよ?」
そう言ってゾロに近づいてきた青年はゾロの手元の物を見咎めるとハッと表情を変えた。
「おまっ!それ!」
「懐かしいだろ」
ゾロはニヤッと青年を見て笑うと目の前に便箋をひらめかせた。
「そんなもんよく持ってんな。捨てろよ」
心底嫌そうな表情で眉根を寄せると青年は吐き捨てるように言った。


何も考えず憧れのナミに言われるがまま、貰ったハートいっぱいの便箋に書いてあるのも恥ずかしくて堪らない。
そして何より、そんな子供の頃の落書きめいた物を後生大事にされているのが恥ずかしくて堪らないのだ。


「お前が初めてくれたラブレターだ」
「ラブレターじゃねぇよ、バースデーカード…ってそれあぶり出しなの気付いたか?」
「は?」
「なに、気付いてなかったのかよ」


慌てて飛び起きキッチンに向かうゾロにサンジはスウェットのパンツを投げつけた。
「下くらい履けよ…」


コンロの火に便箋を近づけ真剣な表情をしているゾロの後ろに近づくとサンジは、呑気にタバコをふかしつつ覗き込んだ。


「出ねぇぞ」
「もちっと火に近づけろよ」
ゾロの怪訝そうな声を気にするでなく楽しそうに見守っていたサンジが、言いながらゾロの腕をチョンと押した。




「あーー!!てめえなにすんだ!!」
見る見る灰になっていくハートいっぱいの便箋をよそにサンジは勝ち誇ったように微笑むと
「そんなただの教え子に貰ったバースデーカードなんてもういらねぇだろ?」


そう言って、去年まで塾の生徒であった元教え子は首に腕をまわし抱きつくと
「誕生日おめでとうダーリン」
と耳元で囁いた。






end


   *  *  *


やーらーれーたー!!!
ゾロ先生と一緒にしてやられました!
いやんもう、なんて素敵な過去チビなす!!
今のサンジの魅力が倍増ししてて、すごいLoveですありがとうございます!
素敵ーv



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