ギフト -2-  <藍月ひろ様>


 その日を境に、俺達は所謂恋人同士となった。
 夜、時間が出来ると携帯で連絡を取り合い、他愛のない話をする。
 ただそれだけでとても幸せな気持ちになれた。
 そんなある日、カレンダーを見ていた俺はある事に気付く。
 「あっ…もうすぐゾロの誕生日だ…」
 付き合うようになってから、何回もキスはしていたがその先に進むような事は無かった。
 「…そういうのは、求めてないのかな…」
 俺達は男同士なのだから、それが普通の考えなのかもしれない。
 だけど俺は、好きな人…ゾロになら、身も心も捧げたいと思っているのだ。
 「…断られたら…ちょっと凹むけど、でも…」
 きちんと言葉に出して聞いてみよう。
 もう勝手な思い込みですれ違うのだけは避けたいから。
 そう決意し、携帯が鳴るのを待った。
 そして数十分後、仕事が終わったゾロからいつものように電話が入る。
 『よう、今大丈夫か?』
 「うん、平気。…あのさ、ゾロ。」
 『なんだ?』
 「えっと…11月の11日、って…予定とか、あるか?」
 『11月11日?…いや、何も無いな。』
 予定を確認すると、言おうと決めていた事を話しだす。
 「…あの、さ…その日、ゾロ誕生日だろ?…で、ジジイが町内会の慰安旅行で…いないんだ。だから…ゾロの、家に…泊まりに、行きてぇんだけど…」
 『………』
 返事が返ってこない。
 やっぱりそういった事は考えてなかったのか、少し残念に思いながら、自分の想いを告げようとすると突然
 『そう、か…ちょうどその日は俺の家も…俺以外誰もいねぇ。…楽しみに、してて…いいのか?』
 と言ってきた。
 「…あ、うん…その、楽しみに…してて…」
 『…ああ…凄ぇ、楽しみにしてる。』
 嬉しそうに告げられ、思い切って言ってみて良かったと思う反面、今更ながら緊張してきてしまった。
 それを悟ったのか、ゾロは
 『…緊張してんのか?』
 と図星な事を聞いてきた。
 「…っ…いや、別、に…緊張なんか…」
 『無理すんな。…大丈夫だから。』
 その言葉を聞いただけで、緊張がスーッと解けていくような感じがした。
 「…ありがと、ゾロ…俺、その…頑張るから…!」
 『くっ…あのな、んな気合入れなくてもいい。…お前は自然にしてりゃいいから。』
 「…うん…」
 変な意地を張る必要はないのだ、と改めて思うと
 「俺、ゾロが好きな料理も作っていくな。」
 『そうか、それも楽しみだな。…11日まで休みは無いから、当日直接家に来いよ。』
 「うん。…じゃあね、おやすみ、ゾロ。」
 『ああ、おやすみ。…今夜は良い夢が見れそうだ。…じゃあな。』
 そう言って通話が切れた。
 
 「はーっ…もう、後戻り…できねぇな…」
 心臓がバクバクと激しく脈打っている。
 「…俺、自身が…プレゼント、って事に…なるのかな…」 
 改めて言葉にすると物凄く気恥ずかしい。
 しかし、携帯越しにゾロが凄く楽しみにしてくれているのが伝わってきたのでもう覚悟を決めるしかないのだと思い直した。
 「…よし、まずは料理…何作ろうかな…」
 ベッドに寝転びながらレシピを考え、思い付いたものをノートにメモしていった。




 そうしてあっという間に11月11日がやってきた。
 朝早く出掛けるジジイを見送る為眠い目を擦りながら起きる。
 「じゃあなチビナス、きちんと戸締りするんだぞ。」
 「…わかってるよジジイ…じゃあな、気を付けて。お土産楽しみにしてるからな。」
 ドアを開け手を上げながらジジイを送り出すと、早速料理の準備に取り掛かった。
 そして手際良く次々と料理を作り上げると、重箱に綺麗に盛り付けをしていく。
 「…よし、こんなもんかな…」
 鞄に重箱を入れ身支度を整えると、家の戸締りをし隣へと向かった。
 「………」
 何度も来ているゾロの家の玄関の前で立ち止まると、大きく深呼吸をする。
 そしてチャイムを押すと、数秒でゾロがドアを開けてくれた。 
 「…よう、いらっしゃい。」
 「…うん。」
 「もう親父もお袋も出掛けてて誰もいねぇ。…入れよ。」
 「…うん、お邪魔します…」
 言われるまま玄関に入ると、靴を揃えて脱ぎ部屋の中へと入っていった。

 「適当に座っててくれ、今飲み物でも…」
 「あ、ゾロ…俺、料理作ってきたんだ。…もう昼近いし、食べるか…?」
 持参してきた鞄を掲げてそう言うと
 「おう、そうか。…なら食うか、それも楽しみにしてたからな。」
 笑顔でそう言いながらグラスにお茶を注いでくれた。
 「…じゃあ…」
 鞄から重箱を取り出し、テーブルの上に広げ蓋を開ける。
 「うわっ…凄ぇな…俺の好きなもんばっかだ…」
 肉じゃがにきんぴら、ほうれん草のお浸しや鰆の西京焼きなど和食中心に作ってきた料理を見てゾロが嬉しそうに呟く。
 互いに向かい合うようにして席に座り、グラスを手に持つと
 「じゃあ…誕生日おめでとう、ゾロ。」
 と言ってグラスを合わせた。
 「ああ…ありがとな、サンジ。」
 嬉しそうに言いながらゾロは重箱に手を伸ばすと、次々に料理を口に運んでいく。
 「…美味ぇ…どれもほんとに美味ぇ。」
 「そう、か…?良かった…」
 ゾロの反応にホッとしながら、自分も箸を伸ばし肉じゃがを食べた。
 (…うん、ちゃんとじゃがいもに味もしみてる…良かった…)
 そうしてあっという間に用意していた料理を食べ終わると、満足そうに微笑みながら
 「ほんとに美味かった…ご馳走さん。…ありがとな。」
 と言ってくれる。
 「良かった、喜んでもらえて…んじゃこれ洗ってくるな。」
 台所を借り、皿や重箱、グラスを洗うとリビングに戻る。
 そしてソファに腰掛けているゾロの隣に座ると、互いに無言のまま付いていたテレビを見つめた。
 (…どう、しよう…まだちょっと外明るいし…早いよな…でも、間が…)
 ぐるぐると考え込んでいると、ゾロは突然俺の手を握ってきた。
 「!?」
 「…大丈夫、か…?」
 気付かない内に震えていた俺を気遣うように声を掛けてくる。
 「…うん…ごめん、ちょっと…緊張、して…」
 「…無理するつもりはねぇから…んな緊張すんな。…風呂、入ってくるか?」
 「…うん。」
 一人になった方が少し緊張も解れるかもしれない。
 「風呂の場所はわかるな?」
 「うん、大丈夫。…じゃあ、ちょっと行ってくる。」
 「ああ。…ゆっくり入ってこい。」
 促されるまま風呂場へ向かうと、衣服を全て脱ぎ中へと入る。
 そして蛇口を捻ると、熱いシャワーを身体に浴びた。
 「…ふぅ…」
 強張っていた身体から力が抜けていく。
 ここまできたらもう後戻りは出来ないのだ。
 「…よしっ。」
 丁寧に全身を洗い終え、湯船に浸かると天井を見上げた。
 幼い頃はゾロの家に泊まりに来た事もあるし、この風呂に一緒に入った事もある。
 (…まさか…こんな風に、この風呂に入るようになるなんてな…)
 そんな事を思っていると、扉の向こうから突然声が掛けられた。
 「サンジ。」
 「!?な、なに??」
 「着替えとか持ってきてるか?」
 ゾロからそう問い掛けられ、初めて着替え一式をすっかり忘れてしまっていた事に気付いた。
 「あ…ごめん、忘れた…」
 「やっぱりそうか。なら俺のを貸してやる、ここに置いておくからな。」
 そう言った後、気配が遠ざかっていくのを確認するとふーっと小さく溜息を吐く。
 「びっくりした…」
 小声で呟いた後、あまりゾロを待たせても悪いと思い風呂から出るとタオルで水滴を拭っていく。
 そしてゾロが用意してくれたTシャツとスウェットに袖を通した。
 (…なんか…ゾロの服着るなんて恥ずかしいけど、まさか素っ裸でゾロの所に行く訳にもいかないしな…)
 タオルで濡れた髪を拭いながらダイニングに戻ると、ゾロは俺を見て微笑みながら
 「俺も入ってくる。…先部屋行っててくれ。」
 そう言って立ち上がる。
 「…うん。」
 素直に頷くと、階段を上がりゾロの部屋へと向かった。
 ドアを開け、室内に入ると机の上にタオルを置き、室内を見回す。
 以前来た時と中の様子は然程変わっておらず、きちんと整理されていた。
 「…あ、これ…」
 机の上に置かれている写真入れには、ゾロと水族館に行った時に撮った写真が飾られていた。
 他にもゾロと一緒に出掛けた時お土産にと買った様々なものが所狭しと飾らせている。
 「…ちゃんと、飾ってくれてるんだ…」
 考えてみればここ数年出掛けてはいたがゾロの家に来る事は無く、当然部屋にも入る事など無かったので知らなかった。
 「…嬉しい、な…」
 ぐるっと部屋の中を一回りすると、満足そうに呟いた。
 そしてベッドまで歩み寄ると、そっと腰を下ろす。
 「………」
 そのまま上半身を傾けベッドに寝転ぶと、枕に頭を乗せた。
 ゆっくり目を閉じ、大きく深呼吸する。
 (…ゾロの、匂いがする…)
 そんな事を思っていると、下半身が疼くような感覚を覚える。
 (…やべっ…!)
 努めて違う事を考えようとしたその時、突然ドアが開きゾロが入ってきた。
 「うわっ!」
 「!?おい、どうした?」
 俺の反応にびっくりしたようにゾロはそう聞いてくる。
 「いや、その…なんでもない…!」
 慌てて身体を起こそうとしたのだが、ゾロがその動きを制するように肩口を抑え込んできた。
 「!?」
 「…そのまま、寝てていい。」
 そう言いながら室内の電気が消される。
 「あ、あの…ゾロ…」
 覚悟は出来ているはずなのに、この場から逃げ出したい衝動に駆られる。
 そんな俺の気持ちを見越したように、ゾロは静かな声で
 「悪ぃな…ずっとこの時を待ち続けてた…正直、余裕がねぇ。」
 と言った後、続けて
 「全部、俺に任せろ。…だが無茶する気もねぇから、痛かったり嫌だと思ったらすぐ言えよ。…お前が嫌がる事はしたくねぇからな。」
 そう告げると優しく髪を撫でてくれた。
 「…ん…大丈夫…俺も、ゾロと…こうなりたいって…ずっと、思ってたから…だから…」
 好きにしていい。
 消え入りそうな声で呟くと同時に唇を塞がれる。

 「んっ…」
 今までとは違う、激しく舌を絡め合う貪るようなキスに眩暈がしそうだった。
 そのキスに夢中になっていると、ゾロの手がTシャツをたくし上げ素肌に直接触れてくる。
 肌の感触を確かめるように何度も撫で上げられる度、ゾクッとした感覚が背筋に走った。
 「………」
 全てが初めての感覚で、気持ちが追いついていかない。
 だがそんな事はお構いなしにゾロは乳首に触れると優しく擦り上げてくる。
 「…んっ…」
 目をギュッと閉じ、与えられる快楽に流されてしまおうと身体の力を抜いていった。
 暫くそうして俺の身体を弄った後、身につけていた衣服を上下とも脱がしながらゾロの手が下肢に伸ばされ露わになった性器に触れてくる。
 「!」
 流石に緊張し無意識に身体が震えてきてしまう。
 そんな俺の耳元にゾロは唇を寄せると
 「…怖くねぇから…大丈夫だ。」
 安心させるようにそう囁いてくれた。
 「…ん…」
 頷いた俺の唇に啄むようなキスを落としながら、ゾロの手が性器をゆるゆると扱き上げていく。
 「…はっ…」
 同時に今まで誰にも触れられた事の無い後孔にゆっくりと指が差し入れられた。
 「…っつ…」
 痛みと恐怖で強張る身体をあやすように、ゾロは性器への愛撫を強めてくる。
 そのままたっぷりと時間をかけて狭い後孔を広げていった。
 「…んっ…」
 十分に解れたのを確認すると、ゾロは指を引き抜き自身の性器を宛がってくる。
 「………」
 つい不安そうな顔をしてしまった俺に、ゾロは
 「…出来るだけ、力抜いてろ。…大丈夫、だから。」
 と真っ直ぐ目を見つめながら告げてくれた。
 「……」
 無言で頷くと、ゆっくりt腰を押し進めてくる。
 「…くっ…!」
 だが指とはまるで違う質量のモノに耐え切れず、涙が一気に溢れ出てきてしまった。
 「…っ…大丈夫、か…?一旦、抜くか…」
 俺の様子を見たゾロはそう言いながら腰を引こうとするが、痛みを堪え両脚でゾロの身体を挟み込む。
 「!?おいサンジ…?」
 「やめ、ないで…!」
 今日はゾロに全てを捧げるって決めてきたのだから、中途半端に終わらせたくはなかった。
 「…もうちょっと…我慢してくれ…」
 涙で濡れた頬を指先で優しく拭いながら、ゾロは一気に腰を突き入れてくる。
 「うあっ!」
 「…くっ…!」
 何とか根元まで性器が埋め込まれると、ゾロは動きを止め俺の身体を抱き締めてきた。
 「…サンジ…大丈夫か…?」
 そう言うゾロに微笑み返すと、しっかりその背中に腕を回しながら
 「…ゾロ…誕生日、おめでとう…」
 改めて囁く。
 「…ああ…最高の、誕生日プレゼントだ…」
 満足そうに告げた後、唇を塞ぎながら律動を再開させる。
 そうして互いに達した後、意識を手放した。








 気が付くと身体は綺麗にされ、ゾロのベッドに寝かされていた。
 隣には心配そうな顔をしたゾロの姿がある。
 「…悪い…ちょっと無茶しちまったな…」
 そう言ってくるゾロに
 「ううん。…ゾロと、一緒になれて…ほんとに、嬉しかった。」
 笑顔で返すと、少しホッとしたような顔になり
 「そうか。…疲れたろ?今日はもう寝ろ。」
 布団を掛けながら囁かれた。
 「…ん…」
 途端に眠気に襲われ、目の前にあるゾロの胸板に擦り寄るように身体を寄せる。

 これからもこうしてゾロの誕生日をお祝いできますように。
 そう心の中で願いながら、ゆっくりと眠りに落ちていった。



     Fin




   *  *  *


ふわ〜〜ドキドキした。
小さい頃からゆっくりゆっくり愛を育んでいった二人。
水族館でのキラキラした思い出から、初めての体験を前にお互いに緊張しまくるところまで、ほんとにドキドキが伝染しちゃったよ。
大人なゾロが素敵(うっとり)
ゾロに彼女ができるまでって、サンジがそう踏ん切り付けるのも仕方ないよね。
そんな切なさいっぱい片思いから晴れて両思い、優しいエロまでありがとう!!
美味しいゾロなす、ご馳走様でした(//▽//)




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