Fall




俺・・・こんなトコで何やってんだっけ・・・?

繰り返される行為に、時間を見失う。
俺の身体は独りでに蠢き、のた打つっているが、その感覚はひどく遠い。
枯れるほどに声を上げ続けているはずなのに耳に入ってこず、ギシギシと軋む縄の音だけがやけに耳に響く。

痛みと、屈辱と、羞恥と。
快楽の中で。

心だけがふわふわと宙に浮いているようだ。

煙るほど立ちこめているお香の向こうに、覗き窓の形だけがうっすらと浮かんでいる。
丸い形のギヤマンの向こうで、ギン―俺のご主人様―が、こんな俺を見ているはずだ。
身じろぎもせずに。



―――可愛い可愛いサンジさん。
俺ァ人買いのエースにアンタを紹介された時から、アンタしか目に入らなくなった。
手の切れるような大判何枚も何枚も重ねて、やっとアンタを身受けた。
アンタに陰間なんかさせられねぇ。
アンタぁ俺の天使様なんだ。
アンタは微笑んでくれるだけで、天の国へと導いてくれる。
絹の布団に絹のべべ、黄金に玉に伽羅をくすべて、何の不自由もなく大事に大事にしてやりてぇんだ―――

―――ざっけんな!
キリシタンだかきりたんぽだか知らねぇが、俺ぁ陰間なんだ!
陰間にゃあ陰間の意地ってもんがあらぁ。
銭出して買われてんのに、いい部屋であったけぇまんま食わせてもらって、ニコニコしてりゃあいいって言われて、はいそうですかって納得できるほど腐っちゃいねぇ。
アンタ、俺のご主人様なんだろう?
するこたさっさとしてもらおうじゃねぇか!―――

―――ああサンジさん、怒らねぇでくれ。
俺だってよ・・・。
俺だってほんとは・・・サンジさんが乱れてる姿が見てぇ・・・。
軽蔑されても構わねぇ。
考えるだけで、ほら、息が上がってくらぁ・・・。
本当はあんたを・・・。
ねぶり尽くして・・・蹂躙して・・・そのキレイな顔に濃くてドロドロしたもんをぶっかけてぇんだ・・・!

でも、でもな・・・。

笑うかい、サンジさん?
俺ァ・・・この手でアンタを汚すことはできねぇ。
アンタぁ眩しすぎて、触れることすらできやしねぇ。
アンタのその白い足が踏んだ床を、舐めるだけで精一杯なんだ・・・。



だから―――だから、専門のヤツを用意したよ。
アンタの美しさを、もっともっと引き出せる、本職のヤツを―――。

・・・キレイに、堕ちてくれるかい?―――





「よそ事考えてんじゃねぇぞ」
「・・・ッあ!ぁっあっああっ!」

乳首を捻り上げられて身体が跳ねる。
引きちぎれるような痛みは、もう快感にしか感じられない。

荒縄で両手を縛り上げられ片膝を胸につけるように固定されているので、天井からつり下げられた身体の重みは天井からもう一方の足先に集中する。
長時間の責めにガクガクと震えがきて、今にも倒れそうだ。

「おいおい、もう立ってられねぇのか?このまま倒れたんじゃあ、大事なお手手に傷が付いちまうなぁ。ん?」
耳元を舐めるようにしてそっと囁かれて、総毛立つほどの快楽が身を襲う。
「こ・・・このっ・・・クソ坊主ッ!」
気力で睨みつけると、坊主は不敵に笑った。
「まだまだ元気じゃねぇか」



ご主人様がエースに頼んで用意させたのは、街で評判だという触れ込みの破戒僧だった。
地下牢めいた部屋に閉じこめられ、吊され、なぶられ、いつからこうしているのかも分からない―――。



「こ・・・このッ、この縄解きやがれ・・・ッ」
「縄ぁ?手の方か?それとも・・・こっちか?」
「ああああッ!」
身体の中心を指で弾かれて、また跳ねる。
そこは細い縄で根元から器用に縛ってあって、解放されない快感が苦痛な程に押し込められている。
「やめ・・・は、外し・・・」
「外す?この縄か?それともこっちか?」
「ッッッ!!!」
後ろにくわえさせられている張り型をギリギリと押し込まれた。
もう声も出ない。
「はっきり言わねぇと分からねぇよ」
くくっと笑う声に、もう反応すらできない。
ひたすら痙攣するだけの俺の身体を、坊主は下から丁寧に舐め上げる。
太股。
尻。
わき腹。
胸。
乳首をかすめて、首筋へ。
耳たぶを噛まれて、身震いする。

「なんで俺が破戒僧って呼ばれてるか、知ってるか?」
「は・・・ァッ・・・?」
「誰もが心に抱えてる、人には言えねぇ戒めってやつを壊すからだよ。・・・てめぇの戒めも、壊してやるよ・・・ッ」
「ひぁぁッ!あ・・・ああ・・・あああッ!あ〜〜〜〜ッ!」

力任せに張り型を引き抜かれたかと思うと、もっと熱くてもっと固い何かが入ってきた。
遠慮会釈もなく、我が物顔で腹の中を掻き回される。

後ろから強く抱きすくめるように、坊主が囁く。
「本当はこうしたかったんだろ?何もかも忘れて、快楽に溺れて、無茶苦茶にして欲しかったんだよな?」
「は・・・ァ、ん・・・」
「ああ?聞こえねぇな」
「あ・・・して・・・」
「あ?」
「し・・・て。もっと・・・ッ!もっと、シて・・・ッ!」
「いい子だ」

しゅるりと中心の縄を解かれ、身体を持ち上げるように大きく揺さぶられる。

俺は、叫びながら闇に堕ちていった―――








「なんで俺がお前を負ぶって走らにゃならんのだ」
ぶつぶつと文句を言いながら路地を走るゾロを、背中からからキセルでぶつ。
「俺の足腰が立たなくなったのは、どこのど・ち・ら様の!せいでしたかねぇ〜?」
「・・・調子に乗りましたごめんなさい」

―――最近このグランドジパングに、香に混ぜた麻薬で女を薬漬けにして売るなんていう、言語道断な輩が出没している。
元締めはクリークという悪党だが、実際に手足になって動く部隊の頭は、鬼人のギンというヤツだ。
昼は敬虔なクリスチャンで、貿易商を営んでいる。
表の商売はきれいなもんだから、つつきようがない。
岡っ引きのルフィも現場を押さえようと頑張ってくれてはいるが、末端とギン、それからクリークを繋ぐ薬を手に入れないことには話にならん。
すまないが、サンジ。
隠密同心として働いてくれ。
ギンにはどうやら衆道の趣味がある。
懐に入って、薬を盗み出してくれ。
ヤツはモノにする前には、必ず一昼夜ほど地下牢に閉じこめて、薬漬けにするらしいから、隙を見て逃げ出せば、問題はないはずだ。
ゾロは計画が狂った時の為に待機してくれ。
既に与力のエースがギンと接触している。
長居は無用だ、計画が成功したらすぐに薬を持って帰ってきてくれ―――



「って、お奉行のシャンクスが言ってたよなぁ。す・ぐ・に!帰ってこいって!お前が地下牢に来た時点で、部屋のお香はすり替え済みだったんだから、そのまま逃げりゃよかったんだよ。なんであんなまな板ショーをサービスしなきゃいけねぇんだ!」
「てめぇが普段、やれ明日の仕込みがあるから早くしろだの、今日は宴会で遅くなったからやんねぇだの、ごちゃごちゃうるせぇから溜まってたんだよ」
「俺は忙しいんだっつ〜の!放浪坊主と違って、板前にゃあいろいろ段取りってもんがあんだ。溜まってんなら自分でしやがれ、自分で!」
「・・・てめぇだってノリノリだったくせに」
「〜〜〜ッ////!」
「わ〜!こら、首絞めんな!」


にぎやかな逃避行が、夜の街をバックに繰り広げられるのであった―――。

おちまい♪


    *****


やられたー!!(笑)
んもう、どうしまようってドキワク・・・いや、ドキドキハラハラしたじゃないですか!
しかもギン!不憫さbPのギンが、光ってます。いい味出してます。
さすが柚希ちゃんのギン!存在感半端ないです。
全部破戒僧×板前に持ってかれてますが、それでも俺にはあんたの涙が光って見えるぜギン・・・
思いがけないグラジパで淫らにも妖しく幸せなゾロサンをありがとうございます!




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