エンジェルダスト


海に沈むその刹那。

幼い頃、くいなに聞いた話を思い出していた。

『天使はね、金色の髪に、青い瞳で白い肌をしているの。そして、真っ白な大きな羽根を持っているのよ』

少女らしい、夢物語りだと思っていた。
くいなはその瞬間、その『天使』を見たのだろうか?

俺の瞳に映るそれは、悲痛な表情で、海にと落ちる俺をみつめ続けていた。

次にそれを見たのは、アーロンパーク。
不利になると判っている筈なのに、傷付いた俺を庇う様に、海へと飛び込んで行った。

そしてその次は、スリラーバーク。

混沌とした意識の中、翳む視界の先に、俺へ向かい駆けて来るその姿を見た。


どうして何時も、そんな悲痛な表情を見せる?

「オイ・・・おめェ・・・生きてんのか?!」

常々思っていたんだが、『天使』って言うのは、随分とガラ悪りぃな・・・。
『白い羽根』とやらは、何処に隠していやがる?

意識が切れるその瞬間まで、言葉と反比例したその表情をみつめていた。



「ふッ・・・ん、あ・・・」

湿りを帯びた濡れた声が、耳に心地好い。
白い肌のそこかしこに浮かび上がる、赤い鬱血は、これが誰の物か知らしめる為に付けた印。


四つん這いにと組み伏せた身体。
組み伏せたその身体の奥にと呑み込まれた、俺の性器。
狭い、そのちいさな孔で出し挿れされる性器が、薄い肉を捲り上げる様は、絶景だ。

唇から時折り漏れる苦悶の声は、四つん這いの足の間から垂れ零れる雫によって、痛みや苦しみ以上に、
この身体に充分過ぎる快感を与えている事が見て取れ、自然と口角が上がる。


押さえ切れない衝動。
止まらない欲情。

そして、これを穢した。


身体を屈め、かちと、浮き出た硬い肩甲骨には歯を立てる。

きっとここに、白い羽根が隠されている。
その羽根を広げた姿は、さぞかし美しいかっただろう。

けれど、それは二度と開く事を許さない。
もしもその羽根を開いて、飛び立とうとしたら、俺は開いたそれを、へし折り、引き千切る。

血に染まる、白い羽根ごと、この『天使』を腕の中にと囲い続ける。

これは、俺の物だ・・・。

あの瞬間、お前が俺を捕えた様に、俺もお前を離さない。




2013.02.14 UP



   *****


ゾロに手折られて羽根が散り、流れた血で朱に染まっていても、きっと気高く穢れない天使なのですよ。
永遠に手に入れられないとわかっていて、求めずにいられないゾロ。
その渇望がきっとゾロを捉え続ける。
そしてサンジもまた、ゾロの手からは逃れられない。
苦くて甘くて激しく静かな愛の断片を、ありがとうございます!




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