「てゅるてゅる」−2



 コックは鏡の前で凄絶に乱れた。

 恥ずかしい姿を自覚すると、余計に興奮するのかも知れない。
 そのままケツ孔に高ぶりきったチンポコを埋め込んでやると、奥まで呑み込むなり喜悦の声をあげて射精してしまった。ガキ臭いつるぴかピンクの肉襞に赤黒い剛直が呑み込まれ、ずぷずぷと出し入れされる様子はゾロにとっても見物だった。

 コックはあえやかに嬌声をあげて何度も達したし、体腔内にも大量の精液を呑み込んでいった。それが溢れる様子も見守りたくて、獣の肢位にさせて下から腹部を押さえてやれば、粗相をしたかのように《ごぷっ》とケツ孔から白濁が溢れ出してくる。大変よろしい眺めに、結局ゾロは《お漏らししやがって…栓してやるよ》と嗤いながら雄蕊を埋め込んでいった。
 結果、余計に接合部から溢れ出した液が、コックの滑らかな腿をしとどに濡らしたのだけど。

 

*  *  * 



「へへ…良いモン撮れたぜ」

 にやにやとほくそ笑んでいるのは金髪を買い取った業者ポドリフで、手にしているのは隠し撮りをしたセックス写真だ。三刀流の剣士に紹介してやった連れ込み宿はポドリフの弟が経営する店で、容姿に優れた金髪の男女が利用すると、決まって隠し撮りをしている。

 宿屋の中には香の中に眠り薬を混ぜておいて、眠り込んだところを誘拐・監禁するような手合いもいるのだから、このくらいは許して欲しい。彼らがセックスに勤しむ隣の空間が覗き部屋と現像室を兼ねており、今も撮ったばかりの写真を現像中だ。どれも良い感じに映っている。マジックミラーになっている大鏡にカメラを設置してあるから、丁度ベストショットになるように相手の方で立ち位置を調整してくれるのだ。特に毛を失った秘部を晒して御開帳した金髪が、ぼろぼろ泣きながら貫かれている写真は秀逸だ。濃いピンクのケツ孔はヴァギナよりも余程清楚で、そこに邪悪ななど黒々とした肉棒が突き込まれる様は、男の欲望を十分に満たす。

 この写真で、ポドリフは一財産稼げるだろう。

 この島では確かに金髪は呪いや化粧品の材料にも使われるが、成分的に薬効が上がるかどうか証明されたわけではない。むしろ、地黒な島民にとってお伽噺に出てくるような色白金髪碧眼への憧れが強いことが、高値で金髪を取引する要因となっている。

 だから本職の呪い師や調剤師はともかくとして、取り扱い業者は金髪そのものより金髪女や男の綺麗な写真を欲しがる。しかもあの男はふわふわとしたウサギみたいに可愛い陰毛まで売っているのだ!咥内に一本含んで、写真を愛でながらマスを掻きたい男達は相当な高値で写真と陰毛のセットを買い求めるだろう。

かくゆうポドリフだって、写真を撮っている間中ハァハァ荒い息を漏らしながら陰茎を擦り続けていた。ノース極北特有の透きとおるような肌が見事なピンクに上気して、蒼い宝石のような瞳からぽろぽろ涙を零す様子はあどけないと言って良いほどなのに、股間にずっぷりと凶悪チンポを銜えて、口元は嬉しそうに微笑んでいるのだ。
 清楚な幼さと爛熟した淫らさが同居するあの青年は、数十年に一度の逸材だ。

「へへ…可愛い顔して大した淫乱だぜ。ああ…畜生。相手の男が三刀流の魔獣でなきゃ、趣旨替えして拉致監禁してやんのによ」

 あの細い首に大型犬用の首輪を填めて、鎖に繋いでやったらさぞかし滾るだろう。全裸に剥いた身体に毛が生えるたびに丁寧に剃り上げて、てゅるてゅるになった身体に隈無く舌を這わせるのだ。《ゃだァ…や、ぁあ〜っっ!》と甘い嬌声を上げさせて、ピンク色をしたチンポからミルクタンクが空になるくらい絞ってやろう。薄い唇にポドリフのチンポを銜えさせ、素晴らしい金髪を掴んで端正な顔や頭に白濁をぶっかけてやりたい。
 そうだ、《金髪美青年のフェラチオ》として商品化しても良い。これは相当な高値が期待できるだろう。
 あの男は、まさに金の卵を産む鵞鳥だ。

「ひひひ…最高だなァ。今からでも遅くねェ、やっぱ強い香を買ってきて、あいつらに嗅がせて…」

 鋭利な光が、突然目の横を掠めたような気がした。
 
「…?」

 咄嗟には何が起きているのか判断できなくて小首を傾げると、《スゥ》っと頬を掠めていくものがある。それは、刀身の長い剣だった。そしてポドリフの頬からは、見る間に夥しい量の血が流れてシャツを紅く染めた。

「覗きの代償を頂こうか?」

 後ろを振り向くのが怖い。

 ポドリフはガクガクと震え、だらしなく太った腹肉と顎を揺らすばかりで、一言も発することが出来なかった。背後に立つ男は別段声を荒げているわけでもないのに、慄然とするような殺気を迸らせていているから、気が付いたらポドリフのズボンはびしょびしょに濡れていた。いつの間にか失禁していたのだ。
 
『魔獣…ロロノア・ゾロっ!』

 一体どこからやってきたのだ?顔は動かさず視線だけで様子を伺えば、壁にクルンと丸い穴が空いている。音も立てずに建材を斬り抜くとは何という技量か。
 コックと呼ばれていた金髪は精根尽き果てたように気絶していたから、そちらはまだベッドに転がっているのか姿は見えなかった。

「そこにあんのでネガは全部か?」
「あ…ああっ!」
「嘘は赦さねェぞ?こいつの恥ずかしい写真を売り飛ばしたりしやがったら、地獄の果てまで追いかけて寸刻みにしてやる。あいつの痴態を覗きやがった時点で、その汚ェ目玉を抉り出してやりてェくらいなんだ」
「ひっ!」

 また失禁した。もう男としてのプライドなど放り出して、ポドリフは平身低頭する。

「し…写真も毛もお返しします…っ!だから、い…命ばかりは…っ!」
「毛はしょうがねェ。一度売ったもんだからな。ただし、俺ァ呪いや化粧品の材料だっつーから承諾したんだ。変態野郎どもに売ったらどうなるか…分かってんだろうな?」
「ひィ…ひぃいいっっ!!大丈夫です…っ!写真がついてない毛は、エロい価値は殆どないから…っ!う、売りたくてもそういう方面には売れないんです…っ!!」

 全身の毛を逆立てて悲鳴を上げ続けるポドリフに、男は総毛立つほど残忍な声で囁いた。

「俺は約束を重んじる男だ。破った時は…てめェの破滅の時と思え」

 《はひ…》とようよう返事をすると、ポドリフは夥しい汗を垂らしながらその場に崩れ落ちた。



*  *  * 



「やーん、素敵ィっ!サンジ君本っ当〜にありがとうね〜っ!助かったわー。これで食料も次の島まで足りるくらい買えるわね!」
「お役に立てて何より…」

 メリー号の甲板の上で珍しくクルクル回転しないサンジに、ナミは内心苦笑する。てゅるてゅるになった身体をさぞかし執拗に責め立てられたのだろう。
 サンジがふらふらしながらキッチンに向かうと、大量の札束を数えながらゾロに笑いかける。

「ご苦労様。おかげでいい稼ぎになったわァ〜」
「クソ…。あのオッサン、覗きに気付いた時点で叩き斬ってやりたかったぜ」

 楽しくてゅるてゅるサンジを味わったゾロに、《隠し撮りされているわよ》と伝えたのは枕元に手と口を咲かせたロビンで、知らせを受けて現像室に踏み込み、ポドリフを脅迫
したのはナミだ。おかげで体毛を売った金の5倍の慰謝料を受け取ることが出来た。

「貴重な資金源なんだから、斬っちゃダメよォ〜」

 ナミは元々、ただ金髪だというだけで体毛が異様な高値で取引されていることに不信感を抱いていたのだ。何か裏があるのではないかとロビンも使って調べてみたら、やはり、島民の中に強烈な金髪嗜好があると分かった。だから敢えて業者を泳がせて隠し撮りの現場を押さえ、まずはゾロが徹底的に心が折れるくらいに恐怖心を植え付けてから、ナミが庇い立てする形で《この男の怒りを収めたかったら、きっちり慰謝料払って貰いましょうか?》と掛け合ったのだ。

「てめェ、コックの写真を売ったりしねェだろうな?」
「流石にそんな酷いことしないわよ」

 《魔獣ロロノア・ゾロの四本目の刀で犯される金髪コック》の写真なんてうっかり世の中に流出した日には、バラティエから送り出してくれたゼフが脳内出血で即死するだろう。悪魔的に鼻が利くロビンも手伝ってくれたから、徹底的にサンジの写真とネガは燃やしておいた。
 
「私だって、サンジ君が本気で泣くのは嫌だもん」
「自分がからかって泣かせるのは好きだろうが」
「あら、人のこと言えるのかしら?」
「俺ァ良いんだ。惚れてるし、惚れられてるし」
「あらあら、ご馳走様」

 我ながらおばはん臭い言い回しをしてくすくす笑うと、キッチンから響く《おやつだよォ〜》の声に《ハーイ!》と元気なお返事をする。

『ほんっと、あのゾロがこんなにサンジ君にメロメロになるなんてね?』

 処分前にこっそり覗いたセックス写真はかなり生々しくて恥ずかしい代物だったが、二人の表情だけは気に入っていて、《ちょっと取っとこうかな》なんて思ったのは内緒だ。

 そこに映っていたのは何ともエロティックで、そして…物凄く幸せそうな顔だったのだ。



おしまい






あとがき


 みう様〜。触手モノ「にょろにょろろ」に引き続き、「タイトルを考える気があるのか」と疑問視される「てゅるてゅる」如何でしたでしょうか〜(まァ無いんですけど)

 折しも本誌ではサンジの身体にナミの心が入り、サンジの行動如何によっては、嫌がらせとしてナミに髭や臑毛を剃られるのではないかと妄想が膨らみます。サンジを男らしくしたいおだっちのことだから《絶対無い》と分かってはいても、《行け、そこだ、ナミさん!剃れっ!臑毛は良いから髭は剃れ!》と思う狸山、臑毛でもふもふサンジも好きですが、至る所がてゅるてゅるサンジも大好きです。