天動説の男


なんでおれがクソコックと付き合ってるかって?

…ンなもん、どうしててめぇに言わなけりゃなんねぇ。
確かに減るモンでもねぇけどよ、聞いて楽しいモンでもねぇだろ。
あ?誰が照れたりもったいぶったりするかってんだ。
ったく、どうしてこうオンナってのァ他人の事情に首を突っ込みたがるんだ。うざってぇ。

あーわかったわかった。
とりあえず教えりゃァ金は貸してくれんだな?無利子だな?
言っとくが、マジで聞いても楽しい話じゃねぇぞ。

おれが、クソコックなんかと付き合ってんのァな。
…………身近にアナがあるってのもいいんじゃねェかと思ったからだ。

怒んなよ!
そっちが話せっつったんだろが!!

酷ぇっつわれても、おれにとっちゃ、コックはただのアナだ。
コックはおれに惚れてるらしいけどな。
面と向かって告白された時ァ、正直驚いたぜ。
あいつ、まるで勝負挑んでるみてぇに思いっきりガン飛ばしてよ。
ガチガチに緊張してんのモロわかりだっつんだ、そんなの。
今思い出しても笑えて来るぜ。

だが、あん時ァ本気でビックラしたな。
「いいか、おれァおまえに惚れてる」って堂々と宣言した後に、「そんだけだ」っつって、背を向けると思うか!?
不覚だが、みっともなくうろたえちまって、つい呼び止めちまったんだ。何の考えもなしに。
そしたら、コックが泣きそうなツラで振り向いたもんだから、なおさらギョッとしてよ。

―――――「わかった」、っつった。

あいつ、おれがなんもわかってねぇのわかったんだろな。
「それってどーいう意味だ」って聞いてきた。
そこで、ようやくおれも考えたんだ。
コックの気持ちを受け入れるってのが、どういう意味なのかってよ。

つまりは、おれとコックが付き合うって、そういうこったろ?
付き合うっつーのは、つまり、セックスするってことだろ。
あ、違うのか?
じゃあ、付き合うってのァ、セックスの他になんかすることあんのか?
男同士なんだから、結婚もクソもねぇだろうし。
で、まぁ、おれァコックとセックス出来るのか考えてみた。
今までは野郎なんかとセックスなんか思いもしてなかったがよ。
コックが、おれに組み敷かれて喘ぐわけだろ?
あの、おれにたてついてばかりの生意気なクソコックが。

イケるな、と思った。

さっきも言ったが、コックと付き合えば身近にアナが出来るんだ。
航海中にサカっても困らなくなるってのァありがてぇ。
しかも、あいつァ相当の女好きだろ?
陸に降りた時、ちっとくれぇ商売女抱いたところで、男なんだから気持ちはわかるだろ。
そこでブーブー言うようなら、そこまでだ。
何ひとつ、おれに痛手はねぇからな。

だから、「こーいう意味だ」っつって。
とりあえずキスしてやったら、あんま気持ち悪くもねぇし。
やっぱイケるな、って再確認も出来たことだし、そのまま押し倒した。

剥いてみて気付いたんだが、ありゃエロい体してやがんな。
よくわかんねぇけど、うなじとか腰とかよ。
胸はねぇけど、肌もなまっちろくやがって、乳首なんか赤ンボみてぇにやらけぇし。
そういや、アイツのチンポコも赤ンボのままなんだろな。
あんなピンクのチンポコ見たって、途中で萎えることもなかったぜ。
むしろ興奮した。
普段はスカしてやがるコックが、半泣きで縋って来んだからな。
やたら敏感に反応すっから、なんかおかしいとは思ってたんだが…。
他人に触られるのは初めてだったってんだから、笑ったぜ。
19にもなって童貞だったんだってよ、恥ずかしすぎんだろ。




……それだけだ。
おれがコックと付き合ってる理由は。
そんなショックな顔するぐれぇなら、てめぇが慰めてやりゃいいだろ。
ま、コックはおれにベタ惚れみてぇだから、てめぇじゃ力不足かもしれねぇけどよ。

おら、ンなことより早く金くれ。
せっかくの陸なんだ、あんま時間を無駄にしたくねぇんだよ。

――――はァ!?
貸したくねぇって、約束が違うだろ!
おれァちゃんと言っただろ、洗い浚い、正直に!
待てよナミ!船降りる前に理由を言え、理由を。

……いや、ちょっと待て。
なんでおれが、女を買うって話になってんだ?
女なんか買うより、コック弄くってる方がよっぽど楽しいぞ。
まァしょうがねぇな、てめぇはコックを弄ったことねぇもんな。
あの楽しさがわかんねぇのもしょうがねぇよ。
どんな楽しいか知りたくても、生憎あのエロコックはおれにベタ惚れだしな、てめぇじゃ…って、これさっきも言ったか?

じゃあなんで金が要るかって、そりゃあ。
あー……。
……おい、これ言ったらホントに金貸してくれるんだろうな。
言ってから、やっぱ貸さねぇってのはナシだぞ!

――――ホテル代、だ。

いや、だから、コックと。
初めては、海の見えるホテルでしてぇ、とかって言ってやがったからよ。
参ったぜ、夢見る乙女かっつぅんだ。
ま、どっか上陸した時にそこらへんの宿にしけこみゃいいと思ってたんだけどよ、最近は陸に着いたって
無人島とかばっかだっただろ?
正直、かなり溜まってんだ。
しょうがねぇから、あそこのホテルに前金払って来たとこだ。
おう、こっからでも見えるだろ、あの豪勢なホテル。
せっかくだしいちばん上の、いちばんいい部屋にしてやったぜ。
ああ、すっげぇ値段だったぞ。
自分の小遣いだけじゃ足りなくてな、だからこうやって金を借りに戻って来たんじゃねぇか。
おまえが船番で助かったぜ。

あン?
……だから、まだ途中だ。
おれのがデカすぎるみてぇでな、頑張ってみたんだが結局入らなくてよ。
ま、コックを弄ってるだけでも十分楽しいし、今日までにじっくり時間掛けて念入りに慣らしてやったんだ。
指とか、舌でよ、ぐっちょぐっちょになるまでな。
おかげで、あいつァおれなしじゃいられねぇカラダになっちまったんじゃねぇのか?
きっと、一生、女なんか抱けねぇなありゃ。

おい、そういう訳だから、早く金寄越せ。
早くしねぇとコックが市場から帰って来ちまう。
こんな場面見られちゃ、サプライズも何もあったもんじゃねぇだろ。

ああほら、コックがこっち向かって来てやがる。
どれって、アレだあの、アホっぽい金色が見えるだろ?
……見えねぇ?嘘だろ、なんかあそこだけやたら眩しいじゃねぇか。
おまえ、目ェ悪かったか?

ンなことより金だ、金。
おう、ありがとよ。
最初っから素直に出しゃいいじゃねぇか。

……おいどうした、なんか疲れてるみてぇだが。
チョッパー見かけたら船に来るように言っといた方がいいか?
そうか、あんま無理すんなよ。

コックが帰って来たから、おれァもう行くぜ。
悪ィな、金借りてくぞ。
じゃあな。




おしまい。



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