TE☆I☆SO☆U☆TA☆Iぱにっく!




「あなたかわりは〜ないで〜すか〜♪ひごとさむさが〜つのり〜ますぅ〜♪」
「…てめぇ、何してんだ、昨日から」
「ん?テイソウタイっての作ってんの」
「…」



春うららの海域。
ここはグランドライン、メリー号。
麦藁の一味を乗せて、我等が羊船はまったりまったり進んでいく。

相変わらずののんびり航海に激震が走ったのはつい一週間。
船長公認の元、俺とコックはめでたく連れ合いになった。

航海士の激励と考古学者の祝福と、医者の認定(宴の次の日の朝一番に「ああ、番いになったのか。まぁ発情期の徴候出てたからね、二人とも。なんか困ったことがあれば相談に来てよ」と、あっさりカルテに記入された)と、狙撃手の全力の祝辞(チョッパーの言葉を横で聞いていてコーヒーを噴き、ナミに「汚いっ!」とシバかれた。その後ゼンマイの切れた人形のような動きで俺とコックに向かい、「そっ、ソっ、そウか。しっ、シッ、シアワせが、ナニヨリだぜ!」と言ったのち、「ちょっと俺船酔い…」と男部屋に寝に行った)とを受けて、俺達は。

それから特に何の変化もない。
ホントに何もねぇ。
普通19の男に連れ合いができりゃあ、期待の一つや二つや50や100はする、あれやこれやそれやどれやが、何もねぇ。
あれ以来接吻すらねぇ。

大体相手はこの船で一番忙しいコックだ。
「仕事中に抱きつくな!」とか「キッスの前には雰囲気作りから!」とか最初にかまされてしまったわけで、甘い時間とやらが一切ねぇ。
俺より早く起きて、俺より遅く寝る奴の、しかも起きてる間ず〜っとクルクル働いてる奴の時間って一体いつなんだ。

まだ一週間、されど一週間。

いつもどおり喧嘩したり飯喰ったり鍛練したりする日々が続いている。
(…しかし、スポーツドリンクの差し入れの時に「ほら、冷たい内に飲めよ」と微笑うようになった。…それはちょっとイイ)

くそぅ。
なんだか無性に焦る。

心頭滅却、煩悩成就。
男の一念岩をも通す。

溜まっていくストレスやらアレやらに、鉄団子をぶんぶん振り回す時間だけが増えていく。



そうこうしている内に、昨日辺りからコックが編み物を始めた。
煮炊き物の合間とか、おやつの後片付けと晩飯の支度の間のほんのひと時とかにいそいそとロビンの元へ行く。
デッキでやってるから通りすがりに覗いたら、真っ白いほっそい糸を、棒一本で捏ねくり回していた。

なんだありゃ?
腹巻きじゃねぇし。

やたら機嫌良さそうに、鼻歌まじりでやってやがる。
しかもなんで鼻歌が『○の宿』。

むぅ。
気になる。

ロビンが席を立ったのを見計らって聞いてみたらば。



…貞操帯だとぅっ?!

「…誰のだ」
「え?てめぇのに決まってんじゃん」

俺の。
貞操帯。

真っ白になった俺を置いてけぼりにして、コックはこしょこしょ編み棒を動かしている。

「テイソウタイなんてイーストブルーの風習、俺ロビンちゃんから聞いて初めて知ってさぁ。あんまり上手に作れないかも知れないけど、まぁ頑張ってみようかなって思って♪」
作業中に歌う歌まで教えてもらったんだ〜♪とかご機嫌のコックに、無理矢理意識を元に戻す。

待て。
今発音がおかしかった。

「…ロビンはどういう風に教えてくれたんだ?」
「え?だから帝争帯だろ?戦い事でトップとることを祈願して作る、ブレスレットみたいなアクセサリー。一針一針想いを込めて編んだやつを、チンコに付けるんだよな。雑念が起きねぇように。なんでチンコに付けると雑念が起きねぇのかイマイチ分かんねぇけど」

…違う。
千人針とか混じってる。
てか帝争帯て。

いや、ピッタリサイズをチンコにつければ膨張防止になるから、ホラやっぱり貞操帯☆


…っっっつって訳ねぇだろあの女ぁぁぁあああ!


殺気立って振り返れば、物陰に隠れ切れていないロビンの肩がチラリと見えている。

震えてる。
笑いが堪えきれてねぇ。

「で〜きたっ!」
コックが誇らしげにさっきのを手にとって、太陽に翳した。
白い小さい花がいくつも並んで、輪になっている。
「コットン糸をモチーフ編みにして、繋いでみたんだ。俺初心者だから、うんと簡単なやつだけど」

そうだな、カヤやビビが腕に着けていれば、とても似合うに違いない。
森の中とか、お茶会とか。
ふふ、ふふふ。

軽く逃避し始めた俺だが、やはり現実は逃がしてはくれなかった。


「じゃ、付けるから出せ」
「…なにを」
「チンコ」
「…なんで」
「付けるっつってんだろ。早く出せ!」
「わ〜っ!ひっひっ引っ張るな、脱げるっ!」
「脱がしてんだっつ〜の!」
「ちょ、ちょっと待て、頼むから待ってくれ!!!」

ズボンとパンツを死守して(よりによってトレーニング用のゴムひもズボン…)船縁にしがみつけば、さすがにコックもためらった。

「…なんだよ、俺が作ったのを付けるのがそんなに嫌なのかよ」
セッカクガンバッテツクッタノニ…。
落とした肩からそんなオーラが出ている。

違う。
いや違わないが、この雰囲気は何かが激しく違う。
いや別にお前が作ったからどうこうという訳じゃねぇから。

「あ、あのほらサイズとかあるし。合わないと悪いし。自分で着けてくるよ」

何故俺標準語。
自分で着けるってなんだ。

「あ〜大体サイズは大丈夫だ」
「なっ、なんでわかんだよ!」
「みんなで一緒に水浴びしたりすんじゃん」
「…」
ソウダネ、ボクも君のサイズこっそり知ってます。

「ちっ、チンコに花柄ってのはど〜かな〜?単なる紐でいいんじゃないか?」
「古い文献では、豊饒を意味して花モチーフなんだって」
…ロビンめ…。

「俺のチンコ触るなんて、てめぇ嫌じゃねぇか?」
「なんで?男同士だろ?」
…どおいう教育してんだこらぁオーナーゼフ!!!
「俺も同じのついてんだ、恥ずかしくないぞ」
純粋培養教育でしたかオーナーゼフ…。
道理でなんか、俺と方向性がズレてると思ったんだ…。

「…え〜と」
「早く出せ」
そんな、お手♪みたいに手ぇ出されても出せるかぁぁぁ!
ここは真っ昼間の甲板だ!
他の時に他の場所ならむしろウェルカムなんじゃこらぁぁぁ!!!

「…てめぇが着けなきゃダメなのか?」
苦し紛れに言うと、途端にコックが真っ赤になった。

「…だ、って俺…。お前に何にもしてやれてねぇし…。武運長久のおまじないくれぇ、俺の手でしてやりてぇ…」

…きゅん。

すまん、俺の息子よ。
しばしの我慢だ、許せ。

「分かった」
「分かってくれたか♪」

…すっごい嬉しそう…。

俺は覚悟を決めて、二枚一気に下ろした。

「お〜、サイズピッタリじゃね?」

いそいそと寄って来るのを確認して、しっかり目をつぶる。
後は野となれ山となれ。

ぷにゅ。

つっ、つままれたっ…!
何この羞恥プレイっ…。

「お〜入る入…る?」

ぷにぷに。
あんまり触るな。

「あ、ん…引っ掛か…る?いや、大丈夫…か。ん…と、よいしょ、あ、あ、あ、入りそう」

ぐ。

下っ腹に力を込めて、一瞬走った不埒な連想を追い払う。
だって俺、19なんだ。
いやだめだだめだめだ、ここで勃ったら、男が立たん!!!

「あ、もうちょっと、だから…」
ヤメテ、そのセリフヤメテ。

「入った!」

手を離されて、思わず目を開けると、しゃがんだコックは俺を見上げて満面の笑みだった。

「やっと、入った」

!!!

ぶち。


「「あ」」

「なんでソッコーちぎっとんじゃこらぁぁぁ!ちんこデカくすんじゃねぇぇぇ!!!」
「不可抗力ってもんだろうがくらぁぁぁ!」
「何時間かけたと思っとんじゃてめぇぇぇ!」
「もっとアレやコレやに時間とれやオラァァァ!」

どかばきどこべし。
「とりあえずパンツ履きなさいアンタァ!!!」

ドカァン!

「ナミっ雷直撃させちゃダメだ!うわぁゾロが黒焦げだぁ〜!い、医者〜っ!オレだ〜!」
「なんだぁ?楽しそうだなぁ」


甲板のすみっこで工房を開きつつ、一部始終を空気のように見ていたウソップは、傍らで肩を震わせながら佇んでいたロビンに声をかけた。

「なぁ、この騒ぎ、誰得?」
「あら」
振り返ったロビンは、いつにも増して艶やかな美しさだった。

「私よ♪」

今日もまったり、明日もまったり。
麦藁の一味を乗せて、羊船は今日も平穏に海を進んでいく。


End






ロビンちゅわあああああああん・・・
ゾロ、なんてかわいそうなゾロ・・・orz
武運長久を祝われても嬉し恥ずかしっつうか、千人針で不覚にも爆笑してしまいました。
サンジ、目を覚ましてサンジ!!
まさかのあひるモコパン貞操帯説からこんなSSが生まれてしまうなんて。
柚希さん恐ろしい子!!!
まったりほのぼほ幸せ?ZSをありがとうございますv