take back  -3-



「あ、あ・・・あ―――」
ぐちゅぐちゅとはしたない水音が立って、サンジは耳まで真っ赤に染めながら羞恥に耐えていた。
開かれた足の間で、ゾロはやけに真剣な顔付きで自分の後孔を押し広げている。
両方の手を使って丹念に揉み解して行く、ゾロの手の動きがすべて目に入ってきてどこを見ていいかわからなかった。
背後には21ゾロががっちりと身体をホールドしていて、両腕も後ろ手に回され分厚い胸板で押さえ込まれてしまっている。
その状態で足を広げて固定されたから、サンジにはもうなす術もなかった。
「もう、いいから・・・」
さっさと突っ込んで終わってもらいたい。
そう切実に願うのに、ゾロは殊更丁寧に愛撫を続けた。
「すげえ柔らかくなったな、もうぐちょぐちょだぞ」
「言うな、ばか」
「指が楽に入る、今どんだけ入ってっかわかるか?」
「知るかっ!」
顔を背けたサンジの背後から、21ゾロが肩越しに覗き込んだ。
「美味そうに、飲み込んでんじゃねえか」
「な?」
「うううう、うるせえっ」
叫んだら、ぎゅっと乳首を抓られた。
思わず悲鳴よりも甘い声が漏れる。
もう、少しの痛みくらいはすべて快感に変換させられた。
今の状態なら、なにをされても喘ぎ声しか出ないだろう。
「もう、いいから―――」
「しょうがねえな」
いかにも渋々と言った風に腰を上げて、ゾロは己のいきり勃ったモノを取り出した。
そのまま膝立ちで前に進み、サンジの眼前に突き付ける。
露を滲ませた先端を頬に擦り付けられ、サンジはおずおずと舌を出して凶悪な肉棒の側面を舐めた。

「すっげ・・・」
感嘆は、どちらのものだったのか。
二人に見られていることを意識しながら、サンジはゆっくりと舌を伸ばして見せ付けるように舐め、頬張って口を窄めた。
口の中でゾロのモノがどくりと息づくのがわかる。
21ゾロの掌が、サンジの平らな胸を揉みし抱き、喉元を押さえてゾロの先走りで濡れた頬を撫でた。
ゆっくりと探るように指先が口端を辿り、唇を捲って歯列に差し込まれる。
歯を指で擦られ、蠢く舌と中を一杯に満たすゾロの雄芯を一緒に撫でられた。
隙間から涎が溢れ、顎を伝って胸元へと滴り落ちる。
「ふ・・・」
ぐじゅりと喉を鳴らし、サンジは21ゾロの指を追うようにゾロのものから口を離した。
ゾロはそのままサンジの足の間にしゃがみ、大きく開かされ晒された中心に宛がう。
先端を押し当て、円を描くようにゆっくりと周囲に擦り付けた。
21ゾロの指がサンジの口の中に差し込まれ、舌の付け根を挟んで引き出す。
「ふ、ひ―――」
尻を持ち上げ、一気に中へと押し入った。
それと同時に、猛り切ったサンジ自身から白濁の液が迸る。
「んくっ、くー・・・」
ギリ、と21ゾロの指を噛んでサンジは仰向けのままブルブルと身体を震わせた。
「はっ、はっ・・・」
身の内に納めたゾロを締め付けながら、長い射精の余韻に浸る。
「イっちまいやがった、挿れただけで」
「う・・・」
かああっと火が点いたように顔が火照った。
なにもしていないのに、触れてもないのにイってしまった。
挿れられただけで―――
「ち、くしょ・・・」
「すんげえ、感じてやがんな」
ゾロは羞恥に顔を伏せるサンジより、繋がった場所で確かめるように腰を動かした。
「俺ひとりより、いいのかよ」
「・・・なにっ」
言い返そうとして、ゾロの激しい挿迭に身体が浮き上がった。
全身を叩きつけるように打ち込んでくる。
イったばかりの身体に律動が激しすぎて、サンジは悲鳴を上げながら己を抱える21ゾロの腕に縋った。
「ああっ、キツっ・ま、まって―――」
仰け反って上げる声を塞ぐように、21ゾロの指がまたサンジの口の中を探る。
引き出した舌に噛み付かれ、くぐもった声が喘ぎに変わった。
「まひ・・・んひ・・・」
「いやらしい口だ、上も下も」
「うん、あ―――んんん」
舌と指とで散々蹂躙され、閉じることすら忘れてサンジはぼうっと21ゾロを見上げた。
チュクチュクと音を立てて指を吸い、口付けをねだるように舌を差し出す。
「この口、使っていいか?」
21ゾロはサンジにではなく、後方のゾロに顔を向けた。
「勝手にしろ」
苛立たしげに応え、サンジの中に砲身を埋めたまま長い足を担ぎ上げて、ぐるりと乱暴に回す。
悲鳴を上げてベッドに手を付いたサンジを、腰だけ引き上げて四つん這いにさせた。
そのままガツガツと後ろから突き入れ、膝が浮く程に押し上げる。
「うあっ、やー、い、や―――」
泣き声を漏らすサンジの顎を掴んで、21ゾロは長衣の隙間から覗かせた砲身を口元に宛がった。
慣れたゾロのものと同じ、けれどどこかしら堂々さを増したモノを、サンジは躊躇いなく頬張った。
「んぐ、ぐ・・・、う―――」
「上も下も、美味えかよ」
ゾロの律動に合わせ無意識に腰を揺らしながら、サンジは両手で21ゾロのイチモツを掴み、必死で奉仕した。
どちらのものともつかぬ指が乳首を摘み、尻肉を揉む。
前に回された手で屹立した己を扱かれ、喉の奥まで砲身で満たされてサンジは狂ったように身体を揺らした。
「うおっ、おぅ、お―――」
獣のような唸り声を上げ、中で弾けたゾロの熱と口内に広がる苦味を味わいながらサンジはその場にくず折れた。





はっはっ、と3人分の荒い息遣いだけが響く。
突っ伏したままシーツを握り締め、サンジは中々顔を上げない。
乱れる金糸の隙間から覗く耳は真っ赤だから、恐らくは羞恥に耐えかねて顔を合わせられないのだろう。
ゾロは、サンジの尻に果てて濡れそぼった己を擦り付けるようにずり上がりながら、その髪を掻き上げ顔を覗き込んだ。
「エロコック」
「・・・さい」
言い返す声が小さい。
長い前髪の下から、意固地に歪んだ口元と噛み締められた歯が覗いた。
震える頤に手を掛け、そっと上向かせる。
「どエロコック」
「うっさいっつってんだろーがっ」
ぐあっと吠え掛かる顔は、予想通り茹蛸みたいに真っ赤だった。
いくらゾロとは言え、二人掛かりで無体を働かれたのがよほど堪えたのだろう。
睨み付ける目が潤んでいるから、ゾロは宥めるようにその瞼に口付けた。
「褒めてんだよ、エロコック」
「・・・じゃね」
「あん?」
ちゅ、ちゅと目元から頬へとキスをずらせば、サンジは甘えるような仕種でその唇を受け止める。
「お前一人で、足らねえんじゃ、ね・・・」
なんのことかと訝しげに眉を顰め、すぐに行為の最中にゾロがぶつけた言葉だと思い出す。
「お前だから、いいんだ、ぼけ・・・」
最後は消え入りそうな声で呟くから、ゾロはたまらない気持ちになってぎゅっと抱き締めた。
「わあってる」
「わかって、ね・・・」
ひーんと喉が鳴るような音を出し掛けて、止まった。
代わりになにやら甘ったるい鼻息が聞こえてくる。
「―――?」
「ふ、ん、ふ・・・」
見れば、サンジはぎゅっと目を閉じてゾロに抱きついたままプルプルと身体を震わせていた。
何事かと視線を移し、いつの間にか背後に移動していた21ゾロの手元を見やる。

「おま、勝手になにしてやがる!」
「ああ?弄るくらい許せ」
ゾロがサンジと熱い抱擁を交わしている間に、21ゾロは勝手にサンジの後孔に指を入れて弄くり倒していた。
サンジもサンジで、嫌がるどころか甘えた声を出して下半身だけもじもじさせている。
「中でどっぷり出しやがって、零れてんぞ」
「あや、や・・・」
腰を抱え上げられ、差し込んだ2本の指がくっと開かれた。
長い足の間から、内股を白い液がつーっと伝い落ちるのが見えて思わず「おお?」と目を見張る。
「このエロコック!」
「や、ばかやろっ、これてめえのだろ!」
「ん?ここはどうだ?」
「んあっ」
くなんと抱きつかれて、ゾロは焦ってサンジを抱え直した。
「勝手に触るなと言ってんだろーが!」
「挿れるのはダメか?」
「当たり前だろうが、これは俺んだ!」
奪われまいとするように、しっかりと抱きかかえて引っ張った。
「やりたかったら、てめえのこいつでやれ」
ゾロ二人に挟まれてあーだこーだと言われ、さすがのサンジもちょっとむっときた。
「ざけんな、俺はてめえのモノじゃねえぞ」
「ああ?なに言ってやがる」
抱えた本人に反旗を翻され、今度はゾロが至近距離で噛み付く。
「てめえは俺のもんだ」
「いつ、んなことを・・・」
「今決めた俺が決めた」
どこのガキだ。
「だから、例え俺でもてめえは渡さねえ」
ぎゅっと息が詰まるほど抱き締められて、サンジは乱れた髪が張り付く頬の色を一層濃くした。
勝手にモノ呼ばわりされて所有権を主張されるのは業腹の筈なのに、そこはかとなく嬉しいのはなぜだろう。
「わあった、挿れねえよ。弄くんので我慢してやる」
「あんだと?偉そうに」
言い合うゾロ二人に、つい噴き出してしまった。
どっちもどっちだ。

暢気に忍び笑いを漏らしている場合ではなかった。
それじゃあと21ゾロの指が勝手に中で蠢き始めるし、ゾロはゾロでむちゃくちゃに唇を貪りながら背中を掻き抱き、すっかり回復した己をグリグリと押し付けてくる。
サンジは二人のゾロの勢いに押されて、天と地も区別がつかないくらいグラグラに引っ張りまわされた。
「や・・・ま、ちょっ―――」
21ゾロの指が、的確にサンジのイイ所を突いてくる。
奥の奥まで指が差し込まれ、再び完勃ちとなった己はすぐにでも達してしまいそうだ。
逃げを打って膝立ちで仰け反れば、前から抱き締めていたゾロが硬くなった花芯の根本を掴む。
痛いほどの力なのに、サンジにはゾロの掌の熱さがもたらす快感の方が勝ってしまった。
「あ、や・・・や」
そのままゾロは頭を下げてサンジの花芯を咥え込み、じゅるじゅると音を立てて啜り始めた。
そうしている間にも21ゾロの指が焦らすように周囲を撫で回し、内側からサンジを追い立てる。
ころよしとイイところを突き捲くられて、サンジは仰け反りながら喚いた。
「うあっ、や!・・・そこ、は―――」
「いい、んだろ?」
「やっ、い、イくっ、イっちゃう」
ダメだダメだと身も世もなく嘆くのに、前を咥えたゾロは断固として手を緩めずより強く根本を抑えてきた。
21ゾロの指は容赦なくサンジの一点を擦り続け、泣き喚く様を楽しむようにその頬を舐め首に齧り付いた。
「・・・ひぐっ、イ、いぐぅっ・・・や、ぁいぎだいっ」
「よしよし」
もはや、指であることがもどかしい。
焦点の定まらない目線を宙に漂わせながら、嫌だ挿れてとうわ言のように繰り返すサンジから21ゾロはゆっくりと指を引き抜いた。
散々前を甚振っていたゾロも根本を押さえる手をそのままに口だけ離し、その場で寝そべる。
21ゾロが脇に手を掛けて、子どもに用を足させるような格好でゾロの上に下ろした。
ずぶりと音が立つほどに深く差し込まれ、再び持ち上げられる。
「ふあ・・・あ、あ―――」
ずぶ、ずぶと濡れた音を立てながら、半分まで挿れては抜くを強制的に繰り返され、サンジは放心状態で成すがままだ。
「あ、はぁ・・・あう、うう・・・」
ポロポロと涙を零し、唇を歪ませてしゃくりあげる。
自分を抱える21ゾロの腕に縋り付いて、長衣を肌蹴て隆々としたイチモツを剥き出しにした。
「ひあっ、う、うぶぅ・・・」
文字通りむしゃぶりついて、泣きながら咥え込んだ。
そんなサンジの腰を抱え、ゾロは自ら動いてその尻に打ち付ける。
「ふぐっ、あっ、あう、うひ―――」
突かれる度に声を上げ、サンジは両手で自分の股間を押さえた。
「ひ、イ・・・いった、いっちゃ―――」
きゅうきゅうとゾロのモノを締め付けながらも、痙攣が止まらない。
「・・・あ、あ、イ、イったのに、いいっちゃ、あああ」
サンジの前髪を乱暴に掴み上向かせて、21ゾロは猛り狂ったものをその平らな胸に押し付けた。
小さく立ち上がった乳首に擦り付け、自分で扱きながら射精する。
パンパンと音を立てて尻肉に打ち込みながら、ゾロも長々と中で放出した。
「イくぅ、い―――あ、あああ・・・」
身体中にゾロの精を浴びて、サンジもようやく吐精できた。





太陽が黄色く見える。
死んだように眠って、目が覚めたら夕刻だった。
黄色く見えたのは暮れ行く夕陽だ。
せっかくの上陸だったのに、ほぼ丸一日パーじゃねえか?
「あああもう」
サンジはベッドの上で頭を掻き毟り、勢いよくシーツを引っ張って隣で寝くたれるマリモ頭を床に落とした。
ゴツっと固い音が響いたが、気にしない。
「・・・あにすんだ」
「うっせ、お前も一旦目え覚ましたんなら俺を起こせ!」
面倒臭そうに床で寝返りを打つゾロに八つ当たりした。
「今日は恋人岬に行くつもりだったのにー」
この島唯一の観光名所に、ゾロと一緒に出かけるつもりだったのだ。
そうして昼は星付きの店でランチを食べて、ガイドブックでチェックしたカフェでお茶をしてと計画だけはバッチリだった。
なのになのになのに、観光どころか立って歩くのもままならない。
それというのも―――

寝転んだ肩をガシガシと足蹴にしながら、部屋の中を見回した。
もう一匹のマリモの姿がない。
「おい、未来のゾロはどこだ?」
「ああ?」
やたらと不機嫌そうな声で起き上がった。
どうもサンジが21ゾロのことを口にするのが気に入らないらしい。
「知らん」
「知らんって・・・」
「目え覚ましたらいなかった、もういいだろ」
明らかに不貞腐れて横を向いている。
そんな仕種が、可愛くなんかねえんだぞと心中で思いつつ、ついサンジは手を伸ばしてその頭を抱き寄せてしまった。
「別にいいけど、仮にもてめえだろうが」
「いくら俺でも、腹立つ」
サンジに頭を抱えられたまま拗ねたように呟くから、サンジはもうなんだか胸がぎゅ〜っとなってしまった。
クソ緑なのに、寝腐れ腹巻なのに、なんだこの可愛さは。
「バカだな」
「ああ?」
ムキっと目を剥いて振り返る、見た目だけは精悍な顔にちゅっと音を立ててキスをした。

「俺が気にしてんのは、あいつの顔だ」
「ああ?」
口に出して言うのは憚られたが、臍を曲げたゾロに納得してもらうためには仕方がない。
「あいつの・・・目さ、潰れてたろ」
「ああ」
今気付いたとでも言う風に、ゾロは向き直った。
でも、それがどうしたとかそんな程度で。
「お前のさ、その目が・・・ああなるってことじゃね?」
サンジの言わんとすることを理解しようと、ゾロはじっとこちらを見つめている。
その真っ直ぐな、サンジが大好きな瞳が片方あんな風に潰れるなんて、考えただけで胸が痛い。
「イヤだなって、そう思ったら見てられなくて・・・それでもどうしても目がいっちまって」
痛かっただろう、怖かっただろう。
もう二度と開かれないのかもしれない、光を失ってしまったのかもしれない。
「見たくないのに、目に入って・・・イヤだった」
喋っているうちに声が湿っぽくなってしまって、そのまま俯いた。
ゾロは無理に顔を上げさせようとせず、代わりに両腕を回してぎゅっと抱き締めてくれる。
「そん時や、そん時だ」
「・・・言うと思った」
そう言うと思った。
けれど、それでも―――


不意に部屋が揺れて、棚の上のものが落ちた。
何事かとお互い抱き合いながらその場で立ち上がる。
震動はすぐに収まったが、窓の外から見下ろせる街の中心地から黒煙が上がっていた。
「なんだあれ、火事か?」
「爆発だろ、いまの」
見物人たちがわらわらと現場に集まっていくのを高みから見物しながら、ゾロは自然な仕種でサンジの肩を抱いた。
「・・・言っとくけど」
「ん?」
「俺は、お前のモノじゃねえからな」
「まだ言うか」
ゾロは笑って、前を向いたきりのサンジの顔を覗き込む。
「お前のものは俺のもの」
「じゃあ、てめえも俺のもんだろ」
お互いに腕を回して抱き締め合い、ぴったりと額を付けて微笑んだ。





*  *  *





丸一日留守にしていたサニー号に戻ってみれば、なぜか宴会になっていた。
ゾロは驚き呆れつつも、その輪の中に足を踏み入れる。
ルフィが腕を伸ばして飛びついて来た。
「ゾロー!サンジ、助かったぞー」
「助かった、サンジ助かったー!」
ウソップも涙と鼻水でぐしょぐしょになりながら、纏わりついてきた。
それぞれに修行を終えて一回りも二周りも逞しくなったとは言え、ガキくささは変わらない。
「どういう、こった?」
ルフィとウソップを巻きつけたまま傍らのナミを振り返れば、こちらも目を赤くして笑い返した。
「チョッパーがね、手術してみたらもうカケラがなかったって。レントゲンに映ってたはずのものが消えてたの。もう心配ないって」
「・・・そうか」
「すんばらしい奇跡です!ワタシも目を疑いましたー!あ、目えないんですけど」
「アウッ、本当によかったよなあ」
男泣きするフランキーの横をすり抜け、ロビンがそっとゾロの背を押した。
「行ってあげて」
「ああ」
緊急のオペ用に無菌状態になった医務室では、チョッパーがせっせと片付けを始めていた。
ゾロの姿を認め、大きく頷き返す。
「もう大丈夫だ、目を覚ますまでまだ時間があるけど、見ててくれるか?」
無言で頷き、ベッドサイドの椅子に腰を下ろした。
そんなゾロを横目で見て、チョッパーは静かに扉を閉める。

白いシーツに包まれて、サンジがすやすやと眠っている。
一度開いて閉じた傷も綺麗に縫合された。
しばらくは痛み止めが必要だろうが、後は回復するだけだ。


昔、ある島で爆発事故に巻き込まれた。
ガラにもなく「恋人岬」なんてところを冷やかして、遅い昼食を摂った後のことだ。
サンジは頭に傷を負い一旦は完治したかに見えたが、その数年後、残っていた破片で致命傷に至ると診断された。
もう、気付いた時には手の施しようがなかったのに―――

ゾロの手が伸びて、眠るサンジの髪を掻き上えた。
その動きに誘われたかのように金色の睫毛が瞬き、そっと目蓋が開かれる。
宙を漂った視線がゾロを捉え、白い貌に微笑が広がった。
「・・・この、浮気モノ」
掠れた声の呟きに、ゾロも微笑みながら口付けた。



END



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