Sweet sweet 2

ゾロはきょろきょろと辺りを見回し、ようやくサンジと二人取り残されたことに気がついた。
サンジは鼻歌交じりに皿洗いに没頭している。
その姿に別段変わったものは感じられない、が―――

ゾロは食べ終えた皿をシンクに置いた。
「あ、ありがと。ゾロv」
やはりおかしい。
「お前、なんか悪いモンでも喰ったのか?」
「なんだよ、失礼だな。それがコックに言うセリフかよ。」
普段なら、難癖付けてんのかてめえとか言って、蹴りの一発も入る筈だ。
ゾロはサンジの額に手を置いた。
熱はない。
自分の掌の方が余程熱いのか、ひやりとした感触がある。
「あん、何するの・・・ゾロ。」
―――!!

今度こそ、腰が砕けるかと思った。
今、なんつった、こいつ・・・

両手で肩を掴んで無理矢理こっちを向かせると、布巾を握ったまま驚いている。
「何、ゾロどうしたの?」
ゾロは口をパクパクさせて、サンジの顔を凝視した。
誰だこいつ。
顔も声もサンジに間違いないが、口調が、声音が、仕草がいつものそれと違う。
「ダメだよゾロ。こんなとこで・・・」
蚊の泣くような小さな声で抗議して、俯く。
桜色に染まった目元が、金糸の間から垣間見えた。
これはもしかして・・・
――――イケルかも。

ゾロはごくりと唾を飲み込んで、細い頤に手をかけた。
そっと上向かせると、潤んだ瞳が見上げてくる。
まるで壊れ物でも扱うかのように、そっと唇を重ねた。
何度も角度を変えて、啄ばむように口付ける。
合わせる唇の隙間からサンジの甘いと息が漏れた。
ゾロに縋った手が震えて、がくりと膝が抜ける。
「ゾロ・・・や――――」
ちろりと舌を覗かせて、サンジが軽く喘いだ。
力の抜けた痩躯を抱えてゾロは椅子に腰掛ける。
膝に乗せた形で再び唇を貪った。
「・・・ふぅ・・・ん」
鼻に抜ける甘ったるい声が耳をくすぐる。
手早く外したボタンの隙間から、熱い手を滑り込ませた。
直ぐに胸の飾りを探り当て、軽く擦れば白い身体がぴくりと跳ねる。
「や・・・こんなとこ・・・で―――」
遮る手の力は弱い。
乱れた金髪が、色づいた頬にかかり、きつく吸われた唇がぷくりと充血している。

たまんねえ――――
恥じらいながらも弱々しい抵抗を見せるサンジに、ゾロは有頂天になった。
いつもなら、まず膝蹴りが入り、口汚い罵倒と共に踵落としが決まる体制だ。
それが今日はどういうわけか、身を竦ませて震えているのみ。
「嫌じゃ、ねえだろ。」
ぴちゃりと耳穴に舌を差し込めば、悲鳴に似た声が漏れた。
「あん、ゾロダメ・・・そこはダメ―――」
言葉と裏腹に、小さな尖りはぴんと立って更なる愛撫を強請っている。
「こっちもこんなになってっぞ。」
布越しに下腹を包み込めば、涙混じりの声が上がった。
「やぁ・・・ん―――」
きつく目を閉じて頭を振るその頬に唇にキスの雨を降らせて、ゾロは床に身を横たえさせた。



「きつかったか?」
いつもならある筈のない気遣いの言葉が自然に口から出る。
何度か髪を撫で付ける無骨な指の感触を楽しみながら、サンジはうっすらと笑った。
「もう・・・ゾロ、無茶するから―――」
何度か泣いたせいで、目が赤い。
まだ汗の引かない額に、ゾロはそっと唇を落とした。
「あのね、ゾロ―――」
抱きしめられたままサンジは戸棚を指差した。
「あそこに、ゾロのチョコが置いてあるんだけど。」
ゾロは名残惜しげにサンジから離れて、示された場所を覗く。
綺麗にラッピングされた小さなチョコレート。
無造作に包みを解くとシンプルなトリュフが3つ。
「ゾロのために作ったんだ。甘くなくて、多分大丈夫。」
サンジの視線に促されて、ゾロは一粒口に含んだ。
ほんのり香る芳香と苦味、そして密かなスパイス。
「うまいな、これ。」
「でしょ。」
それは嬉しそうに、サンジは満面の笑みを浮かべた。
「ああ、美味い。」
ぽいぽいと残りの2粒も口に放り込んで、ゾロはにやりと笑った。
「もう、ろくに味わわないんだから。」
拗ねて尖らせた唇に、噛み付くように口付けた。
「甘えのは、こっちだけでいい。」
「・・・ん、ゾロの食いしん坊――」

バカップルの夜は続く――――




夜明けと共に船は出港した。
今日も順風満帆。
空は快晴。

「あの果実を調べた結果、面白いことがわかったぞ。」
チョッパーは細かく書き込まれたノートを膝の上に広げた。
「精神を安定させる物質が多量に含まれてた。トリプトファンやビタミンB6、データ・エンドルフィンを活性化させる作用もあるし、エストロゲンも・・・」
「それって、女性ホルモンじゃあ・・・」
「そうとも言うね。」
その言葉に、ナミははあーと頭を抱えた。
「どおりで、夕べは皆変だった筈だわ。」
「自覚はあるのに、直らなかったものね。」
ロビンが優雅に微笑む。
早めに就寝した彼女が、一番正解だったのかもしれない。

「でも私フリルのドレス着て、お花畑でハープ弾いてる夢を見たのよ。」
「へえ、そりゃあまた・・・」
ふふ・・・と浮かぶ微笑は、どこまでも神秘的だ。

「俺のスケブに、訳のわからないポエムがびっしり書かれている〜〜〜!!!」
ウソップが騒ぎながら悶絶している。
「キャプテンウソーップ!一生の不覚!!!」
泣き喚く隣で、覗き込んだルフィがにししと笑っている。

「あの島で、恋人達は年に一度、果物の力を借りて熱い夜を過ごすってことかしら。」
「情熱的ではなさそうだよ。男性機能は低下するから。」
「へえ、じゃああれは、どうなの。」
「・・・恐らく、コトが終わってから、口にしたんじゃないかな。時差もあるみたいだし・・・」
「なるほどね。」
ナミは苦笑いを浮かべて、先程から騒がしい一角に目を向けた。


「黙れ腹巻!!脳ミソ灰汁沸いてんじゃねえのか、このミドリハゲ!!!」
「怒った顔も可愛いなあ、あんまり可愛いと喰っちまうぞv」
「寄るな、触るな、くっつくな、噛み付くんじゃね〜〜〜!!!」
「チョコより、お前が喰・い・た・いvvv」
 「この、ドアホ――――!!!」



今日も平和に、GM号は海原を行く―――――

END

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