サボテンのため息 3

片足を抱え上げられて、息が掛かるほど間近で見つめられながら、誰にも見せたことのないところを
じっくりと解されている。

言葉で散々嬲られた反動か、前に触れられただけでサンジはあっさり達してしまった。
はしたなく撒き散らした白濁の液をこってり塗りつけられて、無遠慮に減り込む指の感触に耐えながらも、
サンジは直接的な身体の刺激に助けられていた。

先ほどまでの居たたまれない言葉責めに比べたら、こっちの方がよほどマシだ。
この状態でベラベラと実況中継でもされた日には舌を噛んで死にたくなるだろうが、幸いゾロは人が
変わったように無口に寡黙に励んでいる。
これはこれで相当不気味だが、最初に地獄を見たサンジにしてみればなんだって容易い。
たとえ半裸に剥かれて足を広げられて熱心に尻穴を解されていようとも、これはこれで致し方ない結果だと
納得してしまっている。

ふとゾロが顔を上げてサンジを見た。
何か口にするかとぎょっとするのに、宥めるように笑顔を返す。

「挿れっぞ・・・」
ほっとして思わず笑顔を返してしまった。
うっかりそれに気付いて顔を強張らせた時には、ずんと激しい圧迫感でそれどころではなくなっていた。

「ん、あああ・・・」
かくかくと顎が震え視界がぼやけた。
痛いってもんじゃない。
絶対無理ですそこはっ、と声を大にして主張しても通るくらい無理な場所に、通常あり得ないものが
押し入ろうとしている。

「ま、ま・・・ちょ・・・」
ゾロを押し退けるつもりで肩に手を掛けて、そのまま爪を立てた。
ゾロはサンジの腰を抱いて、ほとんど強引に減り込ませてくる。
ほんの少し濡れて解れたからといって、そう易々と入る場所ではないのに・・・

「うああっ・・・」
怖い―――
サンジは思わず目を瞑ってゾロの首に齧り付いた。
うっかり失念していたが、こんなところは普段モノを入れる場所じゃあない筈だ。
出すのだってこんなぶっといもの出したことがないのに、それよりもっと堅くて太くて熱いモノを逆に
押し込まれるなんて・・・
こんな、こんなに柔らかで人目に曝さない内緒で秘密な弱い部分を・・・

「や―――」
声に泣きが入った。
ゾロの先端が腹の中ほどまで到達してしまった気がする。
腸とか内臓とかあるはずなのに、一体オレの腹ん中はどうなっちまうんだろう。
内部から侵食される恐怖で、サンジは竦み上がって悲鳴を上げる。

「大丈夫だ。」
掠れた声が、熱い吐息と共にサンジの耳を掠めた。
なにが大丈夫なもんかと、言い返す余裕すらない。
「傷付いちゃいねえ、大丈夫だ。てめえがオレを包んでくれてる。」
馬鹿野郎と怒鳴りつけたくてなんとか片目だけ開けてみれば、頬がくっ付きそうなほど間近までゾロが
顔を寄せていた。
背中に腕を回し、がっちりと抱き締められている。

「こうしててめえと、抱き合いたかった。」
抱き、合い?
サンジは呆けた顔をして、霞が掛かったような鈍い頭で考える。
抱き合うって・・・
できればもっと、普通に抱擁とかむぎゅっとかハグっとか、その程度から始めて貰えるとありがてえんだが・・・

「ずっとこう、したかった。」
ゾロは目を閉じてサンジの汗ばんだ額に口付け、抱き締める腕に力をこめる。
そんなに掴んじゃ痛えよコラとか、それより何より、てめえの凶器が一番痛えとか色々言いたいことはあったが、
ゾロが触れる肌の部分から融けるように力が抜けていくのがわかった。

ああもう、しょうがねえ――――
強さだけひたすら求めて傍若無人に生きてきた唐変木が、サボテン相手に睦言を囁いてたんだ。
どう見たって寒い構図で、それでも言わずにはいられないほど、こんなにも求めてきたんだ。

ずくんと、脈打ちながらゾロのモノがさらに質量を増す。
全部入れる前にでかくしてんじゃねえと内心毒づきながらも、サンジは息を吐いて下半身のこわばりが
とけるように努力してみた。
もうぜってー、オレの骨盤骨格なんて、変形しちまっただろうな。
そう思うくらい痛くて軋んでいる。
ゾロはゆっくり静かに動きながらも、腰を進めることは止めなかった。

「はっ・・・あ・・・」
息を吐く度に口端から唾液が垂れる。
それを掬うように舐め取りながら、ゾロはとうとう根元までサンジの中に埋め込んでしまった。
ざり、と堅い毛の感触を内股に感じて、サンジは観念する。

「入っち・・・まった・・・」
「ああ、すげえ・・・」
引き締まった尻たぶを掴んで、円を描くようにゾロの腰が揺れる。
その動きがとんでもなくエロいと羞恥に震えながら、サンジは内部を掻き混ぜられる違和感に必死に耐えた。
なんたって、もう中に入っちまってるのだ。
やめろっつったって止めねえし、きっとイくまで許しちゃくれない。
ぐぬりと、ゾロ自身が感触を確かめるようにじっくり突いてくる。
限界まで広げられた部分は麻痺しているのに、無遠慮に押し入ったゾロの砲身はその存在を誇張するかのように
中から圧迫していた。

なんかもぅ、腹で感じるってどういうこった。
ゾロのその、でかさやら熱さやら形状やら、脈打つような動きやら・・・

「んあああっ・・・」
恥ずかしさに耐え切れず、サンジは声を上げてゾロにしがみつく。
それを合図にしたかのように、ゾロはおもむろに腰を打ちつけ両手でサンジの身体を揺さぶり始めた。
「うあっ、あっ、あああ・・・」
痛いんだか苦しいんだかわからない。
ただ下から突き上げられて腹の中をかき乱される。
目の前が白く光って、こめかみから血を吹きそうなほど血が昇った。

「うあだっ、やだあああ・・・」
鳴く声に煽られて、その動きは激しさを増した。
狭い場所を何度も突かれ、擦られて、痺れた下半身から水音がたつ。
「・・・ふ、あ・・・」
気持ちよくなんかないのに、なぜだか半端に立ち上がったペニスが腹の前で揺れていて、先端から露が
流れ落ちていた。
それ以上に、腹の中でぐちょぐちょと音がする。
どんどん滑りの良くなる動きに翻弄されて、サンジはただゾロにしがみ付くだけで精一杯だ。

気持ち良くなんか、ないのに―――
こんなに痛くて苦しくてぐちゃぐちゃなのに―――
身体が震えて腹が締まる。
脊髄を甘い痺れが駆け登るようで、ゾロが突く度に漏れる声が抑えられない。

「や、は・・・」
ホロホロと涙を零しながら目を開ければ、額から汗を滴らせたゾロと目が合った。
白い歯を覗かせて、にかりと笑う。
「すげえなてめえ、こんなに・・・」
その口をキスで塞ぎたかったが、もうサンジは首を傾ける力さえない。

「狭くてきつい、極上の穴持ちやがって。俺の全部搾り取る気かこの野郎・・・」
「んな、わ・・・け・・・」
「んの面がまた堪んね、俺の・・・エロ天使・・・」


う、があああああっ!!




爆発したかと思うほど心臓が跳ねて、何かが弾けた。
目の前が白く濁り、下の方からぐずぐずと身体が蕩ける気がする。
ぜいぜいと整わぬ息をそのままに身体を傾ければ、ゾロと自分の腹の間に白い液が飛び散っていた。

イ・・・ちまった・・・
こんなこんな
こんなわけもわからぬまま突っ込まれて揺すられて、あんな思い出したくもない恥ずかしい台詞で
イかされるなんて・・・

目を見開いたまま愕然と項垂れるサンジの背を、ゾロは優しく撫で擦った。
「ああくそ、最高だぜてめえ・・・」
突っ張ったまま強張っていた膝を動かせば、結合部からぐちゃりと音が鳴った。
圧迫感が少し和らいでいる。
こいつも、イっちまったのか。

「こんなに早くイったのあ、俺あ初めてだ。」
ああ、イったのか。
良かった。

「そうか・・・てめえも、イったか・・・」
安堵したらへなへなと力が抜けた。
自然ゾロの肩に凭れるようにして、顎をかける。

「もう、な・・・こんな―――」
「ああ、まだだ・・・」
「へ?」
ずくずくと、また何かが脈打ち出す。
燻ぶるように熱を保って甦るさまが、ありありと感じられた。
「っと待て、てててめえ・・・」
「うし復活」
「嫌だああァあっ・・・」
喚くサンジを引き倒して内股を手で押さえつけると、ゾロは上から乗り上げるようにして抽迭を再開させた。


さっきの探るような丁寧な動きではない、明らかに犯し、陵辱する荒々しい律動に、サンジは両手で顔を
覆って悲鳴を噛み殺す。
「いやっだ・・・もう・・・」
「ああ、たまらねえ・・・てめえのケツん中あ、熱くて蕩けるみてえにぐちょぐちょなのに、奥の方からきゅうきゅう
 締め付けやがって・・・こんなに××が綺麗なピンクなら××の奥まで××で、先の方から××××が・・・」
「やめろ馬鹿ァ!!」
ゾロの声が耳に届かないように、結局サンジは終わるまで大声で喚き散らした。













喉がカラカラだ。
張り裂けんばかりの悲鳴から啜り泣きへと変わって、今は息を吐くのさえ億劫だ。
差し出されたコップを引っ手繰って、サンジは無言で冷たい水に口をつけた。

なんかもう、ぐしゃぐしゃだ。
身体も気分も。

ゾロが何か言おうと口を開きかけるたびに、目力で押さえつけた。
もう、何も言うな。頼むから言わないでくれ。
ゾロは仕方なく、言葉にする代わりに無骨な手でサンジの肩や背中を擦っては、髪を撫でて唇を押し付ける。
その仕種は愛情に満ちていて、ここまで無体に扱われた後でもサンジの心がささくれ立つことはなかった。

なんかもう、仕方ねえ。
拗ねた顔で突き出していた下唇を舌で湿らせると、サンジはそれでも仏頂面のままゾロの唇に押し付けた。
ぱちくりと、幼い仕種でゾロが瞬きをする。
サンジは目を合わせないまま口の端だけ上げて笑って見せた。
ゾロが深く息を吐いて、感極まったように抱き締める。
これで全部が伝わったかと安堵するサンジの耳に、心地よい低音が響いた。

「俺ァてめえに・・・てめえのすべてに、ぞっこんだ。」
もう充分わかったと、応える代わりにサンジは手を伸ばしてゾロの脳天に酒瓶を叩き落した。














SEXを前提に愛あるお付き合いをしようと、きちんと言葉で話し合ったゾロとサンジは、
以来仲良く過ごしている。
大騒ぎをおこした初夜以外は上手にその関係を隠しているようなので、他のクルー達も見て見ぬ振りだ。


多分、誰よりもホッとしたのは、夜毎ゾロから届かぬ思いを延々聞かせ続けられていた、あのサボテンだろう。

日当たりのいいラウンジの窓の下
今は床に置かれた鉢植えからは、青々とした肉葉を漲らせたメキシコ柱サボテンが生えている。

END

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