Puppet




「Trick or treart?」
耳元で低くそう囁かれた時、サンジにはすでに選択の余地はなかった。



肌蹴られたシャツは、両腕を巻き込んで背中で一括りにされている。
無理をすれば、腕を引き抜けないこともない。
けれど、無茶をして大切な腕の筋を傷めでもしたら大変だ。
そう自分に言い訳して、曝した胸元を舌で探る男の旋毛を見下ろした。
けれど、目元を覆う黒いバンダナは光さえ通さない。

椅子に腰かけた男の膝に跨って、太腿までずり下げたズボンに脛から下を拘束されている。
中途半端にずれた下着の中に滑り込んだ男の手は、たっぷりと掬い取った潤滑油で濡れていた。
すでに何度も抉られて、馴染んだ指が無造作に内部を穿つ。
その動きの一つ一つに翻弄され、あられもない声を漏らしながら腰を揺らした。

「…も、とっとと突っ込めよ」
「堪え性のねえ野郎だ」
ゾロはくくく、と低めた声で笑い、舌で舐め転がしていた乳首に軽く歯を立てる。
じんじんと痺れるようなもどかしさから、一転して与えられた鋭い痛みに身体は勝手に反応した。
「んあっ・・・」
付け根部分まで潜り込んでいる指を、反射的にぎゅっと締め付ける。
「悦んでんじゃねえよ」
「…誰がっ」
吐き捨てるように言っても、乳首を食む力は緩められない。
乳輪に歯形が残り、勃ち上がった乳首は赤く腫れるだろう。
そう想像するだけで、噛まれていないもう片方の乳首が強請るように一人でに硬くなっていく。

視界を奪われているせいで嫌が応にも、いつもより敏感にゾロの指の動きを感じ取ってしまう。
なにもかもを、サンジ自身が知らない場所でさえすべてを知り尽くしている指が、サンジが望む場所を掠めては逸らして、また焦らす。
度を越した性質の悪い悪戯に、憤る心とは裏腹に身体からは歓喜の激情が溢れ出てた。

「も――・・・い…」
「ダメだ」
冷酷に断じて、ゾロはサンジの中に押し入れていた指を更に深く埋めた。
慣れきったそこは、もっと奥へ感じる場所へと誘うように収縮し、濡れた水音を立てながら難なく飲み込んでいく。
「んあ…あ、あ―――」
「いい声で、啼けよ」

冷たい床に爪先立って、閉じることを忘れた口端からは糸を引く唾液が零れ落ちた。
指が操るままに声を上げ、身をくねらせてただ妖しく踊る。
ゾロだけの、隠微な指人形。


End




back