パンツの日


子どもの下着は白と相場が決まっている。
と、ゼフが思い込んでいるせいか、買ってくるパンツハはいつもグ○ゼの白い綿パンだった。
サンジも「男は清潔感が第一だぜ」と思っているから、それがずっと当たり前だと思っていた。
けれど、学年が変わりそろそろ夏場を迎える頃から、体重測定やら体育やらプールやらと着替えの場面が増えるにつれクラス男子のパンツ比率が徐々に変わってきた。
ぶっちゃけ、柄物のトランクス派が増えている。
サンジは、昨日まで白パンだった男子がド派手な柄パンに変わっているのを、チラチラと横目で見つつ内心面白くない。
男は白だ、ブリーフだ。
そんな時、ゾロを見るとほっとするのだ。
ゾロも白のグン○で、しかも前後がわかるようにか、必ず後ろの部分に太マジックで大きく「ゾロ」と書いてある。
自分で書いたのだろう、やたらと大きくて歪な文字が子ども染みていて、サンジはそれを目にする度に安心する。
やっぱ俺らはまだ白いパンツでいいんだって。



夏休みに入り、友人達と市営プールに遊びに行った。
いつものように更衣室で着替えていて、ぎょっとする。
ゾロが、あのゾロがこともあろうに柄パントランクスを履いている。
しかも黒地にトランプ柄だ。
「おま、なんだそのパンツ」
サンジ以外、全員トランクスだったから、思わず声を潜めてゾロにだけ聞こえるように詰った。
「姉ちゃんが買って来た」
「なんだよー派手だぞ」
「なんでもいいよ」
ゾロはたいして気にした風でもない。
「ワゴンセールで安かったんだと、2枚入り」
そう言って、ビニール袋に入ったもう1枚を取り出した。
どうやら替えのために袋ごと持って来ていたらしい。

「お前、この青似合うんじゃないか?」
ゾロのと色違いで、青地にトランプ柄の新品トランクスが入っている。
サンジはちょっと、心動かされた。
「そうかな」
「おう、絶対この青お前に似合うぞ」
新品だし、ゾロとはそう体型も変わらないし。
サンジは促されるまま、1枚貰って履いてみた。
初めてのトランクスは、少しだけ大人に近付いたような気分になれた。

結局サンジはそのままトランクスを履いて帰り、ゼフには「下着が濡れたからゾロの替えを借りた」と話した。
「こんなもん、履いてんのか」
「みんな履いてるぜ」
さり気なく主張したのが効いたのか、以降サンジも恙無くトランクス派へと移行する。

それから10年。
今では、サンジの下着はゾロが選んでいる。




End