眺めのいい光景  -2-


「やめろ、ばかっ!」
闇雲に蹴りつけたいが、足の甲をがっつり踏まれてしまっていた。
まるで壁面に縫い付けられるようにして、ひたすらに乳首を玩ばれる。
その下で、まだ触れられてもいないのにサンジ自身は明らかに屹立していた。
感じているのだと勝手に主張しているようで、それがまたサンジの羞恥を煽る。
「声、出せよっ」
いつもはゾロがサンジに言う台詞だが、今回はやたらとサンジがねだる。
ゾロの声を聞かないと、何か正体不明のものに悪戯をされているようで落ち着かないのだ。
これがゾロだとわかっていても、不安が拭えない。
「ゾロっ」
「俺の姿が見えなくて、不安か?」
ぎゅっと腰を抱かれて、額に唇が押し付けられた。
「んな訳、ねえだろっ」
強がりを言いながらも、ああゾロだと確認してしまう。
どれだけ仏頂面でもおっさん臭くても、ゾロが見えないと嫌だ。
ゾロの顔が、ゾロの姿がいい。

「見えなくても、俺だってわかるだろうが」
ゾロの手が、サンジの手を掴んで自分の身体を触らせた。
盛り上がった筋肉、引き締まった腹。
滑らかな背中としなやかな脇腹。
「・・・あ」
導かれ、熱く昂ぶる箇所に触れた。
掌で余るそれは、なるほどいつものゾロだ。
「なに、こんなになってんだよ」
「てめえがエロいからな」
ばかやろ、と小声で呟きつつ、手探りで形を確かめるとサンジはそのまま膝を着いてしゃがんだ。
目を閉じて、いつものようにゾロのモノを口に含む。
最初はどうやって咥えていいものかもわからなかったが、最近はコツも掴めてある程度まで口の中に納められるようになった。

ずくんと、口内で容量が増えた。
感じてやがんのかと、苦しいながらも少し嬉しい。
そんなサンジの健気な想いなどお構いなしに、ゾロは最高潮に興奮していた。
なぜならサンジが、何もない空間で口を開いて必死で舌を蠢かせているのだ。
苦しげに眉を顰め、口を窄めたり舌を滑らせたりしている。
前髪を掴んで顔を上げさせると、喉の奥まで丸見えになった。

「どんだけ、やらしいんだ」
「・・・ふっ、ぐっ?」
ぐちゅぐちゅと水音がし、サンジの口端からは涎が伝い落ちた。
内側の赤い頬肉が時折擦れるように凹む。
わざと肉棒を揺らすと、舌の付け根がえずくように盛り上がった。
「う、え・・・」
苦しいのか、目尻に涙が浮かんでいる。
もっとずっとサンジの口の中を見ていたいが、苦しそうなので頬を叩いて合図した。
「悪りい、外すぞ」
「・・・ふ」
外れそうなほど開いた顎を撫でながら、そっと己を引き抜いた。
滴った涎を拭うように手の甲を当てがうサンジから一旦離れ、正面に跪いて両手で腰を抱いた。

「わっ」
やはり、ゾロの動きが見えないからいきなり触ると驚くらしい。
ゾロは気にせず両手でサンジの尻肉を揉みながら屹立したサンジ自身を咥えた。
「あ、ちょっ・・・」
見えないゾロを頭を掻き抱き、サンジは膝立ちしたまま背を撓らせた。
まるで自分からねだっているかのように腰を揺らめかしている。
「は・・・ゾロ、ゾロっ」
前を咥えながら後ろに指を這わせ、石鹸のぬめりを借りて指を差し入れる。
ぬるぬると道筋をつけながら、いつもの手順で後孔を広げていった。

「はあ、待・・・」
両方の膝頭をぴちりと付けてむずがるサンジに焦れて、ゾロは腰を抱くと膝裏に手を掛け無造作にひっくり返した。
「ふわっ」
頭を打たないように静かに床に下ろし、脚だけ開かせる。
「てめ、なんてカッコ・・・」
「じっとしてろ」
太股の裏に手を掛けて、露わになった局部に石鹸を擦り付けて指を差し込んだ。
一本二本と増やす内に、サンジの中がどんどん解れていくのが見える。
「ちょっ、ゾロっ」
「目え瞑ってろ」
見えない相手で不安ならば、目を瞑ればいつもの行為だと認識できるだろう。
サンジもそう思って目を瞑った。
なるほど、動きはいつものゾロのものだ。
けれど目を瞑れば精神が集中してしまうのか、余計局部への刺激が大きく感じられる。
「やっぱ、だめ・・・」
「脚を閉じるな」
ゾロの声は切羽詰っていた。
よくよく耳を澄ませば、荒い鼻息だって響いている。
なんせゾロは絶好調に興奮していた。
なぜならば今、目の前にはサンジの内部が余すことなく晒されているからだ。
片方の手で肉壁を押し広げ、もう片方の指が奥の方へとめり込んでいく。
けれどその指自体が見えないから、サンジの尻は勝手に広がって勝手に奥まっていくようにしか見えない。
ここを、自分の見えない肉棒で抉ったらどんな光景になるのか、想像しただけで脳が沸騰しそうになる。

「ゾロっ、やっぱ・・・」
「脚持ってろ」
羞恥に身を捩るサンジに、無理矢理自分の膝裏を持たせた。
そうして大きく足を開かせながら、膝に手を当てて己を宛がう。
「挿れっぞ」
「・・・う、ふ―――」
ぐぐっと最初の部分が入る時、サンジはいつも歯を食いしばり息を詰めてその圧迫感を凌いでいる。
その瞬間を、ゾロも目を凝らして見つめていた。
サンジの小さな窄まりが形を変え、大きく開いて飲み込むように広がっていく。

「おおおおお」
「・・・は、なに・・・なにっ・・・」
ゾロの雄叫びにビビりつつ、サンジはあああと仰け反っててすべてを飲み込む違和感に耐えた。
その間にも、サンジの中は更に広がりぐにぐにと変化しながら収縮する。
「すげえ」
「・・・や、は―――」
ぐじゅぐじゅと挿迭を繰り返す度に、サンジの中は熱く赤く染まりながら蠢いた。
時に包み込み、時に押し広げられ、まるでそこだけが別の生き物のように息づいて見える。
―――こんな中に包み込まれてんのか。
ゾロは寧ろ神聖な思いで感動さえしていた。
狭く温かなサンジの中はこんなにも神秘に満ちている。

「は、あ、や・・・」
収縮が激しくなった。
絶頂が近いと見て、ゾロも動きを緩めながら奥へ奥へと突き上げていく。
「は、あ・・・ああああっ」
ぎゅうと全体で絞るように内壁が蠢いた。
紅に染まる中、白濁液が迸るのまではっきりと見えた。
「あ、あ―――」
自らの腹に精液を飛ばしながら、サンジもまた果てていた。

ゾロは名残惜しげに数回挿迭を繰り返すと、ゆっくりと己を引き抜く。
その間もサンジの中から目を離せなかった。
まるでゾロを手放したくないかのように纏わり付いてくる肉壁の動きの一つ一つが、はっきりと見えるのだ。
「も、やだ・・・」
サンジはタイルに仰向けに寝そべって、ほとんど半泣きになっていた。
いつものSEXだと思いたいのに、どうしても相手の姿が見えなくて一人で犯されているような気分になる。
「まだだ」
いやいやと首を振るサンジの身体を抱き上げ、ゾロはくるりと反転させた。
壁に手を着かせ、立たせて腰を引き寄せる。
「もう、やだって・・・」
抗議しようと顔を上げ、サンジはげっと固まった。
目の前には、浴室の鏡。
「ちょっ!待てコラっ」
後ろから押さえつけてくる手を振りほどこうとして、叶わなかった。

何の前触れもなく、いきなり後ろから突き入れられる。
先ほどまで散々蹂躙された中は、サンジ本人の意思とは裏腹に難なく侵入者を受け入れてしまった。
「ふあっ、あっ」
両手を鏡について、取りすがるような形になってしまった。
膝から崩れ落ちそうなのに、腰をがっちり掴まれて逃げることもできない。
尻だけ高く掲げられ、ガツガツと乱暴に突き上げられる。
「はっ、や・・・や―――」
「す、げえぞ」
尻肉が広げられ赤く充血した中が丸見えだ。
そこに見えない肉棒を押し込みながら、ゾロは手を回して逸らされたサンジの胸の尖りを掴んだ。
抓って引っ張れば、鏡の向こうでサンジは一人身悶えて乳首を尖らせている。
「やだ、や・・・あああ」
ゾロの指が顎にかかり、半開きの口の中に滑り込んだ。
歯を撫でて舌を引き出す。
欲情に潤んだサンジが、一人で舌を突き出して喘いで見える。
「は、ひ・・・い―――」
感じすぎて我を忘れ、がちりと噛んだ指がサンジの唇を隠した。
不自然な形に歪んだ乳首も、浅黒い手で覆われる。
頭の上にまで掲げられていた丸い尻の向こうに覆い被さる身体が映り、サンジの顔のすぐ横に目を血走らせたゾロの顔が現れた。
「・・・あ、ゾロっぞろぉ・・・」
「くっ!」
サンジの顎を掴んで振り向かせ、唇を合わせる。
乱暴に舌を吸いながら、ゾロはサンジの中で再び果てた。



結局風呂を張り直し、二人で湯に浸かって脱力している。
散々恥ずかしい目に合わせられたサンジは顔を上げることができず、湯船に沈んでそっぽを向いたきりだ。
ゾロはといえば、先ほどの素晴らしい光景を何度も頭の中で思い返しては満足気にニヤニヤしている。
「もう効力が切れたのが、すげえ残念」
「ふざけんなクソマリモ、このエロ魔獣、絶倫腹巻、強姦魔」
「お前も相当ノリノ・・・」
飛んできた洗面器がゾロの額にクリーンヒットする。
「ってえな、たまにはいいんじゃねえか?」
「黙れ性欲魔人」
「なんだったら、明日にでも店に案内するぞ」
「・・・・・・」
サンジは一時逡巡したようだが、首を振ってきっぱりと言った。
「もう結構です」

ゾロはちょっぴり残念だった。




END



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