一目惚れ


薄絹を乱暴に剥がし、素肌に触れた。掌に吸いつく質感、きめ細かさ。
腰が、細ェ。 腕も、足も、首筋も何もかも細ェ。 そして、白い。 雪を模したように真っ白な肌……その所為で、映える―――薄桃色の乳首。

目線を下げれば明らかに雄。 
今は力なく垂れたその先端から、どんな液体を振りまくのか。
触れて、眺めているだけで射っちまいそうだ。
上着を脱ぐ手間さえもどかしく、獲物の上に覆い被さる。
金色の髪に手を差し込むと、絹のように絡みついた。


唇を貪り、首筋を噛んだ。甘い香りが漂って来る。
まるで身体全体が果実のように、蕩ける甘さで魅了する。
息が荒くなるのを自覚した。 これほど興奮するのは初めてだ。
意識があろうと無かろうと、そんな事は関係無い。
一瞬目を離しただけで消えてしまうかもしれない。
隙を見せれば、逃げてしまうかもしれない。
だから、焦った。


指を二本べろりと舐めて、唾液をたっぷり絡ませる。
横抱きに抱えた痩身の、後蕾に沿わせ、淫らな音を響かせる。
内側を擦り、緩みを誘う。 その時、初めて―――表情が曇った。
意識が薄く、戻ったようだ。

「う、……、 んあッ!」

指を抜き差しする不快感に覚醒し、見上げたが
―――何が起こっているのか解らないようだ。
碧い眼が、自分を戒める腕の持ち主を見る。 
驚愕、そして―――何をされようとしているのか一瞬の内に理解した。


「な、……や、やめッ」
「遅ェ」

指はもう体内で粘膜を翻弄し始めている。 押し退けようと暴れても、どう押さえ込まれているのか逃れる事が叶わなかった。 無遠慮な手が体中を撫で回す。
抵抗しているにも関わらず舌先は自由に胸元を這い、不意に両腕を頭の上で押さえ込まれた。

「細ェ手首だな。 片腕で押さえ込めちまうとは」

不躾に言う。 精一杯の侮蔑を向けたが、鼻先で笑って受け流された。

「てめェ、俺を、 ん、くッ……誰だと思って……ッ、やがる……! 」

「天使様だろ。 空から落っこちて来たからな。 ……で、コレ」

翼に触れた。 神聖な翼に。

「やめろっ、触るな! ……ッ」

「片方折れてるな。 当分飛べそうもねェ。 可哀想だから」

腕が降ろせない。 縄で木に繋がれていた。

「別の方法で飛ばせてやるよ」

「く……!」

屈辱に歪む表情を愉悦に見下ろし、片手一本で押さえていた身体から手を離した。
下も脱がなきゃ、事に及べない。
だが刹那、猛烈な勢いでこめかみを蹴られた。

「ぐ!」

「へッ、ざまァみやがれ……! 」

しかし、薄闇にのそりと濃い影が混じる。

「人間の急所を蹴ったのに……、何てタフな野郎だ」

―――笑っている。 悪鬼の様な、表情で。




唇が切れた。 腕で血を拭い、どす黒い赤を見て 
頭のどこかで、凶暴なスイッチが入ったようだ。

「う、ッ、―――」

襲いかかって来た。 ―――速い。 腕を戒められている所為で体勢を整えるのが遅れてしまった。 それでも右膝で応酬するが、武器は相手の急所にヒットせず、掴まれて、そのまま横に倒されてしまった。 同時に、左足も強い力で踏みつけられた。


「うあ、あッ!」


股関節が外れるかと思うくらい大きく広げられ、
凶暴な顔が近づいて来る。

「急所って言うのァな。 ―――ここの事を言うんだ」

「―――あ、あ、ぁッ!」

「……それ以上暴れたら……噛み千切るぞ」

今まさに噛み千切らんばかりの勢いで咥えられた。 
フルフルと頭を振る。 

「じゃあ大人しくしとけ。 ここを」

べろり、と舐める。 腰が引けたが、すぐに元の位置に戻されてしまった。

「喰い千切られたくなけりゃァな」


獰猛な肉食獣が、哀れな小動物に最後の宣告をしたかのような。
魔族に匹敵する殺気と威圧。 碧い眼から、とうとう戦意が消え失せた。


「それでいい」


全身が総毛立っている。 恐怖に折れてしまった。 もう抵抗を示さない。
戦慄く肌をゆっくりと舐め、細部まで味見をした後で
絶望に歪む唇を、思う存分凌辱した。



「―――ッっ、 う、ぁ、ああッ」


背後から痩身を抱え、ゆっくりと体を沈めて行った。 
回した腕で、顎から喉を、執拗に撫でる。 
何と言う、甘美―――。 
粘膜はねっとり絡み付き、異物を押し出そうと締め上げて来る。
首筋から背中に下を這わせ、結合した部分に集中した意識を逸らせる。
翼の間に顔を埋め、根本を甘噛みしたら全身が震えた。

「はあぁッ、 やめ、や、ァんんッ!」

「へェ……、ココがイイのか」

「やうッ! だ、ダメだダメだ、ぁ、ああっっ!」

頭の動きに合わせて、さらさらと金糸が舞う。
―――堪らねェ。
下腹部に力を込め、内側から粘膜を擦り上げた。

「―――ッ、」

ゆっくりと引き、ゆっくり戻す。
同じ動きを繰り返した。 中が充分解れるまで。
肩がビクビクっと震えている。 顎を上げ、口を淫らに開き
挿っているものと自分の膜が擦り合うのを感じている。

また首を振った。 それ以上動くなという意思か。
肩越しに、碧い眼が雫を湛えているのが見えた。

言葉を発する為に、ごくり、と唾液を飲んだのが合図。
突きあげれば仰け反り、引き抜けば体を強張らせる。
とうとう縛られている木にしがみつき、髪を乱して嘆き始めた。

「やめろ、やめ、……、嫌だ、いやだァあッ、……ッ、あ、ッあ、ああッ!」

―――悦い、声だ。

「や、あ、ううッ、うああっ! はぁ、はあっ……はぅ、うう」

幹に爪を立て、一際大きく戦慄いて。
乱暴に射精へ誘われ、膝がガクガクと覚束ない。
それでも止まらず、突き続ける。
両脚は地面から離れ、腰を抱えられた状態で体中を掻き回された。


「…ッ、…、…!」

声が擦れた。
何度も何度も頂点を見た。

腕の戒めを解かれても、地面に背中を押しつけられても
両足を割って再び圧し掛かられても

また侵入してきた熱い塊を受け入れて
動きに翻弄され、泣き、乱れた。



不意に


動きが滑らかになる。


潤む視界の先に、凌辱を繰り返す顔がある。
差し込んで来た朝日が光の筋を運んできて、意外なほど優しい表情を垣間見せた。

顔がもっと近づき、瞼を舐める。眼も、眼の下も。 
鼻先に鼻を擦りつけて、唇がゆっくりと近づいて来る。


なぜ舌を受け入れているのか解らない。
どうして背中に腕を回したのか理解できない。

体の中で、また硬さを取り戻したのを感じ取り
なぜ足先を擦り、腰が浮くのか見当もつかない。


「ふ、……ハァ、ん……ッ」


動きに合わせて擦り、扱く。唇は耳元で甘い愛撫を繰り返している。
快感に身悶え、背中に爪を立て、足を絡めた。





***






「そんな訳で。 な、ゾロ?」

「おう。 不束者だが宜しく頼む」


ぺこりと頭を下げた人間―――剣士、だと名乗った。

「あ、腹減ってねェ?」 
「そういや、減ったな」
「じゃあ俺、何か作るよ」
「いや。その前にてめェを喰いてェな」
「ばっ、……その顔……やめろ」


ゼフは「待てィ!」と声を荒げた。


「天界から落っこちやがったから……慌てて捜索隊を送りだしゃァ、どこの馬の骨ともわからん奴とヤりまくっただと?! おまけに連れて来ただ? 一緒に暮らすだ? てめェそれでも上級天使か! こら待てチビナス、俺ァ絶対ェ認めねェぞ!!」

「おい、いいのか、アレ」
「あァ、いいんだ。 いつもああなんだよ笑っちゃうよな、ははは」


「ははは、じゃねェ!! このクソ剣士、 てめェコラ戻って来やがれ! チビナス! そいつから離れろ!」

「無駄ですよ、神様。 ああなったらテコでも言う事を聞きやしねェ」

いきり立つゼフを、美食天使達が宥め始める。 
天界は今日も平和だった。




FIN



あとがき

ホント、あの。  す、すみません…(汗)



   *****


事故で、出会いがしらに恋に落ちたか(笑)
いやん、最初は強○じゃないですかvウハウハ
違う方法で飛ばせてやる的なゾロ、大好物です(知ってる)
ラストの神様に心底同情しつつ、すっかり馬鹿っぷるになっちゃったラブラブな二人に幸あれv
大変ご馳走様でした、ありがとうございます!


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