キミはLolipop
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「・・・く、ふ・・・」
抑えきれない声が、漣の音に紛れて波間に漂っている。
女のあからさまな喘ぎ声よりこれはこれで結構クるなと、ゾロはサンジの上でぺろりと舌なめずりをした。
月光の下に曝された裸体は白く浮き上がり、ゾロの動きに合わせて荒い呼吸を繰返しながら揺れている。
今まで女しか抱いたことがなく、前戯もそこそこに突っ込むばかりだったが、男の体ではそうはいかないだろうと試しに
あちこち弄くっているうちに、すっかり楽しくなってしまった。
ずば抜けて感度がいいのかそれとも何か別の要素があるのか、とにかくどこに触れても何をしてもサンジの身体は
歓喜に震える。
膝までずり下げられたズボンで足を拘束されながら、太股を開かれゾロに握り込まれている中心は、先ほどから
とめどなく蜜を滴らせ、しとどに濡れていた。
唇にキスし、肌に吸い付き、色付いて固くなった乳首を舌で転がすだけで、そこはとぷとぷと露を浮かせて淫らに震える。
戯れに掌で包み込み、少し強めに扱いてやれば呆気なく達してしまった。
この時のコックの顔は半泣きで、それがまた堪らなくイイ。

「ひで、こんなの、ヨすぎる・・・」
唇を戦慄かせながらそんなことを呟くから、ゾロの脳味噌の方が沸騰しそうだ。
何をしても常にない正直さで身体が応えてくれるから、愉しくて仕方がない。
「てめえ、いつもそんなに感じやがるのか?」
この方が効果的だと分かった上で、真っ赤に染まった耳朶を噛みながら囁いてやる。
それだけで、先ほどまで精根尽き果てたように項垂れていたモノが、手の中でピクリと息づくのが分かった。
「いっつもって・・・そんな、の・・・」
「いつも、じゃねえな。ハジメテか」
チロリと耳穴を舐めてやった。
ふわわわ、と溜息とも悲鳴ともつかぬ息が漏れる。
「俺に弄くられんのが、そんなに気持ちイイか」
「・・・う・・・う〜〜〜〜」
反論したいのかそうでないのか微妙な応えだが、肯定しているのが丸分かりで実に可愛らしい。
サンジの放ったものでべとべとに濡れた指で、窄まった部分を撫でながら埋め込んで見た。
思ったより抵抗が少なく、指先がずぶずぶと減り込んでいく。
「ふわ、そ、そんなとこっ」
「じっとしてろ。もっとヨくしてやる」
ここでぴたりと抵抗を止めるのが、また素直でよろしい。

やや強引に指を進めながら、再びトロトロと雫を滴らせはじめたそれをぺろりと舌で弄った。
小さく悲鳴を上げて、サンジは弾かれたように膝を曲げる。
「やっ、なんてことすんだ・・・汚いっ」
「んなことねえ」
ゾロとて、よもや男のモノしゃぶる日が来るなんて思いもしなかったが、これはこれでなんだか美味そうだと思ったのだ。
白い肌の中心がそこだけピンク色に染まって、てらてらと光っている。
ゾロに触れられる度にコポリと露を零す様がなんともいじらしくて、もっと熱を高めてやりたくなった。
口に含んで舌で扱くように転がし、軽く歯を立てた。
また弾けそうに一気に膨張したから、今度は根元を抑えてやる。
サンジは殆ど号泣とまで言っていいほどに涙を溢れさせ、上半身を丸く縮込ませてゾロに縋り付いた。
「やだ、やだ・・・イ、くのにっ」
「さっきイったところだろが」
「駄目だ、だめ・・・イきたいっ・・・」
2本まで内部に埋め込んだ指が、サンジが身を捩るのと同時にぎゅっと締め付けられる。
内壁の温かさと柔らかさに、早く指以外のものを入れたくなった。
「んなに締め付けんじゃねえよ」
指先を微妙に曲げながら、ぐにぐにと内側を擦る。
口の中でサンジのモノは魚のようにびくびくと跳ね、苦い汁を溢れさせた。
「はっ・・・あ、イ、い―――」
「ったく、堪え性のねえ奴だな」
勢いで3本指を咥えさせ、やや乱暴に掻き混ぜた。
口の中に溜まった唾液もすべて混じらせて、掌ごと突っ込むように抉ってやる。
「うあああっ、む、無理っ・・・」
膝裏を押さえて指を内部で開きながら、程よく解れているのを確認した。
時折顔を出す月の光で、よく見える。

「うし、舌あ噛むなよ」
身体を起こし、すでに硬く張り詰めてパンパンになっている前を苦労して寛げた。
人のことなど言えないくらい、自分のモノも勝手にいきり勃って濡れそぼっている。
サンジは仰向けにひっくり返ったカタチのままで、呆然とその光景を見上げていた。
見開いたままの瞳に怯えが浮かんでいたが、身体は強張ったように固まって抵抗らしい素振りもない。
ゾロはその眼差しから目を逸らさずに、ベタつく掌で数回扱いてひくつく後孔に当てた。
ぴくんと身体が震え、今気付いたように視線がそろそろと下ろされる。

自分の足の間にゾロがいて、しかも下半身剥き出しで、なんだかとんでもないシロモノをでかでかと見せ付けてて、
あまつさえそれを自分のし・・・尻にっ――――
「んっ」
ぎゃあああああああああと本気で叫びかけたら、ゾロのでかい手で口を塞がれた。
その間にも、押し当てられたそれは容赦なくぐいぐいと内側に入ってくる。
痛いとか苦しいとか、もうそんなもんじゃなくて。
あり得ない部分に有り得ない物が減り込んでくるというか、そこは絶対違う、間違ってると叫びたくなるよというか、
それより身体が裂けるんじゃないかとか別の孔が開いちゃうんじゃないかとか、そう思ってる間にもどんどん中まで
進んでるとか、腹を突き破るんじゃないかとか、腸ってどうなってんだっけとか、そんなもん入るほど入り口つか
そこ出口だろとか、それどころじゃなくて痛い痛い痛いっつか、苦しいっつか、そこ、そこはダメっ、ダメ〜〜〜〜〜〜っ!!!

「んぐぐ、ぐっ・・・」
目を閉じるとボロボロ涙が零れた。
無理やり押し入られた部分は、じんじんと熱が広がっていくようで、痛みより圧迫感の方が強い。
それなのにゾロはさらにそこを擦るように動かすから、サンジは泣きべそをかいたままゾロに縋り付くことしかできない。
「・・・ふ、は―――」
鼻息が甘いものに変わってきて、ゾロの掌が口元から離れた。
息苦しさから解放されて、サンジは喉を仰け反らせて大きく息を吐きながら喘いだ。
ゾロは遠慮なくずんずん奥の方へと腰を突き入れては軽く身体を引いた。
抜けるかと思えばまた突き入れられ、その衝撃を受け止める間もなく引かれる動きに翻弄される。
「うあ、やっ・・・それ、や―――」
「ヤじゃね、イイっつえ」
「うはん、イ、いい―――」
浮いた背中に腕を回して、抱き締めながら舌を絡めた。
キスが深まる毎に下半身まで馴染むようで、結合部分はどんどん滑りが良くなっていく。
「はっ・・・やば、い・・・なんか出る・・・」
「ああ、いいぜ」
「やだ、やばい―――」
まさか男に突っ込まれて、気持ちよすぎて何か出しちゃうなんてことはサンジ的に許されないのだ。
だって俺はクールでダンディなジェントル―――(以下略)
「んあああ・・・出る、イく、いいっ」
「・・・くっ・・・」

サンジはイく寸前、目を開けてゾロを見た。
大好きな大好きな、ストイックで端正な顔が目の前にあって、けれど額に汗を浮き上がらせて、まるで苦痛に耐えるように
眉を寄せて、唇は濡れていて口端を引き上げて、どこか恍惚とした表情でぶるりと身体を震わせて―――
「・・・あ―――」
すっげセクシーとか思った途端、じゅわんと下半身が蕩けて弾けた。
後ろで受け止めたゾロの男根をリアルに感じるほど締め付けると、閉じていた目がぎらりと開き、月光を背に受けて影を
差した表情のままで白い犬歯を覗かせて笑った。
サンジを睨み据えたままガツガツと腰を振り、最奥まで押し付けるように身を乗り出すと、満足そうに息を吐いてサンジを
抱えたまま倒れこんでくる。
逞しい身体を受け止めて、開いたままのサンジの太腿が思い出したようにぎしりと軋んだ。











暫くは、波の音と荒い息遣いだけが闇夜に響いていた。
サンジはゾロのシャツを引っ張り寄せると、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔をごしごしと拭く。
「・・・どけ、重え・・・」
つい声が掠れるのを誤魔化そうとして俯いたのに、またゾロに抱き締められてスンと鼻が鳴ってしまう。
「泣くな」
一度だって聞いたこともない、優しい声だ。
ゾロからこんな声を聞くなんて、今日はもしかして幻のゾロサービスデーなんだろうか。
「泣いてなんか、ねえ」
大好きなゾロが自分だけを見つめて、ドアップなんかも見れて、あまつさえキスなんかしてあちこち触られて弄くられて
なんか・・・入れられちゃったりまでしたのだ、もしかしたら全部グランドラインが見せた幻影なのかもしれない。
まだポヤポヤと夢見心地で、サンジはゾロの胸に顔を埋めたまま鼻を啜った。
ゾロの匂いがする。
やっぱりウソやまやかしじゃあ、ないんだろうか。

「いや、嘘だろ」
独り言を聞きとがめ、ゾロは襟首を掴んでサンジの顔を上げさせた。
「まだ言うか」
「だってよ、こんなの・・・」
サンジは至近距離のゾロの顔にどぎまぎしながら、視線を彷徨わせる。
「こんなの、なんかこうして繋がっちまうなんて、せ・・・せっくすみたいじゃ、ねえか」
「SEXだろ」
しれっと返したら、零れ落ちそうなほどに目を剥いた。
「せ、せせせSEXなんて、そんなんダメだっ」
―――また始まった
サンジにはどうやらおかしな思い込みがあるらしいと薄々気付いたゾロは、黙って耳を傾ける。

「だってよ、SEXってのは愛し合う者同士しかしちゃなんねえんだ。遊びとか勢いとか付き合いとか、そういうのはダメなんだ」
ゾロは真面目な顔で云々と頷いた。
「そうだな、俺もそう思う」
「だろ?だったら・・・え?」
「だからだ。俺あ元々野郎なんて興味ねえのにお前を見て勃った。これって愛だろ」
「・・・」
「そしててめえも、野郎になんて興味ねえのに俺をちゃんと受け入れた。これって愛だぜ」
「・・・そ、そうなのか?」
「そうだ。普通こんなとこに、そう易々と入れねえぞ」
「・・・・・・」
意識してはじめて、まだ入れたままのその部分がじわっと熱くなった。
そりゃそうだ。
こんなところにとんでもないものが入っているんだ。
これって、凄いことじゃねえの?

ぶわっと体温が上がった気がして、サンジの心臓が再び飛び跳ね始める。
それと同時に繋がったままのそこがじんじんと疼き、覚えのある圧迫感がまたしても湧き上がってきた。
「あ・・・え・・・」
「馬鹿やろ、締めんなよ」
ゾロは苦笑しながらサンジの腰を抱えて身体を起こした。
「てめえのせいだぜ、責任取れよ」
「・・・え?は?う、わわわ・・・?」
ぐりぐりと円を描くように身体を揺すられる。
さっき溶けてしまった場所が、また芯を持ったようにどくどくと息づきはじめ、内部で質量を増して行く。
「あ、あ、あ・・・」
膝をついた状態で、ゾロは下から突き上げるようにサンジを抱えて動き出した。
それに振り回されないように必死でしがみ付いて、サンジはゾロの頭をかき抱く。


俺たち、愛し合ってるんだ。
そう思えばきゅんと胸が鳴り、じゅわんと下半身が甘く痺れる。
ゾロの額にぴきりと血管が浮いて、怒ったように顔つきが険しくなった。

この天然エロ野郎とかなんとか、呟く様子が何故だか愛しくて、サンジから首を伸ばして口付けた。


















白々と夜が明けて、東の水平線がほのか輝きはじめる。
空一面は薄い雲に覆われ朝日を拝むことはできないが、朝の清冽な空気は変わりなく心地良く身体を満たし、どことなく
厳かな気分にさせてくれる。
サンジの大好きなグラデーションに空が覆われる頃、ようやく一息つく事ができた。
傍らには、大の字に手足を広げ太平楽な寝息を立てる、未来の大剣豪。
口を半開きにして、無防備に眠る寝顔すら、サンジフィルターではカッコいい。
これはもう、俺のだもんねvと昨夜(否、ついさっきまで)いたしたアレやコレやを思い起こして、一人赤面する。

遠くから眺めてため息つくくらい、「綺麗なモノ」ばかりじゃ、決してなかった。
むしろかっこ悪かったりみっともなかったり、汚かったりやらしかったり、そりゃもう今まで縁のなかった色んな事を一気に
体験してしまってパニックに陥ったけど、けれどやっぱりそれらを差し引いてもおつりが来るくらい、凄い経験だった。

ものすごく、気持ちよかった。
こんな気持ちになるのは、誰とでも、じゃないと思う。
好きで好きでたまらなくて、でも好きなのは表面だけのモノだと思っていたら、それだけじゃなくて中身もすることもされる
ことも全部、どうやら好きだったらしい。

知らなかった、こんな気持ち。
もっともっと知らない何かが、あるのかもしれない。
綺麗なだけじゃなく、気持ちいいだけじゃなく、胸が熱くなってちょっと苦しくて、不意に涙が零れてしまいそうなほど切ない
想いをつれてくる、だけどとても大切なもの。
それをきっと、ゾロはこれから教えてくれる。



もう船で不意打ちなんかしたりしないけど、またやるって約束したのだ。
そん時はちゃんと島で宿を取って、天蓋付きとまでは行かないけれど普通のベッドで朝まで睦み合うんだって、約束してくれた。
ゾロは男前の上に、硬派で真面目なところがあるから、一度約束したらきっと実行してくれる。
そうしたらそん時は、俺ももっとちゃんとあいつに応えてみよう。
色々教えてくれるって言っていたから、俺ももうちょい勉強しなくちゃな。
俺ばっかり気持ちよかったら、恋人失格だ。

コイビトだなんて新鮮な響きを持った単語を思い浮かべ、サンジはまた一人赤面して短くなったタバコをスパスパ吸った。
魔獣の恋人だなんて、クールでダンディなジェントルコックには少々不名誉な称号だけど、これが「愛」なら仕方ない。













薄曇の空は、ナミの予報どおり急速に暗さを増して、午後には霧のような雨が降り出した。
朝からあまり天気が良くなかったせいか、クルーの起床時間は微妙に遅くなり、今日一日も皆まったりと過ごしている。
やや高い波を受けて、TS号は大きな揺りかごのように心地良く揺られながら、雨の海をひた走る。
暢気に昼寝するゾロの隣で珍しくルフィたちも鼾を掻いていて、女性陣はラウンジで新聞や本を片手にティータイム。


穏やかな午後だ。
満ち足りた気分だ。
この世は美しいモノで溢れている。

毎日色を変え、一つとして同じ景色のない壮大な空のグラデーションも
光を弾き、終わらない歌を歌い続ける広大な海も
色濃い緑も高く低く飛ぶ鳥もひっそりと咲く花も眠り続ける水底の貝も
聡明で芳しいナミもロビンも、愛しい野郎共もすべて――――



サンジは昨夜の名残の倦怠感を身体に帯びたまま、窓辺でゆっくりとジャガイモの皮を剥く。
窓ガラスを濡らす霧雨は、流れ落ちるほどではない微小な水滴を均等に散らしていて、まるで小さな銀河のようだ。

その中に見知った星座を見つけ、サンジはまた一つ小さな幸せを感じて、一人微笑んだ。










         END