けだものだもの  -4-



《俺ァミホークに勝つまで、てめェには指一本触れねェ》

 覚悟を定めてそう告げたとき、アヒルの瞳が揺れたのが分かった。キスをしたり手を繋いだり、抱きしめて鼻面を触れ合わせるような甘ったるい接触に憧れる男だから、いつかゾロが勝てるのだとしても、その日まで寂しさに耐えられるかどうか自信がなかったのだろう。

 だからこそ、制止がなくなった今は狂ったようにゾロを求めてがむしゃらに甘えてくる。これに応えなくて何が亭主だ。
 ゾロは勢い良く道を逸れると、転げ込むようにして河川敷の茂みの中にアヒルを連れ込んだ。ここは公道から死角になるから青姦の名所として知られているが、流石に真っ昼間とあって先客はいない。

 服が汚れるのも構わず草いきれの中に押し倒すと、荒々しく唇を重ねて吐息まで貪った。その間にも手はシャツをボトムから引きずり出し、焦がれ続けた乳首を両方とも弄って質感を愉しむ。興奮しているせいか、すぐに硬く痼ってきたそこを咥内に含んでちるちると舌先で刺激してやると、すぐにアヒルの口からは甘い声音が漏れた。

「あァ…そこ、気持ちいいよォ…っ…。右ばっかじゃなくて、左も可愛がって?」
「おう。乳首もチンコもケツの穴も、全部舐めしゃぶって可愛がってやんよ」

 明日は足腰立たなくしてやる。思う存分抱きこむ気満々だ。
 
「挿入の前にたっぷり射精させてやる。潤滑剤代わりにたっぷり出せよ?てめェが急かすから、ローションやらジェルが無ェのにおっ始めちまったんだからな」
「だって…一瞬でも早くてめェに抱かれたかったんだ」

 涙目で《スン》とか鼻を鳴らすのは止せ。滾って滾ってしょうがなくなる。こうなったらアヒルをイかせる間に、自分も素股で抜いて大量の白濁を腹にぶちまけてやろう。

「おら、全部脱げ。精液まみれになんだから、すっぽんぽんになっとかねェとな。服に染みると潤滑剤にならねェし」
「ん」

 何時になく素直に頷いたアヒルはするすると衣服を脱いでいくと、恥ずかしそうに一糸纏わぬ姿で草いきれの上に横たわる。真っ白で滑らかな肢体が緑に映えて、目眩がするくらいに綺麗だった。

「凄ェ…ああ、チクショウ…俺ァ、偉いぜ。よくもこんなエロいてめェ相手に5年も禁欲生活続けられたもんだ…」
「俺だって我慢したんだぞ?てめェを思って、オナニーばっかしてた」
「俺ァ、オナニーも禁じてた」
「…っ!?」

 吃驚したようにアヒルが目をまん丸にしている。それはそうだろう。高校、大学というヤリたい盛りの男が自慰さえ禁じていたのだから…。正直、辛かった。一見ストイックに見えるが、結構のシモの欲求が強いゾロは何度も脳内が沸騰しそうになったものだ。

「精気が抜けて腰に力が入らなくなると、勝利への道が遠のくような気がしてな。必死で堪えた。てめェのエロい姿が無意識に湧いて夢精することはあったが、それでも自分でチンコ擦ったりはしなかったぞ?」
「凄ェな…ゾロ」
「おう。今分かったか?」

 素直な賞賛の言葉にニへっと笑うと、ゾロはアヒルの脚を合わせてその間に長大なチンコを挟み込み、相変わらず綺麗なピンク色をしたアヒルのチンコと一纏めにして擦り上げていく。

「ふわ…っ…か、内腿とチンコにカリが擦れて…生々しィ…」
「気持ちヨクねェか?」
「ま、まだ分かんない。ァっ!」

 コリっとカリが引っかかったのと、鈴口を親指でなぞってやったのが気持ちよかったのか、アヒルの声がトーンを変えた。金色の髪を振り乱すと、シャラシャラと夏草の揺れる音に混じる。

「ぁ…あっあっ…!」
「艶っぽい声しやがって…ほら、ココが良いのか?」
「あーーーーっっっ!!」

 ビュル…っ!ビュッ!!

 ゾロの背に負ぶわれている間も少し兆していたチンコは、追い立てられるとあっさり吐精してしまって、腹から胸に掛けてたっぷりと白濁で汚した。

『うぉ…っ!』

 とろりとした白い蜜を掛けられたアヒルは薄赤く上気していて、一番紅く染まった頬にまで雫が散っている。気持ちよすぎたのか涙まで零して荒い息を吐く様子に、ゾロは視覚的な興奮を覚えてギュっとアヒルの腿を左右から引き寄せて、挟んだチンコを激しく擦り上げると、覚えがないくらい早い速度で大量の白濁を溢れさせた。既に放たれていたアヒルのものと混じって、ほっそりとした体幹部が欲情の証まみれになる様子にまた興奮の度が高まる。

 《グル…っ》咽奥で唸るような声を上げると、慌てて口元を押さえて意識を集中させる。いかんいかん。危うく理性を手放すところだった。いざという瞬間に狼の姿になったりしたら大変だ。

 どろりとした白濁をたっぷり手にとって蕾に塗りつけていくが、指の節が一つ入っただけで怯えたようにきゅっと窄まる。

「おい、力抜けよ」
「そ…う、都合良く…抜けるかよ…っ!初めてなんだぞ?」

 《初めてなんだぞ?》という言葉がリフレインして、ジーンと胸に感動の漣が押し寄せる。ビバ、ロストバージン。この初々しいアヒルを頂くのだと思ったら、ぬるぬると入り口をあやして解れるのを待つのも苦にならない。



*  *  * 



『ぅわ…。ケツの孔に、ゾロの指…入ってく』

 キツそうではあるが、妊娠しそうなほどの白濁の滑りも借りて何とか指の付け根まで呑み込んだ。ぐちぐちといやらしい音を立てながら指を蠢かされると、その度に《ひぅ…ァんっ》と恥ずかしい声音を漏らしてしまう。身を乗り出したゾロが首筋や乳首、臍といった感じやすい場所も丁寧に舐めあげ、時には甘く噛みついてくるから、色んな場所を刺激されてどこに集中して良いのか分からなくなってしまう。ことにチンコの付け根を親指で強く擦られると蕾に含んだ指の存在感が薄れるのか、ふわっと緩んだところに指を追加された。

「ぅお…。三本入ったぜ?中まで覗ける…こんなトコまでピンクなんだな、てめェ」
「し…知らねェよっ!」
「そりゃそうか。てめェ自身も見たことねェようなトコを、俺は眺めてんだな。おお…絶景絶景」
「開いて息吹きかけるなよォ〜っ!」
「チンコの先までパクパク言ってるみてェだ。可愛いなァ、サンジ」
「…んっ!」

 言葉で嬲られながら腸壁を弄られていると、コリッとどこかを掠めた瞬間に得も言えぬ悦楽が電流のように奔った。

「え…嘘…ゃ……っ…」
「お、何かイイとこ来たか?」

 気配に聡いゾロはすぐに異変を感じると、反応があった場所を見つけ出してコリコリと執拗に刺激し始める。

「ダメ…だ…ソコ……変……ゃだっ!」
「んなコト言ってよ、チンコの先から恥ずかしいくらいにピュッピュって我慢汁飛んでるぜ?」
「やァ…っ…」

 ビクビクと震えていると指が引き抜かれてホッとしたものの、油断したそこに怒張した熱杭が押し当てられる。異様に感じてしまった直後にそんな凶暴なものを…と慌ててももう手遅れだ。

「ひっ……っ!!」

 ズブ…っと一息に挿入されて悲鳴を上げるが、視線を送るとまだまだ砲身の全てが収まったわけではない。やっと亀頭部分がめり込んだだけだ。ちょっと同性として羨ましくなるくらいに立派な逸物は、まだまだ先は長いぞと言いたげにサンジを穿(うが)つ。

「行くぜ…?」
「わ…ァ……っ」
 
 腰をガッシリと掴まれて、ずぶずぶとめり込まされていく。身体のナカ目一杯にゾロが入り込んでくるような圧迫感に、サンジという存在が消えてしまいそうだ。けれど、《サンジ…サンジ》と呼びかける声が切れそうな意識の糸を繋ぐ。

「サンジ…俺を見ろ。てめェを抱いてる男を見ろ」
「ゾロ…」

 涙でくしゃくしゃの顔で見つめると、ゾロも汗だくになってサンジを見ていた。藍色の剣道着を着たままだから、諸肌脱いだ胸元や乱れた袴に匂い立つような雄の色香を感じて、ゾクゾクと下腹が震えた。
 愛する男に抱かれているという幸福感で、苦しみが快感へと変換されていく。

「好きィ…ゾロ。全部…俺の中に入れて…っ!」
「…おうよっ!」

 ズン…っ!
 凄まじい圧迫感はあったけれど、ザリっと感じる陰毛と生肌の接触に、ゾロがずっぷりとサンジの中に砲身を収めたことが実感される。

「あ…ァ…全部、入った…」
「サンジ…っ!」

 上体を抱き寄せられてぴったりと胸筋を合わされると、逞しい筋肉の隆起や意外と滑らかな肌の質感がありありと感じられる。首根っこに腕を回してキスをしようとすると、フサっと髪が触れた。

 …………フサ?
芝生みたいな短髪なのに?

 ギョッとしたサンジが目を見開くと、そこにいたのは大型の狼に変じてしまったゾロで、ずっぷりと銜え込んだ陰茎を締め付けてしまうと、途中に人間にはあり得ない瘤が出来ているのが分かる。肌に触れる剛毛も、愛しい男が獣に変わってしまったことを嫌がおうにも突きつけてくる。

 獣に、犯されている。
 ギシッと揺らされた身体の中でケダモノの生殖器がサンジの中で蠢き、子種を注ごうと伺っている。

 その実感はさしも脳天気なサンジをも恐怖に震えさせた。

「ひ…っ!」

 一瞬慄然として悲鳴をあげかけたものの、焦ったような狼の瞳を見るとハッと正気に戻った。それは興奮したように金環を帯びているが、やはり見慣れた琥珀色をしている。

 ゾロだ。これは…ゾロだ。
 どんな姿に変わっても、ゾロ以外の何者でもない。

「ゾロ…」

 鋭い牙や黒いゴムのような歯茎にキスをしつつ囁きかけてやると、《真の名》を呼ばれたゾロは本来の姿を取り戻し、ばつが悪そうに憮然としていた。

「悪ィ…我を忘れた」
「気に…すんな。それよか…動けよ、辛ェだろ?」
「痛くねェか?」
「狼のチンコがでか過ぎて、人間のてめェじゃ物足りないくらいだ」
「言ったな?」

 余裕のある切り返しにニヤリと嗤うと、人間の力を見せつけるようにゾロは猛然として腰を振るい、サンジにあられもない嬌声をあげさせる。

「ゾロ…っ!ゾロ…っ!ァん…ぁあああーーっっ!!」
「てめェのナカに…出すぞ?」

 《ドクン…っ!》熱い迸りが最奥に放たれると、腸壁がブワッと膨らむような衝撃にサンジの背は弓なりに跳ねる。ドクドクと注ぎ込まれる精液は、焦がれていた男のものだ。
 苦しいけれどそれを上回る幸福感に、ゾロをしっかりと抱きしめて深くキスをした。人間だと明確に分かる筋肉の隆起に安堵はするものの、今になってみるとあの毛皮も悪くは無かったかな?等と思う。

『ゾロだと分かってたら狼の格好で抱かれるのも、そのうち平気になっちまうかも』

 何だか変態の深みに填りそうだな…なんて不吉なことを考えつつ、サンジは愛するケダモノの味に酔いしれた。



おしまい







あとがき


 バター犬というか、乳製品繋がりで無理矢理ミルク狼ネタにしてみました「けだものだもの」。あれ、どこかて聞いたことあるね!という感じですが、決して手抜きではございません。ええ、ございませんでござるデスとも。

 一瞬とはいえ獣姦になっておりましたが、これも相手がゾロだから許容して貰えるはず…っ!
 広い心でハートキャッチゾロサン!