「可愛いアノ子」




「あんたには世話になってばっかだなァ。デュバルを匿ってくれたのも助かったよ」

 老人とは思えぬほど若々しい肉体を軽装で包んだレイリーに、サンジはへらりと笑いかける。二年ぶりに会った《冥王》は、その通り名に相応しい迫力を秘めているが、表面に出しているのは《ちょい悪オヤジ》といった風情だ。目元を細め、口角を歪めるようにして笑う独特の笑顔には少しキュンと来る。バラティエ在住のジジィに、ちょっとだけ雰囲気が似ているような気がするのだ。

 苦難の修行生活を越えてシャボンディ諸島にやってきたサンジは、早速シャクヤクの経営するぼったくりバーにやってきて、そこでサニー号を護るために奮闘してくれたデュバルの話を聞いた。人攫い一味を解散したデュバル達《薔薇色ライダース(仮)》は、律儀にサニー号を護って海軍や海賊達と戦ってくれていたらしい。そのせいでかなりの負傷を負った彼は、そのまま放っておいたら命まで奪われていたかも知れない。無事療養生活を送ることが出来たのは、ひとえにレイリーが匿ってくれたおかげだろう。その後サニー号がどうやって護られたのかはまだ知らないが、とにかく無事ではあるらしいと聞いてほっとしている。

 ゾロがシャボンディ諸島に一番乗りしたということにも吃驚した。だが、折角早く着いたというのに、《釣りがしてェ》と海岸に出てしまったゾロは、危うく他の海賊船に乗り込んで一足先に新世界入りするところだった。サンジが回収に行かなければ、今でも海岸線で彷徨っていたことだろう。
 
 未だに《釣りがしてェ》と面倒くさいことを言っているが、そんなものはサニー号に乗り込んでからゆっくりやればいいじゃないかと説得していたら、《確かにな》と溜息をついた。どうやら、大物を捕まえておいて後から来たサンジに見せてやったら喜ぶだろうと思っていたらしい。可愛いクソマリモたんである。

 ゾロとサンジは一応、肉体が絡む《付き合い》をしている。そういう関係になったのは、ゾロがスリラーバークで生死の境を彷徨った直後のことだ。極限状態でやっと自分の気持ちを認識したサンジが玉砕覚悟で告白をしたら、ゾロは重傷者のくせして即座にサンジを抱いた。
 止めるべきだったのだろうけれど、包帯からぼたぼたと血を流しながら狂おしげに《ずっとこうしたかった》と掻き口説かれては、惚れ続けていたサンジにはどうすることもできない。二人して血まみれでセックスをした直後、またしてもゾロは意識を失ってしまったが、えらく幸せそうな顔をしていたので、チョッパーに不審がられたものだ。

 実のところ、再会してからも互いの熱を感じ合いたくて、急がなくてはならないことは分かっていたのに、安宿に転がり込むとそのまま半日ばかりセックスに明け暮れていた。街中が騒がしくなって、どうやら海軍が麦わらの一味再集結の噂を聞きつけて集まっているらしいと分かると、慌ててぼったくりバーに戻ってきた。ここに仲間が集まるかと思ったのだ。

 しかし、サンジよりも早く上陸した仲間達は一度はこのバーに来たものの、暇つぶしに街に出てからまだ戻っていないという。探しに出て行き違いになるのも拙いと思って、多少不安に思いながらもレイリー達と何と言うことはない会話を交わすしかなかった。

「なに、構わんよ」

 ゆったりとソファでくつろぐレイリーにとって、世界政府に刃向かうなんて本当に大したことではないようだ。《暇つぶし》だと彼は言うが、だとすれば大した暇つぶしもあったものだ。幾ら大物とはいえ、世界政府に正面から喧嘩を売ったルフィ達を匿うことは、彼にとっても命がけの行為であるだろうに。

 こんな風にさり気なく巨大な敵から若い芽を護る姿にも、やはりゼフを彷彿とさせられてしまう。何の見返りを求めることもなく、ただ《同じ夢を持つ》とか、《気に入った》という一点によって、これほどの人物が動いてくれる。そのことに、胴震いするような感動を覚えてしまうのだった。

「あんた、よっぽどルフィを気に入ったんだなァ」
「気に入っているのは彼だけではないよ」
「へへ…俺等のことも気に入ってくれてるって?」

 はにかむように笑えば、レイリーの力強い指がサンジの金髪を攫い、くるくると指に絡める。
 ピクンとゾロの細い眉が跳ねたが、レイリーの指が止まることはなかった。2年間で益々強面になったゾロだが、やはりレイリーから見ればまだまだ小僧っ子なのだろう。

「特に君をね」
「へ?」
「まだ思い出してはくれないのかな?可愛いちびなす君」
「…っ!」

 懐かしい呼び名に、一瞬にして頬が染まってしまう。バラティエでの生活が脳裏に蘇ると、あの頃の暖かさだとか未熟さ故の悔しさだとか、色んな感情が綯い交ぜになって、幼い子どもに戻ったような表情になるのだった。

「ふふ…無理もないか。君が半分寝ぼけているときにしか尋ねた事はないからね。この分だと、シャンクスやミホークに会って抱き上げられたことも覚えていないかな?亡くなった白ヒゲも、ぽやんと寝ぼけたまま抱きついてきた君に《グラララララ》と独特の笑い声をあげたものだ」
「え…?え…?」

 それらはサンジにとって、ルフィの恩人だったりゾロの敵だったり、白ヒゲに至ってはマリンフォードで散った英雄的海賊としか認識していない。そんな存在と自分が幼い頃に接触していたなんて、俄には信じられなかった。

「まさか…」
「君が思っている以上に、《赫脚のゼフ》は大物なのだよ。あの鷹の目を儒子と呼べる海賊はそうはいない。白ヒゲや赤髪、そして冥王から表敬訪問される海賊もね」
「そ、そうなのか?」

 あれだけの時を経て勃興激しい海賊の世界で名を覚えられているゼフのことだ、大した海賊だったのだろうと推測はしていたが、まさか名だたる大海賊達と肩を並べる程だったとは…。

『俺はそんな男の脚を奪っちまったんだ』

 改めて突きつけられる現実にうるりと瞳が濡れてしまうが、レイリーは自然な動作で目元を拭う。

「気に病むことはない。赤髪が腕と引き替えにルフィを護って一片の悔いも持たぬように、赫脚もまた脚と引き替えに君を護ったことを後悔した事などないよ」
「なんで…そんなの分かんだよ」

 拗ねたように唇を尖らせれば、レイリーは意外なほど優しい眼差しで見つめてきた。

「同胞としての確信だよ。年寄りの言うことは信じなさい」

どっしりと構えた燻し銀の男に力強く保証されると、胸の奥がきゅうんと切なく痺れる。どうにもゼフとレイリーがオーバーラップして、涙腺を刺激されるとぽろぽろ涙が零れてしまう。
 サンジが仄かに頬を染めて、されるがままにレイリーの手を受け入れて頬や髪を撫でられていると、ゆらりと立ち上がったゾロが不穏な眼差しをレイリーに送った。

「そいつは俺んだ。あんたには感謝してるが、不用意に触らないでもらいてェ」
「おやおや。指で触れただけだよ?本来なら、涙の跡をそっとキスで拭ってあげたいところだ」

 レイリーの言いざまに、ゾロの眉間には深々とした皺が寄り、こめかみには血管が浮かぶ。

「随分と悋気持ちの男に愛されたものだね。ふふ…赤髪辺りが見たら、ここぞとばかりに構い立てそうだ。彼はキス魔だしね」

 くすくすとレイリーが笑っていると、カランといい音を立てて扉が開かれる。外扉に仕掛けたベルが、来客を伝えていた。
 入ってきたのは、鮮やかな真紅の髪を靡かせた精悍な男。顔には三本の掻き傷が刻まれているが、それが敗北の証ではないことを、揺るぎない佇まいが物語っている。軽やかな印象でありながら、決して人から軽んじられることはない。そのような風情が男にはあった。

「おや、噂をすれば影だ」
「どうせよくでもない噂だろう?冥王」

 にやりと口の端を上げて笑う男はカウンターに座ると、シャッキーに《いつもの頼むよ》と気さくな態度で注文する。

『こいつが…本当に、《赤髪のシャンクス》なのか?』

 思っていたよりも随分と若い印象だ。印象的な瞳に、悪戯っ子のような光を湛えているからだろうか?どこかルフィに近い気配がする。シャンクスはサンジに視線を向けると、目を細めて懐かしそうに笑った。

「やァ、綺麗になったねサンちゃん」

 それは男に向けるべき成長認定ではなかったが、突っ込むとややこしそうなのでさらりとスルーする。

「…あんた、バラティエに来たことがあんのか?」
「ああ、一度だけだけどね」

 気が付けば距離を詰められている。二つ離れた席に座ったはずなのに、いつの間にか隣の席に座ったシャンクスはゆるりと手を伸ばすと、猫を撫でるような手つきで頬に指を沿わせた。

「立派な髭面になっても、なんだって君はこんなにエロ可愛いのかな?おじさん不思議だなァー」
「てめェに可愛い呼ばわりされる筋合いはねェ!大体、エロいってなんだよっ!」
「厳然として色っぽくて可愛いんだもん。しょうがないだろう?小さい頃もねェ〜ぷくっと尖らせた唇がアヒルみたいで面白かったんで指突っ込んだら、ちゅーちゅー吸ってくるんだもん。赫脚が止めなければ、絶対悪戯しちゃってたね」

 どこまでが本気で、どこからが冗談なのかよく分からない。
 取りあえず言えることは、《護ってくれてありがとうジジィ》という感謝であった。

「今からでも遅くないかな?」

 するりと金髪の間に入り込んだ指に頭部を引き寄せられ危うくキスされそうになったのだが、シャンクスは薄いサンジの唇ではなく研ぎ澄まされた刃に触れることとなる。

「手遅れだから諦めろ、オッサン」
「おやおや、ダメだよォ?そんなに辺り構わず覇気なんか振りまいたら。無関係な奴が倒れちまう」
「どうせここにいる奴ァ常人じゃねェだろうが。女将ですら平気の平左って顔してるぜ」
「まァね。彼女も結構、海千山千の猛者だ」

 にんまりと笑うシャンクスの額に、こつんと強めにグラスが当てられる。バーボンのロックらしい。すぐにグラスを受け取って口に運ぶと、喉を灼く度数の強い酒に、満足げに目尻が下がった。

「相変わらずの配合だ」
「お褒めに預かり光栄ね。可愛いアヒル坊やに夢中の赤髪君も、酒の味に関してはあたしを見てくれるのかしら?」
「俺の瞳は何時だって君に釘付けさ」
「ふふ。そんなこと言いながら、サンジちゃんのお尻を狙ってるでしょ?」

 油断の隙もない。
 そろそろと伸ばされた手があと数ミリでサンジの尻を撫でると言うところで、シャクヤクの煙草がシャンクスの肌のほど近くまで寄せられた。600度になんなんとする火を押しつけられれば、大海賊とはいえど火傷は免れまい。

「だってェ〜。お尻がちっちゃくてきゅっと締まってて美味しそうだったんだモン」
「いい年してカワイコぶった物言いしてんじゃねェよっ!」

 ゾロはキレ気味にシャンクスに詰め寄っていくが、本気で斬りつける気は無さそうだ。彼がルフィにとって重要な人物であることは熟知しているし、正面切って戦うべき相手でも、時でもないと分かっているのだろう。やはりその辺は強敵と見れば斬りかかっていった2年前とはスタンスが違う。

「俺なんか触ってどうしようってんだよ?」
「そりゃ撫で回して愉しむんだよ。君が赦すなら、本当は嘗め回したいんだけどね」

 無駄に佳い男風真剣な顔で、至近距離から熱い息を掛けるのは止めて欲しい。意外とドキドキしてしまう。そんな反応にゾロも気付いているのか、苛立たしげにサンジの顔を漬かると、立ったまま斜め上から顔を被せてきた。

「ん…んっ!?」

 バカマリモ野郎がやりやがった。
 張り合って関係性をアピールしようと言うのか、藻掻いた拍子に開いてしまった口裂から容赦なく舌を食い込ませてくると、そのまま食いちぎるそうな勢いで咥内を蹂躙していく。連れ込み宿で何度も舌を絡ませはしたものの、ここ二年はとんとご無沙汰だったし、2年前とてそれほどの回数したこともないものだから、サンジの息はすぐにあがってとろりと瞳がとろけてしまう。

「ふ…ァ……」

 サンジの口角から垂れた唾液を舐めあげながらゾロが嗤う。罵倒してやりたいのに腰が甘く熔けてしまって、ボトム越しに股間をまさぐられても抵抗できない。何しろ、つい先程まで何度も突き上げられた身体は、ほんの少しの快感で簡単に揺り戻しを起こしてしまうのだ。

 《ピュウ》と口笛を吹いて、年長者達は愉しそうにとろけたサンジを見つめる。奥底に雄の欲望を秘めたその眼差しに、サンジの身体は否応なしに煽られてしまう。彼らに抱かれるのは御免だが、甘い毒のような眼差しにさらされながらゾロにまさぐられていると、この上ない快感を覚えてしまうのだ。

『やべェ…俺、変態みてェじゃん』

 内心かなり焦ってしまって、何とかこの状況から逃れようと身を捩るのだけど、冥王と赤髪はいつの間にかかぶりつきの位置まで接近して、容赦なくサンジを視姦する。

「ねェシャッキー、ちょっと席を空けてくれないかな?」
「あら、あたしも興味あるのに」
「サンちゃんはまだ経験値低いからね。女性の前で乱れるのは恥ずかしいだろ」
「残念」

 肩を竦めると、シャクヤクはスタスタと未練を感じさせない足取りで別室に行ってしまう。救いを求めるように伸ばされたサンジの指は、《ちゅくり》と音を立ててシャンクスに銜えられた。歯先でやんわりと噛まれると、絶妙な甘い痛みにぶるりと股間の熱が上がる。

「おい…っ!」
「イイから君は君のしたいように愛撫を続けるが良い。年寄りを煽った詫びに、少しは味見をさせて欲しいな」

 ゾロが静止の声を上げるが、レイリーまで参戦して当然のようにサンジの靴を脱がせると、高い椅子の上で不安定に傾いだサンジにニヤリと笑いかけながら足指に向かって紅い舌を伸ばす。

「…っ!」

 視線を合わせて、煽るだけ煽って、ゆっくりと舌が足指をくるむ。性器でも何でもない場所の筈なのに、そうされるだけでゾクゾクするような悦楽が襲いかかってくる。経験値の少ないサンジにとって、この練れすぎた男達の責め苦は辛いほどだ。

「ロロノア・ゾロ。愛撫はなにも性器に対してのみ行われるものではないのだよ」

 学識豊かな教授のように、威厳をもって語ることでもないと思うのだが…。
 するりとレイリーの大きな手がサンジの下腿を撫で上げ、そのまま膝上までボトムを引き上げて、脛骨に沿わせてねっとりと舐めあげていく。そして流れるような動きでアキレス腱やふくらはぎを甘噛みしていく
 シャンクスはシャンクスで、負けじと指の股や手首、皮膚の薄い前腕前面に舌を這わせていくものだから、恥ずかしいほど後宮は潤み、ボトム越しにもはっきりと分かるくらい勃起してしまった。

「おや、おちんちんが随分と大きくなったようだね」
「ロロノア、可愛がってるトコ見せてよ。技量がイマイチなようだったら手伝ってあげるから」
「いらねェ世話だ」

 苛立たしげに舌打ちすると、ゾロはあろうことか、煽られるままにサンジの前立てを緩めてずるりと引き下ろしてしまうから、ぴったりとした細身の下着を押し上げて、花茎が腹を打たんばかりに勃起した様をまじまじと視姦されてしまう。

「ばか…や……ァ…っ…!」

 嫌がって逃れようとしても、三人の男に拘束された手足は言うことを聞かない。下着の上から意外に巧みな指遣いで擦られていくと、すぐに到達が近くなってしまった。このままでは、大海賊達の目の前ではしたなく射精してしまう。

「いや…ヤダ……やめ、やめェ……っ…」

 荒い息まで嬌声のように掠れてしまうのが恥ずかしい。なのに、男達の視線が花茎に注がれているのだと思うだけで、自分史上最大の快感を覚えながら限界を迎えそうになってしまう。

 …と、レイリーの指がつるんと下着をずらした。食い込んでいた布地がぷるんと鈴口を掠める感覚に、サンジは一際高い声をあげて白濁を迸らせてしまった。

「あぁあああーーーっっ!!」

 信じられない。
 《ビュク…》《ドビュ…ビュっ!》と数度に分けて拍出される白濁は驚くほど遠くまで飛沫を飛ばし、愉しそうに見つめるレイリーの指先にも散った。

「若いって良いねェ…。流石に勢いが違う」
「サンちゃんはノースの生まれだったよね?色白なせいか、チンコまで綺麗なピンクなのも良いな。真っ白なミルクを飛ばす様子も綺麗だ」
「確かに。精液もクリームのように甘く感じられるよ」

 レイリーの長い指が見せつけるように咥内へと含み込まれ、幾分掛けてしまった白濁を舐め取っていく。《ぢゅっ》と鳴る淫音に、どうしようもなく後宮が疼くのが分かって涙が溢れた。

「もう…ヤダ……」
「本当に嫌かな?」
「ヤに…決まってる。こんなの…」
「そのわりに、お尻は物欲しそうに揺れているけれど?」
「…っ!」

 頬をカァっと紅く染めると、サンジの涙に動作を止めていたゾロが再び意気を得てしまう。
 つるんと下着をずらして椅子に凭れ掛かるように中腰にされると、男達の前で双丘がぱくりと開かれた。

「ぅお…やらしい艶持って、自分から濡れてねェか?」
「ちがう…ヤダ、ばかァ…っ!」

 ふるふるとお尻を左右に振っても、誘いかけるような動きになっただけらしい。ばくりと痕を残す勢いで尻肉を強く噛まれ、《ひィん!》と啼けばぬるりとした塊が尻穴を責めてくる。それがゾロの舌なのだと気づくと、さっき放ったばかりの花茎が再び兆してきた。

「ちびなす君は佳い身体をしているな。荒海を渡る強い脚と、仲間の胃袋を満足させる素晴らしい腕を持つ上に、最強を目指す剣士の良い鞘となれる」

 謳うようなレイリーの言葉に《きゅう》と尻穴を窄めさせると、ゾロの太い指が突き込まれてぐちゅぐちゅと掻き回される。連れ込み宿で大量に放たれた白濁はかなりシャワールームで掻きだした筈なのに、内部に残っていたらしい液がどろりと溢れて内腿を伝った。

「もう柔らかけェな。挿れるぞ?」
「うァ…っ!ま、止め…っ!」

 《見られているのに》という突っ込みは今更というものらしく、全く容赦して貰えない。不安定な椅子に辛うじてもたれ掛かった状態で熱い楔を打ち込まれると、好き勝手に突き上げられて甘い嬌声を上げ続ける。

「ァひ…っ!や…いや…っ!!」
「じゅぷじゅぷヤラしい音立てて何が嫌だ。おら、こいつらに見せつけてやれよ。てめェの成長ぶりをな」

 繋がったまま胴体を掴まれてやすやすと体位変換されると、まさに二人の大海賊に向かって《見せつける》形に御開帳されて、繋がった場所が丸見えの状態で貫かれる。
男達の喉が同時に鳴って、ゆらゆらと揺れる爪先を左右からカシリと甘噛みされる。レイリーの硬い指先がゆるゆると鈴口を撫でると、白濁を混じらせた蜜がしとどに溢れ出して、付け根まで伝わるほどに垂れていく。

「美味しそうだ。銜えてもいいかね?」
「だめ…だ、だめ……っ!」

 嫌々をするように顔を左右に振ると、残念そうに溜息をつかれる。

「勿体ないね。きっと最高に気持ちが良いと思うけどな。前立腺を抉られながらフェラチオを受けるのだよ?」
「い・や・だっ!ここ…、は…っ…だめっ!」

 《どんなに気持ちよくても、好きな奴が触るんでなゃダメ》なんて、痴態を見られるよりも恥ずかしい台詞を口にすることは出来なかったけれど、意図は全員に伝わってしまったことだろう。嬉しそうにゾロが喉奥で嗤ったかと思うと、レイリーとシャンクスが残念そうに苦笑して、手酌でバーボンを注ぎ足す。氷を揺らしながら愉しそうに眺める様子は、花鳥風月を愛でながら酒を組み合わす洒落者といった風情だ。

「ホント可愛いねェ〜サンちゃん。君を肴にすると酒がすすむよ。こなれてきたら3Pとか4Pもやりたいもんだね」
「趣旨的に抵抗があるなら、普通のセックスでも構わんよ。ロロノアに飽きたら是非私を選んで欲しいものだね。若さ任せの強引なセックスよりは、気持ちよくしてあげられると思うな」

 余裕綽々の大物二人に、べろんと二人してベロを出した。もっと小さい頃なら下瞼を引き下げて、《あっかんべー》してやるところだ。

「生憎と、こいつを生涯手放す予定はねェ。強引だろうがなんだろうが、こいつは俺のチンコが一番好きだしな」

 一際強く突き上げられた瞬間にサンジは二度目の到達を遂げ、ゾロもまた継ぎ目から白濁が溢れるほどの勢いで射精を果たした。嫌みったらしくミルク割りなんぞ作り出した大物達は、何かに見立てているらしいそれをゆっくりと飲み干すのだった。



*  *  * 



 海軍に追われながらサニー号に乗り込んだ麦わらの一味に向けて、レイリーが餞の笑顔を送る。掛け値なしに威勢の良い船長が高らかに《海賊王になる!》と叫ぶのを聞きながら、レイリーはうっすらと目元に涙を湛えた。ルフィの背後では、少々複雑な表情のサンジとゾロが苦笑しながらこちらを見やっている。

 シャンクスもルフィの動向は気になるだろうと思ったのだが、騒ぎの中心にいるのを肉眼で一瞬確かめると、満足そうに頷いてからさっさと踵を返した。その横顔は精悍で、若者に悪戯を仕掛けた大人げなさなど何処吹く風、いっぱしの《大海賊》らしい貌をしていた。

『私もね、本当に君たちを見ているのは愉しいよ』

 十年ほど昔に《赫脚のゼフ》が利き足を失い、海賊業から退くと言いだしたときにはその存在を惜しんだ。以前から玄人裸足だった腕に磨きを掛けて海上レストランを開いた時には、嫌みの一つも言ってやるつもりで癖のある男達と共に魚型をした奇妙な船に出向いたものだ。

 けれどゼフは、レイリーが微かに不安を覚えていたような、《落ち武者》としてそこにいたわけではなかった。《あれは、託した男の貌だ》赤髪が満足そうに笑っていたのが昨日のことのように思い出される。

 寝ぼけ眼の小さなコックを抱え上げて、これがゼフの夢の形なのかと不思議に思ったものだ。あまりにも華奢で頼りなくて、ぽやんと開いた蒼い瞳はあどけないものだったからだ。

『あの子は成長したよ、ゼフ。ふふ…君が知ったら、激怒するような成長ぶりも見せているがね』

 レイリーはこの先も、彼らの行く末を常に案じ支え続けていくだろう。
 その代価として、あの色っぽいコックさんを弄るくらいは、赦して欲しいと思うのだった。

 次に会うときは少しセックスにもこなれていて、第三者の介入にも寛容になっていると良いな…とは思うレイリーは、かなり傍迷惑な大物海賊であった。




おしまい


あとがき

 え〜と…。途中から「あれ?こういうリクエストじゃない…かも…?」と思ったんですが、結局お二方が居る前での合体行為に及んでしまいました。
 色々と状況を考えてはみたのですが、素敵なオッサン連中が一堂に会する設定を思い浮かべることが出来ず、頑張ってはみまたしたが2名しか揃いませんでした。しかも白ヒゲさんお亡くなりになった後だし。

 お話も少し迷子気味でしたが、あまり深く考えずにお楽しみ頂ければ幸いです。