■はつこい

通い慣れた獣道を、ゾロはテクテク歩いていた。
いや、獣道ではなくゾロ道と呼んだ方がいいかもしれない。
道場近くの森にはゾロが藪の中を分け入って拓いた道が幾つも交差していて、いっぱしの遊歩道のようになっている。
ただし、そこを歩くのはゾロのみだ。
道場から自宅まで徒歩10分の道を、ゾロは毎日2時間ほどかけて帰る。
学校から自宅へ直帰する時は、小うるさいアヒル頭が一緒だからなぜかものすごく早く着く。
アヒル頭は道場まではついてこないから、道場に寄ってから帰る時は大体2時間コースだ。

春めいてきたとはいえ、夕暮れ間に吹く風は冷たい。
少しずつ青めいて来た繁みの端に、きらりと光るなにかがあった。
夕映えを受けて密かに輝くものに目を奪われ、ゾロは枯れ木を踏み締めながら近寄る。
パキポキと小枝が折れる音に、光るものがさっと動いた。
「―――あ」
「あ」
ゾロが覗きこんだのと、光るものが引っ込んだのとは同時だった。
身を隠したつもりだろうが、芽吹き始めた繁みの中に背後を埋める半端な状態で男が蹲っている。
緋色のマントで身体を覆い、膝を抱えて縮こまっていた。
光っていたのは、金色の髪だ。
慌てて身を起こしたのか、髪に枯葉が付いている。
もしかしたら、化けた狐かもしれない。

「なんだお前」
「あ、え、や・・・」
男はササっと自分の頭を両手で撫でた。
手に枯葉が付いて、ビヤッと身体をびくつかせ振り払う。
それからマントを引き寄せて肩を竦め、横を向いてふっと息を吐いた。
「別に、散歩中だ」
どう見ても散歩ではない。
しかも咄嗟に隠れてたじゃないか。
挙動不審なことこの上ない。
まず服装が怪しい。
白いフリフリしたシャツに赤色のマントとか、どこからどう見ても怪しい。
「お前、何者だ」
見かけからしてこの辺の者じゃないだろう。
はるばる海を渡ってやってきた、密航者かなにかだろうか。
それにしては服装が古風で、所作もどこか芝居じみて見える。
「俺か?俺はプリンスだ」
男はそう口にしてから、口元にしっと人差し指を立て周囲を窺った。
うらびれた森の中には、ゾロとこの男しかいない。
ねぐらに帰る烏にすら会話を聞かれるのを恐れるように、男は声を潜めた。
何もかもが胡散臭い。
「プリンス?はっ」
思い切り小馬鹿して笑うと、男はさも心外そうに眉を顰める。
よく見るとその眉尻がくるりと巻いていて、誰かを思い出させた。
「本当だぞ、このクソ生意気そうなクソガキめ。今は世を憚る身だが、俺は王子なんだからな」
子ども相手にムキになって言い返してくる。
年の頃は20歳になるかならないかってところか。
小学生のゾロから見れば大人な部類だろうが、どうにも言動が大人げない。

「もうあっち行け、俺に関わるな」
男はしっしと、ゾロを追い払うように片手を振った。
その手首に、尺取虫が付いている。
それに気付いて、男は文字通りその場で飛び上がって声を上げた。
「む、虫――――っ」
片手を宙に浮かしてバタバタと慌てるのを、ゾロは横からさっと手を出して虫を摘まんでやる。
繁みの中にぽいと捨てれば、男はへなへなとその場に頽れた。
「よ、よかった・・・」
「そこ、繁ン中にも虫がいるぞ」
「うひゃっ?!」
弾かれたように飛び上がってゾロに抱き付いてくる。
見た目だけでなく中身までアホなんだなと、ゾロは冷静な頭で判断を下した。
「虫、虫ついてるか、おい?!」
「あー、大丈夫だ」
マントに付いた枯葉を払ってやると、男は羽ばたくようにバサバサと身を震った。
「もう、ついてねえか?」
「ついてねえよ」
馬鹿な会話をしている間に、とっぷりと日が暮れてきた。
そうでなくともなかなか抜け出せない森なのに、薄闇の中ではなお厄介だ。

「俺は家に帰るぞ」
そう言い置いて歩き出すゾロを、男は追って来た。
「どこ帰るんだ、お前この山に住んでるのか?」
「んな訳ねえだろ、街に出るんだ」
「町って、灯りはあっちだぞ」
男に指差された先、見下ろす場所に街の灯がある。
そうだ、ゾロはそこへ行こうとしていたのだ。
「そっちだ」
「だから、なんで登るんだよ」
土地勘がないはずの男に連れられ、ゾロは無事帰宅してしまった。





通いの家政婦が家を出てからたっぷり1分待って、ゾロは玄関の戸を開けた。
「おい」
門柱の影から、先ほどの不審者が顔を覗かせる。
「俺に関わるなって言ってるのに」
「だったらついてくんなよ」
ゾロの正論に言い負けて、男は渋々家に入った。
典型的な日本家屋を珍しそうに眺めている。
「お前、ガキのくせに一人で住んでんのか?」
「今だけだ、兄貴の受験に応援だのなんだの家族で連れ立って出かけた」
ゾロは学校と道場があるから一人残った。
ゾロ以外の家族がフリーダムすぎるだけの話だ。
「飯、食うか」
「それお前のだろ」
家政婦が用意してくれた食卓を眺め、男は台所へと目を向ける。
「なんかあるかね」
勝手に冷蔵庫を開けて、物色し始めた。
「結構そろってるじゃね?無断で使うと怒られるかなあ」
「なんだ、自分で作るのか?」
「ああ、俺割と料理好きでさ」
「王子のくせに?」
嫌味のつもりでそう言ったら、男は少し寂しそうに笑った。
「小間使いみてえな真似すんなって、よく怒られるよ」
何度か「怒られる」という。
よほど周囲から怒られてばかりいるらしい。
こんなにアホっぽいから、仕方ないのかとも思う。

「とりあえず、その鬱陶しいもの脱いだらどうだ」
ゾロに指摘され、男は「そうだな」とマントの裾を摘まんだ。
「料理するのに邪魔だ」
王子ごっこをするのにどこかで暗幕でも調達して来たのかと思ったが、よく見ると上等な布地に見える。
留め金や房飾りも豪華な造りで、まるで本物の王族の装飾品のようだ。
「ちょっとここに置いておくな」
見かけに反し所帯じみた仕種で綺麗に畳んで隅に置く。
男が着ているシャツは光沢があり、ピラピラフリフリしていた。
確かに、どこぞの王子と言われても信じてしまいそうな格好ではある。
クラスの女子辺りは、多分見た目だけでいちころだろう。

家政婦が綺麗に片付けてくれているキッチンに向かい、男は調理をし始めた。
準備された食事に手を付けないで、ゾロは先に宿題を済ませることにした。
食事は一緒に食べるものだと、家庭でも道場でも言いつけられている。
しばらくして、いい匂いが漂ってきた。
家政婦が作ってくれた料理は冷めていても美味いのだが、男の料理はいかにも作り立てで食欲をそそる匂いがする。
「…こんなもんか。お前も食う?」
人ん家の食材を使っておいて、食うも何もないだろう。
「当たり前だろ」
そう答えると、男は心底嬉しそうに笑った。



森で拾った得体のしれない男の手料理を、我が家で食べる。
妙な成り行きになったと思いつつ、ゾロは黙々と箸を動かした。
匂いだけで無く、実際男が作った料理は美味かった。
用心して食うべきと頭では分かっているのに、端を持つ手が止まらない。
「クソ美味ェだろ?」
男の屈託ない笑顔も、なぜか食欲をいや増しした。
湧き出る唾液をゴクンと飲み下し、飯を書き込むことで誤魔化す。

「お前、」
「ん?」
「お前は食わねえのか」
男はゾロの前の椅子に寛いだ格好で腰掛けて、煙草を取り出した
咥えてから、ゾロの視線に気付いて手を止める。
「ダメか?」
「うちは誰も吸わねえ」
「ですよねー」
そそくさと煙草を仕舞い、テーブルに手を着いて座り直した。
「いやさ、食ってるの見てるだけで腹いっぱいっつうか、胸いっぱいっつうか…」
眩しげに目を細め、ウンと一人で頷いている。
「マリモの小っちゃい奴みてェなのが、頬袋パンパンに膨らませてがっつくとか、ほんともう感無量」
「なに言ってんだ」
マリモ呼ばわりされるのは心外だ。
アヒル頭と同じようなことを言う。

「俺さ、料理好きだけど誰も食ってくれねえの。そんなみっともねえマネするなって怒られっからさ。
 だから、そんな風に食って貰えるの、すげえ嬉しい」
王子らしくない蓮っ葉な物言いで、けれど素直な心情を吐露する。
「大の大人がそれこそみっともねえ、お前が何を好きだろうがなにをしようが自由だろうが。
 作りたきゃ作ればいいし、なんなら俺が全部食ってやる」
モグモグ咀嚼しながらそう断言すると、男はくしゃっと目元を緩めた。
「へへ、お前ガキだけどいい男だな」
「当たり前だ」
何をそんなに、この男を哀しませることがあるのだろう。
他人に対して興味など欠片もないゾロだが、なぜかこの男だけは別のモノに見えた。
金色の髪も白い肌も目を惹くが、見てくれだけではないアホっぽとことかガキ臭いとことか、それでいて
どこか諦めたようなふてぶてしさと隠し切れない必死さで、放ってはおけない気分になる。

「お前、逃げてんのか?」
自ら王子だなどと名乗る猿芝居に乗る気はなかった。
だが、何がしか事情があるのだろうとすると、どうしても庇い立てしたくなる。
「や、あ、うーん・・・」
男はいったん仕舞った煙草取り出し、指で弄ぶ。

「逃げてきたっつうか、はぐれたっつうか、迷子探して戻りそびれたっつうか」
どうしようかなあと一人で呟き、髪を掻き上げる。
「俺さぁ、もうすぐ結婚するんだよ。政略結婚」
「せいりゃく・・・」
今どき耳にしたことがない古風な響きだが、なんとなく意味は分かる。
家のための結婚だ。
「相手は、由緒正しき家柄ってやつなんだろ?」
「そりゃそうさ、婚約者はそれは美しくて気立てがよくて優しいお姫さまだ!」
男はその場で立ち上がり、クネクネと身体を揺らした。
奇矯な振る舞いに、びっくりして箸が止まる。
「俺には勿体無い、素晴らしい女性だよ。だから彼女に不満があるなんてこたァ絶対ない、
 断じてない!ただ・・・」
糸が切れたようにすとんと椅子に座り、肩を落とす。
「俺が、ダメなだけなんだ。俺なんて、彼女に全然相応しくない。それに―――」
自嘲するように口元を歪め、火が点いていない煙草を咥える。
「俺は、俺も、自由に生きて、みたいかなあって・・・」
まるでそう口にすること自体が罪のように、慄きながら小さく呟く。
王子だと主張するより、その様子の方がゾロには奇異に映った。

「当たり前だろ。人は一人で生きて一人で死ぬんだ。家族でも仲間でも、誰かを縛る権利はない」
小学校四年生にして、ゾロはすでに達観していた。
フリーダムな家庭環境もあるし、幼い頃に親友を亡くした経験もある。
男は軽く目を瞠り、そうかなと一人ごちる。
「家族でも仲間でも・・・仲間って、どんなんだろな」
「あ?」
また、浮世離れなことを言い出した。
「いや、俺、家族としか暮らしたことねえし。召使でも部下や兵士とかでもねえんだろ?友達ともちょっと
 違うのか、仲間ってどんなんだろう」
真顔で聞いてくる。
深窓の王子ぶりは、堂に入ったものだ。

「それこそ、これから仲間作ったら分かんだろ。1人になれば」
王子ごっこでフラフラ彷徨ってる程度では、無理かもしれないが。
ゾロの言葉に、男はそうだなあと物憂げに首を傾けた。
「上げ足を取るつもりねえけど、俺一人で生まれたんじゃねえし」
「は?」
「兄弟も、一緒に生まれた。・・・今日、この日」
双子ってことか。
それよりも―――
「なんだ、今日誕生日なのか」
ゾロ自身、人の誕生日に頓着したことなどないし普段は気にも留めないところだが、今日だけは随分と
大ごとのように感じた。
「めでたいな」
何の気なしに発した祝いの言葉に、男の動きが止まる。
ゾロの顔をじっと見つめてから、はっと気づいたかのようにソワソワと無意味な動きをし始める。
「め、めでてえなって馬鹿にして!」
怒り口調だが頬が赤い。
これは照れているのだと気付いて、しみじみアホだなあと思った。
不器用で素直じゃなくて、けど意固地にもなり切れないところがなんとも可愛い。
そう、可愛い。
可愛いとは、こういうことか。
はっと開眼した思いで括目していたら、玄関の扉が乱暴に開く音がした。

「こんなところにいやがったのか!」
勝手に人の家に上がり込んで仁王立ちした男は、金髪を睨みながら低く怒鳴った。
ゾロは思わず、金髪を守るべく椅子を蹴って立ち上がる。
金髪の数百倍は危険度が高そうな男だ。
「それは俺のセリフだ、てめえこそどこ行ってた!」
背中に庇うつもりで立ち塞がったのに、頭越しに言い返された。
「お前がはぐれたんだろうが、俺から離れるなっつったのに」
「はぐれたのはてめえだろうが、この天然迷子!」
どこかで聞いたような台詞が頭の上を飛び交う。
ゾロはむむむと眉間の皺を深くして、とりあえず乱入者に向き直った。

「お前、何でうちに来た。どうしてここがわかった」
そう問えば、左眼に大きな傷を持つ、一見して只者とは思えない凶悪顔はいま気付いたとでもいうように
ゾロに視線を留めた。
「美味そうな匂いがしたからだ」
間抜けな答えと共に、ぐぐぐ〜と男の腹から空腹を訴える音がする。
「なんだ、お前も飯食えよ」
先ほどまでの剣幕はどこへやら、金髪はいそいそと食卓を整えだした。



「おかわりあるから、たんと食え」
ゾロと並んで座り、同じように頬袋を膨らませている男はここで雇ったボディガードなのだという。
「結婚式を前にして俺が逃げ出さないよう見張りで雇われてんのに俺からはぐれるとか、どんだけ
 使えねえんだてめえ」
「目を離したすきにどっか行くお前が悪い」
「俺はその場にいたじゃねえか。どっか行ったのてめえだろ!」
堂々巡りの会話をしながら、凶悪面は空になった茶碗をずいっと差し出した。
金髪は表情を和ませて、いそいそと飯をよそう。

「逃げたんじゃねえのか」
ゾロが聞けば、凶悪面と金髪は声を揃えて「逃げたんじゃねえよ」と言い返してきた。
気が合うのか合わないのか、わからない二人だ。
なんとなく面白くなくて憮然としていると、食べ終えた凶悪面は箸を置いて行儀よく手を合わせた。
「ご馳走様でした」
それに倣って、ゾロも合唱する。
「美味かった」
「へへ、お粗末でした」
金髪は寂しそうに笑うと、畳んで置いてあったマントに手を伸ばした。
「そろそろ帰らねえと、騒ぎになるとまずい」
「もうなってんじゃねえか?」
強面のボディガードが他人事のように言う。
自称王子の芝居に合わせているのかと思ったがボディガードの存在感が半端なくて、本当のことかも
しれないと思えてきた。
広い世の中こんなアホな王子もいるかもしれないし、迷子のボディガードもいるかもしれない。

「行くぞ、もう俺から離れんなよ」
ボディガードは偉そうにそう言って、金髪男の手首をぎゅっと掴んだ。
「だから、お和えがはぐれんなっつってんだろうが!」
憤然としながら、金髪はボディガードのシャツの裾をそっと抓む。
あれ?とゾロは思った。
なんとなく、この二人の雰囲気がこう・・・
なんというか――――

「俺はもう、ずっとお前を手放さないからな」
ボディガードの声が、どこなく甘みを帯びていた。
それに答えず、金髪は所在なさげに俯いている。
不意に手を引かれ、がくんとつんのめった。
そのまま引きずられる勢いで外へと出ていく。

「待って、待てて、靴…あ、チビ毬藻ありがとな!」
片手を繋いだまま、金髪はボディガードに連れられて外へ出た。
街に向かうのなら右手に行かねばならないのに、ボディガードは左に曲がり真っ暗な森へ続く坂道を登って行く。
「あ、コラ街はこっちだって言ってるのに!」
ゾロもさすがに自宅からの方向ぐらいはわかるので、ボディガードが向かう先は間違っているとわかった。
だが、声は掛けなかった。
「この、天然迷子―っ!」
暗闇の中、金髪の声がみるみるに遠くなっていく。


翌朝、新聞の片隅に、来日中の異国の王子が行方不明との記事が出ていた。
同行していたボディガードが関わっているとみて、行方を追っているらしい。
あいつ本当に王子だったんだなと妙なところで感心しながら、ゾロはそっと新聞を畳んだ。
ジェルマ王国とか第三王子とか、ゾロは興味がないので知らなかったが世界的には有名どころだったらしい。
しばらくは王子の消息がワイドショーでも取り沙汰されていたが、そのうち日常のニュースに紛れ
いつの間にか忘れ去られた。




それから10年。
大学進学を機に、ゾロは親元から離れて一人暮らしを始め―――るはずだったが、幼馴染の部屋に
転がり込んで今は一緒に暮らしている。
寄ると触ると喧嘩する相性最悪の腐れ縁だったはずなのに、昨夜はとうとう身体の関係を結んでしまった。
いつからかお互いに意識し合い、喧嘩しながら触れ合って歩み寄りやすれ違いを経て今に至る。
疲労困憊で気絶したように眠っている男の隣で、ゾロは起こさないように静かに寝返りを打った。
カーテン越しに降り注ぐ朝日の下、金色の髪が滲むように輝いている。
あの日見た夕暮れの金色とまた違っていて、でもどことなく同じ光にも思えた。

いつだったか、こいつが酔って絡んできた時「ほんとは俺が初恋相手だろう」なんて迫ってきたっけか。
違うと真顔で返したら、随分と傷付いた顔をした。
どうやらこいつにとっての初恋は、自分だったらしい。
それは大変嬉しいが、自分の初恋はこいつではない。
初めて人を好きになったのを「初恋」と呼ぶのなら、その相手は違う。
現在進行形なら、こいつしかいないのだけれど。

長い前髪を掻き上げると、くるりと巻いた眉尻が覗いた。
白い額に唇を付け、毎年告げる言葉をささやく。
「めでてえな」
あいつもこいつも、この世に生まれ出でてくれて実にめでたい。
浅い眠りの中、サンジは目を閉じたままくすぐったそうに首を竦めた。



ジェルマの第3王子、ヴィンスモーク・サンジの消息は、定期的にゴシップ誌を賑わせている。
スキャンダルの絶えない王室に生まれ、その出自とヴィジュアル、破天荒な経歴はワイドショーで重宝されていた。
あの日一緒に消えたボディガードとともに、いまも七つの海を優雅に旅しているらしい。



End