花嵐


ルフィ親分が、またおかしなのを連れてきた。
ただ飯食らいのくせに、この風車を塒みたいに入り浸ってやたらと人を連れてくる。
ナミさんは、それはそれなりに顧客が増えていいと喜んでいるが、俺としちゃあ歓迎するのはビビちゃんだけだ。
特にこんな、むさくるしい上に目つきの悪い、どこからどうみても可愛げのない物騒な野郎はお断りだってのに。
なんだってこいつは、こうもじろじろと不躾に人を見るかね。


親分がまるで知己の親友のように連れてきた男は、成り行きで手を組んだ流れの坊主らしい。
はっきり言って、坊主らしいのは服装だけだ。
首から提げたでかい数珠は何かのアイテムみたいだし、錫杖の代わりに木刀を持ってしかも刀を三本隠し持ってるなんざどういう手合いだこれは。
なにより、ビビちゃんが命の恩人と公言して、嬉しそうに傍にいるのが非常に気に入らない。
お姫さんなのに、ぎこちない手つきで酌をするなんて・・・しかもこのクソ坊主はそれを至極当然のように受けてるだなんて・・・
「そもそも坊主のクセに酒飲むたあ、何事だおらあっ!!」
気がつけば声に出して怒鳴っていた。
だが奴はどこ吹く風で、ぐびりと音を立てて酒を飲み干す。
ビビちゃんは俺と坊主の顔を困ったように見比べてから、そうなんですか?と場にそぐわぬ可愛らしさで坊主に問いかけた。
「まあ、普通坊さんは酒は飲まねえ、肉は食わねえってえ、戒律があるはずだが・・・な。」
代わりに答えたのはウソップだ。
世間知らずのお姫様にとうとうと説明を始めたが、それは途中でナミさんに遮られた。
話半分って聞き方をまだできないビビちゃんには、それが賢明だろう。
「ゾロさんは本当にお強いんですもの。それでお坊様なんて素晴らしいですわね。厳しい修行をなさったんでしょう。」
「こいつが何か成仏できそうな徳の一つも持ってるように見える?本当の意味で成仏させて来たような気がするぜ俺は。」
煙管を咥え直して腕を組んだ俺に、坊主はちらりと視線を流した。

この目だ。
さっきからどうにも気に入らねえ。
挑むでもねえ、脅すでもねえ。
だが、何かを含んだような意図のある目つきで俺を見やがる。
正面から喧嘩を吹っかけられたらいつだって受けて立つ俺も、こういう視線だけの挑発は苦手だ。
っつうか、なんかもう虫酸が走るぜ、気色悪い。
とは言え、ここで暴れたら今度こそナミさんに追い出されるから、ここは一つ大人しくしておこう。

そうしている間に、ルフィ親分はウソップとともに夜回りに出かけた。
何のかんの言って、やるこたやってる二人だ。
ウソップってえ手下がいて、親分は果報者だぜ。
ナミさんとビビちゃんは連れ立って湯屋へ行き、チョッパーも往診があると早々に引き上げている。
気がつけば二人きりになった風車で、この生臭坊主は相変わらず一人手酌で飲んでいた。



「お客さーん、そろそろ仕舞いですんでー・・・」
俺はわざと平坦な声を出して暖簾を下ろした。
空いた皿もこれ見よがしに乱暴に下げて、飯台を拭く。
坊主は空になった徳利をいじましく逆さに振って、俺の手に直接手渡した。
懐を探り、代金を払うのかとじっと待っている俺を見上げて、不意に口端を上げる。

「支払いてえんだが・・・」
「あいよ、まいど」
差し出した俺の手を、ぎゅっと掴んだ。
驚き、引こうとした腕ごと引き倒して、坊主はバランスを崩した俺の身体を抱きとめた。
「うわっ、何しやがるっ」
狙ったかのように、坊主の手が俺の尻をがしっと掴んだ。
腕の中に倒れこんで、しかも尻を揉まれてるってどういうことだ。
「離・・・離しやがれっ」
咄嗟のことに、動転してうまく抵抗できない。
生れ落ちてこの方、幾多のレディに胸ときめかせても、これっぽちも野郎になんざ興味のなかった俺だ。
こういう展開は、まったく予想もしてなかった。
両手でわしゃわしゃとケツを揉まれて抱きとめられてるたあ、どういう構図だこれは!!
「離せ、エロ坊主!」
俺は渾身の力を込めて膝を奴の腹に入れた。
だがいかんせん、抱き込まれた体勢ではたいした威力も出ない。
坊主は一瞬顔を顰めたが、その後にはこれ以上ないというくらい性質の悪い笑みを浮かべて俺の顔を覗き込みやがった。
「跳ねっ返りが。ますます気に入った。」
おいおいおい、人を置いてけぼりにして勝手に脳内で話進めてんじゃねーよ。
むちゅっと、首筋に熱いものが触れる。
それが坊主の唇だと、ワンテンポ遅れて気付いて、憤怒のあまり息が詰まった。
こ、こここここここのクソ坊主。
俺様の首筋に・・・く、口をつけてやがるるるるるう

「何すんだーーーっ!!」
「でかい声出すな。親分が帰ってくんぜ。」
唇を押し付けながらくぐもった声でそう言って、坊主はべろりと顎下から胸元にかけて舐めやがった。
や、野郎に舐められた。
ほんとの意味で、舐められたああああああ
「き、きさっ・・・」
驚愕と怒りで、うまく声も出ない。
そんな俺に構わず襟元をはだけさせて、肩にかぷりと噛み付いた。
いかん、俺はこのままでは手篭めにされる。
遅まきながら湧き上がった身の危険に、さーっと血の気が下がった。
そう言えば聞いたことがある。
坊主は、レディ相手じゃ姦淫の罪にあたるけど、男相手ならやってもいいんだった。

「待て、待て待て待て・・・俺は知らねーけど、どっかに!どっかにちゃんと陰間茶屋が、あるからっ・・・」
俺の必死の申し入れにも耳を貸さないで、坊主は耳たぶにまで噛み付いて、舌で内部を探りやがった。
ぴちゃりと、いやらしい水音が直接響く。
気色悪いっつうか、信じられねえっつうか・・・なにもかも想定外で、対処が追いつかない。
「しのごのうるせえなてめえは、俺はてめえが気に入ったんだよ。」
坊主は、どこか嬉しそうにそう囁いて、俺の股間をぎゅっと握った。


ひ―――
そんな風に、そんなところを、こんなでかい手で握られるなんて、初めてだ。
びくりと硬直した俺に構わず、坊主はひたすら首筋やら顎やらを舐めながら、片手でやわやわと揉みしだく。
「こんの、変態っ・・・」
野郎め!とは続けられなかった。
坊主が俺の口を食ったのだ。
ぱっくりと、そりゃあぱくりと唇ごと含めて、吸い付きながら、舌を伸ばして俺の口を抉じ開けようとする。
なんつうか、どういう動きをしてるのか、まったく想像できないくらい巧みな動きだ。
しかも、片手はそのままだから、俺は口の抵抗に集中していいのか股間を抗えばいいのかわからなくなった。
さらに、坊主のもう一つ空いた手が、襟元から中に差し込まれた。
―――!!!!
つ、抓まれたあああああっ
なんか、抓んでる。
なんかつねって、つね・・・
う、わああああああ
叫びの形に開いた口から、にゅるりと坊主の舌が入ってきた。
なんつうか、舌と思えないくらい固くて熱い。
まるで筋肉の塊みたいにぐいぐい押し入ってきて、歯の裏やら口中やらを舐め擦りまくった。
正直、他人に口の中を舐められるのは初めてだ。
口を合わせて吸うくらいなら大好きだが、こんなこんな・・・
こんな無遠慮に押し入って隈なく荒らしまくる押し込み強盗みたいな、こんな口吸いは・・・
舌を絡め取られて、ぎゅっと吸われた。
息が苦しくなって、なんとか唇を動かすと、口端から唾液が零れ落ちる。
それがまたなんとも恥ずかしく、俺は目をつぶって、ただただ坊主の圧し掛かる分厚い胸板に拳しを打ち付ける。
あああ、やっぱ包丁は腰に刺しとくべきだった。
大事な料理人の手で、こんな鉄板みたいな胸、殴れねえ・・・

意識がどこかに飛んでる間にも、胸元に差し込まれた坊主の手はくにくにと器用に動き、未知の感覚を呼び覚まそうとしている。
レディの豊満な胸なら、触ってても夢のように楽しいけれど、なんだってこんな平っぺたくて固い野郎の胸なんて、触んだよ!
そう言って噛み付きたいのに、口から漏れるのはヘンな音をした息ばかりだ。
坊主の無骨な指が、くにりくにりと、ささやかな尖りを指で挟んでは揉んで捏ねる。
そういった動きがすでに、非常にいやらしい。
何度か口を開いては閉じて、俺はとにかく坊主の行為の異常さを訴えようとした。
―――なのに…
「なんて奴だ。乳首弄られて勃てやがって。」
くらりと、眩暈を覚えて目の前が真っ暗になる。
お前が言うか、人の乳首弄り倒して竿扱きまくるお前がっ…
「だ、誰のせいで…」
怒鳴るはずが、声が掠れてしまった。
身体に力どころか、腹にも力が入らない。
「おいおい、そんな面すんじゃねえよ。そんなにいいか、ここはよ。」
べろりと、熱いような冷たいような、とんでもない刺激にまた身体が跳ねる。
目の前には芝草のような坊主の頭。
少し首を下げて、坊主は俺の乳首を舐めていた。
「な、なななななな…」
きり、と歯を立てられた。
痛みにびくつき、またあやすように舐められて息を殺す。
おかしい、こんなとこで坊主に乳首舐められてていいはずがない。
いいはずがないのに―――
「小せえくせに、固くなってんな。」
坊主の息が、乳首に触れてビンビンと背中の真ん中辺りが痺れた。
なんだってんだこりゃあ。
なんか、むず痒いような気色悪いような・・・いや、気色悪いんだよ!
絶対、気持ち悪いんだよこれはっ!!
「よせって・・・」
なのに、口から出る抗議の声は弱々しい。
ちゃんと声を出そうと吸い込む息の音さえ、妙な感じに響いて、自分でもやばいと思う。
なにがやばいって、さっきから弄くりまくられてる乳首よりも、もう片方だ。
置いてけぼりのそっちが、なんかむずむずとしている。
これはまるで・・・
「ん?こっちも欲しいのか。」
坊主がぴんと、中途半端に勃っていた片方を指で弾いた。
うっかり鼻から、変な息が漏れる。
「ちゃんと言えよ。じゃねえと、ほったらかしだぞ。」
坊主の声が笑っている。
こいつわざと、俺の身体で遊んでやがる。
「そんなこと、ね・・・」
くに、と指で抓まれて、親指の腹をぐにぐに押し付けるように捏ね出した。
自分の胸元で浅黒い男の指が戯れてるなんて、視覚的にも打撃が強い。
かと言って目を瞑れば感覚がより鮮明になって、坊主の指の動きにばかり意識が集中してしまう。

また噛まれた。
痛みと快感を交互に繰り返してくるから、すっかりそれに翻弄されて対処の仕様がない。
って、快感ってなんだよ!
いきなり気付いて我に返った。
気持ちよくなんかない。
気持ちいいわけじゃねえぞおおおお!!!
頭の中でいくら叫んでも、坊主は手を止めてくれないし、俺の身体のむずむずは収まらない。
坊主がさっきから熱心にさすっている摩羅はもうがちがちで、爆発寸前だ。
いつの間にか着物は肌蹴られ、腹当てがずり下げられている。
つうか、破れてっじゃねえか。
なんてことしてくれんだ、人の一張羅。

「すげえ、肌だな。」
きつく坊主が吸い付いた。
痛い、痛いのにそんなとこ・・・吸い付くなんて、噛み付くなんて―――

ちゅ、と音が立つ。
べろりと舐めて、唇で探って、舐めて、吸って―――
「い、いやらしいいいいいいい」
そう叫ぶしかできなかった。
坊主の動きの、何もかもがあまりにいやらしい。

「やらしいのはどっちだ。エロ板前。」
唇を押し付けたまま、そう呟くその響きすらすでにやらしい。
ぐにぐに指で乳首を押されて、もう片方を舌で擦られて、ついでに摩羅も扱かれて、とうとう俺は暴発してしまった。


目の前が、ちかちかする。
息が上がって、がくがくと揺れる身体を、坊主はしっかりと抱きとめていた。

気がつけば、坊主の膝の上で抱えられる格好で俺は果てていた。
なんたる失態・・・つうか、異常事態。
こんなこんな、女の温かな胎内でなく野郎のごつごつした手の中でイっちまうなんて―――
「この…変態野郎っ…」
着物の裾を乱したまま拳を振り上げたが、坊主に握られ縮こまった己をぎゅっと掴まれて動きを止める。
ぐちゃぐちゃと、ぬめる動きが再開されて、振り上げた腕でそのまま坊主の肩に縋った。
止めろってんだ、痛え…」
イったばかりで擦られんのは、辛い。
なのに坊主は容赦なく、また乳首を舐めて首筋に噛み付いてきた。
「止めろ、やだやだやだ…」
なんかもう、身も世もなく喚いた。
何より部屋の中が明るすぎて、誰かに気付かれそうで居たたまれない。

「せめて灯りを落とさせろ。んでもって、奥に入れ。こんなとこで…」
気狂いに道理を説いてもだめだ。
せめて、最低限の安全策はとっておきたい。
なのに―――
「明るいから、てめえのその面が見えんじゃねえか。」
坊主はにやりと、人の悪い笑みを浮かべて、見せ付けるように頬を舐め上げた。
どう見たって、年だってそう違わない青臭い坊主なのに、何でこんなにやーらしいんだ、こいつは!

「馬鹿野郎、親父かてめえはっ」
もうとっぷりと日が暮れて、あちこちの店も暖簾を下ろして灯りを落としてるってのに、風車がいつまでも
煌々としてんのは不自然だ。
誰かがまだやってんのかと、ひょいと覗くかもしれない。
ナミさんたちが、帰ってくるかもしれない。
こんな場面を見られでもしたら、舌を噛んでも死に切れねえや。

そう思うと生きた心地がしなくて、ムスコをおっ勃ててる場合でもないはずなのだが。
実際には、俺はまた完勃ちになっていた。

そりゃもう、イったばかりのぬるぬるを擦り上げられて、いい具合に扱かれて、乳首なんかビンビンで・・・
「すげえな。全身桃色に染まりやがって、そんなにいいか?」
坊主は親父全開で口で嬲ってくる。
「おら、こんなにぐちょぐちょ言ってやがるぜ。」
わざと音を立てるようにきつく扱かれて、俺は口を開けたまま大きく喘いだ。

予期せぬ音が、喉の奥から漏れる。
「あ・・・あ、あああ・・・」

「男好きだな、てめえ―――」
坊主の屈辱的な台詞で、またしてもイってしまった。



もはや、取り繕いようもない。
お天道様がひっくり返っても、女だけを一途に愛し続けたこの俺が、野郎に二回もイかされた。
しかも乳首で。
ありえねえ。
信じられねえ。
認めたくねえ。

呆然としながらも、俺はゆるゆると坊主を押しやって立ち上がった。
坊主は今度は素直に手を離した。
着物の襟を合わせることもせず、俺はとにかく灯りを落とそうとふらふらと店の奥を目指す。
だが、後ろから抱き込まれるように坊主に抱えられて、怒るより泣きたくなった。

「畜生・・・やめろ・・・」
「いい面しやがって。こっちはまだ終わってねえんだよ。」
後ろに、何か硬いモノが当たる。
そういやこの坊主帯刀してたっけかと思い出して、いや今は布にくるまれて立てかけてあるなと思い直した。
じゃあこの、尻に当たる硬くて長いものは、なんなんだ。
「この責任、てめえで取れよな。」
なんの責任だよ。
大体仕掛けてきたのはてめえじゃねえか。
そう言い返したかったのに、呂律が回らない。
目の前でぼやけていた坊主の顔に、しっかりと焦点が合う頃には、俺は壁際まで追い詰められていた。
「色が白え・・・」
まるで今気付いたといった風に、坊主は呟いて、俺の肩口に歯を立てた。
襟元は肘まで下ろされて、晒された片方の乳首を舌で転がす。
すっかり慣れた快感に、俺は木戸に凭れたまま仰け反った。
坊主の手が俺の腰を掴んで引き寄せ、肌蹴た裾から滑り込んで裸の尻を揉んだ。
硬く締めていたはずの褌は解けかかっていて、ぐしょ濡れになった摩羅をあやすように撫でながらその奥にまで指を這わす。
「うわ、やだ―――」
坊主の意図がわかって、俺はまた新たな悲鳴を上げる。
俺の尻を弄る気だ。
そんな太い指を捻じ込んで、開く気だ。
「いや、だ―――」
乳首を噛まれる。
腕を桟に押し付けられて、動きを封じ込められて後穴を探られた。
ぬるぬると、滑りがいいのはさっき己で濡らしてしまったからだろう。
野郎同士はそこを使うと、聞いたことはあったが気色悪くて身震いしたものだ。
それがまさか、自分の身に降りかかってくるなんて―――

片足を抱え上げて、坊主はふと覗き込むように頭を垂れた。
手を木戸に押し付けられているだけで、俺はまるで磔にでもされたかのようにうまく動けない。
坊主が、俺の尻の下で笑った気配があった。

「ずいぶんと綺麗な菊門だ。」
かああっと、新たな血が駆け上った。
野郎に、見られた。
ケツ穴見られたああああああっ

「俺の色に、染めてやるぜ。」
また、耳にも恐ろしい台詞を吐くから、促されるように視線を落とす。
汚い法衣の下から変態チックに覗いた坊主の摩羅に、仰天する。
摩羅、だよなあ。
仏像とかじゃ、ねえよなあ。
ほんとに生えてて脈打ってるもんなあ。
うはあ―――

うっかりそのまま飛んでしまいそうになったが、坊主の動きがそれを許さない。
ぐいと、勢いで突き立てられて、本気で口から悲鳴が漏れた。
「うわ、そんなとこ、そんなとこ…」
ぐにぐにと周りを揉むようにして、中を探って、突き入れてまた引いて。
それを少しずつ繰り返しながら、坊主の指が入ってくる。
「よせ、気持ち悪い…よせ…」
本気で吐きそうなのに、坊主は口端を上げたまま俺の顔を凝視している。
反応を見られてるのだと思うと、それだけで頭にくるが、いかんせんこっちはそれどころじゃない。
「やだって、痛え―――」
痛い、ような気もするが、なんせ気持ち悪い。
そこは出すところであって、入れるところではないはずだ。
いつの間にか口端から涎を垂らしていた俺の、口をまた吸ってきた。
乳首もふにふにと抓まれる。
尻を弄くられる異物感と必死で戦っているのに、口の中を蹂躙されて乳首も捏ね繰りまわされて、
もう何がなんだかわからなくなってしまった。

明るい、天井の羽目板がぼやけてよく見えない。
ここは、風車で
俺の職場で
可愛いナミさんと働いてて
皆に飯を食わせるところなのに
何で俺は、こんなとこで坊主にケツ弄くられてなきゃなんねんだよ。

理不尽さを呪っても、坊主は止まらない。
尻を穿つ圧迫感が強くなって、何をされているのかはわからないが怖くて堪らなかった。

「もう、やだ―――」
とうとう、声に泣きが入った。
とにかくやめて欲しい。
けれど自分の摩羅はまた勃っていて、はしたなく露を滴らせている。
まるで悦んでいるようだ。
「可愛い顔、しやがって。」
坊主が満足そうに目を細めた。
「もっと、虐めたくなるじゃねえか。」

ああ
救われねえ―――






初めてだってのに、
野郎に口吸われるのも乳首弄られんのも、ケツ穴突っ込まれるのも
全部初めてだってのに
坊主は俺を木戸に押し付けたまま、足だけ上げさせてモノをぶち込んできた。
そりゃあもう、擂粉木なんてもんじゃねえ、棍棒みてえなブツだ。
それを抉じ開けるように押し付けて押し込んで、奥まで入ったかと思ったら、抜き出してまた押し込めやがった。
その間、俺は息つくまもなく喘ぎまくった。
どうにかしねえと死んじまうってほどだったのに、どうしたらいいかわからなくてただ啼いた。

立った姿勢は不安定で、足に力なんて入らないのに坊主はぐいぐい突き上げる。
踏ん張ることもできなくて、俺は殆ど坊主に抱え上げられていた。
突き上げては落ちる己の体重でより深く穿たれて、縋るものは坊主しかなくて。

草色の髪に顔を埋めて、涎と鼻水と涙を垂らしまくって、とにかく俺は泣いた。
泣いても啼いても、坊主は止めてくれなかった。

「きゅうきゅう締め付けやがって。そんなにいいか、おら。」
いいなんて、一言も言ってねえだろうに、坊主は嬉しそうに突き上げて揺する。
否だ嫌だ厭だ

そう叫んでるのに、腹の中は坊主で一杯ではちきれそうだ。
果てたばかりのはずの摩羅に、また血が集まってくる。
「おいおい、そう締め付けんじゃねえよ。食い千切る気か?」
坊主は、涎でも垂らしてそうな歪んだ笑みで、俺の顔を探るように覗き込んでは唇を噛んできた。

こんなにも俺を弄んで、こいつはまだ一度もイってない。
絶倫というより、化け物だ。

「やだ、や…もう―――」
「ん、またイきそうか?」
そう言いながら、やばいところを突いてくる。
こんなにこんなに嫌なのに、俺は高い声を上げて無意識に腰を揺らしていた。
もう背筋を痺れるような快感が駆け上って、耐えられないのだ。

もう、どんなに好きな女ができても、絶対入れたりなんかしねえ。
こんな、内臓まで掻き乱すような凶悪な
臓腑まで焼き尽くすような野蛮な侵食を
何もかも曝け出し、ひれ伏すような恥辱に塗れた快楽を―――

知っては、いけなかったのに

「あ、ああっ・・・ああんっ・・・」
一際高い声が響いて、俺は坊主と共に果てた。








「おはようサンジ君。昨夜はごめんなさいね。」
ナミさんが、今日も輝くような笑顔で店に入ってくる。
「ビビがね、一緒にお城でお話しましょうって言ってくれて・・・あら、どうしたの?」
俺はにっこりと微笑み返して、朝ごはんを用意した。
「なんでもねえよ。ちょっと心配してたから、よかったって思ったんだ。」
ナミさんは、俺の顔をじろじろと眺めていたけど、何も言わなかった。
温かな味噌汁を前に、手を合わせていただきますと唱えている。
「ところで、昨夜のお坊さんのお代はちゃんと、貰ったんでしょうね。」
ほんの少し、味噌汁に波が立ったけど、零すほどじゃない。
俺は一旦息をついて、申し訳なさそうにナミさんを見下ろした。
「お代、貰ったんだけどね。俺が使っちゃったんだ。だから、俺の給金から差し引いてくれよ。」
ナミさんは、綺麗な目を丸くした。
それでも、じっと見るだけで何も言わない。
「そう、サンジ君がそう言うなら、そうするわ。」
ドライなナミさんも素敵だ〜〜〜

俺が身をくねらせている間に、また騒がしい連中がやってきた。
店は、あっという間に賑やかになる。
なかなか儲けの集まらない、ツケだらけの繁盛店。

そして
あの坊主も、夜の常連になるんだろう。
杯を傾けて、一人で静かに飲んで、俺の仕舞いまでいて、俺に支払いをするんだろう。
それが怖くて、待ち遠しくて、そうして日々を過ごすんだ。
多分、ずっと
これから―――




「いようナミ!いつもの!」
「はいはい親分、いらっしゃい。」

春の陽射しが降り注ぐ店先で、旋風がくるくると舞い、消えた。





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