土用



シモツキと言えども暑さは厳しい。
どちらかと言えば寒冷地なはずなのに、最近のシモツキは年間を通しての平均気温も上がっていた。
別にゾロとサンジが暮らしているからじゃない。
次から次へと新規参入者が増え、新婚さんも増えたからじゃない。
と思う。

ともかく、そんな訳で酷暑が続いていた。
サンジは元々寒さには弱いが暑さには強かった。
ゾロも、暑さ寒さに惑わされるような体質ではない。
だからちょっとやそっとじゃ弱音など吐かないし、夏バテなども心配ない。
サンジと一緒に暮らすまでは、ビールばかり飲んで痩せ狼みたいになっていたゾロも、今では夏冬関係なく健康的な精悍さを保っている。

だか、暑いものは暑い。
部屋にエアコンを設置したものの、極力点けないようにしているので快適とは言い難い。
蒸し暑い部屋でも、昼間日光を浴び続け労働に励んでいるから、夜は早い時間からバタンキュウだ。
そうでなくとも寝付きのいいゾロは、ごろりと横になってコンマ2秒で爆睡する。
朝、目が覚めると冷たさを求めて廊下に転がっているのが常だった。
夏はずっと、そんな状態だった。



「今夜は奮発して鰻だぞ」
作業から帰ったら、家中に食欲を掻き立てる匂いを漂わせて、サンジが笑顔で出迎えた。
心なしか、風太もはしゃいでいるようだ。
いつもは日陰にごろりと転がって腹をハアハアさせているのに、尻尾をブンブン振って一人ジャンプしている。
「鰻か、豪勢だな」
「土用だからな」
ふっくらご飯に香ばしく焼き上げられた、天然の鰻。
サンジ特製のタレはまったりとしてコクがあり、山椒が効いていて絶品だった。
「旨い…」
「そうかそうか、たんと食えよ」

ゾロにとって、鰻と言うのは年に一度か二度くらいしか食べられない、珍しいご馳走だった。
とはいえ、ふと思い出して無性に食べたくなるようなものではない。
出てくればご馳走だなとは思うけれど、このタレさえあればご飯が何杯でもおかわりできる…と言う程度の特別メニュー。
ぶっちゃけ、鰻本体にさほど興味はなかった。
がしかし、これは違う。
サンジの鰻は一味違う。
米粒一つ残さずに食べても名残惜しく、綺麗に舐め取ったどんぶりの内部をいつまでも舐めていたいほどに旨かった。

「行儀悪いぞ」
いつまでもどんぶりに顔を突っ込んでクンカクンカしているゾロの頭を小突き、ようやく食卓を片付けさせる。
今日も腹いっぱい旨いものを食べたと満足しながら、いつものようにコテンと眠った。





夜明けにはまだ早く、丑三つ時を少し超えた頃。
ゾロは何度か寝返りを繰り返したあと、ふと起きた。
というか、ゾロの鰻がおっきした。
寝惚け眼でモゾモゾしてから、無意識に手を伸ばし辺りを探る。
が、堅い床にしか触れない。

ゆるゆると目を開ければ、天井の角度が違って見えた。
また、身体の半分が廊下に出ている。
首を擡げてサンジを探せば、あちらは縁側に逃げる途中で倒れ伏したような格好になっていた。
ゾロはふんっと鼻息を吐き、手探りでリモコンを探し当てピッと点けた。
フルパワーで冷風が吹き付ける中、サンジの元まで這っていって俯せたうなじに顔を突っ込む。
しっとりと汗に濡れた肌は、サンジの匂いを濃く留めていた。

「ん…」
こちらも寝惚けたらしく、目を閉じたまま寝返りを打ち、ゾロの頭を抱き寄せた。
促されるまま覆い被さり、半開きの唇に何度も口付ける。
「…ん、ん…ん」
ちゅっちゅと目元にもキスを施すと、うっすらと目を開けた。
「…ぞろ?」
「ん…」
返事の代わりに口付けて、パジャマの中に手を差し込む。
サンジの鰻もおっきしていた。
ゾロの耳元で、はあ…と熱い息が漏れる。

「や…」
「ああ」
優しくあやすように愛撫しながら、下着ごとパジャマずらしサンジの下半身に顔を埋める。
「ふわ…」
ちゃんと覚醒してないのだろう。
突然の快楽に戸惑いながらも、跳ね起きようとせず、寝そべったまま手を泳がせた。
その手を握り、指を絡めてサンジの鰻を口に含む。
くちゅくちゅと音を立てながら舌で擦り、その下に続く密やかな箇所を指で撫でた。

「…は、や…あ―――」
サンジは自分の口元に手を当てて、声を殺した。
それでいて両足は閉じられず、寧ろ自ら大きく広げて腰を浮かしている。
「ふ、う…う」
常に枕元に常備しているオイルを用い、鰻を舌で扱きながらヌルヌルと指をねじ込んだ。
熱くて狭い場所が、収縮して異物を押し戻そうとうねる。
「きつい、な…」
「ひ、さしぶり、だから―――」

気温が高くなってから、自然と触れ合う回数が減っていた。
サンジは暑がるし、ゾロは疲れてすぐ寝ていたからだ。
だが今日は違う。
お互いの鰻は目覚めてしまった。

「あ、もう…もう…」
サンジから腰を押し付けられ、ねだられて、ゾロもまだやや狭いながらゆっくりと押し入る。
「あ・あ・あ…」
サンジの呼吸に合わせ、何度か馴染ませながら収めた。
目を閉じて喘ぐサンジの顔中にキスを落とし、耳たぶを食み髪に顔を埋めながら腰を動かす。
ゾロが知り尽くした、サンジが喜ぶ箇所を刺激してやれば、サンジの鰻は呆気なく達してしまった。

「は…はふ…ふ…」
恍惚とした表情を隠そうともせず、サンジはうっとりと目を閉じている。
快楽の波が引かない内に、ゾロは更に内部を穿った。
「は…まて、ま―――」
はだけた胸元の、固く尖った乳首を吸い舌で転がす。
くたりとうなだれた鰻を手のひらであやしながら律動を繰り返せば、再びサンジの口から甘い嬌声が漏れ出てきた。
ゾロの鰻はぬめりを伴って、奥へ奥へと新たな道を切り開いていく。

「ひあ、あ・あ――――」
啜り泣くような甘い声は、明け方まで続いたと言う。






大変美味しかった鰻の味が忘れられず、その後もゾロは再三リクエストするのだが、その望みは未だ叶えられていない。



END


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