Call me
-オマケ-



荘厳な鐘の音に誘われるように、まどろみの中で目を覚ました。
この島では日に3回、決まった時間に街中に響き渡るように鐘が鳴る。
鳴っている間に恋人たちが愛を誓うと、その望みは永遠のものになるのだという。
ずいぶんとロマンティックな言い伝えだと微笑んで、それから、俺もナミさんと誓い合いたいよ~と身悶えて。
半分寝ぼけながら、寝返りを打つ。
大きな窓から朝日が差し込み、上半身を起こして座るゾロの横顔が黒い影となって浮かび上がった。

「んあ?」
間抜けな声を上げて、首を擡げる。
ゾロが熱心に見入っているのは、サンジの手配書だ。
不本意な理由で賞金額が跳ね上がった、出自が記載された手配書。

起き上がりざまに、横からひったくった。
ゾロはむっとした表情で、首だけで振り返る。
「なんだ」
「うっせえ、起きてたのかよ」
手の中で手配書をくしゃくしゃと丸め、くずかごに投げ入れた。
それから一服すべく、腕を伸ばして床に脱ぎ捨てられた上着を手繰り寄せる。
「値が上がってんだから、喜んでんじゃねえのか」
「――――キライなんだよ」
肘をついて枕を抱え、うつぶせで煙草に火をつけた。
けだるげに髪を搔き上げると、肩甲骨に温かいものが触れる。
ゾロが手をついて身体を寄せ、サンジの背中に唇を落としていた。

「…ガラでもねえ」
街を満たすロマンティック気分に触発されでもしたか。
そうからかいたいのに、口に出すとそれを望んでいると思われそうなのでつい黙ってしまう。
ゾロの唇は、肩甲骨から肩、うなじへと移った。
煙草を指で挟んで振り返ると、頬に触れる。
「――――・・・」
頬から口端へとずれた口付けが、唇に重なった。

隙間から舌が滑り込み、歯列をなぞって擦る。
軽く仰け反って舌を絡ませ、ゾロの下唇を食んだ。
唇を合わせたまま、ゾロは手を伸ばして煙草を奪い取り指で揉み潰す。
もう片方の手が毛布の下に潜り込み、冷えた尻頬を撫でた。

昨夜散々穿たれた箇所は、まだ柔らかくこなれている。
差し込まれた指は難なく奥へと辿り着き、敏感な場所を抉る。
「…朝っぱら、から」
「もう昼だ」
悪びれもせず、ゾロは身体をずらして既に猛りきった己を肌に擦り付けた。
そうしながら片膝を持ち上げ、サンジが自然と仰向けになるよう足を開かせる。
「中で出すなよ」
「てめえ次第だ」

舌打ちするサンジの唇を再び塞ぎながら、ゾロは中へと押し入った。




「――――ふ…」
また、鐘が鳴っている。
曇天の空の下、荘厳に鳴り響く鐘の音。
その音が響く間に愛を誓えば、永遠のものとなるのだという。

「名前が嫌いなら、俺の名になればいい」
「…はっ、は?…なに?」
内側から溶かされる快楽に溺れかけていたサンジは、ふと我に返って、自分の顔を覗き込むゾロに焦点を当てた。
思いがけない真剣な眼差しを受け止め、鼓動が早まる。
「お前、俺のモンになれ」
「いまさら?」
そんなのとっくに、てめえは俺のモンなのに。

薄く笑うサンジの唇を何度も啄む。
これ以上ないほど深く己を埋め込みながら、ねだるように腰を揺らした。
まるで祝福するかのように、鐘は鳴り続ける。
「誓え」
「…しょうがねえな」
サンジは笑いながら、ゾロの口付けを受け止めた。

今日から俺は『ロロノア・サンジ』だ。
誰に宣言するともなく、ただ心の中だけでそう定めた。

高らかに、鐘は鳴る。




End







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