不器用な男

ゾロは案外不器用だ。
一度に三本も刀を操るくせに、何かに集中すると一点しか見えなくなるらしい。

無骨な指が、ひどく慎重に丁寧に、敏感な部分を弄る。
何度か声を上げそうになる自分を必死で抑えるサンジは、さっきからその動きに翻弄されていた。
イイところを掠めそうになる度、その指は他所へ逸れる。
それでもそこも気持ちいいかと思う頃にまた違う箇所へ逸れる。
そこ、そこだって。
いや違う、もうちょい右…
あーそこそこそこ、そこをもっと奥にって…どこ行きやがる!
なんてことを口に出して言えるわけがないから、身悶えたり息を吐いたり、ゾロの髪を掴んだりしてアピールするのに、ゾロは一向に気づかない。
何してやがるのかと、恥ずかしいのを我慢して眼を向ければ、ゾロはサンジの股間に釘付けになっていた。
眼が血走って鼻の穴が膨らんでいる。
実に浅ましくもこっ恥ずかしい、欲望丸出しの顔だ。
それでもって、鼻息も荒くサンジの股間に顔を突っ込んで弄り倒している。

「ゾロ…てめえ何してやがる…」
また鼻がぷくりと膨らんだ。
視線はまったく揺るがない。
「何って、アレだ。ケツの穴弄ってる。」
「アホかてめえは!ダイレクトに口に出すんじゃねえ!!」
振り上げられた片足に器用に蹴り倒されて、鼻血を出す勢いでゾロが倒れた。
「大体てめえ、さっきからおんなじようなとこ見て、あちこち忙しなく触りまくりやがってちったあ俺の反応も見やがれこの唐変木!」
「反応?」
「局部見て自分の世界に入るんじゃねえ。俺の顔見て俺がどう思ってんのか、か…感じてんのか推測して事を進めろ、マイペースで浸ってんじゃねえよボケ!」
サンジにしては実にストレートに、切羽詰って言ってのけた。
ゾロは眉間にしわを寄せて、それでも真摯に受け止めたようだ。
「よしわかった。もっかい仕切りなおしだ。」
体勢を整えてキスからはじめる。

サンジの表情を見て、どこが気持ちいのか考えて…
ともすれば局部へ集中しがちな意識を抑えて、極力サンジの顔を見ながら手探りで愛撫を続ける。
眼を閉じて少し辛そうに眉を寄せて、ゾロの指が動く度小さく身じろぐ白い顔は、目元から耳まで赤くなってきた。
「…あんま、ジロジロ見んじゃねえ。」
「うっせえ。」
半開きの、少し乾いた唇を舐めて潤す。
頬にもざらりと舌を這わせば、くすぐったそうに首をすくめた。
顔半分にいつも鬱陶しげに掛かる前髪は、寝乱れて渦を巻いて光っている。
吐息は甘く、笑みに形作られた口元から覗く白い歯に誘われれた。
蒼い瞳は伏せられて、周りを縁取る金の睫が細かく震えている。
ぎゅうと眉間に深い皺が刻まれ、何度か瞬きを繰り返して瞳が開いた。
覗く青は遠慮もなしに睨み付けて…


「ゾロ…手がお留守になっている。」

ロロノア・ゾロは、案外不器用な男なのだ。



END

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