明日の朝までに -5-


ちゅくちゅくと水音を立てながら、何度も口付けを交わす。
散々煽られたゾロは性急にサンジのシャツをたくし上げ、服の下に顔を突っ込むようにして肌を嘗め回した。
そうしながらバックルを外してズボンの中に手を入れ、充分に濡れそぼったモノを丹念に愛撫する。
「ふぁ・・・あ、はぁ―――」
サンジは切なげな声を上げながら、背を撓らせた。
シャツのボタンを全部外してしまってから、ゾロは顔を上げて改めて自分が組み敷いた身体を見下ろす。
月明かりの下でしどけなく横たわる裸体は白く浮いて見えて、豊満な胸も滑らかな曲線もないのに扇情的で卑猥だった。
これならいけると、今更ながら現金な確信が持つ。

実際、喧嘩仲間の男を相手に欲情するとは思えなかったが、この偽者のせいで随分と認識が改まってしまった。
本当は以前から、こうしたいと望んでいたのかもしれないなどという錯覚さえ頭を過ぎる。
生理的に受け付けないなら、欲情もしないだろうに。
「クソっ」
自分の手の中で硬く息づく、明らかに雄の証であるものさえ可愛らしく見えるとはもう末期だ。
毒を食らわば皿までもとの意気込みで、ゾロはそのまま顔を寄せた。
ぱくりと食いつくと、自分の頭の上でひゃあと間抜けな声が上がる。
「ばっ、やめろっばか!」
両足を必死に閉じて、ゾロの髪を掴み股間から引っぺがそうとする。
が、普段より力は半減だからゾロにとって屁でもない。
「うっせえな、じっとしてろ」
「馬鹿、やだって、そんな・・・」
無理やり両足を開かされ、羞恥のあまり目尻に涙まで溜めながら睨み付けた。
「やれっつったのはてめえだろうが」
「・・・だからってこんな・・・つ、突っ込めばいいだろう、がっ」
「こんな小せえ穴に入るか!」
開いたついでに奥の蕾を指でなぞったら、ビビクンと腰が引けた。
「や、でも・・・けど・・・」
「こうなったら心行くまで弄り倒させろ、どうせ忘れるんだろう?」
その言葉に、ゾロの頭を挟んでいる太股がぎゅっと閉じる。
「こんな、男の身体・・・なのに、こんな」
喉の奥に収めたモノを強く吸ってやれば、あああっと掠れた悲鳴が上がった。
立てられた膝がぶるぶると震え、ゾロの髪を掴む手がもどかしげに揺れる。

「あんまり騒ぐと、本物が起きるぜ」
ねっとりと見せ付けるように舌で舐め上げ、強めに擦り上げた。
狂ったように頭を打ち振り善がる偽者の背後で横たわった本物は、ぴくりとも動かない。
いや・・・
「ん?」
ゾロは手の動きを止めないまま、背後に目を凝らした。
無防備に寝そべっているはずの本物の尻が、むずむずと動いている。
「ひゃ、や・・・やっ」
イきかけたタイミングをわざと外して、根元をぎゅっと押さえ塞き止めた。
「ああ、イ、きてえっ」
ゾロの肩に噛み付いて唸る偽者の後ろで、本物の腰が揺れている。
「や、イ・・・イく・・・」
簡単にはイかないように根元を押さえたまま、指をずらして後孔を探った。
ゾロの唾液と先走りの露の滑りを利用してやや強引に指を突き立てる。
偽者が上げた声に合わせるように、本物の腰が僅かに持ち上がった。
小刻みに揺らしながら指を突き入れ、ぐぬぐぬと周囲をなぞった。
耳元で偽者の喘ぎが一際大きくなったが、本物の腰の動きももはや誤魔化しようがないほどに顕著になっている。
「おい」
「ふわ・・・な、なにっ?」
もう―――と息も絶え絶えな偽者を床に寝かせて、根元を押さえたまま本物の肩を掴んだ。
「てめえっ」
ぐいっと肩を引いて振り向かせれば、本物もまた真っ赤な顔をして荒い息を吐いていた。



「どういうことだ?」
片手で偽者を弄くりながら、本物の顎を掴む。
ひっくり返されて悔しげに睨み返して来るものの、本物はズボンの中に手を突っ込んで己を慰めていたのは明白だった。
覗いた白い臍が、呼吸に合わせてひくついている。
「いいから、早く―――」
「―――イかせろ、よぉ」
二人同時に喘がれて、ゾロはもう頭の芯が焼き切れそうだ。
「てめえ、ズボン下ろして全部見せろ」
咄嗟に変態的な要求をしてしまったが、この状態では致し方ないとも思えた。
本物サンジは抗いもしないでその場で膝立ちになり、下着ごとズボンをずり下ろす。
露わになったそこはぷるんと濡れて立ち上がり、サンジの手の中で赤く色付いていた。
それを確認してから、ゾロはおもむろに偽者サンジの股間に顔を埋め押さえていた手を外して勢いよくしゃぶってやる。
そうしながら横目で本物サンジを見た。
「ふあっ」
「ああああああ」
二人同時に身体を仰け反らし、偽者はゾロの口の中に、本物は自分の手の中に白い液を撒き散らした。

「あ、は――――」
くたんと、二人同時にくず折れる。
そのあまりにもぴったりなタイミングに、ゾロは今まで抱いていた疑念を確信に変えた。
「てめえら・・・」
口の中に溜めたサンジのモノを掌に吐き出し、ぬちゃりと音を立てながら玩ぶ。
「どっちも本物だな?」
ケダモノのように光る双眸に見据えられて、二人のサンジは観念したように同時に頷いた。





「おかしいとは、思ったんだが」
白い尻たぶに噛み付きながら、ゾロは濡れた掌を擦り付け晒された後孔を丹念に解し始めた。
ゾロの顔の前に尻を掲げながら、サンジは羞恥に堪えるように床に顔を伏せて震えている。
そのサンジの下に潜るようにしてもう一人のサンジは腹這いになり、胡坐を掻いたゾロの股間に顔を埋めた。
「指を切っただの熱を出しただの、俺に構ってたもう一人に引き摺られてのことか」
「あ、だって・・・」
ゾロのモノを口に含みながら、切れ切れに言い返す。
「どこでなにしてたって、二人とも、感じ・・・る、から・・・」
「これもか?」
ぐいっと指で押し広げられ、二人同時に声が上がった。
ゾロのモノを咥えているサンジの後孔も、触れずしてこのように広がっているのだろうか。
「なんだってまた、偽者なんざ名乗りやがった」
ブンレツの実で身体が二つに分かれた時点でややこしかったのに、偽者だの本物だの言い出すから余計に混乱したのだ。
サンジの真意がわからなくて。

「・・・く」
「言えよ」
ゾロの股間にいるサンジの頭を押さえ付け、ぐっと腰を突き上げながら目の前の孔を探る指を増やした。
また二人同時に仰け反って、いやいやをするように首を振る。
「に、せものだったら・・・理由になるか・・・って」
「なんの」
尻たぶを広げながら更に奥へと指を突き入れる。
ゾロのモノから口を外し、硬い腹筋に額を擦り付けるようにして喘いだ。
「ああや、やっ」
「なんの理由だ?」
「や、やる・・・理由っ」
偽者はゾロのことを好きだといった。
偽者は偽者ではなかったのだから、つまり本物もゾロを好きだったということだ。
なら最初から、ストレートにそう言えばいいものを。
「―――口実か」
気持ちはわからないでもないと、ゾロは自分の腹の上で泣くサンジを抱え上げ、四つん這いになっていたサンジも引き寄せる。
「俺も人のこと言えねえな、こうでもしなきゃ気付かなかった」
二人のサンジを両腕に抱え、首を傾けてそのどちらとも視線を合わせながら額や瞼にキスを落とす。
「偽者も本物もねえ、俺はお前が好きだ」
「ゾ・・・」
左右のサンジが身を寄せるようにして、ゾロの正面へと身体をずらす。
伸び上がる二人の身体が一瞬光り輝いて、すぐに溶け合い一つとなった。


「――――あ?」
「あ―――」
闇夜に浮かんだ光が消えた後、残ったのはゾロの膝の上に乗る一人のサンジ。
「あ・・・」

一瞬のことだった。
二人は呆然と顔を見合わせた後、どちらからともなくクスクスと笑い出した。
笑いながら唇をくっ付け、しっかりとキスをする。
「正真正銘の、本物だ」
「最初から、てめえは一人だろう」
「気付かなかったくせに」
唇を尖らせて拗ねるサンジに、ゾロははたと気付く。
「お前もしかして・・・」
今更だが、本当に今更だが、ゾロはようやく思い当たった。
「もしかしてずっと、怒ってたのか?」
気付かなくて。
サンジの気持ちにも気付かなくて、二人に増えたことにも気付かなくて、本物も偽者もないことにも気付かなくて。

「・・・今頃わかったか、馬鹿」
サンジは拳でこつんとゾロの額を小突いたが、その口元は笑っている。
その痩躯を思い切り抱き締めて。
もうゾロは迷うことなく、たった一人のサンジの中に己を沈めた。









「素敵なプレゼントは貰えたかしら?」

一人に戻ったサンジの労を労うために、翌日はクルー総出で宴の後片付けを終えた。
今日のおやつはウソップとチョッパーが用意する。
昼寝しているサンジを起こしにいくのはナミの仕事だ。
洗濯物を取り込んでいるゾロの傍にそっと近付いてきたロビンに囁かれ、胡乱気に振り返った。
「ブンレツした甲斐はあったみたいね」
「知ってたのか」
「見てたらわかるわ。でも私だけよ」
おやつだぞーと、ウソップの呼び声がする。
もうすぐサンジも起きて来るだろう。

「一日遅れたけれど、私からのプレゼント」
言いながら、ロビンは赤いリボンのついた小袋を差し出した。
「研究用に一粒分けて貰ったのだけれど、必要ないし」
ブンレツの実よ、との声にゾロの目が見開かれる。
「ゾロに上げるわ。好きなように使って」
もしよかったら、今度のサンジ君の誕生日に―――
ロビンのアドバイスは、悪魔の囁きのようにゾロの耳に甘く染み渡った。

自然と湧いてくる笑みをなんとか押さえ込んで、ゾロは済ました顔で「ありがとうよ」と礼を言った。




END





めろ様に捧げますv
【リクエスト】2人のサンジに迫られるゾロ…だったのに、いつのまにか両手に花に…
ごめんなさい〜!(脱兎)



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