11月11日 -3-


唇を合わせたまま鼻息ばかりが大きくなっていくのはみっともないが、中々自制できるものではない。
焦らされた分どうしても興奮が高まって、これ以上暴走しないように抑えるのが精一杯だ。

やや雑な動作でサンジを担ぎ上げ、居間へと場所を移す。
京間の四畳半の中央に、ちんまりと敷いてある一人分の布団が目に入って、余計下半身に血が集まった。
風呂から上がって、サンジはこれを敷いたのだ。
今日寝るために。
それなら全部オッケー問題なし。
そう思っていいのだろう。

「ゾロ、灯りを消せ」
サンジの切羽詰った、懇願のような声が聞こえた。
やだねと軽く突っ撥ねかけて、その顔付きがあまりに悲愴なのに気が付き止める。
渋々電気を消したが、薄いカーテン越しに外灯の光が薄く差し込んで完全な暗闇とはならなかった。
サンジは舌打ちしているが、ゾロは満足だ。


改めてサンジに覆い被さり、背中と腰に腕を回し抱き締めながらキスを繰り返す。
サンジの唇は笑いの形に歪んでいて、舌先で擽るように歯列を舐めればクスクスと声を漏らした。
けれど、押し付けた下半身から伝わる熱は自分のものばかりだ。
パジャマの裾から手を差し入れて、裸の胸をゆっくりと撫でた。
女じゃないからまったく起伏も柔らかみもないけれど、しっかりと筋肉がつき適度の弾力があって、しかも肌触りがいい。
自分の掌のざらつきの方が気になって、ゾロはやや遠慮がちながらそこだけ色付いた尖りを指で探った。
ぴくんと頚動脈の辺りが凹んだが、サンジは嫌がる素振りを見せず、ただじっと動きを止めている。
ボタンを外して胸を肌蹴させ、感触を確かめるように舌を伸ばして丹念に舐めた。
またしてもビクビクと裸の肩が揺れるが、サンジは目を閉じたままじっとされるがままになっている。
その姿がまるで痛みを耐えているかのように辛苦に満ちた表情に見えて、ゾロは暫く逡巡した。

サンジが動かないのをいいことに、ズボンのゴムに手を掛けてそっと下着ごとずり下ろす。
予想通りと言うべきか、淡い色の繁みに覆われたそれはくたりと萎え、サンジと同じように打ち萎れていた。
―――やっぱ嫌なのか
それならそれで構わないと、ゾロは思っている。
大好きなサンジに触れて、抱き締めていられるだけで自分は充分だ。
サンジも同じように思ってくれているなら、挿入なんてしなくても構わない。

見せ付けられた現実で、却ってゾロの腹は据わった。
ぺろりと掌を舌で湿らせ、サンジの下腹部へと手を伸ばす。
感じて貰いたくて弄るのではない、その全てが愛しいから心を込めて愛撫したい。

サンジは深く長い溜息のような呼吸をして、そろそろと足を開いた。
決して嫌がっているわけではないのだ。
ただ、そこに快感が伴わないとその表情が如実に物語っていて、ゾロにはそれが辛かった。



足の間に顔を埋め、太股から足の付け根、繁みの中へと舌を這わせた。
サンジは口をきゅっと引き結んで、鼻から息を吐きながら浅い呼吸を繰り返している。
ゾロのとは違いつるりとしたそれは、同じ男のものだからと覚悟していたゾロにとっても、なんら抵抗を感じさせかった。
薄明かりの中で繁々と見つめながら、なんか可愛いなと場違いな感動さえ覚える。

含んで吸い上げるような真似はせず、あくまで慈しむつもりで優しいキスを繰り返した。
サンジはかかとをシーツに擦りつけ、もじもじと腰を揺らしていたが、意を決したように右手を動かした。
布越しにゾロの股間へと手を伸ばし、その硬さを確かめておずおずと手を引っ込める。
ゾロは一旦身体を起こすと、サンジが触れやすいように自らズボンと下着を取り去り、改めてサンジの上に跨った。

「でっけ・・・」
サンジは呆れたような声で呟き、くたりと倒れこむようにシーツに頬を擦り付けると、クスクスと笑い始める。
「俺なんか見ておっ勃てて・・・変態め」
「なんとでも言え」
ゾロは憮然と応えつつ、意欲的にサンジへの奉仕を再開させる。
膝を着いたゾロの逞しい太股に腕をかけ、サンジも身体を起こした。
ゾロのものに手を添えて、頬擦りするように顔を近付ける。
軽くキスした後口を開けて頬張った。
「・・・おい」
思いがけない積極的な行為に度肝を抜かれたが、よく考えたらサンジはずっと大人だったと思い返し、素直にその行為に甘えてみる。
だがすぐに、その手技と口淫の巧みさに唸って耐えるしかできなくなった。

なんというか、ビジュアルが既にヤバイ。
外灯の光で落ち着いた色合いを見せる髪に指を絡め梳き上げれば、伏せられた瞼の下、睫毛を震わせる白い横顔が見えた。
口を窄めきつい刺激を与えたかと思うと、緩く唇を開いてわざと水音を立てながら舐める。
ピンク色の舌先に濡れた唾液が糸を引くのが見えて、ゾロは歯を食いしばりその光景に魅入った。
時折ちらりと横目でゾロの顔を窺う仕種すら、すべてが計算しつくされたかのように官能的で、眩暈がするほどいやらしい。

「・・・くそっ」
ゾロは両手でサンジの顔を掴むと、やや乱暴に引き上げた。
そのまま、濡れた半開きの唇にむしゃぶりつく。
再び布団の上に倒れこみサンジの股間へと手を伸ばせば、少し芯を持って勃ち上がりかけていた。
お返しとばかりに強めに擦ると、サンジはゾロの口付けを受けながら自らズボンを脱ぎ捨てた。
ゾロの顎に指を当て、軽く遮る動作を見せて顔を傾け片手を伸ばす。
ティッシュボックスの引き出しを開け、中からチューブを取り出した。
ゾロの視線が追い掛けるのを意識してか、サンジは少し悪戯っぽく笑って、すらりと長い足を広げる。
「すっげえ久しぶりだから・・・多分、処女と一緒」
目を射るほどに白い太もも。
その奥に、慎ましく色付いた窄まりが見える
たっぷりとジェルを塗り付けた指が、ためらいがちにその周囲を撫で淫らな動きで指を埋め込む。

ゾロは口を開けたまま、しばしその光景に魅入っていた。
白く長い指が、色濃い窄まりの中に徐々に飲み込まれていく。
時折動きを上下させて僅かに引き抜けば、にちゃりといやらしい音を立てて赤い肉壁が覗いた。
ゾロはハッと金縛りから解けたように身じろぎして、改めてごくりと唾を飲み込んだ。
まばたきを忘れていたせいか、目がしばしばする。
サンジの痴態をいつまでも見ていたいが、今日の目的はそれじゃないだろと気を引き締めた。

ゾロはすっかり色付いたサンジの目元に軽くキスすると、ジェルを手に取った。
白い指に添えるようにして、初めてそこに触れる。
表面上は固くも内側が柔らかな蕾は、ゾロを促すかのように息づいて収縮した。
サンジは指を抜いてゾロの首へと腕を回した。
片足を上げさらに大きく局部を晒しながら、羞恥に耐えるようにゾロの肩に顔を埋める。
未知の場所を慎重に犯しながら、ゾロは湧き出る興奮に目眩がしそうだった。
何より、指を進めるごとに、サンジ自身が徐々に首をもたげて行くことに気付いたから。
サンジは、恐らく前を扱かれるより後ろを弄られる方が感じるのだろう。
サンジが気持ち良さそうに喘いでいることが何より嬉しい。

どう見ても小さすぎる、狭すぎる場所を、ぬちゃぬちゃと粘着質な音を立ててゾロは夢中で弄くった。
こんなところに自分のモノが入るなんて、どう考えても物理的に無理だろう。
そう心配しながらも、ゾロの指の動きは徐々に大胆になっていく。
サンジは小さなうめきを盛らして、震えながら身を捩った。
「ゾロ、もういいから…」
そう言われても、指でさえきちきちな狭い場所だ。
本当に大丈夫なのか。
サンジは切なげに目を細め、汗に濡れた髪を掻き上げた。
「早く、お前のが欲しい」
ドカンと、うっかり暴走仕掛けたのを危うく耐える。
このままでは、先に頭の血管の方が切れそうだ。

ゾロはサンジから指を引き抜くと、痛いほどに張り詰めた己にもジェルを塗りたくってサンジの足を抱えた。
「前からで、いいか?」
サンジはゾロの肩に手を掛け、こくりと頷く。
「・・・嬉しい」
ああ、またなんか先に漏れそうだ。

ゾロは慎重に腰を進め、サンジの中に分け入った。
最初こそきつかったものの、途中から柔らかな肉の圧力と熱に包まれ、禁忌の場所でしか知りえない強烈過ぎる快楽に身体の芯が痺れた。
「くっそ・・・」
「あ・・・ゾロっ」
ガツガツと、無我夢中で腰を打ち付ける。
サンジは悲鳴を押し殺して、ゾロのパジャマの裾を握り長い足を背に絡めた。
「ゾロっ、いい・・・やべ・・・いいっ」
触れてもいないのに、サンジのモノは濡れて反り返っている。
感じているのだと改めて嬉しくなって、ゾロは更に深く己を打ち込むとサンジを抱き締め唇を合わせた。

「んくっ、んー・・・」
ゾロの腹に生暖かな飛沫がかかる。
それと同時に強すぎる締め付けが来て、直前になったら引き抜こうと決めていたゾロの思惑は敢え無く潰えた。
「う…ふぅ…」
ぶるぶると胴震いしながら、ゾロは愛しいサンジの中にたっぷりと己を放出してしまった。




気持ち良すぎて、しばらく放心状態のまま抱き合う。
先に動いたのはサンジで、気だるげに腕を上げると胸板に顔を押しつけたゾロの髪を優しい仕草で梳いてくれた。

「よかったか?」
「…死ぬかと思った」
サンジが笑うから、振動で汗に濡れた胸からずり落ちる。
「や、マジよ過ぎ。俺もっと色々したかったのに…」
入った時点で、いやサンジの痴態を目にした時からすべてぶっ飛んでしまった。
無茶をさせないようにと自制していたのは最初だけだった気がする。

サンジはよしよしとあやすようにゾロの頭を撫で、悪戯っぽく笑う。
「これから色々したらいいんじゃね?夜は長えし」
蟲惑的な瞳で見つめられて、くらりと来る。
だがゾロは、サンジの腰を抱くと横倒しに寝転がって汗の引いた額にキスをした。
「いんや、この先が長えんだ。俺らはまだ始まったばかりだから」
な、と笑いかければ、反してサンジの顔がくしゃりと歪んだ。




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