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破戒僧ゾロと料理人サンジ 2













道を急ぐ。
一刻も早く辿り着かなければ―――
今宵は新月、真っ暗闇の道行き。
案内人の後に続く足取りも自然焦りを増していく。
ただ、一刻も早く目的の寺へと。




***




それより数刻前。
江戸の街もすっかり寝静まった頃。
ボロ笠を被った僧侶が1人、武家屋敷が立ち並ぶ界隈を音を立てずに歩く。
ある一軒の門を見上げ、表札を確認すると脇の木戸をトトトンと叩く。
すると木戸が薄く開いて、木戸番が男の顔を見て言った。
「いつもんとこだ。」
一言言って木戸を閉められる。
それをさもありなんと受け止め、3間程そこから移動し、周囲をくるっと見渡すと塀の上にヒョイと飛び乗った。
自分が来ることを知らされているのは、木戸番1人だ。
まかり間違って屋敷内の人間に見つかれば、番所に突き出されるだろう。
だから、慎重に辺りを伺いながら塀から屋根へと飛び移る。
そのまま屋根を伝い、中庭に降りて空き部屋へ潜り込む。
そこから屋根裏へ移動し、薄灯りを目当てに真っ直ぐ進む。
前もって、目的の部屋の填め板が少しずらされているのだ。
そこへ着くと、ゆっくり板を動かし中を確認してストッと飛び降りる。
この屋敷の主人、シャンクスの部屋に。


(……クソッ。こっちは1人でムシャクシャしてんのに、見せつけやがって!)
思わず殴り付けそうになるのを辛うじて耐えていると、黒い長髪頭の方が布団から身体を起こした。
「来たか、ゾロ。」
「………当て付けか?ベン。」
「はっ、まさか。とは言っても、この御方はどうか知らんがな。人払いもある。」
ベンと呼ばれた長髪の男はそう言いながら、隣で眠る素っ裸の主人を揺り起こす。
ゾロはムッとしてソッポを向いた。
「んあ?ベン……?」
「来ましたよ。席外します。」
ベンは主人が起きたとみると、スッと立ち上がり着物に袖を通し、部屋から出て行った。
それを見送り、シャンクスが乱れた髪をかきあげながら起き上がる。
「いいご身分だな。態々んなとこまで呼び出すたぁ、尋常じゃねぇ。用があるんじゃねぇのか?」
ゾロが口を開くと、シャンクスはゾロを見て言い放った。
「サンジが帰ってこねぇ。」




今回の相手は、若い男を物怪憑きと脅し、祓うと称して身体をいいように貪り、飽きたら無縁仏として自寺内に葬っているという噂のある僧侶だ。
寺社奉行が手を拱いている理由は2つ。
1つ目は、その僧侶が御三家の出身であること。
2つ目は、全く痕跡を残さないこと。
事実、騙された男達の内、殆どが身寄りのない1人モノだった。
もし、身寄りが有っても殆ど勘当されたも同然な境遇だ。
届け出るものもいなければ、怒って奉行所に詰め寄るものもいない。
ならば、放って置いてもという意見も大半なのだが。
つい最近になって、ある1人の女性が訴えてきたのだ。
ぼて振りの兄が行方不明になった、と。
別々に暮らす兄からの手紙も金銭も届かなくなった、と。
まだ、20代前半、色白の綺麗な顔をした男だったらしい。
嫁を取っていなかったのは、年の離れた妹を嫁がせるまではと頑張って働いていた、と。
奉行所が調べた結果、その男の死骸が件の僧侶の寺から出てきた。
漸く有力な証拠が出て取調べを行ったものの、知らぬ存ぜぬの一点張り。
終いには、御三家の威光を振り翳し、釈放せざるを得なかったのだ。
そこで、『始末屋』に依頼が来た。
本当ならば、斬って捨てよと。
依頼人は・・・・・・言わずともがなだ。




「相手が僧侶だ。てめぇとも面識あるかも知れねぇ。本当かどうかも確認しなきゃならねぇ。それに、サンジ1人じゃねぇと向こうも警戒するしな。」
シャンクスが事も無げに淡々と説明するのを、ゾロは唇を噛み締めて聞いていた。


何が警戒だ。
させて何が悪い。
話の内容からすれば、サンジの方がよっぽどか危険じゃねぇか。
殺されかけるだけなら、サンジの事だ。
逆に蹴り倒す位の事は朝飯前だろう。
だが・・・・・・万一何らかの方法で身体の自由を奪われたなら。

サンジの身体が危ねぇ!


「どこだ?」
「お前1人じゃ今日中に辿り着けねぇ。案内役を頼んである。正門に回れ。麦わらのルフィの手下が待ってる。」
「・・・・・・わかった。」
「ヤツの寺にはルフィも行ってる。気をつけて行け!」
スッと立ち上がってもう一度屋根裏に上がろうとするゾロに、シャンクスが1つの風呂敷包みを投げ付けた。
ゾロがそれを拾い、シャンクスを見る。
「多分いるだろ。持ってけ。」
「・・・・・・・・・。」
その包みを腹に括り付け、ゾロは上へと舞い上がった。




***




静まり返った境内には明かりはなく、真っ暗闇の中ゾロはルフィと顔を合わせた。
「今んとこ、外には出てねぇ。塀の外から他のヤツらに見張らせているが怪しい動きもねぇ。このままだとオレ達は手を出すのは不可能だ。」
「あぁ。オレが行く。」
「部屋はわかるか?」
「気配でわかる。」
そう、ゾロは着いて直ぐに気付いた・・・・・・サンジの気配に。
少し手遅れかもしれない。
それでも、出来る限り早くこの手に。
「何か動きがあったら、オレ達も動く。その時は・・・・・・。」
「あぁ、顔合わせねぇようにするさ。逆にオレ達に何かあったら・・・・・・。」
「ん。賊の一味として扱う。悪く思うなよ、ゾロ。」
「それでいい。」
ゾロはそう言うと、塀の上へと飛び乗る。
境内に明かりは殆どない。
月明かりもないこの闇夜が、返ってゾロには好都合だ。
見えないものを見る。
ただ、敵と・・・・・・そして、サンジの気配を。
(奥だな。)
塀の上から見るに、左奥に本堂がある。
その本堂から右手に伸びる回廊を渡ると、手前に御庫裏と住職の住居、奥に倉庫らしい造りになっている。
手前の方に気配はない。
ならば・・・・・・。


ゾロは、塀から飛び降りると、石畳の上を音を立てずに走り、本堂の屋根へと飛び上がる。
回廊を屋根伝いに渡り、裏手の倉庫の方へと神経を研ぎ澄ます。
(倉庫入り口付近に1人・・・・・・裏側に1人・・・中庭に1人・・・・・・中に1人ってとこか。)
小物は3人。
大した数ではない。
まず、外側から仕留めていかねば。
そのまま屋根を走り、裏側へ出ると下を覗き見る。
案の定、1人の小坊主が座り込んでいる。
ゾロには気付いていない。
いや、気付く余裕などないようだ。
先程から聞こえる微かな呻き声・・・・・・いや、喘ぎ声といえばいいか。
その声が聞こえてくる部屋に注意が向いているようだ。
(好都合・・・・・・か。)
自分を慰め、ゾロは一気にその小坊主の後ろへと滑り落ちる。
相手が気付いて振り向く前に後ろから口を抑え、懐刀で首を掻き斬った。
悲鳴を上げる間もなく。
驚愕に濡れた表情をしてゆっくりと崩れ落ちるその身体を支えて、横たえる。
万一見つかることも考えて、ゾロは死骸を縁の下へと転がしておいた。

―――あと、2人。

ゾロはもう一度屋根へと登ると、倉庫の入り口へと近付く。
中庭からも見えるだろうそこで、中庭にいるもう1人に気付かれないようにしなければならない。
いくら部屋の中に気が集中していても、人が上から降りてくれば・・・。
ゾロは一旦本堂の方へ降りると、倉庫の縁の下へ潜り込む。
そして、慎重に身体を倉庫入り口付近に進める。
真上に人の気配を感じて止まり、縁の下から這い出た。
旨い具合に、そこは本堂裏手に出るための出入り口になっているのか、木塀が途切れ石段が緩く作られていた。
向こう側、つまり中庭側には塀があり、こちら側は見えない。
ゾロはそこから倉庫入り口にいるであろう人物を探す。
件の部屋からの声を聞き逃すまいとそちらに意識を集中する小坊主が、ゾロの左前にいる。
ゾロはニヤッと笑うと、先程の血がベッタリ付いた壊刀を取り出す。
しゃがんでそっと忍び寄り、小坊主がハッと後ろを向いた瞬間口を抑える。
そのまま身体を引き倒しつつ、その脇腹へと一気に刀を突き立てる。
その男が身体を痙攣させながら、ゾロの刀を持つ手を瀕死の力を振り絞って握り込んでくる。
口を抑えた掌に歯を立てて、必死に抵抗する。
手にも腕にも酷い痛みを感じるが、ゾロは力を緩めない。
振り向き様に睨み付けるの男に、ゾロは笑ってみせる。


―――てめぇ等がオレのもんに手を出すからいけねぇっ!!


腸が煮え繰り返るような怒りを抑えることなく、ゾロは刀を持つ手に力を込める。
更にその刃を男の身体に食い込ませる。
程無くして相手から力が抜け、腕も掌も解放される。
首筋に手を当てて、息絶えたことを確認するとその身体をゆっくりとその場に横たえる。

―――あと1人。

ゾロの居る場所から、もう1人の所在はもう目の前だ。
そして、先程から引っ切り無しに聞こえてくる嬌声。
その相手を苛む声。
そのまま中庭を走り抜け、ぶった斬りたい衝動を何とか抑える。
持ってきていた白鞘の刀をスラリと抜き取る。
中庭で室内を覗き込むかのように、縁側に這い蹲っている男に向けてゾロは斬撃を仕掛ける。
(・・・・・・・・・三十六煩悩砲っ!!!!)
声無く発した一陣の鋭い疾風が中庭を走り抜け、目掛けた男を吹き飛ばす。
致命傷となるであろう傷を与えて。
その物音に気付かれるかと部屋の方を見るが、動く気配は無い。
(それだけ、その身体に夢中になっている・・・・・・ということか。)


刀を抜いたまま、ゆっくりとゾロは件の部屋に近付いていく。
足音を立てずに、ゆっくりと。
『・・・・・・んあっ・・・あぁ、あ、あ・・・はっ・・・。』
『感度がまた上がったんじゃないのか?好い声をもっと聞かせてくれ。』

―――それは、オレのだ。

問題の部屋の前に近付く度に、声は矢の様にゾロに突き刺さっていく。
それでも、歩を速めない。
白鞘の刀を口に咥え、もう2本の刀も鞘から抜いて握り締める。
『あ、あああ・・・・・・はん、ん・・・・・・。』
『いいのか?先程からココも我慢できないようだが?』
『あああっ!』

―――それは、オレのだ!

部屋の下まで来て、縁側を上がり、刀を握る手に力を込める。
目の前で自分と彼らを遮る木戸を睨み付け、左の腕を振り上げる。

シャッ!!!!

ガタン!!!!

一刀両断にされた扉が大きな音を立てて崩れ落ちる。
中から噎せ返る様な香の煙がゾロを襲う。
(これは・・・・・・麝香・・・?・・・催淫剤、か。)
急に明るい室内へ入った為よく見えてなかったが、徐々にゾロの視界が開けていく。
外側からは想像もつかないような高価そうな調度の数々。
それらを見渡し、その中で明るい方へ目をやる。
そこには、自分の姿に驚き、恐れ戦く小太りの坊主と、そして・・・・・・。

―――サンジっ!!!

全裸で床の間の柱に後ろ手に縛られ
白い肌は薄桃色に染まり
両脚を限界まで広げられ
両乳首はピンと上を向き
男根はタラタラと先走りの涙を零し
後孔は何かの油でグチョグチョに塗れ

「・・・・・・ゾ、ロ・・・。」

欲に濡れた声でゾロを呼ぶ、ゾロの最愛の男。


―――それは、オレの・・・・・・なのにっ!!


ゾロは、その姿に頭をガツンと殴られたかのような衝撃を受ける。
その姿に自身が欲情していることに怒りを覚える。
刀を振るうことで何とか気を取り直して、目の前で後ろに手をつき震えている坊主に目をやる。
そいつから目を反らさずにその前を通り過ぎサンジに近づくと、サンジを拘束している縄を斬り。
そのままの格好で横に倒れそうになったサンジの身体を支えて、ゆっくりと横にしてやった。
そして、着ていた上っ張りを脱いで、サンジにかけてやる。
「・・・・・・き、き、貴様はっ・・・ここを、どこだと・・・。」
怯えながらも啖呵を切るその男に、ゾロはきっぱりと言い捨てる。
「お前と問答する必要は無ぇ。」
「な、なんだと?」
刀を握り直して、ゾロがその男の顔面にスッと刃先を向ける。
相手が、ジリジリと後退りする。
「お前に逃げる道は残されてねぇ。大人しく地獄に堕ちろ。」
「わ、私は・・・御三家の―――」
「もう、それも通用しねぇ。」
ゾロはそう言って相手の言葉を遮り、刀を振り上げる。
「ひっ!!」
「人のモンに手ぇ出した落とし前、きちっと付けやがれ!!!」


渾身の力を込めて振り下ろした後には、血溜まりの中に沈む首と胴体。


返り血を浴びた頬をグイッと拭って、サンジに向き直る。
身体をカタカタと震わせながらも、ゾロに向かって手を伸ばしてくる。
ゾロが刀を納めてサンジの傍に近付くと、しゃがみ込んでその身体を抱き寄せる。
抱き寄せて、後頭部に手を置いて、その肩に顔を埋めて掻き抱く。
「・・・・・・遅くなって、悪かった。」
「は・・・どってこと・・・ねぇ、よ・・・。て、めぇこそっ・・・だい・・・じょぶ・・・か?」
力ない声で、それでもゾロを責めずに心配してくれる愛しい男。
ゾロは堪らない気持ちになって、抱き締める腕に力を込めた。
「サンジっ、・・・・・・・・・すまねぇっ。」
「い・・・いさっ・・・・・・ゾロ・・・・・・早く、ずらからなきゃ・・・なんねぇん、だろ?」
「・・・・・・あぁ。」
そこで、ゾロはシャンクスから渡された包みを思い出して、それを片手で開ける。
中には・・・・・・男物の着物一式。
(こうなることは、予測済みってか。)
口惜しさに唇を血が滲むまで噛み締める。
こんな目に合っても尚、続けなければならないのか?
このまま2人で逃げてしまえば・・・・・・。
「・・・・・・ゾロ?」
「・・・いや・・・・・・これ、着れるか?」
「ちっと・・・手ぇ・・・動か、ねぇ・・・・・・。」
震える手で、震える身体で、それでも懸命に答えるサンジに、ゾロはその着物を羽織らせる。
帯はせず、包むようにして横に抱えて抱き上げる。
そして、脚で行灯を蹴倒して、火がボッと燃え上がるのを確認してから、開け放たれた木戸へと足を向ける。
火の手が上がれば、後は表の仕事だ。
このままここにいるのは拙い。
ゾロはサンジを抱えたまま、裏口の塀を飛び越えた。




***




草木も眠る丑三つ時。
轟々と燃え盛る炎を遠くに見ながら、ゾロはサンジを横たえる。
サンジの住む風車2階でもなく、ゾロの住む長屋でもなく、寂れかけた稲荷神社の格子戸の中だ。
サンジがこのままじゃ戻れないと何度も言うので、ゾロは仕方なく直ぐ傍の神社に身を寄せたのだ。
「大丈夫か?」
ゾロが心配して腕の中のサンジに声を掛ける。

―――大丈夫じゃないのは、オレの心の中だろうに。

ゾロはそう思いながら、それでもサンジにその気持ちの一片でも感じさせないように押し殺す。
そんなゾロの気持ちを察してか、サンジがフッと笑う。
「大丈夫・・・・・・たぁ、言え・・・ねぇな・・・。」
「何がいる?どうすりゃいい?」
必死に聞くゾロに、サンジはゾロが想像してもいないことを口にした。


「・・・・・・しようぜ、ゾロ!」


「!!!な、何言ってやがる?」
「アレ、気付いたんだろ?媚薬だよ。もう、我慢できねぇ。」
「だが、てめぇ・・・・・・身体が・・・。」
「・・・・・・屁で、も・・・ねぇよっ!てめぇが・・・あっ・・・欲しくて・・・死に、そうだ。」
サンジがそう言って、ゾロの股間を弄る。
ビクッとゾロが身じろぐと、サンジがクククッと笑う。
「てめぇも・・・その気・・・じゃ、ねぇ・・・か。とっととしやがれ!」
「クソッ・・・・・・知らねぇぞ!!」
ゾロはそう言うや否や、ただ包んだだけのサンジの着物を剥ぎ取った。




口付けるだけで、サンジが身を捩る。
舌を絡めるゾロに答えて、首に手を廻して。
「ゾロ・・・・・・あぁっ・・・ゾロぉ。」
狂おしく自分を呼ぶ愛しい愛しいこの世でたった一人の男。
それなのに・・・・・・。
先程見た光景がゾロの脳裏を過ぎる。
自分以外の人間にいいように嬲られていたサンジ。
恍惚の表情を浮かべながら、一体どんな痴態を晒していたのだろうか?
思い描くだけで、抑えていた怒りがこみ上げる。

―――これは、オレのだろうがっ!

「何、された?」
口を吐いて出た台詞に、感情を抑えることは出来なかった。
サンジの表情が、ゾロからの愛撫に呆けながらも訝しげなものを浮かべる。
「・・・・・・ゾ、ロ?」
「アイツに何された?」
「・・・・・・・・・。」
「アイツにされて、感じやかったのか?」
「・・・・・・・・・っ!!ゾロっ!!!」
ゾロがサンジの勃ちあがった乳首を強く摘む。
その刺激に耐え切れず、サンジが腰を揺らす。
サンジ自身が、喜びの涙を零す。
「こんな風に、アイツにしてみせたのか?」
「あああ・・・あん・・・・・・はっ・・・ゾロっ!!」
摘んだ乳首に唇を寄せて、歯を立てる。
反対側のそれにも、押し潰すように愛撫を加える。
サンジはもう、ゾロの言葉も聞こえていないのか、ただ首を横に激しく振るだけだった。
そして、ゾロの肩に爪を立ててこう言うのだ。
「もう・・・もう、くれよっ!!てめぇの、熱いの!!早くっ!!!」
「クソッ!!!」
ゾロはそう言うと、解してもいないサンジの菊門に猛った己をぶち込んだ。
「ああああああっ!!!」
サンジが高い嬌声を上げて、仰け反る。
露にされた首筋に、ゾロは本能のまま噛り付く。
ゾロのどんな愛撫にも如実に反応を返すサンジ。
ゾロの髪を鷲掴んで、普段ならば押し殺す喘ぎ声を響かせて。
ゾロが顔を上げてサンジを見れば、口を薄く開いて口付けを強請ったりまでした。
唇を離すことなく、ゾロが腰を緩く前後させて。
それに対して、早くもっとと惜しげもなく晒されるサンジの快楽の証拠を言葉で突きつけられて。
煽られたゾロの動きが早くなっていく。
サンジが脚をゾロの腰に絡みつかせる。
少しでもゾロから離れないように。
ゾロの熱が自分の中から出て行くのを留めるかのように。
「サンジ・・・・・・サンジ、サンジっ!!」
「あ・・・あん、ゾロっ・・・イイっ・・・あうん・・・・・・はっ、ゾロ・・・イイっ。」
もう自分が何を口走っているかもわかっていないのだろう。
ただ、全身で身に余る快楽を持て余して喘ぎ続ける、ゾロの最愛の男。
いつもならば、羞恥に頬を染めて必死に殺そうとする声を惜しげもなく晒して。
ゾロに更なる刺激を求めて、何度も何度も自分を呼び、強請る。
そんなサンジの艶姿に煽られながらも、ゾロの心にどす黒いものが溜まっていく。

自分以外の人間に、この姿を見せたことに。
自分以外の人間が、この姿にさせたことに。


―――これは、オレだけのものなのに!!!


それが、独占欲からくる狂おしい程の嫉妬心なのだとゾロは気付いていた。
だから、サンジにその怒りをぶつける事はできない。
彼の方こそ、被害者なのだから。
ゾロだけを愛し、ゾロだけにその姿態を見せたいと願っているだろうから。

怒りを全てサンジを抱くその情熱に換えて。
ゾロは今までにない程、貪欲にサンジを求める。
体位を変え、貫く角度を変え、激しさを変え。
ゾロはただただ、サンジの最奥に熱情を穿ち続けた。




事後、気を失ったサンジの髪をゾロは優しく撫で付ける。
無茶をして、サンジが意識を飛ばすまで何度も何度も抱いた。
サンジもそれを厭うどころか、自身から催促してきたから。
だから、ゾロもそんなサンジに煽られ、途中からは自制も効かなくなった。
こんなに抱いても、それでもまだ。

胸の奥にあるどす黒いものは消えない。


―――これは、オレだけの・・・・・・だったのに。


ゾロが、サンジの髪を軽く握り締めた時だった。

「・・・・・・どうした、ゾロ?」
薄っすらと瞼を開いて、サンジがゾロを見る。
まだ、全裸のままのサンジだ。
情事の後の艶やかさは、ゾロの本能を直撃する。
でも・・・・・・。
「大丈夫か?無茶させちまったな。」
素直に謝るゾロにサンジがキョトンとした顔をして、それからゾロの胸に頭をコテンと寄せた。
「・・・・・・てめぇ、何か勘違いしてねぇか?」
「あ?」
「オレ、アイツにいいようにされてたワケじゃねぇ。」
サンジの言葉に、何を彼が言いたいのかわからずゾロは首を傾げてその顔を覗き込む。

あれ程、イイ声を上げていたのに。
身体は如実に快感を示していたのに。

ゾロの考えていることがわかるのか、サンジは笑いながらゾロの唇に自分のそれを寄せて言う。
「てめぇ、今日いつもと違ったぞ。」
口付けられながら囁かれる言葉。
「てめぇがあの屋敷にくるまで、オレはアイツのしてくることに感じた振りしてたんだ。」
「?どういうことだ?」




「部屋に入るなり、麝香の香りにやられた事は事実だ。だが、アイツのなんかてめぇに比べたらお粗末過ぎんだよ。」

「でもよ、ある時ビビッと身体に電撃が走った。てめぇの殺気がオレに届いたからだ。」

「もう、それからはてめぇとしてる時の事ばっか頭に浮かんでよ。もう、堪んなかった。」

「早く抱いて欲しくて、てめぇのデカブツ突っ込んで欲しくて。」

「殺気が近付く度に、もう尋常じゃいられなかったんだよ。」

「てめぇが木戸ぶった斬って姿見せた時、思わず昇天しそうになった。」



サンジが紡ぐ言葉に愕然として、ゾロがサンジから唇を離してその顔を見れば。
それはそれは艶めかしい、何度ヤッた後でも直ぐにその気になれるような色気を含んでいて。


「オレは、てめぇの、だろ?ゾロ。」


自分の存在が、サンジを感じさせていたのか。
自分が居る事だけで。


―――これは、オレだけの・・・か?


ゾロは、目の前で嫣然と微笑むサンジの唇に喰らい付く。
舌で中を探り、熱いサンジのそれを噛み付くように貪る。
応えるサンジにまたしても煽られて。
ゾロは、サンジの首筋に紅い華を刻む。
「あ・・・・・・ゾロっ・・・。」
「もっぺん、抱きてぇ!」
「ハッ・・・・・・何遍でも抱きやがれ。オレがてめぇを喰らい尽くしてやる!」
笑いながら、サンジはゾロの背中に手を廻して言う。
ゾロがそんなサンジを見て思う。


―――これは、オレだけのだ!




***




空が白んできても、件の屋敷の炎が燃え尽きることはなく。
それから更に1夜明けて漸く鎮火した中から見つけられた遺体は4体。
問題の僧侶は、不審火により死亡と結論付けられた。
任務を果たして、本来ならば報告に来るはずのゾロとサンジだったが。
2人はその事件を境に姿を消す。
シャンクスが四方八方に手を伸ばして捜したが、髪の毛1本さえ見つけられなかった。


彼らの行方を知るものは誰もいない。










                 END











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都さん、続編もどうもありがとうございましたv