「またツケの客が増えただけじゃない」
まったくもう、とナミがふくれるのをものともせずに親分が連れてきた破戒僧は、豪快にメシをかっこんでいた。
「なんだ、腹減ってたのか?坊さん。」
ウソップがお茶をついでやりながら、話しかける。
んが、だの、もが、だの言いながら僧は茶を受け取る。
どうやらお茶を入れてもらった事に、礼を言っているらしい。強面のわりには礼儀正しい坊さんだと、ウソップは思った。
ついでに、「ちょっと怖い」と思っていたのも薄らぐ。
それほどの、食いっぷりの良さだった。
「惚れ惚れするねぇ。」
親分が言うが、
「アンタが言うんじゃないわよ。アンタが惚れ惚れ出来る立場じゃないでしょ。」
呆れたナミの言葉に、みんなが頷く。
親分の前には、相も変わらず山のような皿が積み上げられていた。
「なんだナミ〜。俺に惚れてたのか〜。」
「全然違うわよ、ボケ親分!」
対ルフィ親分用に強化された盆で、思い切りナミが親分の脳天をぶちのめす。
それでも「いてぇなぁ」と笑っていられる親分はすげぇと、ウソップとチョッパーが冷や汗をたらしながら感心していた。
「ここの飯はうめぇからな。」
ようやく人心地ついたらしい僧が、一息に飲み干した湯飲みをどんと置いて言った。
「あー、食った食った。」
「風車の飯は安くて多くてうまくて、で評判なんだ!」
最近知り合ったばかりだというのに、チョッパーが目をきらきらさせて誇らしげに言う。
「あらチョッパー、だったらもっと早く来てくれたらよかったのに。」
ツケでなく、現金で払ってくれそうなチョッパーにナミが笑顔を向ける。
「だって怖いっていう評判もあって…」
はっ!と気づいてチョッパーが口をふさぐ。
「…何が?」
笑顔のままのナミが怖い。
「え、いや、あの」
「何が?何が怖いって評判なの?うちは。」
ナミが笑ったままで優しくチョッパーの頭を撫でる。
「評判を知るのも重要なのよ、客商売は。で?何が怖いって?」
両手でチョッパーの角をつかんで、ナミが微笑む。
「言いなさいって!」
表情を一変させて、ナミがチョッパーを掴み上げた。
「わあああああああああああ!!!」
じたばたと暴れながら、
「ち、違うよ!ナミ(だけ)じゃないよお!!」
言えない言葉はのみこんで、チョッパーが叫んだ。
「あらそう。」
すとん、と椅子の上に下ろされる。
「うえ…うええええん。こ」
怖かったよぅ、という言葉はのみこんで、チョッパーが涙目になる。
「で?何が怖いのかしら、うちの。」
「サ…」
「さ?」
「サンジ…」

きょとん、とした顔のナミだったが、しばらくして合点がいったように頷いた。
「あ〜、そっか。私にはめろめろだから忘れてたけど、サンジ君て結構凶暴だったわよね。」
「結構、はいらねえだろ。」
ウソップがぼそりとつぶやく。
途端に奥の賄いからおたまが飛んできて、正確にウソップの後頭部にヒットした。






三々五々、それぞれがそれぞれの家に帰り、夜も更けた頃。
町の大木戸もとっくに閉められて、行き交うのは冷たい風ばかり。


「こんなとこに隠れてやがったとはな。」

言われたサンジは、奥の狭い座敷の上がりに腰をすえていた。
あぐらを崩した片足を、土間に下ろしてキセルをトンと叩く。
目の前には、破戒僧。

「…ったく。どこにでも湧いて出やがる。クソ坊主。」

「逃げ隠れしやがって。」

「逃げも隠れもしてねえよ。」

「ほざけ」

トン。あとで掃除しとかなきゃナミさんに怒られっちまうなぁ、と呟きながら。

「いい町だったんだがなあ。俺みてえのにゃよ。」

「あの化け物親分か。」

「アレがいりゃ、髪の色が少しくれぇ変わってたって、板前にしちゃ足癖悪すぎだろうが、屁みてぇなもんだ。」

キセルに葉をつめながら、

「案の定、てめえも今回ばかりは時間がかかったな。」

口の端でにやりと笑う。

「言いてぇのはそれだけか」

「まあ、色々あるけんどな。」

天井を向いて煙を細く噴き上げ、

「あーあ、また見つかっちまった。」

「逃げるからだ。」

「逃げてねえつってんだろ。てめえが勝手に追いかけてくんだ。」

「てめえが俺から逃げようとするからだ。」

「しつっけぇなぁ。逃げてねえつってんだろ。」

「だったらどうしてねぐらを次々に変える。」

「飽きるから。」

「なんでここにはずっといた。」

「面白かったから。」

「待ってたんじゃねえのか?」

「何を」

「俺を」

「ほざけ」

「てめえがだ」

夜回りの声。
煙草盆にサンジがキセルをおく。

「クソ坊主。」

「なんだ」

「探し当てたご褒美、ほしいか?」

「褒美じゃねえ」

「あぁん?」

「てめえは俺のもんだと何度も言った筈だ。」

「ふざけんな、クソ坊主、おとといきやがれ、俺のほうこそ何度も言ったろ?」




「だがてめえは」

サンジに歩みより、

「見つかれば」

その髪に指を差し入れ、

「一夜ばかりは、逃げねぇ」

親指の腹で薄い唇をなぞる。

「てめえを犯す、この俺の腕から」









「変わってねえのな…クソ坊主。」
台を上げた奥の座敷で、サンジはゾロに抱かれた。
ゾロの手が身体に絡んだ腹掛けの下を、確かめるように撫で続ける。
「何がだ。」
しっかりとした布地の腹掛けをひきずり脱がせ、幾重にも巻かれた下穿きの中にぐいと手を突っ込みながら、ゾロが低くつぶやく。
「相変わらず…んっ…」
まだ乾いているソレを握られ、かすかな痛みに顔をしかめる。
「相変わらず、俺の身体にしか興味ねえのな。おまえ。」
握られたまま先端を指先で捏ねられて、鋭い痛みに似た感覚に目を閉じた。
「てめえの身体以外に、俺に何に興味持てってんだよ。」
乳首をべろりと舐め上げながら、あいた片手で下穿きの中の尻を鷲掴みにする。
強い指が食い込むほどに尻を掴まれて揉まれ、サンジは熱い溜息を漏らしながら、目の前の緑色の頭を見下ろした。
「…やっぱ、興味ねえか。身体以外にゃよ。」
「ねえな。」
きっぱりと言い切るゾロに、サンジはいっそ晴れ晴れと笑った。
「なんで、てめ…みてえのが、一度は仏門…志したんだろ、なぁ。」
尻を力まかせに揉まれ、男根を爪で抉られ、乳首を噛まれてサンジは喉をのけぞらす。
「もののはずみだ」
そう言ったゾロだが、そうではない事をサンジは知っている。
愛した女の供養。
それがいつからこうなってしまったのか。
おそらくは、仏の道のみに生きるには、ゾロは強すぎたのだ。
心も体も、そして剣の腕さえも。
そう、サンジは思う。
まさか男の体に迷ったからじゃあんめえな、と聞いてみたら、
「最初にてめえ抱いたときにゃ、とっくに俺ぁ破戒僧だったさ」
と、事も無げに言われた。

ふと、ゾロが置いた3本の刀に目をとめる。
畳の上に押し転がされたまま、いやらしげな動きで身体中を蹂躙されながら顔だけ横を向け、白い鞘の刀、赤い鞘の刀、
黒い鞘の刀に順番に目をやった。
あの白鞘の刀が、女の形見。
サンジは目を閉じて、刀の影を視界から消した。

「…っ」
尻たぶを揉んでいた手の指先が、いつの間にか尻の狭間をゆっくりと撫でている。
ごつく硬い皮膚の指が、サンジの尻の間を意図をもって蠢きまわる。
前を握る手は微妙に力を加減して、サンジを追い上げる事に集中していた。
「…ぁ」
あきらかに濡れて熱くなる自分のソレに、サンジは腰を捩る。尻の間の指も、そこばかり揉み込むような動きを見せてもどかしい。
前からこぼれるぬめりが尻の間まで流れ落ち、ゾロの太い指を濡らす。
「いっ…て…」
濡れた指が尻の間をぬるぬると行き交い、何度目かに狙った孔をうねうねと犯していく。
片手でずるずると長い下穿きをひっぱって取り払い、ゾロはサンジの白い身体をすっかり露わにしてしまった。

「変わりねえようだな、てめえは。」
熱い中を指で激しく犯しながら、ゾロは荒い息の下でそう言った。
「お…かげさ…で…なっ…っ!」
指が増え、3本の節くれ立った太い指がサンジを強く責め苛む。
「誰にも…抱かれてなかったってぇのか」
「あ!ああ…っ!…毛色…変わった野、郎…抱こう、なんざ、あ…!て、てめえぐ…れえのもん、だ。…エロ、坊主が…っ!」

久しぶりに抱いた細い身体は、まるで生娘のようにゾロを拒んだ。
サンジは身体を開き、受け入れるために両足の力を抜いているのに、どうしてもゾロの肉の楔が入らない。
ゾロが己の剛直を手で掴んでぐいと押し当て、サンジの尻の間に突き入れようとしても、先端がわずかに入るだけで進まない。
いくらやっても、サンジの体は開かない。
焦れたゾロがサンジの両膝の裏を掴んで、その白い身体をふたつに折り曲げた。
「いっ…いて…」
サンジの顔の両脇に真っ白な太腿がくるほどに力をこめて、尻の間を目の前に晒させた。
濡れて色の濃くなった金色の恥毛に粘液が絡み、その奥に収縮する襞の窄まり。
ゾロは舌なめずりをせんばかりに、サンジの両足をがばりと開かせる。
ぐいとその股間をのぞき込むようにかがみ込めば、サンジが悔しげにぎりぎりと歯を鳴らす。
ゾロの目の前に、欲しがって身悶えする己の孔が晒されていると思っただけで。
「いま、くれてやる。」
低く掠れた声で誰にともなくそう呟き、ゾロが片手で自分の下穿きを更にくつろげた。
互いの男根は、小さな油の灯に照らされてぬらぬらと光っていて、更にゾロのそれはまるでサンジのものとは別のもので
あるかのように赤黒く太い。
その必要もないのに、ゾロは己の隆起を2,3度手のひらでしごき、サンジの濡れた孔にあてがった。
サンジの身体がかすかに強ばる。
「生娘抱くようにゃ、してやれねえが。」
その耳元にささやいて、
「せいぜい、てめえも」
ふっ、と一度腹に力をため、
「味わえや!」
何の前触れもなく、ぶちこんだ。




「…!…!!!!」
ゾロの肩を両手で押して逃げようとする白い身体を、許さずに腰を掴む。
サンジの尻に突き込んだ男根で、細い体全体を揺さぶるように突き上げる。
ぐじゅ、ぐじゅ、ぐじゅりと一度抜かれてまた押し入れられるたびに、濡れて絡んだ肉の音が耳を打つ。
とろとろと男根の先から溢れるものが股間を濡らし、尻のほうへ流れる冷たさにサンジは身震いした。
ず、ず、ず、といやらしげな音をたて。
柔らかな濡れた肉を、熱く硬い肉で内から擦り上げる。
ただそれだけの事なのに、どうしてこんなにも体の熱を上げ、狂わせるのか。
体の中にいったい何があって、人はこんなにも淫らに乱れるのか。
サンジは混乱したまま、喘ぎ続ける。
「あ、あ、あ、あ」
ずしずしと中をえぐられるたびに、腹の中から押し出されるように声が漏れてしまう。
顔の両脇の畳に膝を押しつけられたまま、埋め込まれたゾロの男根で尻の間を滅茶苦茶に突き下ろされる。
「…く」
ゾロの額に汗が浮いている。
「んっ…」
首に手をかけられて、乱暴に引き起こされた。
「いっ!」
向かい合うように男根の上に乗せられ、ずぶりと深く受け入れた拍子に、両足をびくびくと痙攣させる。
ゾロは腰を前後させるようにしながら、サンジの中をぐりぐりと刺激してくる。
「い、ゾ…あ…」
二人の腹の間で滑稽に揺れるサンジのそれが、限界まで張りつめて震える。
「ゾ…っ…」
微妙に腰を蠢かせているサンジに気づいて、ゾロが笑った。
「何度でも…イかせ…て…やるからよ…」
白い細い腰を掴んで、力任せに持ち上げた。まるでやや子をあやすように。
「ひぃ…っ!!」
ずるりと抜けかけたゾロのカリ首に、敏感になっている中を隈無く刺激される。奥の奥から浅い部分までを痛いほどに。
「ぅぁ…」
がたがたと体を震わせたサンジが、倒れないように反射的にゾロの肩に両腕をまわした。
くわえこまされたゾロの先っぽだけをきゅうきゅう締め付けながら、半端に腰を浮かされたままでサンジが喘ぐ。
やがてゾロの腹筋がびしりと震えて。
サンジが薄く目を開いた瞬間

血が滲むほどに掴んだままの細い腰を勢をつけて引き下ろし、ゾロが己の肉を叩き込んだ。
「……っ!」
悲鳴を上げるまもなく、サンジの先から精液が勢いよくほとばしり出た。


「…ぁ…っ…」
びくりびくりと腰を痙攣させながら、ゾロを締め付ける。
「く…っの…」
噛み千切られるかと思うほどにぎりぎりと締め上げられながら、ゾロは耐えた。
自分の中から濁った粘液が残らず出きってしまうと、サンジはゾロの首に両腕を回したままでぐったりともたれかかった。
「は…てめぇ…」
荒い息に邪魔されて思うようにしゃべれない。
「お喋りはあとだ。」
ゾロは逃げられないように、膝の上の白いからだをぐいと抱き締めて、おもむろに腰を動かし始めた。
「あ!ああ!っ!!」
イったばかりでまた中を刺激され、サンジはゾロに抱きつきながら歯を食いしばる。
「い…加減やめ…クソやろ…」
股間も尻の間もぐじょぐじょにされながら、なおも柔らかい肉を暴かれ続けて、サンジは息も絶え絶えに罵倒する。
「てめえが…逃げっ、から、だろ!」
ゾロが思い切り腰をたたきつける。
声もなく悲鳴の形に口を開いて、サンジがのけぞる。
「俺から…逃げようと、する、限り…てめ…を、逃がさ、ねえ、よ。」
がつがつとサンジを突き上げ、久しぶりに己の中から噴き上げてくる肉欲を味わう。
サンジがいない間に抱いた女になど、欲情しなかった。入れてくれと股を開くから、だったら舐めて勃たせろと言って、
その通りにさせただけだった。そんなもので、この身の内に凶暴に渦巻く欲望を薄める事など到底できない。
この、白く細い体をした負けず嫌いで生意気な板前の尻に突っ込んで、激しく揺さぶって中に思い切り出して
気の済むまで何度でもやらないと、滾る欲は少しも減じない。
「やっぱ…てめ…俺のため…の、孔、だな…」
「何ぬかしてやがん」
最後まで言えず、ぎりりと乳首を噛まれてサンジが息をのむ。
血が滲むほどに噛んだ乳首を、ざらりと舐め上げる。
何度も何度も舐めながら、尻の中もまんべんなく抉る。
抱いた両手で背中を撫であげ、髪をぐしゃぐしゃに乱して
「たまんねぇ…てめえの孔が…どこのどいつの孔より…たまんねえな…」
そう、何度も繰り返し、熱に浮かされたようにつぶやいた。

サンジがちくしょう、とつぶやいた。
何度も何度も、ちくしょう、とつぶやいてゾロの頭を力任せに掻き抱いた。




一膳飯屋のその奥で、あかりの消えたその座敷。
二匹の獣が絡み合う。
種が違う獣同士が、互いの喉笛を晒しながら。

淫獣の交わり。
淫欲の交わり。
淫楽の交わり。
体を開いて犯され、体を暴いて犯し。
古い畳に汗と精液が染みこんで、その上を唾液が流れ、そこに互いの肌を押しつけあい。
飢えた獣同士が、いつまでもいつまでも暴れ続ける。
吐き出した欲望の数だけ、知らぬ間に生まれる思いがあることにさえ、気づかないまま。
ただ、今はこの交わりが単純な快楽のためだけだとばかり思いつつ。

二匹の獣。
交わりあう。














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きぬこさん、どうもありがとうございましたv











教外別伝