「1番と4番、本気モードでべろちゅ―」
酔っ払ったルフィの声が夜の甲板に響いた。
サンジは慌てて手元を見る。
2番。
オッケー違った。

余裕で周りの状況を確認すると、ナミが半眼でじっと手元を見ている。
・・・・・・まさか
慌ててその隣に目を移せば、ウソップがホッと胸を撫で下ろしていた。
チョッパーはきょとんとしていて、ロビンの表情は相変わらず読めない。
そしてゾロは・・・
これ以上ないくらい眉間に皺を寄せて手元を睨んでいた。

まずい!
「ルフィ前言撤回しろ!まだ間に合う!」
ナミより先にサンジが抗議の声をあげた。
「んー?サンジ当たりかあ」
「違う!違うけどゾロとナミさんだぞ、そりゃダメだ!」
「そうよそうよ、ルフィ訂正しなさいよ。あたしお金取るわよ」
「ちょっと待て、誰から金取るんだよ」
その場は一気に混乱状態に陥った。

ルフィは耳の穴をぐるんとほじって、で?と返す。
「ゾロとナミがべろちゅうすんだろ。何でサンジダメだってんだ」
「あああ、あったりまえじゃねえか。麗しいナミさんに黴菌マリモが移ったらどーすんだ!
 しかもべろちゅーだぞ、べろ!ゾロのべろはそんじょそこらの軟体動物とは訳が違うんだ。
 ベロまで筋肉の塊で、しかも長えし器用に動くから舌の根っこから引き抜かれそうになんだぞ。
 てめえも知ってだろが、こいつが刀咥えて平気で喋んの。ナミさんの甘くやーらかい口ん中が
 このケダモノに蹂躙されてたまるかってんだよ。しかも人並み以上の肺活力で吸いまくるんだぞ。
 息継ぎもできねえし酸欠で死んだらどーしてくれんだ、ちったあ物事考えろ阿呆!」

そこまで一気に言って、ねえナミさんvと同意を求めたが、ナミはこわばった顔のまま固まっている。
ロビンの肩が細かく震えて、耐え切れず口元を抑えた。

「あの・・・サンジ君、どうもありがとう。リアルなアドバイス…」
張り付いたような嫌そうな笑みがナミの顔に浮かぶのを見て、サンジはようやく自分のしでかしたことに気がついた。
ウソップとチョッパーが抱き合って泣いている。
ロビンは珍しく爆笑していて、ゾロはそっぽを向いていた。
ルフィはにかっと豪快に笑う。


「んじゃ、仕切りなおして1番と2番、べろちゅーすっか?」

「うがあああああああ!!!」



どんなに穏やかで単調な航海でも、GM号にいる限り退屈はない。




                                   −END−


王様ゲーム