月見自慰と洒落ているかと思ったが、甲板に姿はない。
格納庫へ向かうと、扉の締まる気配がする。
待てと声を掛けたいが無理なので、扉をガン!と蹴ってみた。
案の定、ゾロが顔を覗かせて驚いている。
有無を言わせず中に入ると、扉を閉めて先にずんずん奥へ向かった。

ちらりと視線を落とせば、暗闇でもまだ猛々しい雄をそのままに、ためらいがちに近づくゾロがいる。
サンジは苛立ちを隠そうとしないで舌打ちして、不遜な態度で腕を組んだ。
「どういうつもりだ」
闇にきらりと、ゾロの目が光った気がする。
こんな、相手の表情すらよく見えない状態で、口の利けない自分に問いかける不毛さがこの男にはまだ分からないらしい。
戸惑うゾロにぶつかるように、自分から口付けた。
ゾロとキスをするのは好きだ。
あの時のゾロはキスなんかしなかったし、奴らとも覚えがない。
一番直接的で、言葉がなくたって好きだと伝えられそうで、サンジは精一杯ゾロの中に舌を伸ばした。
直ぐに絡め取られてきつく吸われる。
唾液を啜られて、すぐに頭がぼうっとなった。
ぴちゃりと暗がりに湿った音が響いて、えらく扇情的だ。
頬にかかるゾロの鼻息が荒くなっていく。
サンジの腰を抱く手に力が入り、ぐりっと怒張したものが股間に押し付けられた。
反射的に腰が引ける。
音を立てて唇が離れ、ゾロは大きく息をついた。

「いいのか?」
この後に及んで聞くなと思う。
「止まんねえぞ」
サンジは了解の代わりに、ゾロの首筋に顔を寄せてぺろりと舐めた。




ゾロはサンジの身体を軽く横抱きにすると、床に慎重に横たえる。
もどかしげにシャツを手繰り上げ、薄い胸を撫でた。
ゆるくゾロの腕を抑えて、何か言いたげに開いた口を再び塞ぐ。
舌で口中を余すところなく堪能しながら吸い付くような肌の感触を確かめた。
俺の身体はこいつに触れてる。
身体が覚えてる。
この肌も肉も全部―――
言いようのない焦燥がゾロを襲った。
サンジを蹂躙した筈の自分への怒りと、覚えていないことの悔しさ。
もっとめちゃくちゃにしてしまいたい衝動とサンジを愛するが故の悔恨。
ゾロは唇を離して改めてサンジの顔を見た。
腕の中のサンジは目をぎゅっと瞑って、床に投げ出した手は白く握り締めたままだ。
まるで何かに耐えているかのように。

「・・・クソコック」
掠れた声が響く。
「クソコック、好きだ」
声に促されるように、サンジはゆるゆると瞳を開いた。
目の前に、ガラにも泣く困ったような目をしたゾロがいる。
ああ、ゾロだなとサンジは思った。
自分の上に圧し掛かってるのは、あの男ではない。
奴らでもない。
俺の惚れてる、ゾロだ。
サンジは腕を上げてゾロの太い首にまわした。
口元を緩めて笑って見せる。

「好きだぞ」
念を押すように、ゾロは何度も啄ばむように口付ける。
こんな風に甘く過ごす時が来るなんて、想像もしなかった。
ゾロは慣れない言葉でもって全身でサンジに求愛している。

サンジは身体を起してゾロの腹巻からシャツを抜いた。
促されてゾロはシャツを脱ぎ、サンジも自らシャツを肌蹴た。
素肌をくっつけてぴたりと抱き合うとゾロの胸を走る盛り上がった創が、直に触れる。
その感触をもっと味わいたくて擦り寄ったら、大きな手がサンジの顔を包んで上向かせた。
舌が、唇が、耳元を掠めて首筋へと降りる。
薄い皮膚に歯を立てられると、本能で身体が揺れた。
サンジの肌の感触を楽しむように、何度も舐めて歯を立てて、きつく吸って、全身嘗め尽くす勢いでゾロがむしゃぶりつく。
お前は大型の獣かコラ。
口が利けたらそう突っ込みたいところだがそれもかなわず、サンジは勢いに流されるように喘いでいるしかなかった。

ゾロは下着ごとズボンを引き下ろして、膝を割った。
半勃ちになった自身を凝視されて、サンジは空いた手で顔を覆う。
口が利けない分、従順になったようで胸糞悪いが今更抵抗してお互い痛い目を見るのも馬鹿らしい。
見られていると思うだけで、先走りの露が出そうで困った。
じっと見てねえで早く何とかしやがれと心の中で叫んだら、おもむろにゾロがかぶりついてきた。
ぎえっ情けなくも色気もない叫びが喉の奥までせり上がった。
いきなりそれは反則だろうってーか、止めてくれ。
ばたつかせる足を押さえ込んで、ゾロは容赦なく根本まで咥える。
ゾ、ゾロが・・・フェラ・・・
目の前の信じられない光景に気を失いそうになる。
女性にだって(恐れ多くて)してもらったことがない行為を、あのゾロが、躊躇いもせずにしている。
イーストブルーの魔獣が、未来の大剣豪が・・・

ゾロの体温そのままに、熱い舌がサンジ自身を覆い尽くすように舐めまわす。
少し痛いくらいのきつさで吸われて、うっかり昇天しそうになった。
腹の上にある草色の髪を掴んで必死に耐える。
拳骨で何度か殴って、なんとかゾロの顔をこっちに向かせた。
涙が浮かんだ目でもって首を振る。
もう止めろと伝えたいがゾロは益々調子に乗ってきつく吸い上げた。
サンジの喉からきしむような音が長く響いた。
背をしならせて、かくかくと痙攣する。
ゾロの口内に切れ切れに放出して、最後にぶるりと身体を震わせた。
ゾロは喉を鳴らせて飲み込んでから、ぺろりと舌なめずりをして、サンジの顔をじっと見る。

そんなモン、飲むんじゃね―――!!
ゾロの頭頂部に踵を落として、肩を蹴った。
口で言えない分、やはり暴力に訴えるしかないようだ。
ゾロは壁に後頭部を打ちつけながらも嬉しそうな顔で直ぐに体勢を立て直してサンジの上に乗り上げた。
膝立ちになって自らも下着を下ろす。
とんでもない代物が目の前に突き出された。

あーでもこれ、俺知ってるよ。
あんまり見てねえけど、きつかったよなあ。
ちょっと投げやりな気持ちでそれをしげしげと眺めて、サンジはおずおずと口を開いた。
しゃぶられたことはないが、男のそれを咥えたことはある。
思い出したくもない、チンピラに輪姦された夜だ。
後ろにも散々突っ込まれたが、前の口でも奉仕させられた。
かなりラリッタ状態だったから、涎垂らして嬉しそうに咥えこんだっけ。
切れ切れに残る嫌な記憶を振り払って、サンジは懸命にゾロのモノを舐めた。
これはあいつらみてえな貧租なモンとは違う。
俺が好きなゾロだ。

薄い舌で、たどたどしいながら精一杯舐めたり吸ったりしてみた。
ゾロはサンジの金髪をかき混ぜて大きく息をついた。
「気持ち、いいぜ」
無骨な指が頬を撫でる。
「てめえ、あったけエ」
ゾロが喜んでいる。
そう思っただけでひどく気分が高揚した。
顎が外れそうになりながらも、なんとか気合で頬張ってみる。
喉の奥に触れてむせそうになるけど、歯を立てないように耐えた。
ゾロはサンジの両頬を手で挟んで、そっと引き抜く。
濡れた唇を舐めて吸い上げ、そのまま押し倒して片足を上げさせた。
先ほど達したというのに、サンジのそれはまた露をたたえて半勃ちになっている。
ゾロは尿道口をぐりと指の腹で擦って、後孔の周りを揉み始めた。
サンジの口から小さく息が上がる。
少しずつ、周りを解すように何度も擦って揉んで、指を押し付けた。
そうしている間にも空いた手で胸の尖りを摘んで、片方は舌で転がしてくる。
ひくりとサンジの肩が震えて、先走りの露が零れたから、気持ちいいのだとわかった。

ゾロは時間をかけて丹念に奥をほぐした。
なるだけサンジを傷つけないように、辛くないように。
サンジが鼻をすすりながらゾロの首根っこにすがり付いて懇願しても指を緩めなかった。
せつなくて苦しくて、サンジの喉の奥から嗚咽に似た音が漏れはじめた。
頃合かと、先端を後孔に塗りつけて宛がう。
サンジは一瞬息を呑んだが、浅く呼吸を繰り返して力を抜いてみる。
恐る恐るといった感じでめり込ませながら、ゾロは腰を進めた。

サンジの中は思った以上に熱くて狭くて、包み込まれる感触だけで達しそうになる。
ゾロは痛みすら感じるきつさに絶えながら、サンジに意識を集中した。
この感触を身体は知っている。
だが、これよりもっとサンジは辛かった筈だ。
自分の方が痛みを感じるくらいだから、サンジはどれほど苦痛だったろうか。
そんなことを考えると及び腰になるのも無理はない。
本来使うべきでない器官に、無理やり割り入ったのだ。
サンジのトラウマはあまりに深いだろう。
サンジはきつく目を閉じて浅い呼吸を繰り返している。
細い頤が小さく震えて、額に汗が滲んでいた。
それでも精一杯自分を受け入れようとしてくれていると思うと、ゾロは愛しさで胸が詰まる。
大切に、したいと思う。

「全部、入ったぞ」
耳に口を寄せて囁くと、ホッとしたように表情を変えて赤い唇が笑みを形づくった。
たまらず口付けて、静かに身体をずらす。
「動く、ぞ」
こくんと頷く仕草を確認して、ゾロはゆっくりと動いてみる。
サンジが辛くないように、傷つけないように。
ともすれば暴発しそうな己を押さえつけて、ゾロは一心不乱に腰を動かした。



サンジは、思ったよりずっとソフトで優しいSEXに戸惑いながらも、じれったさを感じていた。
確かに死ぬ目にあった覚えしかないが、これはあんまり極端だろう。
特にゾロが、今すぐにでも取って喰いたそうな目をしてぎこちなく動く様は、違和感を通り越して哀れにすら見える。
強烈な痛みがない分、もどかしい快感が長引いてサンジはどうにもたまらなくなっていた。
もう少し奥まで突いてくれりゃあ、イイとこに届くんじゃねえか。

チンピラに開発された身体はどこがイイかを覚えている。
けどゾロは全部挿れたと言いながら、浅くぬるい抽挿を繰り返すばかりで埒が明かない。
遠慮すんなってんだ、らしくねえ。
サンジは苛々してきた。
せめてもっと奥まで入れてくれたら、イきそうな気がするのに。
もどかしくて自ら腰を押し付けた。
途端、ゾロが腰を引く。
サンジは思わずカッとして、ゾロの腰に両手をかけた。

「・・・もっ」
逃がすまいと縋るように手に力を込めて、顔を真っ赤にしながら口をパクパクさせる。
「・・・と、け・・・っ」
「え?」
ゾロが顔を近づけた。
サンジは口元を歪めて声を絞り出す。
「もっと・・・奥、あ、・・・け、アホ!」

サンジの顔を凝視したままゾロが目を瞬いた。
――――もっと奥?
「こうか?」
ずんと、内奥に痺れが走った。
溜まらず声が上がる。
「ンはアっ・・・」
「いいのか」
「ん、いいっ」
ゾロはサンジの膝裏に手をかけると、押さえつけるようにさらに腰を進めた。
「ああ、そこ・・・」
「うしっ!」
ポイントを抑えたゾロが一気に動き出した。
望むところに当たってサンジの口から嬌声が漏れる。
「んああっ・・・そこ、いい・・・ゾロ。気持ち、い―――」
ゾロは両手をサンジの太腿にあてて限界まで広げると、一端引き抜いて一気に根本まで捻じ込んだ。

「ああっ―――!!」
脳天まで突き抜けるような快感に思わず叫んだ。
ゾロはかまわず抜き差しを繰り返す。
ぐちゃぐちゃと卑猥な音を立てながらサンジの身体がガクガクと揺れた。
「ああ、もう俺・・・イく、出ちまう」
「ああ、イけよっ…畜生!」
ゾロは顎まで汗を滴らせながら激しく腰を打ち付けた。
サンジの奥からきゅうと内壁が締め付けてくる。
「ああ、んあ・・・あ―――」
まるで逃すまいとするように、何度か収縮を繰り返しながら、サンジは自らの白い腹に精を撒き散らす。
強烈過ぎる締め付けに耐えられず、ゾロもまたその最奥に叩き付けるように精を放った。




「んく・・・」
「ふう・・・」
ゾロは肩で息をしながら身体を起した。
まだ繋がったままのサンジの背に手を廻して、同じように抱き起こす。
じん、と結合部に響いて、サンジは身を捩った。

「…よかったなあ」
ゾロが、汗まみれの髪に口付けて笑った。
つられてサンジも歯を見せる。
「ああ、よかった」
「クソコック・・・」
乱れた金髪を耳にかけて、ゾロが耳たぶに軽く口付ける。
「てめえ、いい声だ。声が、戻ったな」
「ああ・・・」
「その声、もっと聞かせてくれ」
ゾロの手が脇腹をなぞり、ぷくりと立ち上がった乳首を強めに捻る。
サンジの身体が跳ねて逃げるのに、がっちりと抑えて弄繰り回す。
「なあ、聞かせろよ」
舌で転がして甘噛みして、果実でも味わうように食んだ。
「や・・・ゾロ、あ・・・」
サンジの中で、ゾロがまた質量を増す。
それに気づいて益々顔を赤らめながら、サンジはゾロの頭を掻き抱いた。

「てめえと、ずっとこうしたかった」
ゾロの声が、心地よく耳を打つ。
「好きだぜ」
「お、れも・・・」
額をくっつけて見つめ合い、どちらからともなくキスを交わした。
ゾロの上にサンジが跨る格好で腰を揺らす。
「ゾロ、すげー・・・ぞ…」
「ああ、いいぜ」
囁くようにすすり泣くように、サンジは何度もゾロの名を呼んだ。
まるで堰を切ったように、言葉と共に想いが溢れ出す。
いとおしくてたまらない。

サンジは何度もゾロの名を呼び続けた。








翌朝―――
穏やかな春島の海域で、奇跡は起きた。



「おはようナミさん」
久しぶりに聞く、コックの声にナミは歓喜して抱きついた。
ルフィがウソップがチョッパーが万歳三唱して跳ね回っている。
「ああナミさんっv君のその美しさを讃えられない日々がどれほど辛かったかっ」
「はいはい調子に乗っちゃダメよ。まだ声が掠れてるじゃない。急に酷使しないようにね」
声が嗄れているのは、昨夜酷使したせいなので、サンジは赤くなって黙り込んだ。
そこにロビンがゾロを伴ってやってくる。
「どうしたの。一段と賑やかね」
「ああロビンって、ゾロも起きたの!」
「ゾロ、聞いて驚け!サンジが話せるようになったぞ!」
大興奮のウソップとは対照的にロビンは「あらそう」と優雅に微笑むだけだ。
ゾロに至っては眉一つ動かさない。

「何、感動薄いわねえ。ロビンはともかく、ゾロ。あんた知ってたの?」
「ああ、まあな」
甲板で寝ていて朝日で焼けたのか、妙に顔が赤黒い。
「さあさ、テーブルについてください。って、クソゴム!いただきますまで待てオラぁ!!」
久方振りのコックの怒号がキッチンに響く。みんな笑顔で食卓に着いた。
チョッパーはこっそりと背を伸ばしてゾロに耳打ちする。

「サンジの、記念すべき第一声はなんだったんだ?」
「第一声か。確か『もっと、お…』―――」
ドカンと後頭部を蹴られたゾロが、上手に人の間を縫って壁に激突した。
「ったく、ルフィ、もっとお代わりしたかったら言えよ!」
何故か大サービスなセリフを吐いて豪快に給仕するサンジの顔は、不自然なほどに赤い。
目をぱちくりしているウソップやチョッパーは置いといて、ロビンはクスリと笑い、ナミがあーあとため息をついた。






今日も快晴の空の下。

日当たりのいい甲板でサンジが口ずさむ恋の歌は風に乗って鳥のように舞っている。



                                                   END




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