朝夕の 冷たき風に 誘われ 金木犀の 薫り清かに
いつもの時間に、自然と目が覚めた。
曇り空なのか、カーテン越しに明るい朝の光が届かない。
耳を澄ましても鳥のさえずりしか聞こえず、雨音はしなかった。
降っていないようだ。
サンジはモフモフ毛布の肌触りにうっとりと目を細め、そのまま安らかに二度寝しそうになった。
が、せっかく目が覚めたのにもったいないと気力を振り絞って起き上がる。
隣で寝息を立てるゾロは眠りが深いようで、起きる気配がない。
朝学がある日は、サンジよりゾロの方が先に起きる。
自力で起きるのは無理だから目覚ましをセットしているが、今日はアラームが鳴らなかったから休みなのだろう。
それならサンジも早起きする必要はないが、朝のうちに済ませておきたい家事もあるからサンジは誘惑を振り切るように
素早く寝床から抜け出た。
気配を感じたか、縁側で風太が遠慮がちにキュンと鳴いたが、サンジが息を潜めるとそれきり大人しくなった。
彼なりに、散歩の催促にはまだ早いと思っているらしい。
早朝は空気が冷たく、床張りの台所は足元が冷えていた。
スリッパもモコモコタイプに変えようかなと考えつつ、和々に卸すデザートの仕込みを始める。
そろそろ温かいものが欲しいからと、おやつ時にはお梅ちゃん特製のおしるこが出る季節だ。
胡桃や栗、カボチャをふんだんに使ったパウンドケーキを焼いておけば、切り分けて出せる。
後は、フルーツさっぱり系として林檎のムースタルトと、洋ナシのコンポート。
どちらも仕込んで冷やしておけばいい。
抹茶シフォンに生クリームと小豆を添えるのもいいだろう。
台所に甘い匂いが充満したが、畳で寝るゾロはピクリとも動かない。
仰向いたまま、ときどきフガッと息を吐く。
まさか無呼吸とかになってないよなと、俄かに心配になってキッチンミトンを嵌めたまま恐る恐る近付いた。
途切れなく呼吸音が続いていて、ほっとする。
菓子を仕込んで、ついでに朝食の支度も済ませた。
風太達の散歩に出るにはまだ早いし、ちょっと寒い。
調理している間に上半身は温もったが、背中や足元はすうすうした。
エプロンを外し、ゾロを起こすつもりで寝床に帰る。
ゾロは横向きに寝返りを打っていて、ちょうどサンジが眠っていた辺りに両手を差し出していた。
無意識にでも探してくれていたのかと、気が付いて一人でにんまりと笑う。
それに、その空間はいかにも寂しげで自分が入らないとゾロが寒そうだ。
勝手にそう判断して、布団を捲って隙間に滑り込んだ。
モフモフ毛布の手触りは、ゾロの体温と相まってまるで温かな湯のようにサンジの身体を包み込んだ。
あまりの気持ち良さに、ふわあと自然と声が出る。
「…あった、け―・・・」
これはもう、麻薬にも等しい誘惑だ。
なんせ温かい。
そして柔らかい。
それに、大好きなゾロの匂いがする。
冷えた爪先を丸めて膝を抱えると、ゾロの手がもぞもぞと伸びてサンジの剥き出しの脛に触れた。
これまた温かい掌だ。
起きたのかと顔を見たら、瞼を閉じて口を半開きにしている。
どうやら寝惚けているらしい。
形の良い鼻先にちゅ、っと唇を付けて、サンジはゾロの額に自分の額をくっ付けた。
発熱してるんじゃないかと思うくらい、ゾロの額が熱い。
もしかしたら、自分の額が冷たいのかもしれない。
「朝だぞ」
「ん―」
ゾロは目を閉じたまま、サンジの膝裏を擦った。
足首を撫でてくるぶしを辿り、丸めた爪先を掌で包み込む。
余りの気持ち良さに、サンジの方がふにゃんと目を閉じた。
ゾロのもう片方の手が、背中に回って優しく撫でる。
どちらも目を閉じて、なかば夢み心地で抱き合った。
サンジにしてみれば、ゾロはどこもかしこも熱いくらいに温かくて、全身ぴったりとひっつけたいほどだ。
ゾロもサンジの冷たさが心地よいのか、全身弄ってはより冷たい場所を丹念に撫で擦る。
やがて、その手がズボンの中に潜り込んで地肌を撫でた。
尻頬は特に、氷のように冷え切っている。
サンジが自分で触っても、なんでここはいつも冷たいのかなーと疑問に思うくらい、温まらない場所だ。
そこをゾロの熱い手で撫でてもらうと、もう涎が出るほどに気持ちいいのは学習済みで。
「ふわ、ん…」
つい、変な声が漏れてしまった。
その声に誘われるように、ゾロの大きな手がもぎゅもぎゅむぐっと大胆に尻頬を揉みしだく。
抗議をしようと口を開けたら、すかさずゾロに食いつかれた。
そのまま濃厚なディープキスになだれ込んで、振り上げた片手も指を絡めて握り込まれた。
双丘の奥をノックするようになぞる指は、濡れて滑っている。
こいつ、寝たふりしてジェルを塗り込んでたなと気付いた時にはもう遅かった。
すっかりゾロの指を覚えた場所は、難なく侵入を許してしまう。
「…ふ、ふぁ…」
どういう現象だかわからないが、ゾロにべろちゅーされながら後孔を探られると、いつもより緩みが早くなってしまうのは
なぜなんだろう。
何回か経験してサンジも自覚しているが、それがなぜなのかはさっぱりわからない。
わからないが、とにかくこれをされると展開が早いことは学習済みだ。
というか、もうなすがままで身体が勝手に解け切っている。
「んー…」
ゾロの思う通りに事が運ぶのは癪だが、いかんせん毛布は温かいし体温が心地よいし、ゾロの指は気持ちいいことしか
しないしキスが濃くて堪らない。
とにかく、なにもかもヨ過ぎて嫌がる要素が一つもないのだ。
これはもう、仕方ない。
まだ半分眠いのも手伝って、身を捩る動作も緩慢だった。
本気で嫌がってないのがモロわかりで、ゾロの手の動きはますます大胆になって行く。
いつの間にか前をはだけられ、ピッタリと体を密着させられた。
ゾロとあれこれイタす時は、時に布団をはぎ取ったり体勢を変えられたりすると、我に返って羞恥のあまり身を固くすることがある。
けれどこんな風に、布団にくるまったまま肌を密着させて身体を弄られると、羞恥より気持ちよさの方が先に立って我に返る暇がない。
「ん、ふぅ・・・ん」
自分の物とは思えないような甘ったるい息が漏れ、半開きの唇からは唾液が零れ落ちモフモフ毛布を濡らした。
頭の片隅でこのままじゃだめだとの思いがあるのに、身体がいっかな言うことを聞いてくれない。
ゾロの手の動きに任せて勝手に足を開き、あまつさえ踵に力を入れて腰を浮かし自ら擦り付けるように揺らめかしていた。
音を立てて口付けを繰り返すゾロが、ひときわ大きく唇全体を吸いながら腰を推し進めてきた。
すでに蕩けきった場所は、難なくその塊を受け入れる。
仰け反って喘ぐ声さえゾロの口内に吸い込まれ、上も下もゾロに侵食された。
侵されるというより、満たされる感覚には歓び以外ない。
サンジはとうに理性を手放して、ただゾロの海に溺れた。
キャン、キョンと風太の鳴き声がする。
さすがに目が覚めて、サンジはがばりと身を起こした。
時計を見れば、すでに8時を回っている。
見事な二度寝。
しかも頭はすっきりして、目覚めは爽やか。
ただし、身体は気怠くて蒸し暑くてどろりと湿っている。
「・・・ね、寝た?」
「んー・・・朝か」
サンジを背後から抱きしめていたゾロが、手枕を崩しながら体を起こした。
途端、身体の中からどろりと溶け出す感触がする。
「お、おま・・・入れっぱなし・・・」
「あーお前よく寝てたから」
しれっと言いながらあくびするゾロに、サンジは不自然な体勢で踵を打ち付けた。
「寝たからって入れたままにすんな!抜け、この横着者!」
枕と一緒に吹っ飛ぶゾロの勢いで、布団も捲れた。
昨夜だしたばかりの敷き毛布が、カペカペになっている。
「あああああ、せっかくのモフモフ毛布があああああああ」
「洗えばいいだろうが」
「ばか!今日は曇だ、そうでなくてもモフモフ毛布乾きが悪いのに!!」
「これ、半分はお前のだぞ」
「黙れ!」
ぎゃあぎゃあと喧嘩を始めた声を聞きつけ、風太は散歩の催促をするのを諦めて小屋の中に舞い戻った。
颯太も、やれやれとばかりに組んだ前足の上に顎を乗せて目を瞑る。
明けきった朝の空に、まだ月は残っていた。
End
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