
「あ! ブシドーくん! ダメよ勝手に本を破っちゃ」
「破らせてください。おねがいします」
「…ごめんなさい。先生の言い方が悪かったわね。正座してちゃんと頼んでも、本を破いてはダメよ」
「ビビせんせー」
「なぁに? ブシドーくん」
「ゾロだよ」
「そうよね。ごめんなさい」
「なんでダメなんだ」
「幼稚園の本は皆んなの物だからよ。大事にしてね」
「…わかった」
「珍しいわね、ゾロくんがこんなことするなんて。どうしたの?」
「この絵が欲しい」
「これ? 天使の絵が欲しいの?」
「天使っていうのか」
「そう。神様のお使いよ」
「お使い? 何買ってくんだ?」
「あ〜… そのお使いじゃなくて、なんて言うか… いつもそばにいてお手伝いする人のこと」
「ふーん」
「どうしたの?」
「ぐるまゆに似てる」
「ふふ、ホントね。サンジくんみたいね」
「神様ってどこにいんだ?」
「うーん。お空の上、かな」
「空の上?」
「そう」
「空飛べんのか?」
「どうだろう。お空の上に住んでるから飛べるのかもね」
「強いのか?」
「強い…って言えば強い…かな…?」
「どんくらい?」
「私達皆んなのことをいつも見守ってくれてるくらいだから、きっとすごく強いんでしょうね」
「見守ってる?」
「そう。お父さんとお母さんみたいに、守ってくれてるの」
「父ちゃんと母ちゃんよりエライのか?」
「うーん、どっちの方が偉いって比べられないかな」
「すげえな」
「そうね」
「そんなすげえなら、あいつの風邪も直せるかな」
「サンジくん? そうね。お願いしてみようか」
「せんせー」
「なぁに、ゾロくん」
「あいついつになったら幼稚園来る?」
「うーん、先生にも分からないなぁ。お熱が下がらないみたいだから… 寂しい?」
「寂しくなんかねぇ。でも『3月生まれのお友達』の誕生会が終わっちまう」
「そうねぇ… 来週は来れるといいね」
「あいつ休んでばっかだ」
「うん… サンジくんはちょっと体が弱いからね」
「遠足の芋掘りも行かなかった」
「あぁ、あの時もお熱でお休みだったわね。ゾロくんが代わりにお芋掘って、先生と一緒にサンジくんのお家に届けてあげたものね」
「一番でっかい芋持って行ってやった!」
「サンジくん、喜んでたね」
「おう! 焼き芋にして食ったって! それで熱下がったって! ジジイの作る『すいーとぽてと』より旨いって言ってた!」
「良かったね」
「せんせー」
「なぁに?」
「あいついつ来る?」
「う〜ん、いつだろう… 早く来れるといいね」
「また芋食ったら熱下がる?」
「どうかなぁ。でもお薬飲んでるから、きっともうすぐ良くなると思うわよ」
「ほんと?」
「うん」
「あいつ、お誕生会のあれ被りたいって言ってた」
「あれ?」
「金色の」
「ああ、王冠」
「うん。『おれはプリンスだ』って。バカだろ、あいつ」
「ゾロくん。お友達をバカって言っちゃダメよ」
「バカだよ。あんな紙のより、あいつの髪の毛の方がずっとキレイな金色なのに」
「あら。ふふ、ゾロ君はサンジ君のこと大好きなのね」
「おう。大きくなったら神様の店主みたいに… 店主? 店主… 天使! 天使みたにいつもそばに侍らす」
「はべら… ゾロ君。そんな言葉誰に教わったの?」
「シャンクス」
「…園長先生…」
「大事なモンはいつもそばに置いて可愛がるモンだって」
「そう…ね…」
「可愛がるってどうやればいいんだ?」
「さあ… ビビ先生良く分かんないや… 園長先生に聞いてみて… ってやっぱりダメ!! ゾロくん、園長先生に聞いちゃダメよ!」
「なんで?」
「なんでって… どうしても! どうしてもよ! あ! ゾロくん! 今日この本持ってサンジくんのお家にお見舞いに行ってあげたら?
この絵の天使がサンジくんに似てるって教えてあげたら、きっと喜ぶわよ! そうよ! そうしましょう!」
「何焦ってんだ、せんせー?」
「あああ焦ってなんかないわよ!」
「…せんせー」
「な、なあに?」
「あいつの風邪、おれがうつしちゃったんだ」
「え… ああ、ゾロくんもちょっと前に風邪気味だったもんね。でも大丈夫よ。ゾロくんのせいじゃないわよ」
「おれのせいだよ… ちゅーしたから、うつっちゃったんだ」
「え?」
「やっぱり、おれのせいだろ?」
「な、なんでそんなことしたの?」
「シャンクスが、サンジは可愛いから早くつば付けとけって」
「…園っ長…!!」
「どうやんだって聞いたら、ちゅーして結婚の約束しとけって」
「で、でもね、ゾロくん」
「あいつアホだからな。忘れないように指切りもしといた」
「え?! 約束したの?」
「うん」
「サンジくんは何て…」
「『ふつかものですが、よろしくおねがいします』って言ってた。ふつかものって何だ? みっかものもあんのか?」
「……」
「? ビビせんせー?」
「…良かったね… お幸せにね…」
「ん!」
「……」
「せんせー」
「…なんでしょう…」
「せんせーは大人なのに結婚してねーんだな。早くしたほうがいいぞ」
「…はい…」

「…図々しい野郎だね、どーも」
「なにが」
「なにがじゃねーよ。2年間メールひとつ寄越さなかったくせに」
「行って来ますって言ったろ」
「言ったけどよ!」
「ただいま」
「…おかえり… じゃなくて!」
「じゃ、なんだ」
「もういいよ」
「加減したぞ」
「分かってんじゃねーか! それに偉そうに言ってんじゃねーよ! 2年ぶりで本気で好き勝手されたら死ぬわボケ」
「昔じゃあるめーし。んなヤワじゃねーだろ」
「てめぇに振り回されてるうちに丈夫になっちまったんだよ!」
「結構なことじゃねぇか」
「……」
「なんだ」
「…てめぇは… 元気でやってたのか」
「ああ」
「いい写真は撮れたかよ」
「おう」
「てめぇのツラで天使の写真集なんて、神様もビックリだぜ」
「関係ねぇだろ。おれは神には祈らねぇ」
「天使フェチのくせに」
「そらてめぇのせいだ」
「…刷り込みってこえーな」
「何か言ったか?」
「なんも」
「……」
「それにしても、誰かさんが世界中で迷子になってる間に、おれの華の20代は終わっちまったよ。時計が回りゃ、おれぁ30だ」
「ちゃんと間に合うように帰ってきたろ」
「ギリッギリな! てめえ目一杯、誠心誠意、力の限りおれ様をお祝いしろよ! 次はまた何年後になるか分かりゃしねー」
「もう行かねーよ」
「え? そうなの?」
「懲りた」
「…ばーか」
「どっちみちそろそろ頃合いだ」
「何の?」
「ふつかものどころか、25年ものになっちまった」
「だから何が?!」
朝、目を覚ましたサンジが自分の左手の薬指にはめられた指輪を見つけるまで
あと数時間―――
Happy Birthday my dearest cook…
End

ビビ先生に心底同情しつつ、園長の存在感に慄きましたwシャンクスww
ちっこいゾロが小生意気で可愛らしすぎて、悶絶ものですはい。
それにしてもビビ先生…(笑いが止まらない)
腹痛いです、こまっしゃくれた可愛い天使(ええ私にとってはもはやゾロジェル)ありがとうございます。
そうか〜ゾロは立派に天使フェチに育っちゃったんですね。
でも一番大切な天使は傍にいたのよ。
25年越しの愛を実らせての、三十路前のゴールインに幸多かれと祈らずにはいられません。
くすくすニマニマと頬が緩みっぱなしの素敵なサンジェル様、ありがとうございます