最近、人切りたちを騒がせている男がいた
孔雀のように舞い、人切りだけを狙って殺す男
世間では、その男は片方の目がないと言われていたので
片目の孔雀と呼ばれていた

静まりかえる夜道を、その男はのんびりと歩いていた。緑色の髪、ボロボロの袴、そして三本の刀…。
「この村には手応えのある奴はいるだろうか…。」
この男−ゾロは、強い奴を捜しては戦いを申しつけ、相手をした者は生きては帰れない、といわれるほどの
強さをもつ剣士だった。
都会では、虎狩りのゾロといわれ恐れられていた。と言っても、ゾロ顔を知った者は斬り捨てられていったので、
虎狩りの顔を見た者は今だに存在していないが。
のんびりと月夜を満喫しながら歩いていると、前方に大岩が立ちふさがった。ゾロは道を塞ぐ岩を飛び越えようとしたが、
その上に人がいるのに気が付いて動きを止めた。
「…お前は、人切りか…?」
煙管を銜え、大岩の上にあぐらをかいて座るその男を、ゾロはよく観察した。
月明かりを受けて輝く金色の髪に隠れて、左目は見えなかった。遊び人のような着物を着て、蒼い瞳でゾロを睨み付ける
ように見下ろしていた。
「もう一度だけ聞く…お前は、人切りか…?」
ゾロは表情を変えずに言った。
「否。」
「それじゃぁ、人切りに関わる者か…?」
男も表情を変えず、睨み付けるように聞いてくる。ゾロはその目を見て、ニヤリと笑って言った。
「あぁ、俺は人切りに手を貸した事がある。それがなんだ?」
実際、人切りになど手を貸した事はなかった。ただ、目の前の男と戦ってみたいと思ったのだ。
男は大岩の上から降りると、腰に差してあった刀を抜いた。
「人切りは、切るだけだ。」
ゾロは三本の刀のうち、一本目の刀を抜くと言った。
「お前、名は?」
男はクスッと笑って言った。
「片目の孔雀…とだけ言っておくか。」
「お前が…俺の名は虎狩りのゾロ。お前があの孔雀なら、いい戦いが出来そうだ…。」
ゾロはニヤリと笑うと、刀をもう二本取りだした。
夜風が二人を包み込んだ。それが止んだ時、ゾロと孔雀は同時に刀を突きだしていた。
それぞれの喉笛に突きつけられた、刀の切っ先。
「…孔雀さんよぉ、忘れちゃいけねぇな、俺は三刀流なんだ。」
孔雀は目を見開いて一歩後ろに下がったが、間に合わなかった。二本の刀が孔雀の腹にぶち当たった。
大岩まで吹っ飛ばされた孔雀は、ノロノロと起きあがり、怒鳴った。
「てめぇ…峰打ちだと?嘗めてるのか!?」
ゾロは孔雀の顔を見ずに、孔雀のある箇所を眺めながらニヤリと笑った。
「嘗めちゃいねぇよ。片目の孔雀、俺とちょっと遊ばねぇか?」
ゾロが孔雀に近づいて、孔雀の股間に手を伸ばした。すると、孔雀は肩を振るわせて後さずった。
「戦いに興奮して起ててやがる。いつもなのか?」
「うるせぇクソ!人切りの仲間のくせに!」
大声を上げる孔雀の口を押さえて、ゾロは低い声で言った。
「てめぇだって人切りだろ。まぁいいがな。ルールは簡単だ、俺とお前が、今からガチで勝負をする。俺が負けたら…そうだな、
望みを叶えてやろう。どんな事をしてでも叶えてやる。だが、お前が負けたら…。」
ゾロは孔雀の口から手を放して、自分の股間に手をやった。
「俺も溜まってんだ。お前…俺の便所になれ。」
「はぁ!?」
孔雀の驚きの声を聞いて、ゾロは凶悪な笑みで言った。
「お前は男にヤられるのに耐えれるか?どうする、止めるなら今のうちだぜ。この勝負、受けるのか、受けないのか…。」
勝てば得、負ければ損、常識だ。しかし、孔雀は躊躇うどころか、ゾロと同じように凶悪な笑みで言った。
「受けてやるよ、どうせ俺が勝つ。俺の望みは…俺の村を消した人切り一味を…潰す事。」
ゾロは動けなくなった孔雀を担いで、村から少し離れたところに見つけたボロ倉庫に入った。
長い間誰も使っていないらしく、ホコリが充満する荷物の上に、ゾロは孔雀を座らせた。
「クソ…俺が…負けるなんて…。」
「約束は約束だからな。いいだろう別に、俺の便所になるだけなんだ。それともあれか、男にヤられるのは初めてか?だよな。」
ゾロはからかい半分で孔雀の股間に手を伸ばした。すると、孔雀は慣れた動作でゾロの手に股間を擦りつけてきた。
「お前…。」
「数えた事なんかねぇよ、それで食ってきたんだ。」
急に雰囲気が変わった孔雀に、ゾロは驚きながらも言った。
「…多分、俺はそいつらより酷いぜ、いいのか?」
「上等…蹴られ殴られは、いつもの事だ…あいつの痛みに比べたら…。」
「あいつ?」
孔雀は一瞬悲しそうに目を伏せたが、すぐに顔を上げてゾロを睨んだ。
「さっさとヤれよ。」
ゾロはその言葉を聞いて、凶暴な顔をして笑った。そして、孔雀の耳元で低く言った。
「泣かすぞ。」
孔雀は、意を決したように目を硬く瞑った。
しかしそのせいで、ゾロの顔が、目だけが悲しそうに伏せられていたのに、孔雀は気付く事が出来なかった。
「ひ…酷ぇ…イかせ…。」
手足と自身を縛られ、孔雀はイけない辛さから泣き叫んだ。
ゾロは孔雀の耳元に、息と共に言葉を吹き込んだ。
「酷いのがいいんだろ…淫乱。」
孔雀はビクッと肩を振るわせ、涙を流して首を振った。
「嫌…止め…ろ…。」
「嫌じゃないくせに。」
ゾロはグチャグチャに濡れた孔雀のそれを強く握った。
「いっ…!」
「イきたければイけ、出来ればの話だがな。」
小屋の中に、孔雀の叫びに似た鳴き声が響いた。
ゾロは疲れきった孔雀を見下ろした。孔雀は掠れた声で呟いた。
「…これで…俺はお前から…解放される訳だ…。」
孔雀の嬉しそうな顔を見て、ゾロは表面だけの笑顔で言った。
「何言ってやがる、お前は一生俺の便所なんだぜ。」
吐き捨てるようにも聞こえるゾロの声に、孔雀の目が見開かれた。驚きの顔と言うより、絶望の顔だ。
「な、何でだ!俺はそんな話し…聞いてねぇ!」
「俺の便所になれ…って言っただろ?男にヤられるのに耐えれるか…とも言ったぜ?それに、お前の体が気に入ったんだ、
女よりもいい。」
ゾロの目を凝視して、孔雀は震える唇で言った。
「鬼…。」
孔雀の怯える目を見て、ゾロは、本当に鬼のような気を漂わせながら、笑った。
「いいねぇ鬼。これから俺、鬼狩りのゾロって名乗る事にするかな。なぁ孔雀さんよぉ。」
孔雀は呆然としたまま、ゾロの顔ばかりを眺めていた。
ゾロは孔雀の両手を柱に括り付け、両足を縄で縛った後扉に手を掛けた。
「何処に行くんだ、って顔してるな。俺は元々強い奴を捜して世を歩いてるんだ。そうだな…この村に強いやつがいなかったら
解放してやるよ。」
そう言ってゾロは扉を閉め、中から開けられないよう、外の扉に止め木をした。
しばらくして、ゾロの足音が聞こえなくなった。壊れた天上から月明かりが漏れるのを眺めながら、孔雀は一筋の涙を流した。
どうか、この村に強い奴がいませんように…孔雀はそれだけを願った。
昼になった。孔雀は昨日の疲れのせいか、柱に凭れながらまだ寝入っていた。
孔雀は夢を見ていた。小さい頃の夢で、自分が孔雀じゃない頃の夢…。
懐かしい自分の故郷。川が流れていて、向こうの山で小鳥が歌うように鳴いていた。自分の村は小村だったけれど、
とても平和だった。
その風景が見下ろせる、小さな丘の上に自分は立っていた。そして、その隣にあいつは立っていた。
緑色の髪をしていて、体中いつも傷だらけで、自分が笑いかければ、そいつも笑って。自分はそいつの笑顔が大好きだった。
『 』
そいつが何かを話した。でも聞こえない。そいつの顔が悲しそうに歪んだ時、村から爆発音が響き渡った。
見ると、村から火の手が上がっていた。
自分が村へ走ろうとして、ふと振り返ってそいつを見ると、そいつはもういなかった。
「おい、起きろ。」
頬を叩かれる感触に、孔雀は目を覚ました。見ると、ゾロが孔雀の顔を仏頂面で見下ろしていた。
「朝…?」
「バカ、もう夜だ。そんな事より、耳寄り情報だぜ。」
ゾロの顔が鬼の笑顔になるのを見て、孔雀は耳を塞ぎたい気持ちになった。
「この村には、鷹の目と呼ばれてる剣豪がいるらしい。そいつと手合わせしてみるつもりだ。もしそいつに負けたとしたら、
お前、どうなるかな。」
孔雀は目を瞑って顔を伏せた。
ゾロは、鷹の目と呼ばれているミホークに負けた。それいらい、孔雀はゾロの玩具にされた。
初め孔雀は、ゾロは自分とヤりたいだけで、鷹の目にわざと負けているのかと思った。
しかし、ゾロは孔雀が気絶している間、剣を一生懸命振るっていた。
鷹の目に本気で勝ちたいのだと思うと、孔雀は自分の心身の事も考えて、気絶をした振りを続けた。
ある日、ゾロは血まみれで孔雀の所にやって来た。
「どうしたんだよ、その傷…。」
「鷹の目にやられた、気にするな。」
ゾロは孔雀の首を掴んで押し倒した。ゾロの手が孔雀の股間に伸びた時、孔雀は叫ぶように言った。
「待ってくれゾロ!少しでいい…話を聞いてくれ!」
「…何の話だ?もう嫌だってか?」
孔雀は激しく首を振った。どうせ解放してくれないと分かっているから、孔雀はそう言う類は言わなくなった。
「昔話だ…頼む聞いてくれ。毎日夢に出るんだよ…眠れねぇんだ…頼む…。」
孔雀の目から涙がこぼれ落ちた。ゾロは目を細めると、孔雀の涙を親指の腹で拭いてやってから言った。
「手短に話せ。」
孔雀はゾロの指に甘えるように顔を擦りつけながら言った。
「俺の村は昔、人切り一味に占領されたんだ。村人は何とかして人切り一味を追い出したかった。村人は人切り一味に
村を出て欲しいと悲願した。そこで、人切り一味は要求を出した。その頃、まだ五歳のガキだった俺をだ。村人はその要求を
のんで、俺を引き渡した。そこからは…俺は今のような玩具生活を続けた…。」
孔雀はそこで下を向いた。ゾロは孔雀の頬に触れて言った。
「…それで?」
「…お前のような緑髪で、俺と同い年の男だった、助けてくれたのは。あの時はヤられた後だったから、意識が朦朧としてて、
そいつの顔が思い出せない…いつも遊んでた筈なのにだ。そいつが村が見える丘まで俺を引っ張って行って…そこで
見たのが、火の手が上がる村だった。燃える村の中に、逃げまどう村人を斬りつける人切り一味がいて、そいつらが
点けた火だとすぐ分かった。そして…俺を助けてくれたそいつが村に走って行った。俺も追いかけようとしたけど、お前は
来るなって怒鳴られて、動けなくなった。」
孔雀は目を伏せた。その目からまた涙がこぼれ落ちた。
「火が消えて、灰になった村を歩いた。生き残った奴もいなかったし、俺を助けてくれたそいつも…いなかった。俺は…あの
人切り一味が許せなかった。」
「だから望みが人切り一味を潰す事だったのか。」
ゾロの言葉に、孔雀は小さく頷いた。
「そいつの名前は思い出せないのか?」
ゾロの顔を見られない孔雀は、下を向いたままもう一度頷いた。
「初めて俺がお前をヤッた時口走った、あいつと言うのはそいつの事だったのか…好きだったのか?」
孔雀は下を向き続けたまま頷いた。
「気色悪いだろ…同性愛って奴だ…。」
孔雀の言葉を聞いた時、ゾロの顔は、あの鬼のような笑みが広がっていた。
「孔雀…お前の名は…サンジじゃないのか?」
孔雀の肩が震えた。思わずゾロの顔を凝視する。
「何故…何故俺の名を知っているんだ!」
ゾロは孔雀の、サンジの目を見ながら言った。
「俺もお前が好きだったから…あの時助けたのは…俺だ。」
サンジの目が見開かれた。その目に涙が溢れてくる。
「嘘だろ…嘘って言えよ!」
「嘘じゃねぇさ。お前の住んでいた村は北の方にある。川が近くに流れていて、村には大きな道場があった。それにその
同い年の男とやら、腰に木刀を差していた筈だ。お前はよくそれを盗んで、うろたえる俺をからかってたろ。」
サンジは溢れる涙を抑える事が出来なかった。全て本当の事だったから…。
「ゾロ…お前だったなんてな…ゾロ!」
サンジはゾロに縋り付いた。大声で泣きながら、何度も何度もゾロの名を呼んだ。
サンジが落ち着いてくると、ゾロはサンジの金髪を撫でながら言った。
「なぁ、サンジ…お前、俺と再会できたのは死ぬほど嬉しいか?」
「当たり…前だ!」
「あんな事されても?」
「…好きだったって言ったろ…お前なら嬉しいくらいだ。」
ゾロは目を閉じて言った。
「お前…今でも人切り一味を許せないか?」
サンジは眉間に皺を寄せて言った。
「その気持ちは変わらない…許せないさ。」
ゾロはニヤッと笑って言った。
「いい事教えてやるよ。俺があの人切り一味を雇ったんだ。」
サンジは、ゾロの言葉の訳が分からず首を傾げた。
「俺が、お前を村から引き離すように言ったんだよ、あの一味に。それで、村に火を点けたのは俺だ。」
サンジは、言っている意味がやっと分かって声を荒げた。
「何故だ!あの時…助けてくれたのはお前じゃないのか!?」
「あの時助けたのは俺だ。」
頭が混乱して訳が分からなかった。つまり、ゾロが自分の人生を狂わせた張本人と言う事になる。
「何故…。」
「どうでもいいだろ、そんな事。それよりどうする、俺を殺すか?」
サンジはゾロの中に鬼がいるのを確かに見た。
許せない、ゾロの事を。
でも、ゾロが好きだ。
自分はどうしたらいい。
「俺を殺して恨みを晴らすか?それとも一生俺の玩具でいるか?」
サンジは唇を噛みしめた。目をギュッと瞑って、自分の心に語りかけた。
嘘であって欲しい、でも現実はうそをつかない事はよく知っている。
サンジはゾロの肩に顔を埋めて、小さく言った。
「一生、付いて行きます。だから、離れて行かないで…。」
ゾロはその返事を聞いて、満足そうに頷いた。
「離してやらねぇ…お前は俺のモノだ…。」
俺はお前を手放したくなかった
お前は誰にでも優しかったから
壊して、全て壊して
俺のモノにしたかったから
それは全て
歪ンダ愛ノ結果…
END
サンジの人生を狂わせてしまった鬼ゾロ様!
でも愛故なのです。愛するが故の独占欲。
そうして時を経て、本当にサンジを手に入れてしまったのですね。
なんて悪いゾロ様・・・うっとりv
すべての元凶と知りつつも、惹かれて止まないサンジの気持ちがよくわかります(わかるな)
素敵鬼ゾロ様、ありがとうございましたvv