
「サンタはいるんだって!」
ゾロはその発言に驚いて咽た。
ゾロが咽て苦しんでいる間も論争は続いている。
「お前・・・そりゃねぇって」
ウソップは呆れて言う。そりゃそうだ。ウソップよ、お前はおかしくはない。ゾロは、むしろ19歳にもなって未だに
サンタを信じているという国宝級の男を眺めた。
だが、国宝は真剣だ。冗談など1ミリグラムも混ざっていないらしい。
世界遺産かもしれない・・・ゾロはそう思った。
「あ? いるんだよ。だって、俺は会ったことあるんだ。白いひげのサンタクロースに。あれは、忘れもしねぇ幼き頃
だった。俺が夜中にトイレに起きた時、俺が枕元においた巨大靴下に包丁をいれようとしていたサンタと出会った」
あの頃を懐かしんでサンジは、タバコの煙を吐き出しながら目を細める。
ゾロは想像した。
寝静まった子ども部屋に包丁を持ったジイサンが、忍び込むその光景を。
「・・・・・」
どっからみても、押し込み強盗だ。間違ってもサンタだと思うことはない。たとえ、赤と白のあの衣裳を身にまとって
いたとしてもだ。
だが、幼き日のサンジはそれをサンタだと信じたらしい。ある意味、大物だ。
しかも、その誤解は現在も続いているようだ。
「でな。サンタさんですか?って俺はきいた。当然じゃねぇか。だって、あのサンタだぜ? イイコにしてりゃプレゼントを
くれるありがたいジイサマだったら、言いたいことは山ほどあったからな」
「・・・で、サンジ。お前、そのジイサンはサンタだっていったのか?」
ウソップはやはりやや呆れたまま尋ねる。
「ああ。ちょっとな。うちのジジイによく似た声だったがそうだって言ったんだぜ。だから、俺は。包丁も捨てがたいけど、
一番はちげぇ。ってきっぱりといってやった」
「・・・・」
ゾロは思った。間違いなく、サンタはゼフなのだろうが、それよりもこの先の展開が先が見えて仕方がない。アホらしい。
瞬間、どうでもよくなったゾロは、さっさとこの場から離れようと立ち上がった。
「で、なんていったんだお前」
「それはな・・・」
サンジとウソップの声が遠ざかる。
(大方、水着の写真集とかそんなだろ)
くっだらねぇ。と、思いながらドアをあけた。
「…だ。まぁ…未だにサンタはそれをくれちゃいねぇが。ま、そんなものもらうもんでもねぇしな」
船室を出るとき、かすかに聞こえた答えに、ドアを閉めてしまってからゾロはその場に立ち尽くした。
おそらくサンジはゾロがすでに出て行ってしまったと思って、きいていたことには気づいてはいないだろう。
気づいていれば、決して言ったりはしなかっただろう。サンジのプライドが許さない。
「……」
しばらくゾロは考えるようにしてから、その場を離れた。
夜になった。本日は、サンジが子供のころサンタに出会った日と同じクリスマスイブだ。
皆でサンジが腕を振るった料理を楽しみ。ケーキを食べいいだけ騒いで、船番を残してお開きとなった。
当然、飲み会のあとの船番は酒に強くどれだけ飲んでも正気を保っているものに当たるため、やっぱりといえば
やっぱりなのだが、ゾロが本日の当番である。
穏やかな夜であった。
ナミの予想によると天気の変化もさほどなく、このまま穏やかな夜となるらしい。
周囲に島影もなく、船影もない。
こんな日は、一晩中静かでうっかり眠ってしまうぐらい暇だ。
まぁ・・・穏やかでなくてもゾロは寝るのだが。
だが。今日は違った。
(・・・ったく、なんで俺が)
毒づきながらゾロは行動を起こす。
大概甘すぎる。
そう思うが、あんな答えを聞いてしまってはゾロとしてもかなえてやらないわけにはいかない。
ウソップの部屋から無断借用したそれに袖を通す。
赤と白のクリスマス定番のアレだ。猛烈に恥しい。
「うし」
恥しさを無理矢理、海の底に沈めてゾロはそっと見張り台を抜け出す。ゆっくりと音を立てぬように、男部屋に近づく。
細心の注意を払って中をのぞけば。
(いねぇ・・・!)
肝心のサンジの姿はない。
いや、逆に幸運かもしれない。ゾロは思いなおす。
まさかこんな格好でこれからしようと思ってることを、他の野郎に見られるのもいや過ぎる。
そう気を取り直して、今度はサンジの城であるキッチンを目指した。
(一人でいてくれよ)
今晩は、あのどんちゃん騒ぎのあとだからサンジ以外にいるはずはなかろうと思うが・・・。
ゾロは再び息を殺して移動し始める。
もはや赤い服を着た不審者のようであるが、背に腹は変えられない。サンジ以外に見られるのは本気で恥しいのだ。
ようやく。サンジのいるキッチンに続くドアへとやってきて、そっと中をうかがう。
サンジは、こちらに背を向けて、なにかをしているようであった。
おそらく明日の仕込みかなにかだろう。
ゾロはその背中に気配を殺して近づいた。
「だいぶ経っちまったが、てめぇにサンタからの贈り物だ」
耳元で囁けば、サンジが驚いて振り返る。
「な?! なんだ、テメ。その格好」
「サンタが、着ろって言ったんだよ、悪いか」
そういいながら、シンクを背にするサンジの両脇に手をついて、彼をそこへ閉じこめる。
「俺は、お前だけだ」
「!」
身を乗り出して、サンジの肩に頭を乗せた。サンジが身を固くしたのがわかってゾロは嬉しくなってくすりと笑う。
そのまま、首筋に口付けてサンジの肌を唇を這わせながら顎を舐める。
ザラリとヒゲを舐めてそのままサンジの唇を触れる。
「…んっ」
「…テメェの全てを俺は貰い受ける。だから…」
先は言わずに、そのまま強くでき寄せて、深く口付けを交わす。
だんだんとたまらなくなって、背中に回した手を下へ滑らせ、シャツの中にもぐりこませる。
サンジの滑らかな肌の感触を楽しんでいると、サンジがゾロの肩に顎を乗せて、はぁ。と、息を吐いた。
そのまま、流れてゆきそうな空気だったのにサンジがはっとして身を離した。
「…、サンタが俺がガキん頃望んだことをテメェにいったのか…?」
期待と不安が入り混じったような声に愛しさを覚えた。
ゾロの口角が持ち上がる。
「少し違ぇな…サンタの奴は、てめぇにゃ、自分は役不足だから俺にサンタをしろっていいやがった」
ニヤ。と、笑って、ちゅう。と、音をたててキスをしてやる。
「ついでに…お前がガキん頃から欲しくてたまらなかったものもくれてやって欲しいとは言われたが」
言葉を切り、視線を合わせる。
サンジは、落ち着かないのか視線を慌てて外した。
それを顎を捉えて引き戻して、再び軽く触れるだけのキス。
「断った」
瞬間、サンジの顔が歪む。悪い方向に考えたのだろう。
まったく。だからほっとけない。ゾロはサンジを抱き寄せた。
どれだけ欲していたかは、理解しているつもりだ。
だが、それは一方的に与えられるべきものではない。
掴み取るものだ。そうしてお互いに、与え合うものでもある。
「他人から与えられた『一生を共にできるの人』なんぞ偽物だろ」
「・・・・」
「お前が望んで自分で掴んだものは、どこにある?」
びく。と、サンジが震えた。ゾロは抱き寄せる腕に力をこめる。
ここにいるだろう。と、言うように。
「あのよ…」
サンジがおずおずとゾロの背中に手を回して、きゅ。と、上着を掴んだ。
ここにいる。と、いうことを確かめるように。
ゾロはあえて黙って抱きしめ返してやる。
お互いの温もりを確かめ合ってから、額をこすりつけるようにして見詰め合って、キスを交わす。
それから再びしっかりと抱きしめた。
一生、離れない。と、いうように。
「サンタ、元気だったか…?」
「ああ…いい加減くたばれよ。ってぐれぇ元気だった」
「…ん…」
ならいい。と、言って。
サンジの方からゾロの唇に己の唇を寄せた。
-END-
「悪人面」!のゾロ様を掻っ攫ってまいりましたvv
悪人面なのに、サンタのコスプレ。しかも、誰かに見られるのが嫌だからこっそり出現。
それもこれも可愛いサンジのため〜〜〜〜vv
こんっな天然可愛いサンジですもの、ゾロだって身体張るよね!(強調)
「悪ゾロ」で貰っちゃってごめんねv でも嬉しい!!
幸せクリスマスをどうもありがとう!